能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

この度の能登半島地震で 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 一日も早い復興をお祈りいたします。 ★NHK による様々な支援情報 能登半島地震 義援金・支援金の受け付け始まる 窓口まとめ 【随時更新】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/ne...

2023年8月23日水曜日

マウイ島ラハイナ山火事/Maui Lāhainā wildfires・2週間後



文章を書けずにいた。ニュースを見て何も書けなくなった。
自分の心を落ち着けるために記録しておこうと思った。


マウイ島ラハイナの火事は8月8日から始まった。当時ハワイ諸島は、南の海上を通り過ぎつつあったハリケーン・ドラによる強風が吹き荒れ、また諸島の北に起こった高気圧により空気は乾燥していた。

ハワイ諸島には普段からTrade Winds/貿易風が北東から南西に向かって吹いている。湿気を含んだ貿易風は島々の中央にある山に当たって雨を降らせ、その後乾燥した風は島の西に抜ける。ハワイ諸島では、どの島も西側は乾燥していることが多いと聞いている。

ラハイナは島の西側に位置し、普段から乾燥しているところへ今回北の高気圧による極度の乾燥と南のハリケーンによる強風が重なった。乾いた強風がラハイナの町に向かって吹き下ろしていた。突風が電柱を倒し、切れた電線が発火要因だとして現在調査が続いている。


8日から9日にかけて、私は映画の感想文を書いていた。窓の外は強風で、庭のシダの植木鉢が何度も何度も倒れ、その度に鉢を起こしに外に出た。なぜこんなに風が強いのだろうと不思議に思った。その日は文章に没頭していてローカルのTVのニュース番組も見ていなかった。

10日になってニュースを知った。言葉を無くした。ローカルのニュース番組のサイトが救済のための寄付の情報を載せていたのでいくつかに寄付をし、そのページのリンクをここに貼った。それから2週間が過ぎた。


何度か何かを書こうと思ったが言葉が出てこなかった。今もラハイナの状況を考えるだけで苦しくなる。

高気圧で乾燥した空気、たまたま通り過ぎたハリケーンによる強風。空気が極度に乾燥していれば、火事はどこで起きても不思議ではない。私の住む山にも火事が広がる可能性はある。他人事だとは思えない。


ネット上を見ていると様々な情報が飛び交っている。誰でも不安になれば、問題の原因と犯人を捜そうとするのは自然なことなのかもしれない。しかしネットに飛び交う情報は必ずしも正しいものではない。
「レーザービーム」「実験」「不動産開発業者の企て」などの陰謀論。そして様々なチャリティーに対して疑いの目を向ける人々…。 しかしそれらの情報は、実際に現地で苦しんでいる人々の救いにはなっているのか?被災者に更なる不安を与えてはいないだろうか。

犯人捜しと陰謀論。遠方の人々がネット上でそれを追い求めたところで被災者は救われない。今は何よりも苦しんでいる人々の救済を考え、何らかの行動(寄付、ボランティア)をし、また救済活動の現状を知った方がいい。


例えば Red Cross/赤十字。ローカルの支社・American Red Cross of Hawaii のページのリンクからその Facebook を見れば、数時間ごとに現地の救済活動が報告されているのを見ることが出来る。

https://www.facebook.com/HawaiiRedCross/

米国本土から駆けつけた医師の紹介、被災者への医療と精神的サポート、行方不明の家族を見つけるサポート、被災者がシェルターからホテルへ移動したことの報告、今後の救済サポートの情報、各地のシェルターの情報、World Central Kitchen と Common Ground Collective +ローカルのシェフの方々が共同で食事を提供している報告、The Salvation Army との提携でシェルターに食事を届けている報告。様々な物資の供給の報告…等々、沢山の救済活動の様子を見ることが出来る。大勢の方々が日々懸命に救済活動をなさっていることを知ることは大切だと思う。


そして同じ Red Cross の Facebook には、動物の救済活動を行っている Maui Humane Society /マウイ動物愛護協会の情報も報告されている。大量のペットフードが寄付されているとの報告。またそこからのリンクで Maui Humane Society の Facebook を見れば更に沢山の救済活動の様子も読むことができる…ボランティア急募の情報。救い出された火傷を負った子猫のストーリー。

https://www.facebook.com/MauiHumaneSociety

8月18日の午前3時半、マウイ島のシェルターからオレゴン州のシェルターへ 136 匹のペットが送り出された。被災し、発見され、救助されて今も連れ込まれるペットのために現地のシェルターのスペースを空けるためだそう。多くの動物達が他シェルターとの提携により救済されている。


