能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2012年5月29日火曜日

映画『バーニー みんなが愛した殺人者/Bernie』:田舎を笑うべからず


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Bernie2011年)/米/カラー
104分/監督; Richard Linklater
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旦那Aの選択で鑑賞。うはー…これは…なんといったらいいか…よくわからん映画。こんなに妙な映画も珍しい。監督はR・リンクレイター。ジャック・ブラックは全然好きな俳優ではないけれど、シャーリー・マクレーンが出ている…。マシュー・マコノヒーも出ている。ん? ま、いいか…と見に行くことにした。正直に言うと「金返せ」うひゃー。

テキサス州の田舎の中の田舎。コテコテの田舎訛り。ご近所さんはみんな知り合いで、人の噂話も絶えない小さな町。何かが起これば翌日にはみんな知るところとなる。週末にはみんな教会にいく。個々の家の壁は重厚な木製のパネル。そこに狩猟でしとめた鹿の剥製の首が何個も突き出している。壁紙は赤と緑の縞模様。家具も重厚なオーバーサイズ。いかにも古きよき時代のアメリカ…なんとも重苦しくて古臭い装飾。そうこの町、たぶん60年、70年代ぐらいから住人も生活も習慣もなーんにも変わっていない。


ともかく、ジャック・ブラック演じる葬儀屋の男。この人がいい人過ぎるいい人。みんなに優しくて親切。話術も巧み。教会ではチャリティーやコーラスを仕切る。地元の劇団でも活躍。町中の人気者だ。そんな彼が、シャーリー・マクレーン演じる嫌われ者の未亡人のばあさんと仲良くなる。彼の親切心から始まった友情がいつしか家族以上の信頼関係に変わる。そのばあさんがある日姿を消す。半年後、冷凍庫の中で死体で見つかる。この葬儀屋の男が殺したのだ。その後、地元の検事のマシュー・マコノヒーが彼を終身刑にするというお話。

これが実話の再現映画なのだ。ドキュメンタリー風コメディ。主要な人物以外は、地元の実在の人に本人を演じさせている。彼らの台詞は事実を元に書かれた脚本なのだが、この素人の役者達が、いかにも実話らしく葬儀屋と未亡人の噂話をカメラに語るという構成。実験的な構成から芸術映画枠なのだろう。


とりあえず、いいところから。ジャック・ブラックが役者をしているのを初めて見た…(とはいってもどうでもいいのだけど…とにかく苦手なのだこの人)。この役では、いつものようにうるさい顔芸もなくおとなしく役を演じている。はまってると思う。それにマシュー・マコノヒー。この人が、びっくりするぐらいかっこわるい田舎の熱血検事をやっている。珍しい。旦那によると珍しく上手いらしい。普段は役者としてまあまあなこの二人が、結構役者として仕事をしている。

ネタバレ注意


さて、辛口…というより、私個人にとって、なんで分からない映画なのか…金返せ映画になってしまったのかを考えてみたい。

1. 私は個人的に、アメリカの保守的な田舎が苦手である。保守的過ぎて実は大嫌いだ。なんというか理解不可能なのだ。アメリカにはダーウィンの進化論を未だに信じない人も結構いる。うひゃー頭が痛い。なのでこういうアメリカの田舎の話はどうでもいい。興味なし。これは私個人の嗜好なのでゴメンナサイとしか言えない。(うーん言葉がきついので誤解されるかもしれないので追加するけど、いい田舎のイメージならいいんです。ドリー・パートンは大好き。嫌なのはあくまでも頭の固い人々。)

2. いくら田舎の話とはいっても、この映画で描かれた町、実際にはあそこまで田舎臭くはないだろうと思う。監督の趣味だかなんだか知らないが、実際にはイノセントな田舎の方々をあそこまで笑いものにしていいものか…。全員が洗練されてなくて、住んでる環境も、3040年変わらないように描かれているのも疑問。みんなテレビだって見るし、雑誌だって買うのだから、あそこまで時間が止まったようには生活していないだろうと思う。田舎を馬鹿にしてるんだろうか。

3. 小さな田舎町の殺人事件。どこにでもありそうな話だが、三文記事仕立てのこの映画、決しての品のいい話ではない。人が亡くなっているのにゴシップ調なのだ。不快である。

4. 別に田舎町の殺人事件を映画の題材にしてもいいのだけど、妙なコメディ仕立てなので深みは一切無い。心理描写も無い。未亡人がなぜそこまで嫌われるのか、葬儀屋がなぜそんなにイイ奴なのか、独身で彼女もいないのはどうしてなのか(実はゲイらしい)、未亡人と葬儀屋がなぜ仲良くなったのか…そんな踏み込んだ人物描写や心理劇なんて一切描かれない。結局、近所の人達のゴシップレベルなのだ。これは見ていて辛い。

5. 殺人事件のあった地元の実際の近所の人達を集めて、その事件の再現映画を作る。それはいいのだけど、しかしなぜ脚色までして、コメディ調にするのかが解らない。なによりも亡くなった未亡人が、(殺されているのに)未だに嫌われ者なのが理解不可能。人が亡くなっているのに、近所の人がそれをあざ笑うようにカメラに向かって話すのもどうかと思う。彼女の事を語る地元の人々は、そんなモラルさえ持たないほど馬鹿なのかも疑問。こんな脚本を実在の方々に語らせて、無理やり意地悪な田舎町の住人に仕立てあげるのも非常に理解不可能。不快である。

とかなんとか…。映画として十分にありえる設定だとは思うのだけれど、どうもこの映画の意図がわからない。何が言いたいのかさっぱり解らない。終身刑を食らった殺人犯を可哀想だと言いたいのか、それとも、殺されたお年寄りをあざ笑い殺人犯をイイ奴だと言う田舎者を笑いものにしたいのか…監督の意図が全く解らない。いずれにしても不快である。

この映画の登場人物を誰も好きになれないのも辛い。彼らの全員が実在の人達なのだから困ってしまう。会った事もないどこかの町の普通のおじさんおばさん達を嫌うために映画を見る必要もなかろう。ほんとうに困ってしまう。しかしそんな普通のおじさんおばさん達がくだらないゴシップをカメラに向かって話すのを延々と1時間半も聞いていると、げんなりしてしまう。うわぁ頭が痛い。困った困った。これはもう金返せである。いやになるぜ。


ちなみにこの映画、評価は決して低くない。芸術映画枠だからだろうか。私は何が理解できなかったのだろう? ブラックユーモアのセンスだろうか? 私の英語力の問題もあると思う。結局外人の私には解らないということか。誰か教えて欲しい。

ちなみに旦那Aは自分が選んだ映画だったので、なんとか良い所を探していたようだが「どうも居心地の悪い映画」だと言った。
うむ、私もそう思う。

ジャック・ブラックのファンの方は、彼の役者ぶりを楽しめると思います。歌も上手。しかし映画が地味過ぎて、日本公開はないような気がする。