能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2017年10月16日月曜日

LIVE★Burt Bacharach/バート・バカラック Live!! -14 Oct 2017




やっぱりこの曲が一番好き
Carpenters - (They Long to Be) Close to You (1970)

Album:  Close to You
Released:  Jan 1, 1970
℗ 1970 UMG Recordings, Inc.
 


大御所です。

おそらくこのお方ほど有名なポップスの作曲家は他にいないでしょう。60年代から70年代にかけて数多くのポップスの超有名曲を作曲なさった方。このお方のお名前を聞いたことがない人でも、曲は必ず聞いたことがあるはず。作曲した曲の多くがあまりにも有名なために、楽曲だけで一人歩きしてしまうような作曲家は、このお方とビートルズぐらいかもしれない。

バート・バカラックさんは今年89。まずこの地に来てライブをしてくださったことに感謝いたします。拝めるだけで幸せ。拝見できるだけでもミラクル。ありがとうございます。


バート・バカラックさんの曲をあらためて知ることになったのは(またまた)ロンドンにいた頃。2000年頃だったか、英国で60年代~70年代のポップス(イージーリスニング)が一時的にとても流行ったことがあって、ついつい私もその手のアルバムを買って当時よく聴いていたんでした。

バカラックさんの曲の中でも特に有名なのは、カーペンターズの「Close To You」や、映画『明日に向って撃て/Butch Cassidy and the Sundance Kid (1969)』の挿入歌「雨にぬれても/Raindrops Keep Fallin' on My Head」だろうと思います。これらの曲は私が子供の頃の70年代初期にラジオでもよく流れていました。

ロンドンで2000年頃に聴いた曲は60年代の曲が多い。楽曲を歌った歌手の方々も大御所…Dionne Warwick、Dusty Springfield他にも沢山いるんだけれど、楽曲そのものが歌手の方々よりも有名だったりするのでどなたの曲かわからなくなるほど。また一度ヒットした曲を、別のアーティストがカバーして数年後にまた大ヒットしたりする…つまりそれぐらいバート・バカラックさんの曲が素晴らしいわけです。

まさに伝説の巨人。まさかこのお方が拝見できるとは思わなかった。


当日、開場時間から1時間ほど遅れて会場に入ったらもう席はみっちりと詰まっていた。後ろのほうの合い席をかろうじて見つけて座る。同席になった方の話では、この日は完売だったそうだ。そういえば入り口で、旅行者らしい家族づれがUターンをして出て行くのを見た。どうやらチケットは事前に完売していて入れなかったらしい。

ライブ開始は午後8時がちょっと過ぎた頃。フルバンドのメンバーが出てきて席についても、バカラックさんはしばらく出てこない。ちょっと席を外して戻ってきたら、ちょうどバカラックさんがステージに出ていらしたところだった。

ああやっぱりお年を召していらっしゃるのがわかる。観客は温かく大先生を迎える。皆見守るようにバカラックさんを見つめる。

すぐにライブを開始。バカラックさんはステージ中央のピアノの前。淡い水色のジャケットの背中が見える。シンガーは右手に3人…女性2人に男性1人。その後ろにドラムス。中央後方のキーボード前に座った男性シンガーがもう一人。左手の手前にはキーボード。奥にホーンとバイオリン。ベース(この辺りはよく見えなかった)。小さいステージなのに舞台上に人が多い。

セットは有名曲につぐ有名曲。有名曲ばかりを少しずつとり上げたメドレーが続く。実はバカラックさんの作曲だと知らなかった曲も何曲かあってびっくりした「え?これもバカラックさんの曲?」

演奏された曲をヒット曲リストをなぞりながら思い出してみる…たぶんこんな曲を演ったと思う(演らなかったのも入っているかも)

