能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2013年9月26日木曜日

映画『Spectacular now』:アメリカの高校生

 
 
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The Spectacular Now2013年)/米/カラー
95分/監督:James Ponsoldt
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佳作…かな…? 
 
この映画、アメリカでは批評家達に大絶賛されてます。とことん大絶賛です。「まあまあ」の評価をしている批評家を見つけることのほうが難しい。
 
内容は可愛らしい青春物。普通の高校生のお話。主人公の男の子は(イイ奴だけど)アホなパーティー野郎、女の子はノーメークの地味なオタク女子。そんな二人が出会って仲良くなる。あ…ありそうありそう。
 
この映画の一番の売りはリアリズムです。ふつーの高校生。ほんとにこういう子達、いる。全然ハリウッド的な華が無い(笑)。
 
そういえば、以前「The Perks of Being a Wallflower」という映画がありましたが、あれと比べると分かりやすい。あの映画は、ハーマイオニ…エマ・ワトソンさんや超エロ顔の男の子がいたりして、なんだか高校生なのに皆やたらとゴージャスで「ほんとかいな…」という感じでしたが、この映画の高校生はちっともゴージャスじゃない!
 
最初の30分ぐらい、あまりにも主演の男女がふつーの地味なルックスなんでなかなか気持ちが入らなかったぐらい(←ワタクシはとても浅はかな映画ファンである)。彼らの行動も台詞も環境もなにからなにまでが地味で普通。
 
しかしそれこそがこの映画のいいところ。あのリアルさを表現できる若い役者さん達もすごい。リアルだからこそだんだん気持ちが入ってくる。ほんとに可愛いんです。若い二人が微笑ましい。普通のルックスの普通の子達が、普通に仲良くなって、普通に戸惑って、普通に悩んで、普通に成長する…そんな映画。
 
 
★ネタバレ注意
 
 
そんなリアルな普通の高校生達の話にどんどん引き込まれていくんだけど、あまり大きな事件が起こるわけではない。何かあっても、誰もが通る成長の過程での悩みやとまどい…といったレベル。もちろん本人達には大問題なんですが。
 
二人の高校生が卒業前、人生の階段を一段上がる…一段二段と戸惑いながら上がる様子を温かく見守るような映画。
 
…しかし正直こういう映画は、同年代の高校生が見たほうがいいと思う。私は彼らの親の世代なんでつい親の視点で見てしまうので、感想も「可愛い・微笑ましい」などと書いているけれど、現役の高校生が見ればこの映画はかなりぐっとくるんじゃないかな。共感できる年齢の若い人達が見ればきっと心に響く作品だろうと思う。映画にも見るべき年代が確かにありますよね。
 
 
ところで、全編を通してアメリカの高校生はあんなにお酒を飲んでいるのか…と日本の方々はびっくりされるかもしれませんが、まぁあれは極端なキャラ設定でしょう。主人公が常に飲んでるので嫌な思いをされる方もいるかもしれませんが、キャラ設定なのでそこを非難しても野暮というもの。いや…まあ車も運転してるし、大変な問題なんですが。
 
この映画でのお酒が、自立の象徴として、また主人公の根本的な問題として印象的な扱われ方をしているのも興味深い。お酒が、親からの自立、開放、自由、成長、大人、堕落、親との繋がり、問題、将来…といろんな意味を持つんだけど、お酒に厳しいアメリカでこういう話が語られるのもおもしろい。それにしてもアメリカの高校生はずいぶん大人ですね。
 
 
ただ最後に一言、話の最後の収まり方は多少安易だなとも思った。…なんというか…ありがち。というのも(どのような理由であれ)あれだけ長い間怠惰に自分を甘やかしてきた人物が、一つや二つの理由だけで、突然明日から完全に更生するとも思えないからだ。そのあたりは追求せずにさらっと終わってしまったけれど、最後の女の子の微妙な表情を見てもハッピーエンドとは限らないのだろうと思う。結果は観客が勝手に思いをめぐらせられるよう意図的にあいまいにしてあるのだろうなとも思った。
 
等身大のアメリカの高校生の映画。アメリカの高校生がどんなものかを見るにはいい映画。このリアルさが心に染みる若い人は多いと思う。