沢山の人々が救済活動をなさっていることを私達は知る必要がある。それを知った上で寄付をするなら納得できる人も多いはずだ。私も一時はネット上でRed Crossに関する疑いの情報を見て不安になったのだが、しかし今は何よりも現地 Red Cross の具体的な救済活動の報告を信じようと思った。


また同じ Red Cross のFacebookには、人々に注意を促す内容も報告されている。
Red Crossの名を使い寄付を募る偽のサイトの存在。
それから
● FEMA/Federal Emergency Management Agency/アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁からの救済を受け取らない被災者達の報告…救済を受ければ「自分の土地を奪われる」との懸念から彼らは救済を受け取らないと言う。…この状況は、まさに巷の「懸念や疑いの噂/陰謀論」が被災者へのスムースな救済を妨げている例。政府は「説明のページ 」を作成してまで人々の不安を取り除こうとしている。その尽力とエネルギーは本来人々の救済のみに使われるべきなのは明らか。



気になっていたことを書いた。まず今はどのような形であれ犯人捜しのための「懸念や疑いの噂/陰謀論」を広めるのはやめたほうがいい。今必要なのは人々の救済。現場の救済活動の情報を集めて判断し、少しでも救いの助けになりたい。

それから救済は長期に渡って必要。緊急の救済活動が終われば Red Cross が現場を離れる時も来る。しかし復興の為には現地への長期のサポートが必要で、そのための寄付も長い間必要になってくる。今だけではなくこれからも継続して現地の情報を集めできることをしていきたいと思う。


2023年8月10日木曜日

マウイ島の火災/Hawaii Wildfires ─ 寄付・支援情報リンク





 寄付・支援情報へのリンクです。


Hawaii News Now ハワイの放送局による様々な支援情報

KITV 4 Island News ハワイの放送局による様々な支援情報

寄付・支援のリスト・記事の中に情報とリンクがあります


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MONETARY DONATIONS

フェイスブックによる最新のレポート


 Hawaii Salvation Army - シェルターでの食料/炊き出し
The Salvation Army - Hawaiian & Pacific Islands
フェイスブックによる最新のレポート


ネイティブ・ハワイアンのサポート
マウイ火災の救済活動のレポート


 Maui Strong Fund (Hawaii Community Foundation)
ハワイ・コミュニティー・ファンデーションによる
マウイ・ストロング基金


 Donate to verified GoFundMe pages
Maui Wildlife Relief Fundraisers


 Aloha United Way (Maui Relief Fund) - 被災者へ直接の援助
アロハ・ユナイテッド・ウェイ

マウイ・ユナイテッド・ウェイ
レポート 


 Maui Food Bank - 食料と日用品
マウイ・フードバンク
レポート


被災者への直接サポート
LĀHAINĀ MAUI FIRE RECOVERY EFFORTS


カトリック信者によるチャリティー救済活動


 Send baby supplies for mothers in need, Baby 2 Baby
赤ちゃんと母親へ


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マウイ・ヒューメイン・ソサイエティ(動物シェルター
 - ペットの捜索、捕獲、救済、一時預かり


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 Red Cross 寄付のページ

Red Cross によるレポート



2023年8月9日水曜日

映画『幼な子われらに生まれ/Dear Etranger』(2017):繊細な心の動き、家族を考える





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『 幼な子われらに生まれ(2017)/日/カラー
/2h 7m/監督:三島有紀子』
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TV Japanでしばらく前に放送されたものを録画していた。やっと鑑賞。
原作は重松清「幼な子われらに生まれ」。脚本は荒井晴彦。監督は三島有紀子。


家族がテーマの映画。ここのところ家族をテーマにしたドラマをいくつか見て感想を書いたのだけれど、また家族がテーマのいい映画に出会った。

脚本が素晴らしい。…冒頭の遊園地で待ち合わせをする父と娘のさりげない会話から状況が明かされる。父と娘…なのに「元気だった?」の言葉。ということはこの二人は一緒に暮らしていない。

そんな風に、主人公の男と彼の家族の状況が少しずつ玉ねぎの皮を剥くように明らかになっていく。「この映画の家族は一般的なパパ、ママ、子供達の構成の家族ではないらしい」…その種明かしが自然で巧み。状況説明の為の不自然な台詞もない。全てが自然。そしてリアル。

