能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

この度の能登半島地震で 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 一日も早い復興をお祈りいたします。 ★NHK による様々な支援情報 能登半島地震 義援金・支援金の受け付け始まる 窓口まとめ 【随時更新】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/ne...

2021年3月18日木曜日

映画『若草の頃/Meet Me in St. Louis』(1944):豪華なおとぎ話・輝くジュディさん





-----------------------------------------------------------------------------
『Meet Me in St. Louis(1944年)/米/カラー
/113分/監督:Vincente Minnelli』
-----------------------------------------------------------------------------



去年の年末にテレビを録画。年末に1度見て、昨日再度鑑賞。1944年の映画。ジュディ・ガーランド主演のクラシック。


1903年のミズーリ州セントルイスの家族=スミス家の1年を、ティーンの次女のエスター(ジュディ・ガーランド)を中心に描く。登場人物はエスターと3姉妹、兄、弁護士の父、主婦の母、祖父、家政婦、そして隣人のジョンと数名の町の人々。

裕福な中流階級の家族の1年を4つのパートに分け、それぞれの季節のシーンを描いて構成。特に大きな事件もなく、ティーンの女の子の恋話や、隣人とのやりとり、末っ子のハロウィーンの冒険、クリスマスの舞踏会などの家族の日常がきらびやかに描かれる。


フェアリーテールですねこれは。おとぎ話。時代は1903年。お父さんは弁護士。お城のような豪邸に住む美しい家族。5人の子供達と両親に祖父、そこに住み込みの家政婦を加えて9人がこの豪邸に住んでいる。さて1903年当時、現実にセントルイス市で弁護士の家族がこれだけ豊かな生活が出来たのだろうかと多少疑問には思うけれど、いやそんなリアリティは求められていないのですよね。

1944年と言えば第二次世界大戦の真っ只中。この映画は、戦争で空気も重苦しかった時代に、アメリカの国民が少しでも現実を忘れて…ありえないほど美しくゴージャスな家族の日常を描いた…フェアリーテール/おとぎ話を楽しめるようにと制作されたのだろう。華やかな美しい色彩に。美しい人々、美しい調度品、カラフルな衣装、何から何までが美しい贅沢なファミリー映画。本当の意味での映画の魔法…現実逃避のための映画だったのだろうと思った。


★ネタバレ注意

主演のジュディー・ガーランドは当時22歳。すでに大女優の風格。この映画で彼女が演じているのは16歳ぐらいの女の子。彼女は小柄で身長が151cmなこともあって実際可愛らしいのだけれど、時々ふと大人の顔になる。少女のようでありながら30歳を過ぎた大人の女にも見える。不思議なカリスマ。

ジュディさんは声が特殊。話す声は可愛いのに、歌い始めると急に成熟した大人の女の声になる。不思議です。特殊。彼女のカリスマの真似は簡単には出来ないと思う。本当に特殊なお方。

ジュディさんは1939年の『オズの魔法使い』で17歳でスターになり、その後も主演で何本もアイドル映画を撮っていて、この映画では既に大女優の佇まい。表情豊か。コミカルな演技も可愛い。

隣人のジョンに家のパーティーで始めて会うシーン。実は以前からず~っと彼に片思いしていたのに、初めて兄に紹介されると「お名前がわかりませんでしたわ」「あらこちらにお住まい?」などととぼける。
トロリーにジョンが来ないからとふてくされてるのに、ジョンが遅れてやってきたと知ると嬉しさで顔が輝き始める。散々嬉しそうに歌っていたのに、ジョンが隣に座れば微妙に困惑した顔。
ハロウィーンの日、誤解をしてジョンの家に殴りこみ。いきなりパンチを数発。その後の初めてのキスの後、うちに帰ってきてからの夢心地の表情。時々にやにやして心もそぞろ。目が泳ぐのがおかしい。
そしてクリスマスの舞踏会の前、姉との寝室のシーン。コルセットを締めた後の表情。コメディエンヌなのね。本当に表情豊か。
最後のジョンとの戸外でのシーン。ジュディさんの横顔が美しい。
そして妹と窓辺で歌う「Have Yourself a Merry Little Christmas」。その目が見つめる先に何があるのだろうと思わせられる独特の表情。22歳とは思えない。このシーンを見ると涙が出ます。

