事件のその後。
濃い。濃い濃い濃いです。台詞が濃い。まあ会話の中での情報量の多いこと多いこと。例えば浅野家の正室に向かった家来達の台詞、吉良家の殿様と家臣とのやりとり、堀部安兵衛が堀内道場を訪ねた場面。丹下典膳と白竿屋の会話。全てに様々な方向からの状況説明がなされていながら台詞として自然。言葉のリズムもいい。これはもう脚本家の方の腕。無駄な言葉が一切ない。おまけにたまに投げ入れられるユーモアの数々。「討ち入り饅頭」なんてすごく可笑しい。すごいなと思う。こちらも内容についていくのに必死。台詞だけで緊張が伝わる。台詞そのものに緊迫感があると俳優さん達の演技が大げさにならなくても場面が引き締まる。そんな場面があれやこれやと沢山あった。このドラマは、そんな細かいところがすごく面白い。
言葉もまた痺れる。「つかえという持病、綸言汗の如し、御公儀、噛ませ犬、隠忍自重、心の臓、蟄居閉門、蛇の生殺し、火急の用件、恐悦至極…」
なんだかもう時代劇は(とくに江戸時代は)これぐらいコテコテに時代劇言葉が出てくるとそれだけでぐっときます。よく注意して聴いていないと情報を聞き漏らしてしまう(それぐらい私は時代劇に慣れていない)。難しい言葉は聞いて直ぐに漢字に脳内変換が出来なかったりする。だから一生懸命見る。すごく新鮮。そんなところも、ちょっと前時代的なんだろうけど、だからこそ面白い。
俳優さん達も気合が入ってます。それぞれお家の一大事なんで緊迫感いっぱい。俳優さん達はみんな2012年現在の俳優さんたちなのに、台詞だけでこれだけ雰囲気が出るのかと思うほど場面が引き締まって見える。特にベテランの俳優さん達の男らしい威厳が素晴らしい。やっぱり脚本だと思う。
老獪かと思えばどこかユーモラスで、決して憎めない吉良の殿様がまたいい。すごくオレ様の殿様。昭和の頑固親父そのまんま。長塚さんが本当に素晴らしい。現代劇で頑固親父をやってもなんだか哀しくなってしまうけど(現実に頑固親父は少なくなった)、こんな昭和っぽい時代劇ならこんな頑固親父風殿様もはまる。ステキです。このドラマの吉良さんは決して悪者ではないらしい。忠臣蔵のドラマなんて子供の頃に親と見た大昔の大河ぐらいしか覚えていないけど、いつもはもっと悪い人?なのにこのドラマでの殿様はどうやら運の悪い人。言葉が荒いから浅野の殿様と合わなかっただけだろうか。状況もおそらく吉良の殿様の言っていることのほうが真実。
それなのに街の声は浅野家の側。そのあたりを白竿屋が代表して台詞で言ってる。そのあたり、あの有名な忠臣蔵も、もしかしたら単なる街の集団狂気…いやそれは言い過ぎでも、ある部分では江戸の大衆のマスヒステリアが影響したのかもなどとも思えてくる。ともかく吉良の殿様が次第に追い詰められていくのを、ご本人一人が解っている描写が設定として面白いなと思った。
ともかくこのドラマ、吉良の殿様に限らず全ての登場人物が魅力的に見えるのもすごいなと思う。コメディ要員の伯父さんも、道場の師匠も、白竿屋の兄妹も、…今回は千春さんのダメ兄さえ良く見えてきた。人物それぞれの立場や都合が折り重なった話だからこそ、キャラがしっかりしているとそれだけでドラマになってしまう。面白いです。
千春さんは殿様の隣で小さくなってるのが可愛い。(準主役なのに)こういうお家一大事の場面では、この時代の若い女性らしく慎ましくしているのがとてもいいと思う。毎回着物がとても綺麗。
ダメなボンボンの千春さんのお兄さんは、やっと丹下典膳に「ごめんなさい」が言えてよかったね。それを「もう終わりじゃ」ときっぱりと許す典膳も男らしい。
さて典膳さんは、これで吉良家の側に付くことになったらしい。千春さんの側。堀部安兵衛とは敵同士。次回は文鳥を挟んでの恋話…?