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2020年10月13日火曜日

米ドラマSHOWTIME『The Comey Rule』(2020) 全2話:大統領はワンマン社長






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『The Comey Rule』(2020-) TV Mini-Series/米 
/カラー/全2話・210 min 
Based on: A Higher Loyalty by James Comey 
Written and Directed by: Billy Ray 
Original release: September 27, 28, 2020 
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米国発TVのミニシリーズ。放送はケーブルSHOWTIMEにて9月27日、28日の二日間。


実在の人物による回顧録をベースにしたドラマ。著者は元FBI(アメリカ連邦捜査局)長官ジェームズ・コミー/James Comey氏。彼がFBIの長官だった任期は、オバマ政権時2013年9月4日から、トランプ政権に変わって5ヶ月間が過ぎた2017年5月9日まで。 

本来FBI長官の任期は10年にもかかわらず、彼はトランプ大統領に解任された。そして彼が書いた回顧録が『A HIGHER LOYALTY/より高き忠誠・真実と嘘とリーダーシップ』。この本をベースに彼が長官時代にかかわった2つの案件をドラマ化。


普段から政治の細々とした事柄を追っていない私のような者にとってこのドラマは「近年アメリカの政界で何があったのか」の復習/おさらいのようなドラマ。しかしながらこのドラマが、今年2020年の大統領選挙の直前にリリースされるということは、制作の側からの政治的バイアスがあることも知っておくべきだろう。制作の意図に一方的に惑わされないためには、まずこのドラマが

公正なジャーナリストによる事実の再現ドキュメンタリーではなく
既にバイアスのかかっている個人の回顧録を元に作られたものであること
また選挙戦に向けて制作の意図が視聴者の心を一方向に動かそうとするものであること。
そのため制作側の意図で多少事実の歪曲/脚色がされているだろうこと

を知っておく必要がある。最初から人の心を動かす意図で作られたドラマを見て、100%事実だと信じ込むことは避けねばならぬ。あくまでもエンタメとして見るほうがいいのだろう。事実を知りたければ検索して自分で調べればいい。


…というわけで、事実をよく知らない私には批評するのも難しい「実話ベース」の話なのだが、エンタメとして見ればかなりいいドラマ。面白い。脚本も演出も俳優さん達も巧み。素晴らしい。

まずこのドラマの主役、ジェームズ・コミー氏は、本のタイトルが示すように国と任務に「より高き忠誠」を誓った=大統領に従わなかった…善人。FBIのトップとして任務に忠実で、また大勢の部下にとって理想的な上司。皆に尊敬され愛された英雄だ。


彼がかかわった2つの案件とは。 

1. 2016年の大統領選前、クリントン候補の私用メール・アカウント疑惑。
2. トランプ氏が大統領に選出されてから、コミー氏が解任されるまでのやりとり


1話は、クリントン候補のメール疑惑に関して:
まずコミー氏の人となり。彼がFBI長官に任命される前、オバマ大統領がコミー氏と短く会話する。大統領はコミー氏に「あなたが任命されたら、このような会話は不可能になる。(FBIと権力は距離をとるべきだ)」と告げる。コミー氏も同意。彼のFBI長官としての立ち位置を示す。そしてFBIスタッフとの関係の紹介。 
1話の本題は、2016年の選挙直前。一旦7月に閉じたクリントン氏のメール疑惑のケースが、選挙日11日前になって再開されるドタバタ。

2話は、トランプ氏が大統領に選出されてからコミー氏の解任まで:
この2話目がこのドラマの主題。トランプ氏が国の大統領としていかに倫理的に相応しくないのか…をコミー氏とトランプ氏の関係から描く。トランプ氏は大統領になってすぐコミー氏を個人的に呼び出し、(自分にとって都合の悪い)ロシアに関する案件でコミー氏に個人的に「君に私への忠誠を期待する」と指図…大統領によるFBI長官の懐柔の現場を再現。

もちろんコミー氏はトランプ大統領に従わない。その後コミー氏はトランプ氏が大統領になってから5ヶ月で職を解任されることになる。


トランプ氏はどのような人物なのか? 

このドラマで描かれるトランプ氏はまるでマフィアのボス…いやワンマン社長そのまんま。彼は彼のトランプ帝国でのワンマン社長のやり方をそのままホワイトハウスにも持ち込んでいるらしい

能力に関係なく誰でも気に入ればかわいがる。気に入らなければクビ。このお方は、自社内でもそんなやり方を長年ずーっとやってきたのだろう。彼は同じやり方で大統領になってからも自分に都合のいいようにFBIの長官まで自分の意のままに操ろうとする。…きっとそれはコミー氏に対してだけではない。今まで4年間、様々な人々がトランプ大統領から任命され、そしてどんどん辞めていったことはニュースでもよく知られたこと。

トランプ氏がご自分の会社でワンマン社長であることは何の問題もない。しかしもし大統領が同じように振舞えばそれは独裁者と同じ。  

それがこのコミー氏の回顧録の再現で制作者側が伝えたかったことなのだろう。大統領選の直前に「現在の大統領とは基本的な倫理さえ持ち合わせていない人物」なのだとあらためて視聴者に知らしめる。その意図は成功している。役者さんの上手さとともに非常に面白いドラマだった。


分別のあるメディア/批評家は、この「事実を元にした」ドラマがいくつかの不正確さを含んでいる事を見逃さず、そのためプロの批評家によるこのドラマの採点は(ドラマとしての質の高さにもかかわらず)それほど高くはない。Rotten Tomatoesで68/100点。問題はコミー氏が良い人物に描かれすぎているということらしい。

しかしドラマとしてはかなり面白い。コミー氏のJeff Daniels氏、それからトランプ大統領を演じたBrendan Gleeson氏も素晴らしい。特に脚本のトランプ氏の言動がよく再現できているのが面白い。そして大変恐ろしい。


…最後に告げられる事実。クリントン氏メール疑惑の1話で描かれたFBIの捜査官たちは、トランプ氏が大統領になってから4年後の現在、誰一人も残ってない。アメリカ国民はそれがどういう意味なのかを考えるべきだろう。


私はアメリカの政治に関して一定の距離を置いて見ようとしているのだけれど、今のトランプ政権の謎を知るには、まずトランプ氏御本人の事を知るのが一番。

変わり者…あれほどの珍しいタイプの人物がどういうわけで大統領になっているのか? どういうわけで彼を支持したい人々がいるのか…を知ることは、今のアメリカの現状を知る上でのキーとなる。あるべき理想と個人の私利私欲が入り乱れたアメリカの政界。事実は小説よりも奇なり。これからも観察していく。

さて今回の大統領選はどうなるか?私には未だにどちらが勝つのかわからない。トランプさんはもう辞めたほうがいいよなぁ。トランプ氏は変人なのでどうにもならないのだけれど、彼を支持する人々が現実的にとても恐ろしいです。なんとかまともなリーダーが選ばれてほしい。