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2017年8月17日木曜日

映画『ジャングル・ブック/The Jungle Book』(2016):実写で失われたオリジナルの魅力







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The Jungle Book2016年)/英・米/カラー
106分/監督:Jon Favreau
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去年の春頃に見た映画。これも記憶を探って見た時に思った事を思い出して書く。

海亀は動物が好き。子供の頃から可愛いペットよりもむしろ野生の動物の方が好き。野生動物のドキュメンタリーも好き。

だからこの映画のトレーラーを最初に見た時は舞い上がった。こういうのが見たかった。人間の子供がリアルな黒豹と戯れるの?ひゃ~夢や。すごいわ。子供の頃からの夢よ。なんといいアイデア。これはきっといい映画になるだろう。

公開になって喜び勇んで見に行く。

…うわー動物がしゃべっとる。おおおおお黒豹がかっこいいね。ひゃー ややっ虎がちょっと丸顔過ぎ?あのシア・カーンの大きな顎はどこにいった?…うーんなんだかあまりかっこよくないよなぁ。熊もリアル…しかしこの「ベアネセシティ」はなんだか妙だ…あまり可愛くないぞ。オランウータンが巨大。うわー大きすぎてリアル感無し。怖い。

時間が経つにつれて最初の興奮がだんだんおさまってくるのが自分でもわかった。なんだろう…この違和感


この映画は1967年に制作されたディズニーの有名なアニメーション映画『ジャングル・ブック(1967)の実写版リメイクなわけですが…。

昔のディズニーの動物アニメ映画って
やっぱり偉大よ。

いやーこの映画を見てあらためて思いました…昔のディズニーアニメは偉大だったと。オリジナルの『ジャングル・ブック(1967)』の魅力って、一にも二にも、とにかく美しくデザインされた手描きの動物キャラクターにあったと思うんですよ。

1967年といえば、CGも無くて全て手描きの時代。オリジナルの『ジャングル・ブック』の動物達は、当時のアニメーター達が動物を真剣に観察して作り上げたもの。あの動物達はカタチが美しいばかりではない。もっと凄いのはあの動物達の動き。

『ジャングル・ブック(1967)』の動物達の動きは本当に美しいです。動物が好きだからよくわかる。あの動物のキャラクター達は、当時のアニメーター達が動物の動きを観察して、一旦噛み砕いて、そしてそこから動作や仕草を…ある部分は強調し、またある部分は引き算をして作り上げた芸術作品なんですよ。決して動物をそのままコピーしたものでも、単純に擬人化しただけのものでもない。





虎も熊も猿も、実際の動物とは違う動きをしているはずのに、その動きにいちいち説得力があるんですよ。オランウータンが踊る様子も(手首の動きがすごい)、熊が二本足で立ち上がる様子も、虎がのしのしと歩く様子も、黒豹の滑らかな動きも、全てが動物の動きとして説得力がある。そして大変美しい。ものすごく魅力的。

オリジナルでは虎のシア・カーンもとてもかっこいいです。大きな肩の筋肉の下に骨格が動いているのが見える。上手いです。





やっぱりあのオリジナルの優雅な美しさはCGでは出せなかったんでしょうね。今回のこのリメイク映画は、実写の野生動物のドキュメンタリーのようで一見いい感じなのに、動物達が人間の台詞を喋り始めると違和感が半端ない。熊の「ベアネセシティ」も全く魅力的じゃない。あの巨大な猿はなんだ?化け物?

なんだか悪い意味ですごくびっくりした。実写で表現された動物達が全然魅力的じゃない。これを見て改めてオリジナルがいかに素晴らしかったのかを実感。あのアニメーションはどうやっても絶対に超えられないわ。マジで。

オリジナルのあの黒豹の動きにはうっとりしますよ。心が震える…あまりにも美しくて。シア・カーンもかっこいい。オランウータンのダンスも動きがユーモラスだからこそあの楽しい歌が活きるのね。


このリメイクには期待し過ぎたんですよね。動物が好きだからすごく魅力的なものが出来るだろうと思っていた。いやCGの技術は素晴らしいと思います。黒豹とモーグリが一緒に歩くところは嬉しかったです。夢があっていい。

しかし何よりもこの映画の一番の問題は、オリジナルにあった「ユーモアと優雅さ」が全く無くなったこと。虎のシア・カーンが、見かけも性格も全く共感できない醜い悪者になっていたのが辛い。悪者だからって完全に憎らしくする必要はないんですよね。そして最後は山火事で焼き殺すの?酷いわ酷すぎる。動物を焼き殺すなこら! すごく嫌だ。オリジナルは尻尾に火がついて逃げてっただけですよね。

近年のアメリカの映画は、子供向けの映画でも「勧善懲悪」で悪者を殺したりするのかしら。嫌だわね。悪者を罰してもいいけれど、焼き殺すなんて酷いわ。凄く気分が悪い。正しい者は悪い者をどんなやり方で殺してもいいのか?…こういうのっていかにも今のアメリカ的でぞっとする。

子供向けの映画は夢を売ってくれなきゃ…。

この映画は、制作陣も最初は「素晴らしいアイデア」だと思ったんだろうと思うんですよ。私もすごく期待した。だけど結果が思ったよりも良くなかった…ということなのでは。いや米のムービー・データベースでは10点満点で7.5点なので評価が低いわけじゃないけれど、…うーん…しかしもし制作のスタッフが冷静にこの映画の出来を見て「思ったより良くなかったね」と誰も思わなかったとしたら大きな問題だと思います。これ全然良くないです。

実写にしたせいで、オリジナルのユーモアや楽しさや美しさや優雅さ…夢物語の魅力が全然無くなってしまった…。なんだか全体にアクションが激しすぎて、ジュラシックパークみたいな怪獣映画にしか見えない。おそらくこの作品が完成するまで、制作スタッフもこの結果がわからなかったんだろうと思います。でも完成しちゃったからしょうがない。公開したらそれなりにウケたからまぁ良かったわね。ふん。

今動画サイトでこのリメイク映画のいくつかのクリップを見たけれど、狼の家族は可愛いですね。しかしシア・カーンは邪悪だな。悪者でももう少し魅力的にして欲しいものだわ。

生きとし生けるものは皆美しい…。

それにしてもこの映画は映像も暗いし内容も結構ショッキングなんですけど、子供は怖くないんだろうか


繰り返す…あらためて昔のディズニーはやっぱりすごい。私は近年のディズニー映画にはそれほど大騒ぎはしないけれど、60年代のディズニー作品の動物の描写は本当に凄いと思います。動物好きの人ならわかると思う。