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『Anna Karenina(2012年)/英/カラー
/129分/監督;
Joe Wright』
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トルストイの名作「アンナ・カレーニナ」。私は読んでいない。日本でどれほど読まれているのか知らないが、あらすじぐらいは知られているのだろうと思う。
簡単に言えばまた不倫もの。今回の舞台は19世紀のロシア。またまた18歳で恋を知らずに結婚し退屈な日々を送る上流階級の箱入り奥様が、若い男と恋に落ちるお話。普遍のテーマですな。今年、女性の不倫の話は3度目だぞ(「はつ恋」「Deep Blue Sea」)。不倫して嬉しいのも後で辛くなるのも全部一緒。普遍です。
演出は舞台劇風とリアルを取り混ぜた多少実験的なもの。部分的に舞台風だったり紙芝居風だったりして慣れるまで時間がかかった。正統派の自然でリアルな普通の演出ではない。ただ一旦慣れればよく考えられた演出なんだとも思えてくる。好き嫌いはあると思う。
さて不朽の名作ならネタバレも何もないし、内容を語っても意味が無いので、また俳優論でも書こうかなと思う。
ほんの少しネタバレかも(勝手な意見を書いているので、映画を見る前に余計な情報がないほうがいいと思われる方は読まないで下さい)
●キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)=アンナ(主人公)
この人は面白い女優さんだと思う。決して正統派の美人ではない。鼻から上は整っているのに口から下は変。ガタガタの歯並びで受け口っぽい。背は高いが曲線を描く身体でもなく、健康的にスリムというよりどちらかといえばギクシャクして見えるほど痩せている。TVのトークショーで話してるのも見たけど(人前で照れているのか)なんだか妙。顔をしかめたり自虐的に笑ったり「黙ってれば綺麗なのにどうしてそんな妙な顔をするのよ」と言いたくなる様な変な感じ。ほんとにおかしな子。
そんな彼女が映画に出るとなぜか強烈な印象の女優さんに変身するから面白い。『Never Let Me Go (2010)』では怖いくらいやつれていたし、『The Duchess (2008)』では貴族の女性。『Pride
& Prejudice (2005)』『King Arthur (2004)』『Love Actually (2003)』『Pirates
of the Caribbean (2003)』『Bend It Like Beckham (2002)』。…なんだか順調に成長してますよね。あまり好きな顔ではないのに、なぜか心に残る女優さん。そういうのをカリスマ、スター性と言うんだろうと思う。彼女には確かにそれがある。
今回のアンナ役も、あの完璧でない顔が妙に気になる。背が高くてキリッと気が強い30代前半(?)の上流階級の奥様。決して完璧な美人ではないのに華やかな気品がある。お金も地位もあるこの女性が現れると場面がぱっと明るくなる。佇まいが綺麗。それなのに歯はガタガタ。綺麗だけど完璧じゃない顔。だからこそ妙にリアル。
そんなルックスの女性は19世紀の上流階級にも実際にいそうなのだ。スラリとした立ち姿も、くっきりとした目鼻立ちも、19世紀の画家John Singer Sargentの絵の中の、ハイソな女性達そのまんま。そんな肖像画の女性達は綺麗だけど現実にはこの女優さんみたいに「ちょっとだけ難あり」だったんじゃないかと思う。こういう感じは、グレース・ケリーのような美人には出せないだろうと思う。あの癖のある顔がいい。
しかしキーラさんが19世紀の女性としてリアルかどうかとは別問題。現代風すぎてあまり古風な感じはしない。それに彼女本人にまだ若い女の子の硬い雰囲気があって、子供のいる既婚の女性というには説得力に欠ける気もした。色気が足りない。若い頃のシャーロットランプリングさんのような落ち着きのある女優さんとは別のタイプだろう。ただこの映画の演出は嘘っぽいので現代風な演技にも違和感はない。
●アーロン・ジョンソン(Aaron Taylor-Johnson)=ヴロンスキー(恋人)
ご本人は22歳だそうだ。げげっ若いな。原作でもこんなに若い人の設定なんだろうか。青い目が綺麗だけどどこか妙な感じ。可愛い天使みたい。実はこの人が問題。キーラさんとはあまりいい化学反応(相性)を感じなかった。危険で魅力的な男というより可愛すぎて漫画っぽい。やっぱり若すぎるんだろうと思う。この人は今でこそ可愛い男の子だけど、もうちょっと年をとるとガッチリマッチョなオヤジになると思う。●ジュード・ロウ(Jude Law)=カレーニン(旦那)
この人も老けましたね。15年前ならこの人がヴロンスキー側だったかも。青い目の可愛い顔。スリムで線が細いので、若い頃(英国では)アイドル風に人気があった。そんな彼が今回、禿で皺の多い気難しい堅物の旦那を演じている。俳優さんとしていい歳のとり方をしてます。俳優にとって老いることは決して問題ではない。歳をとればそれなりの役がある。そういうことを恐れてはいかんのだ。立派。…と思ったら最近の写真では髪がフサフサしていた。なんとこの役のために抜いたんだろうか…。
★総評:
楽しめた。しかし凝った演出は好き嫌いがあると思う。キーラさんが熱演しているのに、演出のほうが気になって泣くまでにはいたらなかった。ああいう内容なのに心を掴まれるような深刻さも不道徳さも感じられない。(よく考えられているとはいっても)結局奇をてらった演出のために、しっとりとした大人の心理劇として見れなかったのが正直なところ。そう思えばとても軽い映画。こういう話はもっとドロドロしていたほうがいい(笑)。配役の問題も大きいと思う。普通の映画で見たかった。
ところで、エロいシーンがあっても最近の映画では一切脱ぎませんね。70年代はみんな惜しげもなく脱いでたんだけどな。キーラさんを脱がしたいとは思わないけど、ああいう設定なら脱いでもいい気がしたのは本音。