面白いです。テンポが良くてポンポンポンと話が進んであっという間に終わってしまう。やっぱり脚本が素晴らしい。今回はコメディっぽい場面が多かった。
またまた言葉に痺れる。「捕縛されたのか。早計でした。詮議に及ばず。滅相も無い。戯言を申すな。釈然とせぬ。」いちいちかっこいい。こういうのは時代劇の様式言葉で、時代劇なら普通に使われても珍しくないと思うのだけど他のドラマではどうなんだろう。近年はあまり聞いた記憶が無いかも。こういうのは私も意味は分かっても自分からは出てこない言葉。改めて注意して聞くと、こういう言葉が時代劇の格式を紡ぎだすんだなと感じる。いいですよね様式美。
紀伊国屋の江守さんと典膳の山本さんのやりとりは楽しい。やっぱり言葉の職人芸。
紀伊国屋:(刀を)お返しいたします。
典膳:わしに恥をかかせるのか。紀伊国屋:や、とんでもない。
典膳:紀伊国屋にめったな物は贈れぬ。精一杯見栄を張ったのだ。
紀伊国屋:おこころざしは、しかとこの胸に染み入りました。
典膳:困ったな。
紀伊国屋:お刀は武士の魂でございます。どうぞお大切になされませ
典膳:丹下典膳に脇差は無用じゃ。
紀伊国屋:は?
典膳:2本刺しても腕は1本じゃ。
紀伊国屋:やや…ぐっ(笑)…1本とられましたな。(←この場面のカメラの位置が可笑しい)
痺れる。演じるお二人もとても楽しそう。見ていてすごく楽しい。この後の場面ではなんと女性が逆立ちをしてましたヨ…。
お豊ちゃんはさなぎ太夫になって再登場。予想に反して再会は至極平和なもの。彼女も紀伊国屋さんに囲われて比較的幸せなんでしょうか。しっかりと自分の運命を受け入れている様子。安っぽくお涙頂戴でないところが流石だなと思う。そうか…遊女=不幸だなんて現代人が安易に考えることですね。時代柄、自己の運命を受け入れて堂々と優雅に微笑むお豊ちゃんのほうがずっとかっこいい。典膳先生も嬉しそう。そうそう紀伊国屋さんが、さなぎ太夫を典膳に紹介するときに「お臍の周りに黒子が3つあるそう…」と言う台詞もいい。こんな会話で場面に艶が出る。上手い。
新しいキャラも登場。口入れ屋の白竿屋長兵衛。口入れ屋の意味の説明も台詞の中でされているんだけどとても自然。鳶職や人足の請負をわりつけ…などというのを縄張り争いに絡めてサラサラッと説明。
高嶋政伸さんがまた上手いの。牢屋での下卑た笑い。へぇへへへへ…。だけど牢屋を出るとばりばりの実力者というのがありありと分かる。話をしていても目が怖い。口入れ屋に火消し。街のちょっと怖い実力者なんでしょうか。迫力満点。最後の火消しの場面はすごくかっこいい。
彼の場面でいろんな時代背景の説明もされた。全てが自然な台詞。「ごろつき」の謂れ(ひとかどの親分や侠客は五郎という名を好んでつけやす…)「お犬様」への文句で生類憐みの令。「由井正雪か」で幕府転覆願望…。由井正雪は思わず調べてしまった。ああ勉強になるわ…それも楽し。
お三さんも素晴らしい。なんともいえない女性らしさ。典膳の髯を剃るのもサバサバ振舞っているように見えてとても艶っぽい場面。大人です。色気とは押し倒すばかりではない見本。最後に「あ~らいい男!」というのもいい。
今週は堀部安兵衛がすごく綺麗になった。それから典膳の長屋の皆との別れの場面のコメディもいい。典膳の伯父さんもコメディ要員。「あのなぁ…はっきり言うておくがこの身体で(トントントンと典膳の左の空の袖を扇子で叩く)仕官は無理だぞ…」という時のカメラの位置が可笑しい。もう逐一痺れる。
山本さんは相変わらずいい男。背筋がぴしっと伸びてる。片手の納刀!
このドラマはほんとに楽しみです。これだけ楽しませてもらえたらもう他のものが全部吹っ飛んでしまう。ジェームス三木さんはすごいです。もうこのお方にいろんなことを教えていただくつもりで正座してこのドラマを拝見したい。それに演出の清水一彦さんというお方は以前大河の「風林火山」をなさった方だそう。1952年のお生まれ。ああやっぱり時代劇の出来る方は世代が違うのか。これは大変。今の40代以降の制作の方は、どうかこういう方から時代劇制作の遺産を受け継いで欲しい。