さてサナダマール3回目どう?
面白くなってきた。ドラマとして面白い。これはいけます。この回で「この大河は昔のドラマみたいに落ち着いて見られるな」と思いました。ドラマに流れる基本の思想が今回で見えた。これなら大丈夫。
だって今までね、ここ近年脚本なのか演出なのか…ドラマに流れる思想があまりにもモダンすぎて、浅すぎて、いや思想が存在しなかったりして、全く落ち着いて見ていられない大河が多かったんですよ。
思想があったのは『八重の桜』の前半。あのドラマは鶴ヶ城が落ちるまでは、話に一定の思想がありました。だからあのドラマの前半は落ち着いて見れた。
じゃあ思想思想って何?「ドラマで何を見せたいのか、通す筋があるのか」ということ。基本の思想の筋が通ってさえいれば、ストーリー上の多少の脱線は許される。コメディやお遊びもOK.いい大河とはそういうものだと思います。
今回一番強調されていたのは「長男を立てる…ヒエラルキーを守る」ということ。要は「家」を守る為に家族の中の上下がはっきりしている。秩序が乱れないように順番を守る。ボスは誰かをはっきりさせるということ。それが今回の主題。
実際にはこういう「長男第一」なルールって、本当は江戸時代に出来た思想だろうと思うんですけど、これ昭和の価値観でもあるんですよ。だから私の世代には非常に落ち着ける話。今回(草刈)昌幸パパの弟の叔父さんと信繁の会話や(大泉)お兄ちゃんの話に、そのテーマが繰り返し出てきました。今日のタイトルは「策略」なんだけど、裏タイトルは「長男」です。
その台詞を抜粋。
(草刈)昌幸パパの叔父・矢沢頼綱「一族の棟梁であるそなたに従うのみ。」
軍議が始まっても弟の(堺)信繁は「私は呼ばれていない。次男坊とはそういうものだ。」
信尹叔父さんと信繁の会話
信尹「兄上が覚悟を持って決めたこと。わしはあの人の手足となり、あの人の思いをかなえるだけじゃ。」
信繁「叔父上はいつも父上の影におられます。叔父上は私の鑑(かがみ)とするお方です。私も兄上にとってそんな弟でありたいと思います。」
そして信長に会う昌幸パパが、家に残る長男信幸へ
「お前は嫡男だ。お前を残すのはもしものため、わしらに何かあった時はお前が真田を率いていくのじゃ。あとは託したぞ源三郎」
棟梁、長男、嫡男、次男坊…こういう家族内の序列を表す言葉が何度も出てくる。
こういう言葉で、真田が真田の家を守る為にどういう思想をもっているのか…というのがはっきりと見えますね。これから1年後、このドラマの最後は信幸が残って信繁が死ぬわけなんだけど、この回の「長男を立てる」が後で活きてくるんだろうと思います。きっと私は泣くと思う。
要は「家を守る」という思想。「家」さえ守れば時代を生き残っていける。この思想は戦国の世にもあったし、江戸時代、明治、大正、昭和と続いてきた思想なんですよ。武家とはそういうものだった。これが日本の歴史の中で初めて壊れ始めたのが…40年ぐらい前なんだろうと思う。今は本当に壊れてしまって影も形もない。だから2016年にこういう事柄が大河ドラマで描かれるのは本当に嬉しい。このドラマに昔の大河ドラマの匂いがするのはそのあたりなんだろうと思います。大河ドラマはこういうことの筋さえ通っていればいい。
そうなのよ。なにがなんでも「家」を存続させる。長男を立てる。嫡男優先。男子優先。目上の人を敬う。上司の命令は絶対。結婚は個人の感情よりも家と家の繋がりが重視される。女は政治の駒。女は男子を生んでこそ…こういう昔のルールが大河ドラマに描かれるとほっとする。
というわけで今日は(大泉)お兄ちゃんが主役でした。よかったです。もうお兄ちゃん応援しますよ。真正直で実直。融通が利かない。機転も利かないのかなぁ…真面目すぎて人として面白い人ではないですよね。ものすごく不器用。だけどいい人で誠実なのね。それに比べて弟は利巧で柔軟で要領がいい。こういう兄弟は今でもよくいるでしょう?
信幸といえばつい渡瀬恒彦さんと比べてしまうんだけど、この(大泉)お兄ちゃんはこれでいい。不器用で真面目なお兄ちゃんが成長して、後に立派な真田の棟梁になっていくのを見たら私は泣くと思う。がんばれよぉ。
この兄弟の描き方を見ても、家康のキョドり具合を見ても、このドラマは普通の人達を描こうとしてますよね。みんな普通の人。最初からスターじゃない。今現在の家康なんて小物じゃないですか。紋切り型のキャラ設定ではなく、それなりにリアルな普通の人達なんですよ。だからキャラに感情移入しやすいし人のドラマとして面白い。
それからもう一つ。このドラマは全体の雰囲気は一見軽いんだけれど、時代の厳しさもちゃんと描かれてます。
(草笛)お婆ちゃんの小山田茂誠に対しての言葉「(彼は)死んでますね。生きていたとしても小山田一族は裏切り者。ここへ戻ってこられるわけはありません」。
(草刈)昌幸「人は皆おのれの欲のために動くのじゃ」
逃げてきた姉の夫・小山田茂誠を見た信幸は彼をその場で斬ろうとする。
村の民は戦で自分達の森が荒れれば、隣村に盗みに来る。
高遠城では敵の自害の後も生々しい。
こういう場面でピリッとスパイスを利かせてくれれば、何も毎回刀を振り回して血糊まみれにならなくてもいいんですよ。言葉だけでも戦国って厳しいなと思える。
その他気になったこと
長澤まさみさんはあちゃ~これはいかん。現代語のはねっかえり?たぶんまだ13,4歳ぐらいの設定だからなんですかね。でも女優さんは大人だから正直うざいですね。(黒木華)梅ちゃんのほうが可愛い…力持ち。さて斬られなかった佐助の血はどうして出たのだ?(木村)お姉ちゃんの現代語もちとうざいの。信幸の病弱な奥さんは小松殿じゃないのね…誰? 信長は綺麗好きだそうだ…納得。家康さんは本多忠勝さんがケムたいの?
次回も楽しみですね。