彼女は22歳にして大女優。この映画の監督はヴィンセント・ミネリ。1945年にジュディさんは彼と結婚。生まれた娘さんがライザ・ミネリ。この映画の頃に、二人が恋仲になっていたのかどうかはわからないけれど、ミネリ氏がジュディさんを一番綺麗に撮ろうとしていたのはよくわかる。ジュディさんは輝いてます。


それにしてもこの映画が1944年に撮られたという事実に驚く。カラーで大変美しい。衣装デザインこそ(1903年当時を再現して)古いのだろうけれど、出てくる人々の様子は現代とそれほど変わらない。言葉づかいも少し丁寧だけれど、今とそれほど違っているようにも思えない。表情豊かに輝くエスター、妹のトゥーティはお転婆だし、声が大きく元気のいいお父さん、おすましの美人の姉ローズや、穏やかな隣人のジョンの佇まいも、それほど古く感じないのは不思議。特にお爺ちゃんの紳士ぶりとその言葉づかいのモダンで自然な感じは…例えば彼がこの21世紀に旦那Aの家族に紛れていても不自然に感じないだろうと思うほど。
 

このお爺ちゃんを演じたハリー・ダヴェンポートさんは、1944年当時は78歳。彼の生まれた年は1866年! 日本人にわかりやすく言うなら1867年は「大政奉還」の年。なんと彼は日本の江戸時代に生まれたお方なのですよ。びっくり。

そのお爺ちゃんは、エスターが「クリスマスの舞踏会に行けない」と泣けば「私がつれていってあげよう」と言う…ティーンの孫娘を舞踏会に連れて行く素敵なお爺ちゃん。舞踏会の会場で美人のルシルさんに「お爺様大好き」と言われれば「若者は何時間でもあなたとお話ししたいと思いますよ」とスマートにこなし、またエスターが残念な男の子達とのダンスに疲れたら、かっこよく助け出してくれる。そして会場に現れた隣人ジョンを見つければ、踊りながらエスターをジョンの元に届ける。かっこいい紳士的なお爺ちゃん。最高。

スミス家のコミカルで優しいお爺ちゃん…かっこいい紳士的なお爺ちゃんは日本の江戸時代生まれ。その事実に驚く。ああ…この映画は歴史上の時代の人々をカラーの映像で残している映画でもあるのですね。


そういえばスミス家の屋内のライトはガス灯。最後の万国博覧会でのライトアップされた建物を皆で見て喜ぶシーンは、電気のライトが珍しかったからだそうだ。


この映画を…ひねりも毒も何もない、砂糖菓子のような綺麗ごとばかりの昔のハリウッド映画…だと捉えるのなら、それもまた事実だろう。この映画は…例えば70年代の映画のように…人の心理をリアルに掘り下げた映画でもなければ現実を描いた映画でもない。ただの夢物語。しかしその夢物語の後ろには、様々なストーリーがある。「美しい日常を描いた映画」は大戦中の人々の「現実逃避の映画」でもあった。

ほぼ2時間の大作。豪華絢爛。美しく上手い俳優たち。軽快な歌の数々。今の時代にも違和感のないユーモアと家族愛。どれをとってもこの映画が、今から77年も前に制作されたとは思えない。ものすごい偉業だと思います。

昔のハリウッドって本当にすごかったんだね…と思わずにはいられない。そんな映画。そしてその主演で輝く22歳の大女優、ジュディ・ガーランドさん。溜息。すごい映画です。






2021年3月16日火曜日

お猫様H:時間が過ぎるのが早いぞ



んむむ…
もう3月半ば。
最近は日々の過ぎるのが早すぎて、
頭でうまくプロセスできない。
ここのところ猫さんの写真も撮ってなかった
これは2月の写真





2021年3月15日月曜日

Lake Street Dive – Hypotheticals (2021)



いいね



Lake Street Dive – Hypotheticals (2021)
Album: Obviously
Released: March 12, 2021
℗ 2021 NONESUCH RECORDS INC. FOR THE UNITED STATES 
AND WEA INTERNATIONAL INC. FOR 
THE WORLD OUTSIDE THE UNITED STATES.



