今回もまずストーリーから。
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●1968年9月15日
新政府軍総攻撃2日目。東北諸藩は次々に降伏している。城内にはもう食料が無い。砲撃の続く中、八重ちゃんの父・権八(松重豊)は食料を確保しに城を出る。
男達は軍議中。米沢藩からの書は会津も降伏するようにとのこと。食料さえあれば…冬になれば…という者もいれば砲撃の凄まじさに「冬まで城がもつとは思えぬ」という者も。(←冬までもってもやっぱり負けると思う、戦力の差が…)
大蔵の妻・登勢の死。そこへたまたまやってきた弟健次郎(勝地涼)を理由なく責める大蔵(玉山鉄二)。もう皆精神的に追い詰められている。それを見る容保公(綾野剛)「秋月…」
夜も砲撃は続く(←すごいです)。八重ちゃん(綾瀬はるか)と尚之助さん(長谷川博己)の会話。「会津は…八重さん、あなたは強い」「そんなら尚之助様もすっかり会津のお国の人だ」「んだなし…」
密命を帯びてひそかに城を抜け出す秋月さん(北村有起哉)を八重ちゃんが護衛。スペンサー銃の7連発。
庄内の新政府軍・薩摩藩陣所では西郷どん(吉川晃司)が「こん犠牲に答えにゃならん…新しかこん国は…」
●9月17日
総攻撃4日目。容保公「何もかも戦で燃やしてしまった。代々築き上げてきた会津の誇りまでも汚した…」そこへ照姫(稲森いずみ)「ご立派なご決断と存じ上げまする」
新政府軍・土佐藩陣所。秋月、土佐藩士達に嬲られながら「急いでくれ。正式に降伏が受け入れられるまで、今藩士達は必死に、今、この時を死ぬ覚悟で皆戦っておるのだ…」その様子を挟んで、城外で戦う官兵衛(中村獅童)の姿、八重ちゃんの父権兵衛が被弾、城への砲撃、子供達も城内で戦っている。(←これらの場面はドキドキしました) そして板垣退助(加藤雅也)登場「降伏の嘆願に来たかい?」
城内に被弾した権八が運び込まれる「米を運んできたぞ。…八重、ぬしゃわしの誇りだ。皆を守れ。」家族に囲まれて権八絶命。
●9月20日
総攻撃7日目。秋月が城へ帰ってくる。降伏の嘆願は受け入れられ城への砲撃がやむ。
●9月21日
女性達へは照姫から降伏の内容が伝えられる。開城・降伏式ののち、殿、大殿は謹慎所へ。15歳に満たぬ者、60を越す者、女性はおかまいなし。藩士達は猪苗代で謹慎。女性達は皆泣く。
男達の中に八重ちゃんも加わっている。容保公「罪は我が一身にある。この上はこの一命をもって会津を、皆の行く末を守る。何があっても生き延びよ…」そこへ八重ちゃん、
「恐れながらお殿様は間違っておいでです。何があってもお殿様には生きていただかねばなりませぬ。私は何度考えてもわからね。天子様のため、公方様のため尽くしてきた会津が、なじょして逆賊と言われねばならぬのか」男達が泣く。「会津の者なら皆知ってる。悔しくてたまんね。死んだ皆様は会津の誇りを守る為に命をつかったのです。どうかそれを無駄にしねえで下さい。ほんとは日本中に言いてえ。会津は逆賊ではねえ。だけんじょ、それを証明できるのは殿様しかいねえのです。だから何があっても生きてくだせえまし。」皆泣く。殿も泣く。
二葉さん(市川実日子)の書けない文字。照姫様が代わりに筆をとる。大きく書いたのは「降参」。無言で落ちる涙。
●9月22日
降伏の白旗が掲げられる。城外では官兵衛が泣きながら崩れ落ちる「わしは認めん、まだ戦える…」
降伏式は城の正面で。その後、容保公は妙国寺にて謹慎。
その夜、八重ちゃんが一人壁に歌を刻む
「あすの夜は 何国のだれかながむらむ なれし御城に 残す月かげ」
母・佐久「明日からどうすんべな…城下は全部焼かれちまったな…」謹慎所へ男達と共に行くつもりの八重ちゃんを母は止める「おまえはたった一人の娘だ」。
●9月23日
女性は皆、城の掃除をする。二葉さん「戦に負けても誇りは失っちゃなんね。綺麗に渡さねば会津のおなごの恥だ。」
鶴ヶ城開城。土足で上がる官軍が磨き上げられた廊下に気付く。