構成がうまいのだろう。内容も非常にわかりやすく1度見るだけでほぼ理解できた。家族のメンバー。家族に関わってくる外の人々との関わり。家族の過去と現在…。ストーリーの巧みな構成。印象的な映像の使い方。驚くほどリアルな台詞。そしてあまりにも自然過ぎて、この人物達は現実にいると思わされるような役者さん達の演技とその撮り方。全てが自然だからストーリーに集中し、登場人物それぞれの「心」を考えさせられる。自分だったらどう感じるだろう?自分だったらなんて言うだろう?この人は悪い人じゃない。この人は寂しいんだろう…様々な思いが心に湧き上がる。

多分この家族のストーリーもまた「いろいろあるけれど、それでも家族は進んでいく。彼らはきっと大丈夫」…そのような話だろうと思った。私は家族に希望を見ようとする。色々とあっても家族はきっと「大丈夫」だと信じたい。



★ネタバレ注意


感想を書くよりも、ここにはメインのキャラクター達について思ったことを書こうと思う。この映画のすごいところは、人物の描写が様々な角度からなされていること。 …夫・信のプライドと気落ち、家族のためによかれと努力しながらも家族に怒りを爆発させる様子。妻・奈苗の明るさと子供っぽさが夫をイライラさせる。娘・薫はなぜ父を嫌うのか?信の元妻・友佳の心。奈苗の元夫・沢田の寂しさ…。 人間とは複雑で、人の心の複雑さのすれ違いが人と人の軋轢を生む。また人と人の関係は継続して同じではなく時間と共に変わっていく。その様子がたった2時間の間にリアルに表現されていてすごいと思った。


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あらすじ
バツイチで再婚した家族と幸せに暮らす男。
妻が妊娠したことで家族がギクシャクし始める。
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 田中信(浅野忠信)

主人公。40歳ぐらいか。研究者の前妻と別れ年下の女性と再婚した。彼は元々エリート・サラリーマンだったのだろう。大手企業の本社に勤めていたが左遷され郊外の倉庫に送られた。プライドが傷つけられた。仕事にやる気が出ない。妻が妊娠したがまだ受け入れられずにいる。妻には二人の連れ子。長女は12歳ぐらいか。思春期に入った娘は、妻の妊娠を知ってから反抗し始めた。全力で自分を嫌ってくる。どうすればいいのかわからない。

…まさに彼は Midlife crisis 。仕事は上手くいかない。これから自分の子供が生まれることにも戸惑っている。何よりも妻の連れ子が酷く反抗する。正直なところ(前妻が連れて行った)実の娘の方がかわいいが、しかしそれでも彼はなんとか新しい家族を幸せにしようと頑張ってきた。いい夫、いいパパをやって家族の幸せを願っている。しかしなぜうまくいかない?妻の妊娠が家族に起こした起こしたさざ波。彼はほころび始めた家族をなんとか繋ぎとめようとする。

この人物がリアル。会社で左遷されてプライドが傷つく様子も、40歳を過ぎての妻の妊娠と思春期の娘の反抗に戸惑い思わず声を荒げる様子も。妻の甘える様子に思わずイライラし暴言を吐く様子もあまりにもリアル。主人公・田中信は追い詰められている。彼は真面目な男で、日々必死に頑張っているのに。


 田中奈苗(田中麗奈)
彼女は決して悪くない。かわいい女性。子供がそのまま大人になったような人。多少軽率ではあるけれど素直で明るく無邪気な子供のよう。ところで夫・信の前妻はキャリアを優先した聡明な女性だった。信はなぜ前妻とは正反対の奈苗に惹かれたのか?おそらく信は頭のいい前妻との離婚で疲れていた。信にとって奈苗の笑顔は癒しだったのだろう。奈苗はデートに幼い娘2人を連れてきた。シングルマザーの彼女は苦労している。「結婚しよう」と信が言えば、泣きそうな顔で「ありがとうございます」と言う奈苗はかわいい。信も彼女と幸せになろうと思ったのだろう。 

…それなのに信はそんな奈苗に次第にイライラを募らせる。そして信が奈苗の元夫に会えば、彼も過去に奈苗にイライラさせられたと言う「アパートの窓の灯りを見て帰りたくなくなる。彼女はいつも俺を待っている」…それが嫌になると言う。奈苗はなぜ男達をイライラさせるのか。なぜかわいいだけの女ではいけないのか?彼女にイライラしない男性はきっといるはずなのに。

自分が心を決めて結婚したのに後から妻の人柄に文句を言う信は勝手だと思う。しかしそのあたりもすごくリアル。夫婦あるある。よくある話だと思う。


 田中薫/奈苗の連れ子(南沙良)
長女の薫。小学6年生。彼女は母親の妊娠を知って突然信に反抗しはじめる。母の奈苗が「寂しかったのね」などと言っていたがそうではないと私は思った。

