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『MUD(2012年)/米/カラー
/130分/監督:Jeff Nichols』
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また眠りそうになった…。
この映画を見に行った理由はただ一つ。それは批評家達にも(芸術映画好きな)一般にも、ものすごく高評価だったから。
元々話の設定には全く興味がなかったんです。だってまたアメリカの田舎の話。それもお家の無い人=MUD(泥)さん=小汚いマシュー・マコノヒーが主役。いくら可愛い子供二人を連れてきても、そもそも「スタンド・バイ・ミー」の焼き直し感は否めない、いかがなもんかと思ってました。
劇場で公開になってからもう数週間経っているのだけど、他の映画を見ようとするたびにこの映画が目に留まる。というのもこの映画、映画館でのチラシもポスターも、ネットの評価サイトでもことごとく高評価。映画データベースサイトでは10点満点中7.9点。Rotten Tomatoでは100点満点でなんと98点。
最初は興味を示さなかった旦那Aも、「ハックルベリー・フィンを髣髴とさせる…」というどこかの批評家の文を呼んで興味を持ち始めたらしく、それならとりあえず(あまり期待せずに)見に行こうか…ということになった。
以下、よかった点。
二人の男の子、エリス君(Tye Sheridan)とネックボーン君(Jacob Lofland)が可愛いです。14歳の設定なのに、まだ声変わりもしてない子供。特にエリス君がいい。与えられた脚本を丁寧に演じてて若い役者さんとして素晴らしいと思う。青い目のちょっとくせのある顔もいい。
MUDさん=マシュー・マコノヒーが、『バーニー/Bernie』に続いて訛りの強い田舎の兄ちゃんを演じてます。まあいろいろと問題のある人物設定なんですが、俳優としては上手く演じてるんだろうと思う。義歯を入れてるのか歯並びも悪い。とにかく全編にわたって小汚いです。昔は顔の綺麗なチャラい軟派男をやると最高にはまる人でしたが、どうも泥臭い役をやって軽薄なイメージを変えようとしてるっぽい。そうなのかな…。
エリス君のお父さん。全く知らない俳優さん。普段はダメ親父っぽいけどエリス君をガンガンに叱る一場面「オレは泥棒を育てた覚えはねぇ!」にはぐっときた。こういう場面で人物に惹き付けられる。
なんとMUDさんのお父さんがサム・シェパードでした。うひゃー年取ったな…唖然。昔から評価の高い知性派だとは知っているけど、私はどうもこの人の泥臭い感じがあまり好きじゃないです。けど久しぶりに見たんでちょっとビックリした。
河の景色、林、自然が綺麗。音楽もあまりなくて静かなので全体の雰囲気は悪くない。寂れた田舎を趣を持たせて撮ってる。いかにも芸術枠の映画という感じ。これ見よがしにドラマを盛り立てる様な演出が無いのはいいことなのかも。
ネタバレ注意
さてそれでは、なんで寝そうになったのか…?
たいくつなんです。2時間以上もあるのに、最初の1時間半はほとんど何も起こらない。少年2人がMUDさんに出会って、少しずつ謎が解けていくんだけどペースが超遅い。MUDさんの目的を助けるために、2人がいそいそと必要なパーツを集めてくるだけ。
特にキャラクターの掘り下げも無いし、話が積み重なっていく感じも無い。マコノヒーさんはいつまでたっても小汚いまんま。子供が引き寄せられるほどのミステリアスな魅力もこの人物には感じられない。
一番の問題はそこ。MUDさんに徹底的に魅力が無い事。子供を(観客を)ドキドキさせるような魅力が無い。この話の中心の謎の人物を知るための情報があまりにも少なすぎる。最後の最後まで彼が何者なのかも分からない。だから子供がどうして彼に惹かれるのかも不明。結局どーでもいい話に思えてしまう。俳優さんの罪ではなくて人物描写の薄い脚本と演出のせいだろうと思う。
話の中のいろんな謎も最後まで解けることはない。設定も甘い。もし彼が目的を達成したとしても、じゃあその後どうするんだ? お父さんとの関係は? 彼女との関係は? どうして彼女のことが一方的に忘れられないのだ? 彼女も彼の事を忘れられないみたいだけど、彼の何がそんなにいいのだ? 彼はいったい何者なのだ? もし彼女と一緒になれたらその後の生活はどうする? お金は? 銀行の口座を持ってるのかしら? それともヒモにでもなるつもり…?
そんなわけで私のような頭の固い現実的な人間には、こういう映画のよさはさっぱり分からん。こういう設定(社会からはみ出した自由な男)にはロマンを感じられないんだな。「ハックルベリー・フィン」との繋がりも疑問。この私達の住む現代の設定で、アメリカで罪を犯して逃げ続ける男のキャラクターに説得力を持たせるには、もっと踏み込んで人物描写、環境設定をやらないと嘘っぽくなってしまう(←これは旦那Aの意見)。説得力の無い設定で話が進むから、ちっとも話に食いつけない。面白くない。ツマンナイ。
1時間半も状況説明も人物描写も満足になされずに、だらだらと話を引き摺って、最後の最後にいきなり銃撃戦が始まったときには、もうこらえきれずに大笑い。だってサム・シェパード父ちゃんが河の向こう岸から急にバンバン撃ってくるんだもの。ぎゃはははははははは。それがまたすこい命中率!ありえねー!この監督いったい何を考えとるんだろう。大笑い。サム・シェパードさんはそういうキャラクターなのか…??
結局、ちょっと雰囲気が良くて思わせぶりな設定、「スタンド・バイ・ミー」とか「ハックルベリー・フィン」なんかに似ているように見えて、実はたいした冒険も起こらない。2人の子供が可愛くてちょっと演技が上手ければ、それだけでアメリカの大衆は喜ぶ。マシュー・マコノヒーも泥臭い演技が上手いけど、人物描写はほとんど無い。それでも脱げばいい身体 ❤。サム・シェパード爺が出てくれば、急に芸術映画っぽく見えてくるけどあまり中身は無い。最後はライフルをバンバン撃ち合えはみんな気持ちすっきり。冒険が終わって子供達も新生活を始めるし、マコノヒーも無事シェパード父ちゃんと分かり合えたみたいで良かったね…という安易な結末。だけどあれで逃げおおせると思わないけどな…。
とにかく、こういう自由なサバイバル男にロマンを見出せない私のような者には、ことごとく退屈な映画でございました。それよりも、もうアメリカはさっさと銃規制をしたほうがいいんじゃね…と本気で思った。
My name is Mud..... ♪