先週『The Late Show with Stephen Colbert』に出て来たバンド。大人のポップス。ちゃんとメロディーがあってポップ。そう。この曲にはメロディがある。いいことだ。リズムが軽くてお洒落。軽快。

バンドはLake Street Dive。このバンドのことは聞いた事がなかった。2004年に結成されたマルチなジャンルのバンドだそうだ。メンバーは

 Rachael Price – lead vocals, ukulele, guitar
 Mike "McDuck" Olson – trumpet, guitar, piano, organ, vocals
 Bridget Kearney – acoustic bass, electric bass, piano, vocals
 Mike Calabrese – drums, organ, vocals
 Akie Bermiss – keyboards, organ, vocals


ニューヨークのブルックリンをベースに活躍中。上手いバンド。メンバーの多くは家族がミュージシャンだったりしたことから、皆子供の頃よりクラシック音楽をやっていて、音楽の興味がジャズに移行した頃に出会った仲間らしい。60年代のジャズやソウル、ロックから影響を受けているそう。

このスタジオライブの様子では、全員が歌えるのね。上手い。楽しそう。これは実力派のバンドだな。

ルックスもみんな大人。ボーカルのレイチェルさんは髪型のせいか70年代の女性ボーカリストを思い出す。カーリー・サイモンとか。彼女はいい声。バンドのコーラスも心地良い。おちついた大人が余裕でやる音楽。いいですねぇ。

この曲が入った新しいアルバム『Obviously』は3月12日にリリースされたばかり。ほやほやです。


Hypotheticals

Lake Street Dive
--------------------------------------------------------

明らかに、私達、何かが始まりそう
これからどうなるか あなたが知っているとは思わない
でも私達 何かあると思う
あなたにも知ってほしいと思った

いろいろと仮説を立てているの
あなたの名前を私の名前の横に書いて
あなたと私が一緒にできることを想像してる
夢で全ての可能性を見たの
あなたは一人 私の横で暮らすべき時
ベイビー もう様子をうかがうのはやめましょう

早急な行動は必要ないけど
これは危険な魅惑、ちょっと怖いくらい
でも攻撃のプランがあるわ
私達をいつかそこに連れて行くつもり わかってる
プランAとプランBがあって
それにもしどうしても必要なら プランCにも行ける
何をやっても あなたと一緒にいられるなら

いろいろと仮説を立てているの
あなたの名前を私の名前の横に書いて
あなたと私が一緒にできることを想像してる
夢で全ての可能性を見たの
あなたは一人 私のそばで暮らすべき時
ベイビー もう様子を見るのはやめましょう

誰も未来のことはわからない
天気予報士も時々雨に降られるでしょ
でもあなたの中に 今まで見たこともないものが見えるの
確かじゃないかも 違う 違うかも
でも試して見る価値はあると思う

仮説は イエス
理論的には 永遠
何が起こるか見ましょう
でも私たち決して別れないといいわね

(repeat)

いろいろと仮説を立てているの
(仮説を立ててる)
あなたの名前を私の名前の横に書いて
(あなたの名前を私の名前の横に書いて)
あなたと私が一緒にできることを想像してる
夢で全ての可能性を見たの(全ての可能性)
あなたは一人 私のそばで暮らすべき時
ベイビー もう様子を見るのはやめましょう

--------------------------------------------------------
Source: Musixmatch
Songwriters: Mike Elizondo / Michael Daniel Calabrese / Bridget Kearney / Rachel Claire Price / Mike S Olson / Aamir Bermiss
Hypotheticals lyrics © Kearnabreezin Tunes, 17 Lake Street Music, Simma Da Na Music, Baby Uncle Music, Akie Bermiss Music



ブラック・サバスのギーザー・バトラー氏が「WAP」はいかんよ!と吼えるわけだ・同感です 私も年寄りだから苦笑



昨日グラミー賞を久しぶりに見てみた。何か見たいものがあったわけでもなくたまたまやってるのに気付いたから見たというだけなのですけど、

ん~…世の中間違ってますよねぇ。


「WAP」はいかんだろう「WAP」は。いやいやいいですよ。表現の自由ですね。アーティストの方々はアートの表現を好きになさって結構ですし、露骨な歌詞を変更してまでグラミー賞のステージでパフォーマンスをするのも結構。しかし私個人的には、