薫は思春期に入ったばかり。ホルモンが急に増えて心も不安定。初めて性を意識し戸惑っている時期。思春期の女の子は(この時期に)父親を嫌うことがある。おそらく一番身近にいる父親の「男性性・男らしさ」に初めて気付いて嫌悪感を感じるからだろう。「パパも男である…汚い、ああ嫌だ」みたいな感覚。それが薫の信に対する反抗の一番の理由だと思った。 

この時期の娘は実の父親にさえ嫌悪感を感じるぐらいなのに、薫の場合はもっと複雑だ。薫にとって家庭にいる父親・信は、①血が繋がっていない他人の男。②その他人の男が母親を妊娠させた…もうそれだけで最悪レベルで耐え難いのだろう。薫は信に説明できないほど猛烈な嫌悪感を感じているのだと思う。そしてその他人の男が家庭で同居しているのは「危険」だから部屋のドアに鍵をかけたいとさえ言う。なるほど。かなりリアルな話ではないかと思った。

薫が実の父・沢田に会いたいと言うのは単なる言い訳。特に実の父に会いたいわけではないのかもしれぬ。本音は他人の男・信が同居しているのが嫌なだけ。気持ちをうまく説明できないから実の父親を持ち出してきたようにも見える。


 友佳・信の元妻・沙織の実母(寺島しのぶ)
彼女は自分勝手に見えた。そして一番興味深い人物。短い時間だが、寺島しのぶさんのすごい芝居。

車の中の二人のこの場面のすごさは、彼女と信のいかにも慣れ合った元夫婦の様子、二人の会話の自然さ。そしてその心地よい雰囲気が、車を止めた後で深刻なものに変わっていく流れ。

(もう女として惹かれるわけではないだろうが)信は友佳とは今でも気さくにいい友人として打ち解けて会話をしている。彼は現妻の奈苗といるよりもリラックスして居心地が良さそうだ。信にとって友佳は年齢も同じ、同レベルの知性、そして二人は若い頃の楽しかった思い出も共有している。離婚はしたけれど顔を見ればすぐに打ち解ける昔の戦友のような前妻。前妻といる時の信のリラックスした様子は見逃せない。

友佳が信に打ち明ける。現在の彼女の夫が癌を患い余命いくばくもないと。信と結婚していた頃、キャリアを優先し家族を持ちたがらなかった友佳。それでも妊娠して娘を生んだが信との夫婦の仲が元に戻ることはなかった。信とは2年間の結婚生活ののち離婚。娘・沙織は友佳が引き取った。その後彼女は同僚と結婚して6年。その夫が病に倒れた。

車を止めて、友佳は信に言う「理由は聞くけど、気持ちを聞かないのね」…この言葉が刺さった。正直私はすぐにその意味が理解できなかった。過去にも「あなたは私の気持ちを聞かなかった」と信を非難するということは、つまり彼女が信に自分の気持ちを伝えてこなかったということだ。

なぜ彼女は自分の気持ちを言わなかったのだろう?過去を振り返り「~をしたときの私の気持ちを考えたことある?」と友佳は言うが、自分の気持ちを言わなかったのは友佳個人の選択だ。信を逆恨みしても信は困る。それとも「私の気持ちを察して欲しい」とは「私のことをもっと構って欲しい」ということか?

なぜ私にこの言葉が刺さったのか?なぜなら私は外国人と結婚しているからだ。私は旦那Aに「気持ちを察してよ」などとは思わない。違う文化圏の外国人で生まれも育ちも違う男の人にわかるわけがないからだ。旦那Aには全部言葉で伝える。文句があったら言う。そしてその理由も必ず言う。議論をする。即物的で色気も素っ気もあったものではない笑。

…長い間そんな風にやってきたから私には友佳の信への「私の気持ちを聞かないのね」は意味がわからなかった。自分の気持ちは自分から正直に言えばいいのに。しかし日本の夫婦は「相手の気持ちを推し量る」ことが「思いやり」でそれが普通なのだ…とあらためて夫婦の関係性の違いを考えさせられた。

そして友佳は信に彼女の人生の「後悔」を語り始める。しかしそれを言われても信は困る。「後悔」を自己の中で大きく認識するかどうかはその人の「ものの考え方」による。自分の選択を肯定して「後悔」をしない人もいる。