Wives and Lovers
 Jack Jones (1963)
Walk On By
 Dionne Warwick (1964)/Isaac Hayes (1969)/ Gloria Gaynor (1975)/ Average White Band (1976)
A House Is Not A Home
 Brook Benton (1964)/ Dionne Warwick (1964)/
(There’s) Always Something There to Remind Me
 Lou Johnson (1964)/ Sandie Shaw (1964)/ Dionne Warwick (1968)/ R. B. Greaves (1970)/ Naked Eyes (1983)
What’s New Pussycat?
 Tom Jones(1965)
Alfie
 Cilla Black (1966)/ Cher (1966)/Dionne Warwick (1967)
The Look of Love
 Dusty Springfield(1967)/ Sergio Mendes & Brasil ’66 (1968)/ Isaac Hayes (1970)
I Say a Little Prayer
 Dionne Warwick (1967)/ Sergio Mendes (1968)/ Aretha Franklin (1968)
Do You Know the Way to San Jose
 Dionne Warwick (1968)
Promises, Promises
 Dionne Warwick (1968)
This Girl’s In Love With You
 Dionne Warwick (1969)
I’ll Never Fall in Love Again
 Burt Bacharach (1969)/ Dionne Warwick (1969)
Raindrops Keep Fallin’ On My Head
 B. J. Thomas (1969)
(They Long to Be) Close to You
 The Carpenters (1970)/ Jerry Butler featuring Brenda Lee Eager (1972)/ B.T. Express (1976)
Arthur’s Theme (The Best That You Can Do)
 Christopher Cross (1981)
That’s What Friends Are For
 Dionne Warwick and Friends (Elton John, Gladys Knight and Stevie Wonder)(1985)
On My Own
 Patti Labelle and Michael McDonald (1986)

…すごいですね。とにかくヒットに次ぐヒット曲。バカラックさんの公式サイトで、ヒット曲リストを見て動画サイトで調べ直したんだけれど、実は曲を知っているのに曲名を知らなかった曲もいくつかあった。それぐらい楽曲がよく知られている。70年代に子供時代を過ごした世代には馴染みのある曲が多い。当時ラジオでよく流れていたのだろう。また「Arthur’s Theme (The Best That You Can Do)」、「愛のハーモニー/That’s What Friends Are For 」、「On My Own 」等の80年代のヒット曲が彼の作品だったとも今まで全く知らなかった。

 
ライブではシンガーの方々が殆どの曲を歌うのだけれど、バカラックさんご本人も数曲お歌いになりました。そのリストは、
Walk On By
A House Is Not A Home
Alfie
The Look of Love
(They Long to Be) Close to You
…だったかな…しゃがれ声、弱々しいお声だけれど、それでもバカラックさんご本人の声ならありがたい。理由もわからず感激して思わず涙が出そうになる。
 
MCはユーモアに溢れ、
観客に向って「ディナーはおいしい?ディナーを食べる人達の前で演奏することはあまりないんだよ。」
それから「Mexican Divorce (1971)」を演奏する前には「離婚には3種類あってね…①弁護士を雇ってやる離婚(高くて時間がかかる)②メキシコに行ってする離婚(ほぼ法的に大丈夫)③ラスベガスに半年間(仕事/ライブをしながら)住んだら法的に離婚できる…僕がやったのは③番なんだけどね」(笑)
また、バカラックさんは現行の政府がお気に召さないらしい(←笑)。
そして20代半ばの息子さん(!)をステージに呼び、彼にもキーボードを弾かせ「息子と一緒にステージに立てるのはとても嬉しいね」

お声にもお歌にも強い力はないけれど、それでもピアノのリズムがヨレることはない。音もしっかりとよく聴こえる。繊細な綺麗な音。何よりもバカラックさんがステージでの演奏を楽しんでいらっしゃるのが伺えるのが嬉しい。