嫌いですよ。下品極まりない。好きになる要素もゼロ。アイデアも捻りもなにもないただの不快なゴミ。最低。こういうのがうける世の中も困ったものだと思う。世も末。



私がこの曲を最初に見たのは去年の夏の頃の『The Late Late Show with James Corden』だったと思う。コーデン君はあの調子でゲラゲラ笑ってるし、まぁキワモノの冗談ソングだと思ってました。ところがこの曲、大ヒット曲らしいのですね。まじですか? それだけでなく、この曲は「女性を元気にする曲」だとかで評判なのだそうだ。

おまけに…今のアメリカは妙なことになっていて…どうやらこの曲を否定すると、一発で頭の固いキリスト教徒の保守主義者になってしまうらしいのだ。え~わたし平均的な普通の人。少しリベラル寄りだけれど常識的な大人のつもり。キリスト教徒でもない。

しかし今、自由を愛する者は皆この曲を温かく受け入れるのが普通らしいぞ。まじですか?


こんなもん何がいいのだ?女性を元気づける?本当ですか? むしろこういうものを賛辞しなければならない空気の方が異常だと私は思うが。 例えば家族の集うディナーテーブルで、10歳の女の子と75歳のお婆ちゃんの前で、自由に露骨なエロ話ができる世の中になることが女性を元気にしていると言えるのか? ヒットソングとはそういう影響力があるものですよね。

まぁいいんだけどさ。私も年寄りだから。わからんね。今の流行り。私が何のことを言っているのか「WAP」のことをご存知ない方は検索を。おすすめしません。

というわけで今の世の中で、誰かこれに文句を言うまともな人はいないかと探したら、ブラック・サバスのベーシストが常識的な意見をおっしゃっていた。正しい。彼がまとも。大人です。というわけでこの『NME』誌の記事は既にプロの翻訳で日本語の記事になっているのですが、個人的に記録に残したかったので私の和訳。去年の11月の記事。


------------------------------------------------------------ 
元記事はこれ
------------------------------------------------------------



Black Sabbath’s Geezer Butler on ‘WAP’: “Cardi B pisses me off with that ‘WAP’ song. It’s disgusting!”

"Then again, I'm 71. A bloody old goat"

ブラック・サバスのギーザー・バトラーが「WAP」について:「カーディBはあの「WAP」で俺を苛立たせる!最低だぜ!
だけど俺は71歳の老いぼれジジイだからさ

By Sam Moore
10th November 2020


Black Sabbath‘s Geezer Butler has criticised Cardi B and Megan Thee Stallion‘s collaborative hit single ‘WAP’, saying that Cardi “pisses me off” with the “disgusting” song.
ブラック・サバスのギーザー・バトラーが、カーディ・Bとミーガン・ジー・スタリオンのコラボのヒットシングル「WAP」を批判。カーディは俺をあの「卑猥な歌」で苛立たせる…と言う。

「WAP」は8月のリリースから2020年の最大のヒット曲となった。全米シングル曲の、初週でのストリーミング数で歴代最大数を記録し、米国と英国で1位に到達。またこの曲は女性に力を与えるメッセージを送っていると賛辞を贈られている。

しかしながらブラック・サバスのベーシストのバトラー氏は『Kerrang!』の新しいインタビューで彼の個人的な不服を述べた…彼は、先月再リリースされた1997年の彼のソロ・アルバム『Black Science』の曲「Unspeakable Elvis」について話していた。

「つまり新しい音楽が出てくれば、どんなものでも悪魔の音楽だと見られるということだね」バトラー氏は「Unspeakable Elvis」の歌詞について説明した。「エルビス・プレスリーが出てきた時のことを覚えてるよ。皆彼のことをサタンだと言っていた。そして60年代70年代になったら、彼はアメリカの国宝になったんだよ」

「新しい音楽の波がくるといつもそうなんだよ。メタルとか、明らかにね。サバスが出た時もキリスト教徒は怒り狂っていたよ。そしてラップが出てきたら、人々はラッパーの言葉づかいに憤慨していた」

「しかし俺は言う。ともかくカーディーBはあの歌「WAP」で俺を苛立たせるんだよ」「おぞましいね。しょうがないけどさ」

『Kerrang!』誌は、バトラー氏が「WAP」の「性的に露骨な歌詞の影響」に特に憤慨していると記す。「俺の友人はこの歌の事を知らなかったんだよ。彼の10歳の娘さんがこの歌を歌っていてね。」