友佳は弱っている。信にすがりたい気持ちもわかる。もしこれから信の現妻の妊娠を知ったら彼女はかなり辛いだろうと思う。


 沢田/奈苗の元夫/薫・恵理子の実父(宮藤官九郎)
酷い男。女性や子供に暴力を振るう男はまず論外。しかし彼は自分のことはわかっているらしい。人は一つ崩れてそれをよしとすると、二つ、三つと崩れていく。崩れることに甘んじてどんどん崩れ続ける。この人も奈苗と結婚して子供が出来た頃は幸せで、前向きに生きようとしていたのだろうと思う。しかし彼はあまりにも感情的で衝動的で自分勝手だった。その結果が今の状況。もう生き方を変えようとも思っていないのだろう。しかし彼に関して一場面だけほろりとさせられた。沢田が娘・薫にプレゼントした白いゴリラのぬいぐるみ。その白いゴリラの表情を見てなぜか泣けた。あの少し悲しそうな表情に沢田の寂しさが見えたようで少しだけ悲しくなった。


最後のシーンは幸せなシーン。どうやら薫は千葉の祖母の家に住むことを考えているらしいが、これからそれも変わるかもしれないと思う。薫は家に帰ってくるかもしれない。赤ちゃんが生まれて家庭に幸せな空気が広がる。薫も赤ちゃんがかわいくて抱っこしたりするうちに、今までの不満や怒りも消えるのではないか。この赤ちゃんが家族に幸せを運んでくるのだろう。そして家族はこれからも皆一緒に歩いていくのだと思う。

人の心の表現のリアルな描写に画面にくぎ付けになった。そして色々と考えさせられた。素晴らしい映画でした。



2023年8月4日金曜日

Sans Soucis - Merchants (Sofia Kourtesis Remix)(2023)



不思議な魅力


Sans Soucis - Merchants (Sofia Kourtesis Remix)(2023)
Merchants (Sofia Kourtesis Remix) – Single
Sans Soucis, Sofia Kourtesis
Released: April 5, 2023
A Decca Records Release; ℗ 2023 Giulia Grispino,
under exclusive licence to Universal Music Operations Limited.

Sans Soucis - Merchant (2023) オリジナル ver.
Merchants - Single
Released: January 25, 2023
A Decca Records Release; ℗ 2023 Giulia Grispino,
under exclusive licence to Universal Music Operations Limited.


リミックスが少し前にUKのcommercial pop club chartに入っていた。ロンドン在住のイタリア&コンゴ系のアーティストSans Soucisさん。声がかわいい。リミックスもお洒落でいいが元曲もいい。歌詞が不思議で抽象的。

元曲はシンセの音が80年代風。オーストリアのDJ・CID-RIMさんとの共作。抽象的な歌詞は彼女の英国への移住での経験と戸惑いを表現したもの。英国への移住は彼女を変えたけれど難しい経験で、自身のアイデンティティや自己の属性を考えることになったそう。

彼女の言葉
「Through radical self-preservation I was able to search for my authentic voice as a human being. During this journey, fear, external validation and social alienation have followed me everywhere, but the narrative is changing and it’s good to be able to look at these feelings, understand them, and move on.
徹底的な自己保身を通して、私は人間としての本物の声を探すことができました。その旅の中では、恐れや、外からの評価、社会的な疎外が常に私につきまとっていました。しかし状況は変わりつつあり、これらの感情に向き合って理解し、次に進めたことはいいことでした。」


★Sans Soucis
ロンドン在住のアーティスト。両親はコンゴ人とイタリア人。イタリアで育ち差別に苦しみ、20歳の時に音楽の夢を求めて英国ロンドンに移住。自己のアイデンティティ…複数の文化的、民族的な融合と自己の成長をテーマに曲を書くことが多い。

★CID-RIM
Clemens Bacherさん。オーストリア・ウィーン出身のDJ。欧米やアフリカ各国で活動。ウィーン音楽院でジャズドラムを学んだ。大物アーティストとのコラボ多数。2017年にデビューアルバム「Material」をリリース。

★ Sofia Kourtesis
リミックスを手掛けたペルー人の女性producer、vocalist、DJ。独ベルリン在住。2014年にデビュー。


歌詞は主語もはっきりしない行があったりと抽象的で解りづらいのですが、散りばめられた言葉に彼女の「恐れや疑い、戸惑い」が感じられますね。「dunes in glass bowls/ガラスのボウルの中の砂丘」のところを、旦那Aは「砂時計のことではないか」と言った…青い砂の砂時計は時間が過ぎていくということでしょうか。



Merchants
Sans Soucis
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[Pre-Refrain]
貿易商人
帰ってきた 
私が船乗り
私は決して帰らない
どうしてこの土地に新しいモノを連れてきたの?
そしてテーブルをセットして
裏切りを与えた

