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2013年11月21日木曜日

Perfume:関和亮監督と田中裕介監督の違いを考える



このエントリーは昨日「Sweet Refrain」のMVのレビューと一緒に書いたのですが、長くなりすぎたので分けることにしたものです。そのため田中さんのPVのことを多く書いてますが、意図は関さんと田中さんの作品の世界感の比較です。


★関さんと田中さんの違いとは

まず関さんの撮るPerfumeは本当に綺麗。顔が綺麗。いつも輝くように3人が美しい。3人も関さんの前ではリラックスしてるせいなのか、表情も豊かで非常に魅力的です。カメラ=関さん=私達に向かって、微笑み、視線で訴え、歌いかけ、話しかけてきます。まさに輝くようなアイドルがアイドルであるべくして撮られた王道のアイドル映像。おそらく関さんは世界中で一番Perfumeを綺麗に撮れる人でしょう。関さんのPVPerfumeがアイドルでいてこそ成り立つ世界感。(以前書いたあ~ちゃんの存在とともに)Perfumeが常に帰ってくるMothershipのようなものだろうと思う。


Perfume - Glitter


Perfume - Magic of Love



ただ関さんのPVは、彼があまりにもPerfumeを知り尽くして愛しているせいなのか、びっくりするような意外性はあまりない。彼が撮るPerfumeはいつも綺麗でいつも魅力的。ほぼ毎回確実に王道アイドル的な映像。だからこその安定感です。

それに比べると独立したストーリー性のある田中さんの映像はちょっと趣向が違う。関さんの作品群に比べるとずいぶん異質の世界感。いつもびっくりさせられる。


関さんのPVと田中さんのPVとの一番の違いは、カメラ(監督)とPerfumeの距離です。

関さんの撮るPerfumeは、妹のようににこにことカメラに笑いかけて、毛穴が見えるほど近くて親密。…すましていてもふてくされていても退屈していても泣いていてもやっぱり親密。視線が近いんです。それに比べて田中さんの映像は、物理的にも感覚的にもなんだか突き放したような冷たい印象。カメラの視線もどこか彼女達を冷静に観察するようなよそよそしさがある。

PVの中で完結した世界感、完結したストーリー性のある田中さんの映像では、ロボットはロボットのままだし、エスパーの女の子達も決してカメラには微笑みかけない。アニメの綺麗なお姉さん3人組も話しかけてるのは劇中の男の子にだけ。今回の「Sweet Refrain」のマネキンのような彼女達も、遠くにいて決してカメラに近づいてきて微笑んだりはしない。

要は、関さんのPVPerfumeがいつもの「あ~ちゃん・かしゆか・のっち」ご本人達であるのなら、田中さんのPVでのPerfumeは女優のように別の誰かを演じているんですね。田中さんのPVでのPerfumeが妙に異質な感じかするのはそのせいでしょう。そしてそんな(誰かを演じる)彼女達を観察するような突き放した視線…


Perfume - Spending All My Time



しかしそういう距離感だからこそ出せる魅力もあるんです。

例えばSpring of Life」のPVでの設定。(私達・観察者は)ガラス張りの実験室の中のロボットガールズ(Perfume)を観察はできても、近づいていって話しかけることは決して出来ないんです。彼女達は実験室の中にいる。こちらは外からモニターで観察するだけ。だから彼女達が無邪気に外出を計画してニコニコしてるのを見ても、間違いを教えてあげる事ができない。こちらからコミュニケーションが出来ないんです。それがたまらなく切ない。そんな距離感のせいでグッときたりする。(「Spending all my time」の不安な感じも同じです)


Perfume - Spring of Life



田中さんのPVでは、そんなPerfumeとの距離感や手の届かないもどかしさがPVのストーリー性とともに非常に効果的に使われています。Perfumeの映像作品としてまた違った色が見えてくるのも楽しい。Perfume3人も女優のようにPerfumeじゃない「誰か」を演じていろんな顔を見せてくれる。また、ストーリー性も含めて映像の世界感そのものが、独立した作品に見えるほど完成されているので、時には曲の印象さえも変わったりする。そんなところが田中さんのPVは非常に面白いです。


 関さんのPV………私とPerfume会話する関係
田中さんのPV………私が(Perfumeの演じる)誰か観察する関係

こういう二人の監督さんの違いも面白いですよね。関さんはPerfumeご本人達の王道アイドルMV。田中さんは素材として突き放した女優・PerfumeMV。それぞれ違う方向でこれからも進化していくんでしょう。いつも両方ともにワクワクさせられます。