「俺は「え?何だって?」と言ったんだよ。アルバムにこんな曲を入れるのは構わないよ。しかしシングルとしてこれを出すのか?あんまりだよね」

「とは言っても俺も71歳で、老いぼれジジイだからさ」

------------------------------------------------------------

そうなんっすよ。そうそうギーザー先生。そのとおり。アーティストがアルバム内でやるのなら何をやってもいいんですよ実際。何の問題もない。しかしあの曲をシングルで出して、それがラジオで流れてテレビでパフォーマンスされて…小学生がそれを歌う…って、そんな世の中狂ってると思う。

問題は「WAP」のオリジナルの歌詞。クリーンver.とかラジオ用ver.じゃなくて、オリジナルの歌詞。あれが酷い。本当に酷い。本当に不快。あれは言葉の暴力だと思う。あんな露骨な内容を歌詞にするもんじゃない。最低だ。世も末。

個人的にはグラミー賞でのカーディさんとミーガンさんのパフォーマンスは何の問題もなし。あの程度の格好は普通。お二人とも魅力的だしね。お尻を振るのはね~…今どきはしょうがないんだろうな。

あくまでもあの酷い歌詞の事を言っている。あれはダメだ。念のため追記しておく。

…海亀も年寄りだからさ。しょうがないわ



2021年3月10日水曜日

TBS 『逃げるは恥だが役に立つガンバレ人類!新春スペシャル!! 』・感想



お正月に放送されたものをやっと拝見。日本での放送は1月2日。


あらすじ
家庭という仕事場の「共同経営者」である森山みくり(新垣結衣)と津崎平匡(星野 源)。共働きとなり、二人で家事の分配をしながら平和に暮らしていた。そこでみくりの妊娠が発覚。


これはこれは…とても野心的なドラマ。力作です。 

以前のテレビドラマのシリーズの雰囲気もキャラクター達もそのまま…その彼らの4年後を描く。 以前のドラマでみくりさんと平匡さんが議論を重ねて「現代の男女のあり方」を見せてくれたように、今回もお二人が「子供を持つこと」をめぐる様々な事柄を問題提議。てんこ盛りです。おまけに新型コロナまで襲ってきた。それらを全部まとめて綺麗に感動的に仕上げたドラマ。お見事。面白かった!

本当に様々な事柄が出てきて、それでも話がスムースに流れているのが見事。2時間の間にものすごい情報量。力技。ほぉーと何度も考えさせられた。そしてドラマとしても面白い。


今回のメインのお題は「親になること」。子供を持つことをめぐって2人の生活の変化、そして社会とのかかわり方等々、様々な事柄を問題提議。親になるとは? 私は自分の30代を「親になること」を経験せずに過ごしてしまったので、大変興味深く拝見。初めて知ることも多い。そしてこの話は「今の時代に親になる話」でもありますね。みくりさんのお母さん役の富田靖子さんを見て「これは…私の世代に孫が生まれる話なのだ」と少し妙な気持ちにもなった。 


ネタバレ注意

個人的に一番身を乗り出したのは、(夫婦が親になることをめぐっての)会社での働き方の問題。私は以前から日本の働き方…会社のあり方や、仕事に対する常識等々…会社や社会が人々に無理を強いている現状…が気になっているので、このドラマでそれを取り上げて正論を言っているのが嬉しかった。大きな拍手です。

女性が会社勤めをしていて、仕事のやりくりから妊娠をためらう状況説明
子供を持つのに順番待ちが必要。生みたいときに生めない。

そしてみくりさんが妊娠。夫婦二人が産休や育休を取る事が難しそうな状況での二人の言葉
子供って夫婦で、社会で育てるものですよね。
そもそも仕事を休めないって事自体が異常ですよね。

そこで「平匡さんが育休を取る事」へ文句を言う上司の灰原氏に、沼田氏が説教
なんで怒ってるの?原因は?
 ① 長く休みを取るから?
 ② 男が育休をとるから?
 ③ 男が長く育休をとるから?
それさ、育休だから嫌なの?他の理由だったら?例えば突然の事故。家族の病気の介護。自分自身の体調が崩れる場合もあるよね。いつ誰が長い休みをとるかなんてわからない。働いてるのは人間なんだから、そういうことでしょ。その時何が大事かって言ったら、誰が休んでも仕事は回る。帰ってこられる環境を普段から作っておくこと。それが職場におけるリスク管理。