セットが進み、会場中が立ち上がり大きな拍手が鳴り響く中、バカラックさんが一旦ピアノを離れて階段を下りたところで本編が終了…と思ったら、楽屋に引っ込まずにそのまま階段を引き返してまたピアノの前へ。アンコールでやった曲について「これは新曲なんだよ。だからまだあまりやっていない(新曲です)」。最後に「みんなこの曲の歌詞を知ってたら歌ってね」と「雨にぬれても/Raindrops Keep Fallin' on My Head」のイントロが始まる。皆で一緒に歌う(海亀はこの曲の歌詞を知らないのでリズムに合わせてクチパクをしましたトホホ)。曲が終わっても演奏は止まらない。そのままバンドの演奏が続き、観客全員が立ち上がって手拍子をする中、バカラックさんがピアノの前を離れてステージを降りる。楽屋に入る瞬間の横顔がチラッと拝見できた。


素晴らしいショーでした。演奏される全ての曲が気持ちいい。バカラックさんの曲は宝物。バラードではゆっくりと時間が流れる。美しいピアノ。極上のシンガー達のボーカル。綺麗なメロディ。穏やかなリズム隊。歌いたくなる心地よい優しい音楽。本当に楽しい時間でした。

バカラックさんに会えてよかったです
心から感謝してます
ありがとうございました
💕💕💕 Thank you 💕💕💕

 
 
★Bart Bacharach Live
Bart Bacharach (Piano, Vocals)
Singers
Josie James
Donna Taylor
John Pagano (Vocals & occasional Guitar)
Band
Bill Cantos (Keyboards & Vocals)
John Ferraro (Drums)
Dennis Wilson (Woodwinds)
Tom Ehlen (Trumpet/Flugelhorn)
David Coy (Bass)
David Joyce (Keyboards)
Eliza James (Violin)

 

2017年10月10日火曜日

LIVE★Tommy Emmanuel/トミー・エマニュエル Live!! -7 Oct 2017




Classical Gas [Mason Williams] | Songs | 

Daytripper / Lady Madonna (The Beatles) | Songs |

キレッキレよ 痺れる




行ってきました!

このお方を今回見に行った理由はただひとつ…大昔、たぶん20年ぐらい前にこのお方のライブをロンドンで1度だけ拝見したから。場所はSouthbank Centreの小さいホールだったと思う。当時の友人に連れられて見に行って、ライブの後でステージから降りてきたトミーさんとちょっとだけお話もした。とてもフレンドリーで気さくな方だったと思う。当時のトミーさんの髪はダークだった。

普段からロック寄りの好みなので、アコースティック・ギターにはそれほど馴染みがなかったのだけれど、初めてトミーさんを見た時に「すごいお方だな」と思ったのは記憶している。…しかしながら凄かったことは覚えていても彼の「音楽」はあまり覚えていなかった。もう一回見にいこう。拝みに行こう。

いやー…パワフルでした。

楽器は(専門的になんて呼ぶのかわからないけど)電気の通ったアコースティック・ギターだけ。ステージ上はトミーさんがお一人。3本のギターを取り替えながら、大変元気のいいライブをなさる。

キレッキレ
キレるキレるきれっきれっ斬れ斬れ男一匹ギター侍!
ふわーかっこいい。


最初は黙々とただただギターを演奏なさる。1曲目から元気がいい曲。ステージから少し離れた場所で見ていたのだけれど、まず音の綺麗さ、クリアさに驚く。1曲目2曲目と元気のいい曲で、3曲目か4曲目あたりからビートルズメドレー…それが止まることなく暫く続く。ビートルズのメドレーが終わったのが開演から20分ごろ。それまでMCはなし。

このライブのスタートのセットは、おそらくアコースティック・ギターで演者一人という(比較的穏やかな)セッティングで、観客の目と耳をまず惹きつけるため意図的なものなんだろうと思います。最初の30分ぐらいでノリのいいアップテンポの曲と、馴染みの深いビートルズの曲をやってお客の心をがっちりと摑む。いったん心を奪われたら観客はどんな曲も真剣に聴き入ってしまう。セット作りの技なんだろうと思います。

