2012年10月30日火曜日

映画『ウォールフラワー/The Perks of Being a Wallflower』:詰め込みすぎたか


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The Perks of Being a Wallflower2012年)/米/カラー
103分/監督;Stephen Chbosky
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これは評価をするのがむずかしい映画。

まずいいところから始めよう。

役者がいい。エマ・ワトソンさんはハーマイオニーを無事卒業できた様子。まだ将来彼女が七変化の出来る大女優になるかどうかは判らないけど、この映画のちょっとひねたきつい感じの高校生サム役は似合っていた。子供の頃に比べて絶世の美女になったとは思わないけど、ずいぶん大人っぽくなったもんです。もしかしたら癖のあるいい性格女優になれる可能性もあるかも。

それから主人公チャーリーを演じたLogan Lerman(ローガン・ラーマン)君は非常に上手い。痛々しいほどに傷ついた若い男の子を好演。普通の人物を普通に演じるのに説得力があっていい。印象に残らない地味な感じなのは演じているのか。実年齢20歳で15歳を演じている。若いのにいい役者さん。

強烈だったのは、主人公の友人パトリックを演じたEzra Miller(エズラ・ミラー)19歳。たぶん演じてた時は18歳なのかな。げげっ若いな。ルックスはアラン・リックマンを若くしたような顔。ちょっと前のロックスター風かと思えばアートな詩人風?…とにかくものすごく癖のある顔。いい男。とてつもない色気。この人はくるね。売れるんじゃないかな。西洋の時代劇でも60年代のドラッグ中毒でも70年代のジゴロでもなんでも似合いそうだ。まーそれにしても19歳とはまいったな。高い鼻から上唇にかけてが超エロい顔。

全員の演技がいい。そもそも悩めるティーンの話なのでこの3人の役者さん達も192022歳と非常に若い。普段あまりティーンの映画には興味がないのだけど、この映画は見ごたえがあった。みんな若いのに上手い。

内容は、一言では語れない。非常に難しいテーマ。一見中二病風サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」的な映画に見えるのだが(宣伝もそれっぽくやっている)、実は全く違う話。肩透かしと言うよりも、うんうん唸らせられてしまうような内容。ところで「ライ麦畑…」は私も18歳の頃に読んで、それはそれはもう感化されたものだが、どういうわけか現在内容を一切覚えていない。どうしてだろう…。

ともかく役者さん達がいい感じ。若い役者さんの魅力で惹き込まれる映画になっている。

それにしても、アメリカの高校生はませている。お酒もマリワナも車の運転もやる。日本の大学生よりも大人なんじゃないか。
 
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簡単に内容の解説をしたい。基本はティーン映画。高校でぱっとしない新入生の主人公が、なぜかロックスターまがいのカッコイイ先輩とお友達になって、カッコイイグループの仲間に迎えられるというもの。普通の高校生には夢のような設定。こういうフォーマットはどこかで見たことがある…と思ったら「トワイライト」の女の子もそんな感じだったかも。こういうふうな右も左も判らぬ主人公がステキなグループに受け入れられるという設定は他にも見た事があるぞ…。ティーンものの定番設定なんだろうか…。
 
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ネタバレ注意
さて、ここからは辛口の批評を。

「真面目にティーンの問題を扱った、一見中二病風サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」的な映画に見えるのだが、実は全く違う話だ」と書いた。そう、全然違うんです。

とにかくありとあらゆるあり得ない設定を重ねたキャラクター達。主人公のチャーリー君も、エマ・ワトソンのサムさんも、エロ顔のパトリック君もみ~んな問題を抱えている。それも半端無い問題。大変重い。

なので、映画の印象は「真面目に作られたいい映画」なのだが、よくよく考えてみると正直詰め込みすぎ。いろんなサブプロットがありすぎ。あまりにも色んな事を内包した設定なので、結果的に欲張りすぎた印象は否めない。なのであまり話を広げすぎたために、最終的に不器用にまとめられた印象が残ってしまった。実際にいろんなところで辻褄が合わなかったりもする。

それぞれのキャラの問題を追及するだけで、あと3つくらい別の映画が撮れてしまいそうだ。むしろそのほうが映画として良かったんじゃないかと思う。

いろんな問題を抱えたティーンの話で、それぞれの問題が超弩級レベルの深刻な話なので、そんなテーマの映画を貶すのは倫理的にいけない気がする。まずこういう話は、いい映画だとの前提で見るものだ。しかし冷静に考えてみると、深刻な話だからいい映画だというのは全くもって間違い。映画として素材も、俳優の演技も素晴らしいが、いかんせん問題を詰め込みすぎた。それに、ひねくれもののアウトサイダー達がクラスで一番かっこいいという設定もちと現実味が無いかも。

ところで私は彼らの親とも言えるような年齢なので、いろいろとアラが見えてしまったのだが、実際に高校生ぐらいの年齢の人が見たら、本当に素晴らしい映画なのだろうか。アメリカの映画データベースサイトでのこの映画の評価は非常に高い。しかし全体の雰囲気と、内容の重さ、俳優の演技だけで、高く評価されてしまったような気もする。

そういったところが「評価をするのがむずかしい映画」だと言った理由。決して悪くはない映画。いやかなりいい映画。ただ内容は、え~~!?な事も結構あると思う。