ふおぉおおおっ素晴らしい!素晴らしいぞ!そうだ!そのとおり!いいですねぇ。そうそう。仕事のやり方の見直し。リスク管理ができているなら、誰もが育休を取れる状況にもなる。

そしてみくりさんと平匡さんは(現状では皆が遠慮して取りずらい)育休をしっかり「さも当然」と取って、会社で「育休を取る」前例を作るなどと言ってました。いいぞ。どんどんやって。

これはいい話。権利が認められているにもかかわらず、日本の働き方のスタンダードが…社員は有給休暇もろくに取れない。育休も取れない、…日頃から残業も当たり前、何事も社員が無理をすることが当たり前…なら、そのような日本の働き方の常識は変えていったほうがいい。ドラマで問題提議をしてくれることは素晴らしいと思う。大きな拍手。

こういうことは国民全体でじっくり話し合ったほうがいいと思う。NHKで様々な人々を呼んで討論をやらせるとか方法はありそう。こういうドラマが、皆が意識を変えていくきっかけになればいいと思う。もちろん個人的な意見です。


子供を持つことによるお二人の日常の変化も興味を持って拝見。みくりさんは身体が辛いし、また理解があって優しく真面目で頑張り屋の平匡さんはストレスで壊れそう。大変。そしてついに赤ちゃんが生まれて…二人でお世話をする様子は微笑ましい。幸せだ。いい夫婦です。

ロボホンが出てきたぞ。

男性はいかに父親になるか…平匡さんの気持ちの変化
最初は妊娠の報告にも塩対応。男性は実感がわかない。夫が「女性をサポートします」ではなく夫婦で「一緒に勉強して一緒に親になる」。平匡の父「男としてしっかりしろ」。理想の父親とは何だろう。平匡さんも不安。しかし誰にも相談できずに一人で溜め込んで苦しむ…「男らしくあらねば」それもまた呪いかも。

親になることは男性にとっても大きな変化。平匡さんは真面目で頑張り屋さんだから、全てのことにいっぱいいっぱいになっている。それに気付いたみくりさんが平匡さんを労わる。男女共に「初めて親になること」の不安の共有と理解。いい夫婦です。

そして2020年2月。赤ちゃんが生まれる。平匡さん「生物だ。生きてますね」←笑
いい表情をなさってます。特に新垣さんが優しい表情。赤ちゃんの魔法ですね。  


みくりと平匡の正式な結婚
な~んと…籍を入れていなかったのですね。事実婚だったのか。びっくりした。前のドラマの最後もそういう設定でしたっけ。子供が生まれることになって正式に結婚することになった。夫婦別姓の問題も話し合い。みくりさんが津崎を名乗ることに。婚姻届を出してすんなりと結婚。双方の両親は結婚式は?…とは言わなかったのかな。

百合ちゃん(伯母)
17歳年下の風見さんとは別れていた。理由は「どうしてこんなにしんどい。頑張れなかった」
そして彼女に子宮体癌が見つかって手術をすることに。諸々の事情から助けが呼べない。高校時代の友人に連絡を取ってきてもらう。独り身にももっと優しい社会を。

LGBT
百合の高校時代の女友達は女性が好き。彼女はずっと悩んだが現在は恋人と暮らす「今は自分を認められてるし、堂々と彼女とつきあうこともできた」

共に暮らす沼田と梅原「同性のパートナーは死に目に会えない」←なぜなら病室に家族しか入れない場合があるから。これ大切なポイント。これは問題の一例ですが、だから同性婚は正式に認められるべきなのですよ。現代社会の婚姻の意味とは(どのような性であれ)二人の人が共に寄り添い助け合って暮らし…それが家族として社会に認められること。同性婚を法制化するということは、彼/彼女らが正式に家族になるということ。というのも世の中には(上の例のように)正式な家族でなければ認められないことが多いからです。彼/彼女らが幸せに暮らす権利。これに反対する理由がわからない。皆が幸せになれる社会であってほしい。

そしてCOVID-19
2020年3月。二人で話し合って東京と千葉で別れて暮らすことにする。それが最善の方法だと結論を出した。みくりさんは実家へ避難。これは辛いですね。平匡さんは赤ちゃんに会えないのが辛い。みくりさんも東京に一人残った平匡さんを心配する。