会津の男達が集められている。官兵衛も戻ってくる。皆が民謡を歌い始める。八重ちゃん、尚之助さんに「懐かしいな…祝言の日。あんさまのくれた紅は結局赤すぎてつけていくとこがなかったなし…」すると尚之助さんがいきなり「女だ。女がまぎれているぞ。」引き離される八重ちゃん。部屋を出る男達。硬い表情のまま背を向ける尚之助。(←これが最後なんだろうか…)
城に戻った八重ちゃんが一人。「消えた。何もかも。」一人泣く。「そんじも空は変わらねえのか…」(←八重ちゃんの表情で泣ける)
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はぁ…戦が終わりましたね。今回は編集が良かった。秋月さんが嬲られている時の台詞と、官兵衛や権八、城内の子供達の様子を被せた場面はドキドキしました。
スペンサー銃で7連発を撃ちまくる八重ちゃんもかっこよかった。もうこの際平和とか言ってる場合じゃないもの…このドラマ。戦うなら強いほうがいい。八重ちゃん強いです。
権八さんが亡くなってしまって悲しい。あー…これはこたえる…いいお父さんだったよな…(涙)。こういうあっさりした突然のさよならは後でじんわりとこたえる。
降伏の内容が女性達に伝えられた場面はまるで昭和の「玉音放送」。昔、戦争を体験したうちの家族が終戦当時大泣きしたと言ってました。敗戦ではただ泣くしかない。
それから容保公を囲んだ男達の場面での八重ちゃんの言葉は本当に素晴らしかったです。大河ドラマの歴史に残る名台詞かも。最初は私も正直「また女が出しゃばって…これだから女が主人公の大河は…」などと思いながら見ていたのですが、内容を聞くにつれて気持ちが逆転。感動して泣けました。綾瀬さんが素晴らしい。
女があの時代にああいうことを言うなんて史実としてはあり得ないです。しかしあの彼女の言葉は、他の男の藩士達が言いたくても言えなかった本音ですよね。男達には誇りや意地もあるし、絶対忠誠心から殿に逆らうこともできない。彼らにああいう本音があったとしても「自らの命で責任を取る」と宣言している藩主の前では決して言えないでしょう。ああいうぶしつけな本音(死なないで殿は絶対生きてください)は、窮屈な男の階級社会の外側にいる女の八重ちゃんだからこそ言えたこと。それに八重ちゃんは、自らも一兵士としてバリバリに戦ってきたんで、他の男達にも一目置かれているんですね。だから誰も彼女を止めなかった。むしろ皆一緒になって泣いている。…そしてあの言葉こそ、会津の方々が後世に、世界に向かって言いたかったことだろうと思います。ドラマの脚色だとはいえ、あれを主人公に言わせるとはすごい脚本だと思う。ほんとに感服いたしました。
城を明け渡す前、女性達が城を掃除する場面もいい。立つ鳥跡を濁さず。いいですよね。これは日本人独特の美学じゃないかと思います。外国人には分からないと思う。このドラマはこんな小さな場面がすごくいい。本来「美しい日本」とは、こういう細やかな感性や礼儀、けじめ、人への気遣いや思いやりなど、昔はあたりまえだった日本人独特の美学や美意識のことを言うんだと私は思う。このドラマには今までにも日本らしい美しい場面が数多くありました。今の日本ではこういう美学はまだ生きているんでしょうか。
尚之助さんに止められて、八重ちゃんは謹慎所に行けなくなりましたが、史実では謹慎所に向かう途中で見つかって城に戻されたらしいです。これはいずれにしても無理だったと思う。所詮女は男とは違いますからね。下手すればとんでもないことになりかねない。彼女の身の危険もあるし、他の会津藩士達にも迷惑でしょう。それにしても尚之助さんとはこれきりなんだろうか…。この夫婦が別れるのは実に残念。
ともかく会津戦争は終わりました。これほどまで丁寧に、会津戦争終結までの歴史を会津の視点から描くドラマも少ないだろうと思います。細かなエピソードを、時間を追ってひとつひとつリアルに、臨場感溢れる演出で、尚且つ人物達の心、魂まで再現したこの大河ドラマには、今までになかったほど心を動かされました。感動しました。この歴史の大きな転換期を再現してくださった脚本家の方、NHKのスタッフの方々、出演者の皆様には深くお礼を申し上げたい。今まで全く知らなかった歴史を学ぶことができました。感謝しております。
ともかく一段落です。八重ちゃんマラソンはまだまだ続く…。