毎年そうなんですけど、大河ドラマは途中で感想似顔絵を投げ出しても、番組そのものはとりあえず最後まで見る。あまりに酷いものは投げ出したまま年を終えるのですが、今年はちょっと言いたいことがある。今年の『西郷どん』は、
俳優さん達はよかったですよ
これが言いたかった。皆様おつかれさまでした。俳優さん達が頑張ったから最後まで見ました。ほんとです。いやー…だから、
本当にもったいなかったねぇ。
脚本がよければねぇ。俳優さん達はよかったのにね。
男らしい男
が見られるかどうかなんですよ。昔の日本の男が見たい。気概が見たい。「男らしさ」とは外見や年齢ではないんですよね。「男らしさ」とは気概があるかどうか。信念、強い意志があればいい。俳優さん達からそれが感じられれば嬉しい。
そもそもこのドラマは脚本がダメダメなので、俳優さん達も演じにくかったのではないかと思いますが、それでも皆さん頑張ってましたよね。役のある俳優さん達も、群集の後ろにいるエキストラの方々も皆一生懸命なのはしっかり見えました。それがよかった。本当に皆さんおつかれさまでした。
★終盤に向けて気になった俳優さん達
(あくまでも俳優さん達の魅力です)
鈴木亮平さん/西郷どん
おつかれさまでした。脚本が脚本なので、最初の頃はよく泣くしアホだしキャラもブレブレでしたが、最後は大きな男の風貌がとても似合ってました。身体も大きくなって最初の頃とは表情が変わってましたね。しかし西郷どんの最後は介錯してもらわないと困る。そこはけじめでしょう。大野拓郎さん/桐野利秋
最後の方はこのお方が一番輝いてました。文句なし。正統派。主役級の華のある男らしい俳優さん。これから楽しみです。この方には大きくなって欲しい。ぜひ歴史上の強い男を演じで欲しい。
堀井新太さん/村田新八
この若い俳優さんは『マッサン』の坊主頭の可愛い男の子でしたよね。ずいぶん男らしくなりましたね。雰囲気が変わっていてびっくりしました。
泉澤祐希さん/川路利良
硬派。いい表情をなさってました。
今井悠貴さん/菊次郎
かっと見開いた目がよかった。真剣な演技が心に残りました。
井戸田潤さん/桂久武
最後に昔の装束で弓を射る姿がかっこよかったです。
迫田孝也/江藤新平
迫どんは時代劇が似合います。目が鋭い。目がキツイのがいい。時代劇では普段のひょうきんな感じが消えるのが興味深い。しかし鹿児島の方がなぜ江藤新平になったのかは疑問。
瑛太/大久保利通
演技は鬼気迫る。しかしこの脚本ではもったいないですよね。
黒木華さん/糸さん
最後の頃の抑えた演技は素晴らしかったです。夫の運命を知りながら泣き叫ぶこともなく静かに耐えている姿がよかった。
ツンともう一匹
小さい方の赤い犬のお尻がふわふわして可愛かった。
他にもいい俳優さんはたくさんいました。しかしここに名前が出なかったのは、人物が書かれていなかったからです。北村有起哉さんなんていい俳優さんなのに、ほとんど記憶に残らないのは脚本が描いていないからです。そういう俳優さん達が沢山いたのは本当にもったいなかった。
以前から問題は脚本脚本と言ってますが、一番の問題は脚本家の方に歴史を描く気がなかったことでしょうかね。歴史の流れが描けないから、歴史上の人物達がなぜ行動を起こすのか、彼らがなぜ強い意志を持って世の中を変えていったのか、その原因がわからない。歴史の流れのなかで、一個人がどのような状況でどういう風に意志を持ち、実際に行動を起こしていくのか…の理由が描かれなければ、歴史ドラマとしての面白味はゼロです。それがまず一番の問題。
人物達の心や行動の理由が描かれなければ、その人物達の人となりも描かれない。人物達はただその場所にいるだけ。何かが起こったらリアクションをするばかり。人となりが描かれなければ、視聴者は人物達に心を寄せることもできない。多くの登場人物達のキャラが立たず、つかみどころのないままドラマが終わってしまったのも本当にもったいないと思う。
幕末から明治維新、西南戦争までの激動の時代を描きながら、心に残るのは俳優さん達の頑張りと魅力ばかりで、歴史上の人物としての面白味がほとんど見えなかったのは歴史ドラマとして致命的。面白い素材と、優秀な俳優さん達が本当にもったいないです。そんなことを毎回見るたびに考えた。
それ以外に気になったのは、力の入りすぎた美術ですかね。セットにものすごいお金をかけているのはわかった。しかし(例えば)建物が二階建てである必要はないだろう。遊郭の二階の部屋の赤いスクリーンも奇をてらったものだし、どこかの江戸藩邸でも二階の小さな部屋で大物が会談している。あれも二階である必要は無いだろう。どこにお金をつかっているのかと思う。
それから九州の下級武士の家が酷すぎる。西郷家は長い間あばら家。障子の紙が汚れていてタタミイワシに見えるのはやりすぎ。西南戦争では宮崎県延岡の「西郷隆盛宿陣跡」も出てきたけれど、現在残っている家は普通の日本家屋なのに、あれも酷いあばら家に演出されてましたね。障子もシミだらけのタタミイワシ。なんでああいう風にボロボロにするのかがわからない。
二階建てのセットもボロ家も美術さんは気合が入り過ぎ。もっと普通でいい。そこは主張するところじゃないと思うぞ。障子にタタミイワシはやめるべし。
というわけでいろいろと文句はありましたが、それでも俳優さん達の頑張りが見えてよかったです。皆様お疲れ様でした。
日本の地方によっては様々な意見があるみたいなのですが、九州の人間にとって西郷さんの話は身近なんですよ。だからいいドラマが見たいと思うのはしょうがない。私はこの時代のことは詳しく知らないのですが、西南戦争にはうちの親戚も西郷さんを慕って参戦、戦死しているそうで、もっと歴史にがっちり食い込んだドラマが見たかったです。時代が変わり、立場を失い、追い詰められた元士族達がプライドと共に死んでいく戦は悲しい。彼らの気持ちがわからないわけではない。時代の流れに添えなかったラストサムライ達…合掌。