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2021年12月14日火曜日

BBC 『HARD TALK』作家ポール・オースター「読書について」



今でもテレビはよく見るほうだと思うのだけれど、それでもアメリカに来てからライブで流れるテレビ番組を受動的に見ることはほぼなくなった。たいていは、見たい番組、面白そうな番組を事前に見つけて録画機に予約して見る。

そんななかで最近録画するようになったBBC World Newsチャンネルの『HARD TALK』シリーズ。英国人らしいキツいインタビューアー・Stephen Sackur氏が好きなようにやってるインタビュー・ショー。政治家を追いつめることもあれば、芸術家と楽しい時間を過ごすこともある。時々面白いインタビューがあったりもする。

そんななかで最近見たインタビュー。作家のポール・オースター/Paul Auster氏が本や読書について語っていた言葉が素敵だったので記録する。最初の放送は2021年12月5日。


オースター氏のことは知らなかった。本も読んだことがない。全く知らない…と思ったのだけれど、彼は1995年の映画『Smoke』『Blue in the Face』の脚本を書いた方なのですね。いい映画だった。特に『Blue in the Face』はお洒落な映画だった。そういえばあの映画にはRuPaulさんやMadonnaも出ていた。


それにしても最近は本を読んでいない。年を取ると本が読めなくなるのか。それとも落ち着いて座って本を読めなくなったのは、便利なデジタル・ディバイスのせいなのか。 家には沢山の積読(つんどく)の本があるのだけれど、もう私が死ぬまでに読めないんじゃないかと思い始めた。なんとかしなきゃ。どうしたのだろう…昔はよく本を読んでいたのに…。

このオースターさんが語っている読書の素晴らしさも理解できるだけに、なんとかしなきゃなと思った。


それではオースター氏の言葉。書き起こした。

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A book is read by one person at a time.  And the book, in spite of everything, it's the only ....a novel, for example, is the only place I think in the human world, where two stranger can meet on terms of absolute intimacy.

And that space that is created in the book is something very beautiful and precious.   And whether ten people read the book or 10,000 people read the book or ten million people read the book, it doesn't matter.  The person reading it is alone with the writer.  And the two of you, the reader and the writer are creating the book together.   And every reader reads a different book.  This is what's so beautiful about it.  We all bring our own lives, our own sufferings, our own joys, our past to whatever it is we encounter in the world, and nothing never more so than when we 're encountering art, and particularly literature, which requires time.   I can look at the paintings on the wall in a glance and see what's there.   But if I pick up the 750 page book, no, I can't take it all in at once.   I have to give it time.  And that time is the beautiful thing about it.

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本はたった一人で読むもの。本とは…様々な事柄の中でも…たったひとつの…、「小説」…例えばね…、それは人の世界で唯一の…見知らぬ者同士のふたりが、完全な親密さの中で出会う事が出来る場所なのです

そして本の中に創作されたそのスペースは、とても美しく貴重なものです。(例えば)10人の人が本を読んたとしても、1万人の人が読んでも、1千万人の人が読んでもそれは関係ない。  本を読む人は作家と二人きりになる。そしてそのふたり…読者と作家は、本を共に創作しているのです。だから全ての読者達は、それぞれ個々に違う本を読むことになる。それはとても美しいものです。 私達は皆、自分の人生、個々の苦労、それぞれの喜び、それぞれの過去から何事であれ…私達が世界で遭遇する事柄を思い起こします。それは何にも増して私達が芸術に触れるときに…特に時間が必要な文学に出会うときにね。(例えば)壁の絵を一目で見て、私にはすぐに何があるのかがわかります。 しかしもし私が750ページの本を手に取ったら、いや、それをすぐに理解することはできませんよね。私はそれ(本)に時間をかけなければいけない。その時間こそが美しいものなのです。

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読書とは、作家と読者がふたりきりで沈黙の中で会話をしながら親密に「その世界」をつくりあげる作業。そのプロセスにかかる時間が美しいものだとおっしゃってます。ああ…ほんとにそうだわ。本を読む楽しみとはそういうことですね。

そしてその作業を経てそれぞれの読者が作家と共につくりあげるものは、それぞれ皆違っていて、どれひとつとして同じものはない。

このオースターさんの言葉…読書への想いそのものが美しい。素敵な方です。