  [Refrain]
  気をつけて

  [Verse 1]
  回復力はオンになっている (Hm-mm)
  疑いは常にあって
  衝突は致命的
  恐れることなくいられる人は幸運
  恋は険しい道
  同じ空 新しい夜明け

  [Refrain]
  元に戻して

[Verse 2]
青いインフュージョン
フラッシュバックと 
ガラスのボウルの中の砂丘
粒は少しづつ通り抜けて
リフはぼやけ 太陽は前を射す
私の身体は弱って
高かったけれど 低く目指した
Was high but aimed low
Was high but aimed low

  [Refrain]
  気をつけて

  [Pre-Refrain]
  貿易商人が (Merchant traders)
  帰ってきた 
  私が船乗り (I’m the sailor)
  私は決して帰らない
  どうしてこの土地に新しいモノを連れてきたの?
  そしてテーブルをセットして、
  裏切りを提供した

  [Refrain]
  気をつけて

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Written By: Cid Rim & Sans Soucis


2023年8月3日木曜日

2023年8月2日水曜日

映画『フィールド・オブ・ドリームス/Field of Dreams』(1989):3回見て調べてやっとわかった






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『 Field of Dreams (1989)/米/カラー
/1h 47m/監督:Phil Alden Robinson』
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ここのところ旦那Aが勝手に野球映画を録画して「見ようぜ」と言うことがあってうざかった笑ので、それなら自分から積極的に「野球の映画」を見てみようと考えた。ネット上で「野球名作映画」を検索し、テレビの録画機で作品名を検索をするといくつか出てきたので録画。今いくつかの作品がHDに溜まっている。

というわけで『フィールド・オブ・ドリームス』。有名な映画。私は今回が初めて。前知識はゼロで見た。


1回目:大変混乱した。戸惑った。荒唐無稽? ファンタジーなのはわかった。しかしどうも腑に落ちない。なぜ1919年のホワイトソックス?なぜ作家のテレンス・マン?なぜ無名のアーチー・ムーンライト・グラハム?

2回目:ところどころ飛ばしながら全体を見直した。史実も調べた。そしてやっとわかった。そうか『フィールド・オブ・ドリームス』とは「夢のフィールド、夢実現の野球場」か。(過去に)野球に関わって夢が実現することのなかった人々の「夢」が実現できる球場をケビン・コスナーが作ったという話ですね。2回目で理解した。感動的な話なのもわかったわ。そうかそうか。そうなのか~。

3回目:話の意図を理解したうえで台詞を注意しながらざっと見た。かなり考えて練られている話でした。最後のシーンは内容(以下CONで解説)を理解したうえで見るともっと感動する。いい映画。

主人公はケビン・コスナー演じるアイオワ州の農場経営者 レイ・キンセラ



PROS

Field of Dreams…皆が夢を実現する夢の球場。感動するお話…ということが2回目にやっとわかった。いい話。しかしそれにしても1回目は全然理解できなかった。難しい。突然ケビン・コスナーが聞く「お告げ」は何だろうと思ったし、ホワイトソックスの1919年のブラックソックス事件も全く知らなかった。作家のテレンス・マンの登場とか、アーチー・ムーンライト・グラハムの話も意図がわからず。パパの話も(冒頭に説明があったがすぐに忘れて)意味がわからなかった。だからずいぶん部品がバラバラ飛ぶ映画だと思った。2回目に見てやっと理解した。3回目に見たら巧みに伏線回収がなされていることもわかった。

ところでケビン・コスナーがいい役者さんだと初めて知った。1989年当時、彼は世間で大変な人気の映画スターだったにも関わらず私は彼の作品をあまり見ていなかった。しかしこの映画と、少し前に見た『さよならゲーム』での彼の演技を見て思った…

彼はいい俳優さん。演技が自然。演技に妙な力が入っていなくて自然でいい。オールアメリカンな人好きのする好青年。演技に妙な主張がなく自然で、「普通の人」に見えるのは彼の演技の技だと思う。コスナーさんは映画のストーリーにうまい具合に紛れていて、彼自身よりもキャラクターが前に出る。すごくいい表情をなさいますね。アーチーが夢を叶えた後に見つめるレイの目が本当に優しい。なんと彼の全盛期からもう30年も過ぎてやっと彼がいい役者だと知りました。