そして5月過ぎ、再会。平匡さん「この子が出来たかもって言われた時からもっと楽しめばよかった。…こんなに近くにいられるんだから。おかえり」ハグ。よかったですね。


いい話だったので、内容を長々と記録しました。お題が盛りだくさんのすごいドラマ。お二人に赤ちゃんが生まれて様々な困難を乗り越えて、最後はハグしあえてよかった。

今の30代…(もしかしたら私の子供の世代かもしれない)若い方々のドラマを見てまた感動してしまった。時代は回って若い方々が新しい時代を作っていく。ポジティブなメッセージが素晴らしい。大きな拍手。

お二人はいい夫婦です。以前のドラマもよかったし、今回のスペシャルも素晴らしかった。お二人をまた見たい。見守りたい。応援したい。今後また数年後に、亜江ちゃんが大きくなって小さい弟なんかもいたりして…、みくりさんが30代半ば、平匡さん40代でパパとママをやっているのも見てみたい。シリーズ化するといいな。



2021年3月4日木曜日

Ava Max - My Head & My Heart (2020)



攻撃的だ



Ava Max - My Head & My Heart (2020)
Album: Heaven & Hell
Released: September 18, 2020
ATLANTIC RECORDS, ℗ 2020 ARTIST PARTNER GROUP, INC

Official Performance Video (LIVE)
Official Acoustic Version
歌がうまいうまい



これはキャッチー。それにしても攻撃的なMVだ。彼女はルックスも独特でダンスも上手い。カリスマがありますね。すごいなぁ。レディ・ガガにちょっと似てるかも。歌も上手い。かっこいです。気の強そうな元気のいい女性ポップシンガーはいい。

近年野太い声のポップシンガーがうけてるのかな。  Dua Lipaちゃんも声が太いですね。ガガ姐さんの声も太い。


Ava Maxさんとは
エイバ・マックスさん、本名Amanda Ava Kociさんはアメリカ。ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれの27歳。現在のベースはカリフォルニア。1994年生まれ。新しい人が出てきますねぇ。彼女は既に大ヒット曲があって、2018年リリースの「Sweet but Psycho」は欧州各国で1位になったそう。アメリカでは10位だったそうだ。彼女はルーツが東欧のアルバニア共和国。エキゾティックなルックスがかっこいいです。



映画『十二人の怒れる男/12 Angry Men』(1957):偏見に打ち勝つ正義!







-----------------------------------------------------------------------------
『12 Angry Men(1957年)/米/モノクロ
/96分/監督:Sidney Lumet』
-----------------------------------------------------------------------------



先日、日本のドラマ『坂の途中の家』を見た後、旦那Aとアメリカの陪審制度について話していた。旦那Aが「『十二人の怒れる男』は見た?」と聞くので「見てないよ」と言うと、Aが「ええええっあの映画を見てないの?そりゃー見なきゃ、見ろ見ろ、そうだ俺が予約録画してやる」とテレビ放送を見つけて予約した。というわけで先週の週末に見ることになった。

そうなのだ。この映画は名作なのですよ。わかっているのですよ。これを見ずして映画ファンを名乗るべからず…そうですそうですそうなのだけど今まで機会がなかった。だってアメリカの陪審員制度と言われても昔の日本はそういう制度がなかったもんね。つまり興味がなかったのだ。

というわけでついに見た。 わかりやすかった。白黒映画で古い映画で室内劇だし、そもそも陪審制度に興味が無かった…と言い訳していたけれど何の心配もなかったです。テンポがいい。無駄が無い。あ…いや…途中でちょっと寝そうになったけど。しかし全部見ました。筋を覚えているから居眠りせずに見れたと思う。


★あらすじ
12人の陪審員が16歳の少年を父親殺しの罪で有罪か無罪かを決める。有罪になれば少年の死刑が決定する。ただし陪審員の12人全員が合意しなければ決定とはならない。ストーリーはまず12人の陪審員の1人(ヘンリー・フォンダ)が無罪を主張。それ以外の11人は有罪だと言う。そこからいかに12人全員が評決に達するのか。暑い夏の日、一室に篭って12人全員が証拠を再検証し結論を出すまで議論する。台詞ばかりの室内劇。


この映画のテーマは偏見に打ち勝つ正義。今こそホットトピックな内容。1957年の映画であるにもかかわらず、偏見を真正面から扱ったテーマに少し驚く。50年代のアメリカなんてありとあらゆる偏見がバリバリに存在した時代。そんな時代に偏見をテーマにした映画が撮られる。興味深いですね。このテーマが時代を超えて傑作とされる理由の一つなのだろう。

