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2013年11月19日火曜日

映画『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜/About Time』:ステキな英国の人々


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About Time2013年)/英/カラー
123分/監督:Richard Curtis
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可愛い佳作…かな?

いい映画です。こういう映画の内容を書いてもあまり意味が無いので、今回はワタクシの英国在住の過去の経験を元に、独断と偏見に満ちた解説を書こうと思います!(あまり需要はなさそうだけど…)


この映画、結構欧米では評価が高いです。監督は英国人のRichard Curtis(リチャード・カーティス)さん。「ブリジット・ジョーンズの日記」とか「ラブ・アクチュアリー」、「ノッティングヒルの恋人」「フォー・ウェディング」などでよく知られた(例の)いつも大ヒットする英国産のFEEL GOOD MOVIE(気持ちのいい映画)の監督・脚本家さんです。

監督であれ脚本家としてであれ、この人の手によるものは全てステキな英国人のお話。みーんないい人だし、意地悪な人は殆どいないし、全員が素晴らしいユーモアのセンスでいつも笑ってて、人情に厚く、負け犬キャラにもみんな優しいし、最後はいつもハッピーエンド 

これで売れないわけが無い…。


ぶっちゃけ、実際の英国ってこの監督さんの映画ほどいい所じゃないです(笑)。特にロンドンなんてみんなケンケンゴーゴーきっついもの。みんな不機嫌でね。人種差別だって、階級差別たって、貧富の差だって露骨に沢山あるし、イジワルなビッチだって、無愛想なウェイトレスだって、冷たい売り子だって沢山沢山いる! ほんとよ。

多くの英国人は外国人なんて大嫌いだし、行くとこ行くとこいろんな場面で自動的にみんな何らかの仕分けをされるし(メンドクセー!)、まず極東のアジア人なんてピラミッドの底辺ですよ(キー チクショー!)。それが現実。


でもね…実はいるんです。いい人、優しい人、可愛いフレンドリーな女の子、ステキな青年、おだやかな老齢の女性、優しいおじさん…そんな人達も英国には沢山いるんです。実は中級以上のホワイトカラーより労働者階級のおっさん達のほうがずーっと紳士的で優しかったりする。基本的にはみんな常識的で真面目だし、可愛く照れ屋だったり、ちょっとぎこちなくてもすごく面白かったり、ほんとに愛すべきラブリーな人達も沢山沢山いるんです英国には。(たまにいる)中の上レベルの30代の恥知らずな勘違いブロンドビッチ(笑)を除けば、地に足のついたステキな人達も英国には沢山いる。これもほんとです。

そんな英国のいい人ばかりを集めて映画を作ったら…なんてステキな映画ができるんでしょう…。ま…これはそんな映画。


イギリス(ロンドン)は10年間も住んで、酸いも甘いもいろんなことを経験したので、この映画が今の英国を100%正確に捉えているなんて決して思いません。

でもね、こういうタイプの映画がどうして何度も何度もあの国で作られるのか…どうして大ヒットするのかは、分かる気もする。英国の人達は、みんな心の中ではああいうおとぎ話のようなステキな英国を望んでいるんです。みんながユーモアに溢れて親切で、人種や階級の差もなく、出会う人全ての人が親切で優しくてフレンドリーでラブリーな…英国。

(そんなおとぎ話とは言いながらも)この映画の脚本の上手いところは、登場人物の台詞の一つ一つやキャラクターが適度にリアルだということ。現実とは違うおとぎ話のような話ではあっても、それぞれの細かな場面では、実際にこんなことあるよね、こんな人いるいる…あるあるな英国が劇中にたくさん出てくるんです。だからついつい見ていると嬉しくてうんうん頷いて笑ってしまう。(あ~イギリス懐かしいな…)


そんな「ステキな英国人ファンタジー」にすっかり魅せられてしまうのは、英国をよく知る観客だけじゃない。かの地に一度も行ったことの無いアメリカ人も、ポーランド人も、オーストラリア人も、イタリア人も、インド人も、日本人も、みーんな同じように「あ~なんてステキな所なんだろう…なんてステキな人達なんだろう…」などと思ってしまう。だから世界中で大ヒット。

そしてもちろん、そんな「憧れの英国人ファンタジー」に世界中で一番うっとりしているのは、当の英国人達なんです。現実よりもずーっとステキな彼らの日常の映画を見て「あ…なんてラブリーなんでしょ…」とみんな喜ぶわけです。実に分かりやすい(笑)。


こういう英国産のラブリーな映画が廃れることはないでしょう。世界中がまだまだチャーミングな「憧れの英国人ファンタジー」を望んでいるんですね。近年アメリカでも、この手の市井の人々の日常を題材にしたFEEL GOOD MOVIEが多いですが、キャラクター達の魅力、適度なリアリズム、ストーリーの質で比べるのなら、こういう英国産のFEEL GOOD MOVIEのほうが10倍ぐらいステキです。アメリカのあの手の映画はどうも大袈裟で薄っぺらで嘘っぽいものが多い。

(個人的に私にとっては)どちらかといえば右から左に気持ちよくなっただけで、あまり記憶には残らないタイプの映画でしたが、とてもいい話です 。登場人物たちもひとりひとりみんなが魅力的。こういう温かく幸せな映画を見て、大いに笑って喜んで興奮してちょっとだけしんみりと泣いてしまうのは、やっぱり素晴らしい王道の娯楽だと思う。

いい映画ですよ。おすすめです