映画の最後のシーンは色々と意味がわかったうえで見ると感動する。いい話。この時の二人の表情がまた何とも言えない。ケビン・コスナーはいい役者だ。


★以下超ネタバレ注意・
見ていない人は読むべからず。読むと楽しみと感動がなくなります。




CONSというより様々な考察

文句を言う前に、まずこの映画で知っておいた方がいい1919年の「事件」のことをまとめておこう。

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1919年ブラックソックス事件
当時のホワイトソックスは選手の給料が安く、選手たちの生活は困窮。それでも彼らは野球が強く、その年チームはワールドシリーズまで勝ち残った。相手はシンシナティ・レッズ。ホワイトソックスはそのワールドシリーズでわざと敗退。八百長で、チームの8人の選手は賄賂を受け取っていた。刑事裁判で8人は無罪になったものの、野球界からは追放された。彼らは優勝候補になるくらい強いチームだったので、その後彼らが野球をプレー出来なくなったことを「惜しい」と思うファンも多かった。
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私はこの「事件」が米国野球史上の大事件だったということを今回初めて知った。「事件」の前知識があるのとないのでは、この映画の印象は全く違ってくる。

…ブラックソックス事件で八百長にかかわったとして球界追放になった8名の選手たちは、1919年当時の大スターだった。今の時代ならジャッジに大谷にベッツ、トラウト、アクーニャ Jr. とかそういうクラスの人達だったのだろう。チームで言うならブレーブスやアストロズ辺りか。そのスターチームの8名が事件後に球界から追放になったことで、野球ファンは大変悲しんだ。その記憶は主人公レイ(ケビン・コスナー)の父親ジャックを含む当時の野球ファンの心に深く刻まれていた。

そんな背景があった上で…、
この映画は、レイの作った「フィールド・オブ・ドリームス/夢の球場」にその8名のスターたちがやってくるという感動話…なわけです。

話の背景を知らずに見たものだから最初の私の反応が「だからなに?彼らは誰よ?」だったのは致し方なし。史実を知ったうえで、それからそのチームが昔の野球ファンにとっていかに大きな存在だったのかを知れば感動の度合いも違ってくる。

ファンタジーだから悪いわけではない。ファンタジーの組み立てが粗いと思った。もう少し(件の8名のブラックソックス事件の説明も含めて)ファンタジーの見せ方を丁寧にやってくれればいいのにと思った。前知識なく見て理解しにくかったということは、なにか構成に足りないものがあるのではないかと思った。

全体の意図がわかった上で台詞をよく聞けば、よく練られた脚本だということもよくわかる。何度か見て背景を調べてやっとわかるような映画は悪いのか、それとも噛めば噛むほど感動も増すからいい映画なのか…どちらだろうかと判断に迷う。


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話の流れ
アイオワ州で農場を経営するレイ・キンセラが、
 空から聞こえてきた声(お告げ①)にしたがって農場に野球場を作る。
● レイの野球場に、1919年のブラックソックス事件のホワイトソックスのチームがやってくる。
● (お告げ②)作家テレンス・マンにボストンまで会いに行く。
● (お告げ③)スコアボードで見た名前アーチー・グラハムを探しにミネソタ州に行く。
● アイオワ州の自宅への帰宅途中で若者になったアーチーを拾う。
● レイの野球場での「1919年白靴下のメンバー」にアーチーが加わってプレイ。
● (お告げ④)フィールドにパパがいた。
● (お告げ⑤?)過去の選手達の試合を見に観客がやってくる。農場は救われる。
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叶った夢のまとめ
● シューレス・ジョージャクソンを含む1919年ホワイトソックスのメンバーが再度プレーが出来た。
 アーチー・ムーンライト・グラハムがメジャーでイメージ通りのプレーをする夢を叶える。
 レイの父ジョンはメジャーの選手とプレーする夢が叶った。
 レイは亡くなる前にわかり合えなかった父親と再会。
 世捨て人だったテレンス・マンはまた書くことに喜びを見出す。
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色んな人の夢が叶う話。巧みな伏線回収の脚本はよく練られている。野球をプレーする人にとってMLBでプレーすることがいかにすごいことなのか…野球に思い入れのある人が見ればもっと感動すると思う。


それからもうひとつ。
主人公レイと父親の年齢差にも最初は戸惑った。ベビー・ブーマーのレイの父親がなぜ1919年のチームに思い入れがあるのか不思議に思ったが、この二人の年齢差は映画の冒頭に説明されていた。
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1896年・レイの父親ジョンが生まれる。
1919年「ブラックソックス事件」の時にジョンは23歳。
1935年・ジョン39歳でニューヨークに移住。
1938年・ジョン42歳で結婚。
1952年・ジョン56歳の時に息子レイが生まれる。
1955年・ジョンの妻/レイの母親が死去。
(1970年頃)・父ジョン74歳頃にレイが西海岸の大学へ
1974年にレイ22歳がアンと結婚。
  同年ジョン78歳で死去。
1988年(現在)レイは36歳。
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レイはジョンが56歳の時の子供。ずいぶん年の離れた親子。ジョンはレイに(自分が若かった頃の)昔のスターの話をしていた。それで息子のレイは1919年のホワイト・ソックスのメンバーに馴染みがあった。

