お正月といえば、新年の食卓でお屠蘇を飲みたい。これを飲まないとどうも新年が明けた気がしない。子供の頃から馴染んだ慣習というやつである…いやただ美味しいから飲みたいというのもある。
お屠蘇は子供の頃から飲んだ。新年の食卓に置かれた屠蘇器の三つ重ねられた赤い杯。一番上に乗った小さい杯でちょっとだけ飲むお屠蘇は奇妙で不思議に美味しかった。
30歳から英国にいた10年間は一切飲めなかった。西洋に嫁いだらしょうがないと思っていた。しかしその後旦那Aの仕事で東京に引っ越した時からまたお屠蘇を再開。念願のMY屠蘇器も購入。ところがまた引越し。再度日本を離れることになる。
この地に引っ越してからもなんとかお屠蘇を飲もうとした。お屠蘇は屠蘇散さえあればいい。ティーバッグに入った数種類の漢方。大晦日にそれをお酒に一晩漬ければ出来る。
ところが日系の人々の多いこの地でもなかなか屠蘇散は手に入らない。10年程前に一度だけこの地の日系のスーパーで屠蘇散が手にはいったがそれは一度きり。それからも年末に何度かお店で聞いたけれど売っていない。日本の家族に屠蘇散を送ってもらったこともある。一度はネットショップで高い送料を払って日本から購入したこともあった。去年は旦那Aが「オレが作ってやろう」と自らスパイスラックを探り、シナモンやクローブなどを混ぜてなんちゃってお屠蘇を作ってくれたが、やっぱり違う味だった。
お屠蘇が飲みたい。
というわけで去年のお正月も明けた頃の(今から)一年前、「屠蘇散」を作ってみようと思い立った。もともと漢方だからできないことはないだろう…。
ネット上を検索するとお屠蘇の原材料が出てきた。
お屠蘇に使われる漢方は全部で六種類。
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白朮(ビャクジュツ) キク科オケラまたはオオバオケラの根 山椒(サンショウ) サンショウの実
桔梗(キキョウ) キキョウの根
肉桂(ニッケイ) ニッケイの樹皮、シナモン
防風(ボウフウ) セリ科ボウフウの根
陳皮(チンピ) みかんの皮
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この中で、
●山椒は日系のスーパーで手に入る山椒の粉でいい。●それから肉桂はシナモンでいいだろう。
残りの4種類…白朮、桔梗、防風、陳皮の4種類が手に入ればいい。これを集めればあの美味しいお屠蘇が飲めるわけだ。よしなんとかしよう。(陳皮は乾燥したみかんの皮なので自分で作ってもよい)
というわけで、4種類の漢方の名前を検索する。ネット上をつついて生薬の英語(中国読み)の表記を探し出す。結果はこれ。
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白朮(ビャクジュツ)Bai Zhu桔梗(キキョウ) Jie Geng
防風(ボウフウ) Fang Feng
陳皮(チンピ) Chen Pi
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これらの漢方をネット通販で購入できるところを探せばいい(中華街に行って漢方のお店に相談してみてもいいかもしれない)。見つけた漢方のショップの名前は
Plum Dragon
米国東海岸のメリーランド/Maryland州の会社で、リサ・ボール/Lisa Ballさんという白人の女性がオーナー。漢方&ハーブの会社だそうだ。なんと面白い。ここから購入できる。
去年の年末…今年の新年が近づいた頃、上記4種類の漢方をオーダーしてみた。有り難いことに注文は1オンス/Ozから受け付けてくれる。1オンスは28グラム。乾燥した生薬が片手に乗るくらいの量。これなら大量の漢方を家でもてあますこともない。オーダーの画面はこんな感じ。支払いはPayPalで出来る。
そして数日後に届いたものがこれ。こんな風に小分けにされた生薬がまとめられて袋に入っている。
中身は注文した4種類の生薬。
それでは大晦日に屠蘇散を作ってみましょう
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●それぞれの生薬を必要なだけハサミで細かくカット。●それぞれを1cm角ぐらい取り出し、少しずつ乳棒と乳鉢/すり鉢とすりこぎで細かくすりつぶす。
●キッチンの山椒粉とシナモンを加える。
●全部合わせた生薬の粉をお茶用のパックに入れる。全ての分量は適当
●そのパックを180mlの日本酒に一晩漬け込む。
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さてどうなったか?元旦の朝飲んでみる。
美味しい!
そのまんま。おとそ…お屠蘇ですよ。おとそができましたできました!やったっ!なんと素晴らしい。なんと嬉しい。