様々なリズムの曲を演奏なさるのに、ペースがしっかりと安定しているのも凄い。過去に見たギターのソロのライブでは、アマも(時には)プロでさえも、曲中に(ダレや勢いで)時々ペースが微妙に変わることに気付く事があったのだけれど、このお方はお一人なのにリズムがヨレることがない。しっかりと安定したリズムをキープ。どんなに複雑なフレーズでもリズムが安定しているから、アコギ一本なのにロックバンドのようにノリが気持ちよくて身体が揺れる。これ、実は何にも増してこのお方の一番凄いところなのではないかと思った。

ビートルズのあとには穏やかな美しい曲。1014連の音が連なってハープのように聞こえる綺麗な曲。そのあたりからMCでたびたびお話をなさるようになる。

ジョージ・ハリスンの「While My Guitar Gently Weeps」。バート・バカラック/カーペンターズの「Close To You」。数曲の早い曲。違う曲2曲を同時進行で演奏して1曲として成り立たせてしまう職人芸の曲。すごいです。

それから師匠チェット・アトキンス/Chet Atkins氏との逸話と彼の曲のメドレー。このメドレーが終わった頃に会場中観客全員が立ち上がる。大きな歓声と拍手。いつものことだけれどお客さんのノリがよくていい。

アンコールはジョン・レノンの「Imagine」。曲中の「ふっふーうぅ←オットこれは「ゆっうーうぅだそうだ…シランカッタ😅」の後トミーさんに促されて会場中で合唱。この曲は覚えておくとなにかと便利な洋楽No.1。イマジンをみんなで一緒に歌ってライブは終了。


トミーさんも楽しそうでした。皆に向って「いい観客だね」などと言ってくださる。2回目に会場中で立ち上がった時、拍手に合わせて「イチニ、イチニ…」と2拍づつ左右に身体を揺すって手を叩きながら踊っていたら、トミーさんが(どうやら)こちらに気付いて下さって合わせてギターをトントントントンと叩いて下さったぞギャー!!!!!!! ほんとかね…思い違いかもしれないけれど…でもいいやうれしいぞ キャートミーさん踊ります踊ります拍手でも何でも海亀踊って応援イタシマス…いい思い出ができたワヘヘ。

トミーさんがかっこよくて、安定したリズムも、技がキレキレでノリがいいのも気持ちいい。とても楽しかったです。ギター1本でお一人なのにロックバンドのように観客を沸かせる

男一匹ギター侍
…くーかっこいい
 
トミーさん来て下さって有り難うございますLove Love Love
😍😊😍😊😍Thank you


2017年10月5日木曜日

フランスの俳優の色気について考える




Olivier Gourmet

映画『ルージュの手紙/Sage femmeThe Midwife』の感想を書いたついでにもうひとつ。フランスの俳優のルックスに関してひとこと言わせてくれ。ずいぶん前から気になってたこと。




フランスの俳優さん達って、
どうしてあんなに個性的なルックスのおっさんが多いの?


いやいや文句じゃないんです。いいんです。皆さん素敵なんです。しかしフランスの俳優さん達は、皆さん「あれれ」と思うほど個性的なお顔の方が多い。どうしてなの?

国民的俳優ジェラール・ドパルデューも癖のあり過ぎるお顔でしょう? 近年ならロマン・デュリス…一見かっこいいのに口元が個性的で笑うとおっさん。この映画のオリヴィエ・グルメさんも…何処から連れてきたのよこのおっさん?…と思った。ジャン・レノ?ヴァンサン・カッセル?皆さん癖がありますよねぇ。

それなのに映画で見ているとどの俳優さんも素敵に見えてくるから不思議。この映画のオリヴィエさんも、主人公のクレールさんのことが大好きで、部屋に入ったところでチュッチュッチュッチュとチューをするところはなかなか可愛い。一緒にいると楽しそうだ。


もちろんフランスにはお顔の綺麗な俳優さんもいるんです。若い頃のアラン・ドロンは言うまでもなし。近年では(1作品しか見てないけれど)ギャスパー・ウリエルも綺麗。30年前のランベール・ウィルソンもよかったですねぇ。もっと大昔にはジェラール・フィリップなんていうお方もいました。

しかしなんだかね…フランス映画ではただ綺麗なお顔の俳優さんというのはどうも安っぽく見えてしまうんですよ。不思議。どうしてでしょう。フランスでは綺麗なお顔の俳優さんはあまりありがたがられないんだろうか?