56歳の年齢差があったから父と息子は仲たがいをしたかのようにも描かれていた。それは理解できる。レイが17歳の時(1969年)父親に「犯罪人を英雄視する人は尊敬できない」と言ったのも、レイが50年も前の話を理解するのが難しかったからだろう。

しかし一般的なストーリーとしては無理のある年齢設定だと思う。


そして最後に、幽霊プレイヤーを見にやってくる地元の観客は何の疑問も持たないのか?(中西部の保守的田舎町の)彼らはかなり頭が固い人々。そんな町の人々…がすんなりと幽霊のスター選手達を見にやってくるのは不思議。

…色々と文句を書いたけれど、重箱の隅をつついているだけです。



ちょっと前に『大草原の小さな家』の感想で書いたアメリカの中西部の話。この映画の風景…コーン畑の中の素朴な野球場…はイメージそのまんま。いかにも古き良き時代のアメリカ。アメリカの人々にはノスタルジックな浪漫なのだろう。

海亀は20年ほど前に旦那Aとボストンからミネソタ州のミネアポリスまで寄り道をしながら車で旅をした。この映画のレイとテレンスの旅する道と重なるルート。ボストンからミネソタ州の2252 km (1,390.7 mi) は車だと数日間かかる距離。日本だったら…車で札幌から鹿児島までが2241 km (1392 miles)でほぼ同じぐらいの距離。レイはアイオワからボストン、ボストンからミネソタ州、ミネソタ州からアイオワまでとものすごい長距離を走ってます。

現ボストン・レッドソックスのフェンウェイパークのグリーンモンスターの1988年の様子が見れる。

レイの娘カリンちゃんは、今FXのドラマ『Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty』でThe Forum arena のgeneral manager and PresidentのClaire Rothmanを演じているGaby Hoffmannさん。現在41歳。『フィールドオブドリームス』の頃は6歳。


ところでこの映画を発端にして、2021年と2022年にアイオワ州のコーン畑の中の球場で「MLBアット・フィールド・オブ・ドリームス」というイベントが行われたそうです。いいですね。



2023年7月27日木曜日

Mark Knight, Lucas Setto - Get With You Tonight (Sgt Slick Extended Discotizer Mix)(2022)


最高


Mark Knight, Lucas Setto - Get With You Tonight 
(Sgt Slick Extended Discotizer Mix)(2022)
Get With You Tonight (Remixes)
Mark Knight, Lucas Setto
Released: December 2, 2022
℗ Love & Other

バンドとのライブも出てきた いい声
Live Acoustic Mix



先ほど前のページの「Happy Place」をYouTubeで聴いていたらオートで次にこの曲が流れ始めた。よしよしよし好み。メモします。踊れや踊れ。

この曲の入ったリミックス集アルバムは去年11月のリリース。全部で3種類7曲のリミックスがあって全部聴いてみたらこれが一番よかった。短いバージョンもあるのだけれど、これはゴンゴンに踊る曲なのでExtendedを取り上げる。ディスコディスコディスコ。このCHIC風のベースがたまらん。エンドレスでいきましょう。


★Mark Knight
英国の作曲家/ミュージシャン/サウンド・デザイナー。1973年生まれの48歳。もう随分前から有名な方ですね。1989年から活躍中。大御所。

★Lucas Setto
別名Lee Henryさん。ロンドンのHarrow出身のシンガー/ソングライター/record producer。彼はお父様もDJだそうで子供の頃からR & Bやダンスミュージックを聴いて育つ。 2004年に英国でUrban Music Award (UMA) のBest Unsigned Actを受賞。その後Lee Henry名義で大物アーティストに曲を提供。2007年にデビューアルバムをリリース。Lucas Settoの名前では2019年からシングルを6曲リリース。

Sgt Slick 
Andrew Ramanauskasさん。オーストラリア・メルボルンの house music DJ/electronic music producer。時にAndy J や L'TRIC の名前でも知られる。1995年から活動開始。1998年のシングルでARIA Music Awardを受賞。オーストラリアからアジア各地でのライブ、米国に7年間住んだことも。