またこの映画は、構成がシンプルでわかりやすい。部屋の中で12人の論議を見るだけの話なのに、無駄が無く、テンポ良く話が進むので引き込まれる。わかりやすいことも名作と言われる理由なのだろうと思う。


★ネタバレ注意

スラム街に住む少年の父親が刺殺された。証人は2人。少年と父親の住むアパートと線路を挟んだ向かいのアパートの女性。そして少年のアパートの下の階に住む老人。女性は走りすぎる電車の窓を通して殺人の瞬間を見たと言い、老人は事件時の声と音を聞いて部屋のドアを開けたところ、少年が階段を走り去るのを見たと言う。少年は珍しいナイフを使っていた。少年は事件のあった時間に映画館で映画を見ていたと言うが、何の映画を見たのか答えられなかった。


陪審員のメンバーは様々な人々から構成されている。性格、年齢、育ちの違い、偏見を持つ者、事件への興味の大きさ、社会的立場や職の違いなど皆それぞれ。外国語訛りのある者もいる。陪審員同士の中にも偏見が存在する。そんな様々な陪審員達が証拠、証言の検証を重ねて論議をし、全員が偏見に左右されない公正な判断をして結論を導き出すのが大きなテーマ。

また映画として構成はシンプル。法廷に提出された証拠や証言に疑いを持ち、それを一つ一検証してその結果、陪審員達がひとりひとり考えを変えていく様子は大変わかりやすい。…この証拠はおかしい。これは無理があるだろう。曲解していないか。物的証拠は確かなのか。証人の立場は公正なのか。証言は可能なのか不可能なのか間違っていないか…。それらを検証した結果、おかしいと思った者が一人一人考えを変えていく。ストーリーの構成に無駄が無い


証拠や証言を検証し結果を出していくプロセスは比較的スムースに進む。あくまでもわかりやすく検証は進んでいく。陪審員達は偏見や都合で言動もそれぞれだが、結果はぽんぽんと決まっていく。(誰もが持つ)偏見に打ち勝つことをテーマにした内容、そしてその内容をわかりやすく伝えるために話の構成を複雑にしなかったことが、この作品が名作、傑作と言われる理由なのだろう。

ストーリーに影響する裏話的なものは、最後に意見を変える陪審員(3番)の話。彼が少年の有罪意見に固執した理由が最後に明かされる。それが最後の驚きの種明かし場面なのだろうが、私には正直そこが一番納得できない場面だった…彼の意固地さの理由としては弱いと思った。反対に上手いなと思ったのはスラム街出身の5番陪審員のナイフの知識。なるほどと思った。


それにしてもこのシンプルさ、わかりやすさは時代的なものだろうか? もし今の時代の映画なら、おそらくストーリーはもっと複雑になるだろう。子供の過去を覗き、子供と父親の関係を掘り下げ、父親がアル中だとか母親がネグレクトをしていたとか、(アガサ・クリスティ的に)陪審員それぞれの問題をもっと掘り下げたり、事件の再現シーンや個人のフラッシュバックのシーンなど…もっともっと枝葉を広げ内容を膨らませて2時間ぐらいの映画にしそうだと思った。


この映画が作られてから64年。今の時代の同じテーマの映画を想像すれば、この映画はあまりにも簡単に全てが解決してしまうので、多少予定調和的にさえ見えてしまうのは仕方が無い。しかし無駄を省いてシンプルに、誰にでもわかりやすく、少しのスパイスと驚きで綺麗にまとめ、時代を超えて偏見に打ち勝つ正義を説いたこの映画が名作と言われるのは納得できる。


こういう映画だったとは知らなかった。深い心理劇ではないけれど、思ったよりも面白かった。見て感動するとか言葉が心に沁みる…などということは無いが、理詰め理詰めで96分、ぽんぽんぽんと解決していくから飽きない。室内劇なのにエネルギーが大きい。男ばかりが大声でガミガミとうるさい映画だけれど、96分間中だるみすることなくテンポ良く進んでいくのは見事。

他の映画通の方の批評をちょっと見てみたのだけれど、どうやらカメラワークも巧みらしいですね。室内の撮影だからこそ効果的なカメラワークは大切なのだそうな。なるほど。