実は若い頃に綺麗だった人…ランベール・ウィルソンも、年取ってからはちょっと変な癖の強いおじさんになってるんですよね。決して整形で若さを保ったりはしていない。年を取って皺が増えた方が味が出て良くなっている。


フランスの俳優さん達に個性的な外見の方が多い理由は、おそらくフランスの女性達が綺麗なだけの男性を求めないからなんですよね。ポイントは色気

…人の色気とは必ずしも美しいからあるというものではない。

 
例えば男性でも女性でも綺麗なモデルさんにはまったく色気を感じなかったりする。左右対称完璧に整った美しい人というのにはあまり色気がないものなんですよ。年を取ればよくわかる。人は他人の外見のちょっと変なところ、ちょっと妙なところに色気を見出すものなのかもしれない。
 
…ちょっと鼻が大きすぎたり、ちょっと頬が緩んでいたり、左右非対称だったり、目が大きすぎたり小さすぎたり、口が大きすぎたり、歯が出ていたり、髪が薄くなっていたり、髭が濃過ぎたり、眉毛が太過ぎたり、頬に傷痕があったり…(もちろん好みはさまざまではあるけれど)

人は不完全なものに生々しい色気を見出すものなのかもしれないと思う。そういうのをフランスの女性達はよくわかってるのだろうと思う。男性の魅力は特にそうですね。ジェラール・ドパルデューさんなんて相当癖が強いお顔。だけど彼はフランスの国民的大スターでしょ。モテモテでしょう?

おもしろいですよね。どうしてでしょうね。そういえばアメリカの整ったお顔の俳優さん達には、フランスの俳優さん達のような強烈は色気をあまり感じないです。

…人は不完全さに色気を見出す

ちょっと思いついたので書き留めておこう。

この映画のオリヴィエ・グルメさんは強烈な色気のある俳優さんだと思います。この映画『ルージュの手紙/Sage femmeThe Midwife』の穏やかなトラック・ドライバーはいい感じのキャラ。全く好きなお顔じゃないのに不思議。…しかし私は近年どの俳優さんが好きなのだろう。

 
 
 

映画『ルージュの手紙/Sage femme/The Midwife』(2017):春の突風おばちゃん








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Sage femme2017年)/仏/カラー
117分/監督:Martin Provost
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 1ヶ月程前(だったかな)に見た映画。忘れないうちに感想を書いておこう。映画を映画館で見るのは久しぶり。もちろんカトリーヌ・ドヌーヴ様を見に行く

日本では映画祭で公開されたそうだ。一般公開は年末らしい。

主人公はパリ郊外に住む優秀な助産婦クレール。真面目な女性です。学生の息子さんが一人。シングル。

その彼女のもとに父親の昔の愛人ベアトリスから突然の電話。彼女とはもう30年間会っていない…「大切な話があるの」。30年ぶりに会うことになった父の娘と父の愛人…決して穏やかな関係ではない。


主人公クレール(カトリーヌ・フロ)は真面目。苦しいほどに真面目。地味。化粧っ気も無い。週末は小さな菜園で野菜を育てる。実は父親と別れた実の母も真面目で厳しい母親だったらしい。クレールは実の母に似ているのかもしれない。真面目で誠実。しかし堅苦しい。

一方、父の昔の愛人ベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)は派手なおばちゃん。お酒とお肉とタバコとギャブルを好む派手なおばちゃん。きっと男も好きなのよね。派手なドレスに濃いメイク。自由。自分勝手。それでも人生を楽しむ達人。陽気で歌を歌うことが好き。

この二人…全く正反対。さてどうなる?


