2012年9月19日水曜日

映画『素敵な相棒~フランクじいさんとロボットヘルパー/Robot and Frank』:人は機械を信じられるのか

 
 
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Robot and Frank2012年)/米/カラー
89分/監督; Jake Schreier
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ちょっと物忘れの激しくなった一人暮らしのおじいさん。そこに、別の街に住む息子がロボットを連れてやってくる。老人の世話をするためのコンパニオンロボットらしい。そうこの映画、お年寄りとコンパニオンロボットのお話。高齢化の進む日本でも近い将来介護ロボットなどというものが考えられているのだろうか。非常にリアルな近未来設定かな?ちょっと面白そうだ。予告編の映像で大まかな内容は分かっていたのだが、とりあえずテーマに興味を持って見に行った。


ロボットと人間は永遠にSFのテーマだ。中学生の頃、星新一さんのショートショートを貪るように読んだ。面白かった。特に生死や善悪の判断が出来ない一見イノセントなロボット(機械)のちょっと怖い話が大好きだった。

そんな影響もあってだろうか、私は機械に自分の身体の面倒を見てもらうのは真っ平御免である。私は医療や介護などでは機械を信頼できない。ロボットなんかに介護を頼んだら何かのエラーでとんでもない目にあうのではないかと怖いのである。機械には人の痛みが分からないのだ。マッサージチェアにさえ脚をぎゅーっと挟まれると恐怖を感じる。大変怖い。

一方、ロボットには妙な親しみもある。少なくともSFファンタジーの世界では、ロボットの一途にコマンドに従う様子が、無垢でイノセントなものとして非常に魅力的に描かれていたりもする。そのあたりをうまく料理したアメリカのアニメーション映画『アイアン・ジャイアント(1999年)』には大泣きした。現実にも単純にコマンドに従うロボット=アイボやアシモ君を一途で可愛い(ちょっと可哀相)とも思ったりもする。

老人と介護ロボット。そんな心理劇としても、情緒的、詩的な話としても、哲学の話としても、近未来のリアリズムとしても非常に興味深いテーマ。いくらでもいい話が料理できそうだ。すごくいい話が書けそう。ところがそんな素晴らしいテーマを、この映画は単なるハリウッド娯楽映画に料理してしまった。何のひねりも無い普通の映画。可もなく不可もなく。ロボットは可愛いですけど…。

 
ネタバレ注意

まず第一の問題は、このおじいさんを泥棒などという普通はあり得ない設定にしてしまったこと。物忘れのひどい主人公のお年寄りが、若い頃は凄腕の泥棒だったという設定が話の中心になっているのだが、これでリアルな「老人と介護ロボット」のテーマが台無し。コメディ仕立てなので、老人が泥棒だから悪いと言っているわけではないのだが、まずこのような奇をてらった設定にするだけで、話にリアルさも深みもなくなってしまう。こんなにリアルな近未来をテーマにした大変興味深い設定でありながら、妙な設定を持ってこなければ映画も作れない近年のハリウッドは幼稚。

まずはそこ。その問題が余りにも大きいので、他の小さな問題はどうでもいい。ともかくいろいろと詰めが甘くて、辻褄が合わない話もいくつかあったりして、ちょっと興ざめになってしまった。映画が悪いというよりも、過剰な期待をした私が悪いのだろうと思う。しかし最後に家族全員が美しい環境でにこにこ微笑んでそれで終わりなんてかなりひどい(笑)。観客を馬鹿にしとるのか…。おじいさんが可哀相だ…。


とにかく、素晴らしいテーマだけに非常に残念。こういうテーマの映画は、哲学的なフランス人か、頭でっかちのイギリス人、物にも魂を見ようとする日本人に撮って欲しい。想像できるリアルな近未来は、設定をリアルにすればするほど面白いし考えさせられる。

あ、そういえば、キューブリック&スピルバーグの「A.I (2001年)」などという映画もありましたね。

こういうテーマはもっともっと出てきてもいいと思う。ロボットが人間と戦うような本格SFではなく、近い未来の介護ロボットなどのリアルなテーマ。人間は機械を信じることができるのか。コマンドに従っているだけの可愛いデザインのロボットに本気で感情移入ができるのか。信頼できるのか。感謝出来るのか。友人と呼べるのか。それとも人間は機械に対して、永遠に消えない恐怖感、不信感、不安を持ち続けるのか。もともとあらかじめインプットされたそれらしい言葉だけで、そもそも感情を持たない機械と、人間は(一方通行の)擬似的な信頼関係を「本物」だと信じることが出来るようになるのか…。

またこういうテーマのリアルな映画が見たい。