佳作です。いい話。フランスの映画はこういう小作品でもちょっと考えさせられる人生哲学を含むのがいい。

人はどう生きるべきか…? 「…べきか?」なんていうものでもないんだろうなぁ。しかしこの映画のメッセージは明確。

真面目で誠実…しかしちょっと笑顔の少ない地味な中年の女性クレールの心が、型破りで自由な派手派手おばちゃんの突然の登場によって少しずつ少しずつ柔らかく溶けていく話です。


★ネタバレ注意

(追加と訂正:両親の離婚はベアトリスとは関係ないらしいので訂正しました…実はよく覚えていない。それよりもクレールの父親の話があまりにも深刻なので話の辻褄があうのかと疑問に思い始めてしまった。許せるものなの?)


ぶっちゃけ二人の関係を簡単にまとめると…

春の突風のように突然やってきた派手なおばちゃんベアトリスは、クレールの父親の昔の愛人。子供の頃に一時期だけ一緒に暮らしたパパのガールフレンドの綺麗なお姉さん。ところがある日突然、ベアトリスはパパとクレールを捨てて突然出て行ってしまう。パパは傷ついた。それから30年も経った…。

ベアトリスとは、クレールのパパを酷く傷つけ、家庭を引き裂いた女。クレールにとっては許しがたい敵なのよ。

だからそんな女が30年間も全く連絡してこなかったのに突然電話してきて「会いたい。助けてよ」と言ってきても、そんなの関係ねーよって話なんです。そりゃそうだわ。


ところがベアトリスは重い病気にかかっているという。そして身寄りもなく独り者。そこで昔の(仮の)家族…クレールに電話をしてきたというわけです。

クレールは優秀な助産婦さん。日々女性達を救い助ける職業に就いている。そんなクレールも最初は突然現れたベアトリスに憤っていたのだけれど、彼女の病状を知って彼女を放ってはおけない…クレールは優しい女性なんです。

すごーく迷惑な人なのに…昔パパを酷く傷つけた人なのに…家庭を引き裂いた人なのに…30年間も全く連絡してこなかったのに…もう自分には全く関係のない人なのに…、クレールはベアトリスを放っておけない。一緒に時間を過ごすにつれてゆっくりと二人の間の氷が溶け始める。


ベアトリスは一緒にいれば楽しい女性。あれから30年も経った。クレールも大人…49歳。過去の思い出は悲しいものだけれど、今大人になって知るベアトリスは確かに魅力的な女性

恋を謳歌し、歌を歌い、お酒と美味しい食事を楽しみ、ギャンブルを楽しみ…ベアトリスは人生の楽しみ方をよく知っている。クレールの父親もそんなベアトリスの陽気な性格に惹かれたのに違いない。


ベアトリスが現れたのと同じ頃、クレールにも恋人が出来る。借りた畑の隣の男。同世代。もっさりとした地味な外見のトラック・ドライバー。…実は彼も恋とワインと食事を楽しみ歌を歌う…人生の楽しみ方を知る愛情深い素敵な男性だった。

このもっさりとしたボーイフレンドがなかなかいい。美男じゃないんだけれどちょっといい。普通の地味な男…だけどきっとこの人と一緒に過ごす時間は楽しいはずだ。

冷たく堅苦しかったクレールの日常に温かい風が流れ始める。


春の突風のようにやってきたベアトリスおばちゃんは、クレールの冷たい日々に春風を吹き込みいろんなものを吹き飛ばし、ぽかぽかと暖かい春をつれてくる。そしてある日また突然去っていく。

ちょっといい話なんですよね。ベアトリスおばちゃんは春の妖精のようだわ。カトリーヌ・ドヌーヴ様がステキです。

フランスの映画には、人生の美学や哲学を感じることが多い。人は何のために生まれてきたのか? 人生とは楽しむ為にあるのではないか。人生とは、美味しい食べ物とワインと恋と歌と美しいものを楽しむ為にある。人生は短し。いいですねぇ…ちょっといい話だと思うわ。