2016年11月10日木曜日

2016年米大統領選ウォッチ-その7: 一夜明けて・アメリカはこれからどうなっていくのだろう?



昨日は…まぁ頭に血が上ってうだうだ書きましたが、それにしてもすごいことになったなぁ。トランプ氏、とうとう大統領ですか…。

昨日、勝利宣言のため舞台に上がってきたトランプさんは

あまり嬉しそうではなかった。

責任の重みをひしひしと感じているんでしょうね。それにしても彼は最初から本当に大統領になるつもりだったのか…。
 
…そう考えてしまうというのも、今回の大統領選に向けての彼の言動があまりにも型破り過ぎたから。あまりにもバッドボーイ過ぎて、常識的に考えてもまさか彼のような人が大統領になるわけが無い…と私は思っていた。3度の討論会での態度を見ても、実際に彼に投票する人がいるのだろうかと思っていた。それぐらい酷かったです(笑)。彼は勝つつもりで大統領選に望んでいるのではないかもしれない…とさえ思えた。
 
対するヒラリーさんは全て正しい態度、正しい言動、正しい政策のプラン、正しい正しい正しい…。裏でどんなに酷い事をやっていようとも、とにかく勝つつもりで全力をつくしていた。必死だった。本当に必死。彼女は絶対に勝つつもりでいた。
 
結果はご覧のとおり。トランプ氏の勝利です。
 
 
昨日私の気持ちが沈んだ本当の理由は、この選挙の結果でアメリカの闇が見えたと思ったから。
 
この国には弱者に対して優しくない右寄りの保守派…頭の固い懐古主義の白人至上主義者が少なからずいる。今回の大統領選で、それがあまりにもはっきりと見えたことにがっかりしたのです。
 
個人的にはトランプさんをそれほど悪い人だとは思わないです。彼ご本人はニュヨーク市で生まれ育ってビジネスで成功をおさめた方ですから、常識的に考えて十分にモダンな人物だろうと思うし、特に危険な程の懐古主義者だというわけでもないだろうと思います。
 
じゃあ何が問題なのか?
…問題は、トランプさんに投票した人々の意識です
 
 
(これはあくまでも個人的な意見ですが)私が心配するのは、今回この大統領選でトランプさんが勝ったことによって、アメリカに少なからず存在する危険なほど保守的な人達が力を持ったのではないかということ。「危険なほど保守的な人達」とは、50年前で時計が止まっている人々。変革を求めない人々。古き良き時代を懐かしがって何も変えたがらない人々です。
 
彼らの言う「古き良き時代」とは、
 
男性優位。白人優位。女性やマイノリティの権利獲得を喜ばない。(根拠の無い)神様の決めた決まりを変えたがらない。(根拠の無い)同性愛者への嫌悪。自分とは違う他者への偏見と排斥。異文化+外国人排斥。地球温暖化(などよくわからないこと)は考えたくない。(必要であっても)政府には個人の生活に介入して欲しくない。(必要であっても)税金を上げるな。(必要であっても)物事を変えるな。年金を十分によこせ。銃を自由に持たせろ。都合のわるい他人は敵。都合の悪い外国は敵。アメリカは強くなければならない。アメリカは偉大でなければならない。
…そういうことをあたりまえだと思う時代。そんな偏狭な考えの人々が疑問を持つことも無く幸せに暮らせる時代…ということです。
 
 
アメリカという国は今まで、時代に沿ってより素晴らしい国になるために変革を受け入れて常に戦ってきたんですね。実際にアメリカはつい50年ほど前までは人種差別があたりまえに存在した国。オバマさんが大統領になれたのは、アメリカの国民が長い時間をかけて偏見に立ち向かって勝った結果。変化と進歩を国民が受け入れた結果だったんですね。
 
それなのに今回の大統領選では、国民の意識が30年ほど時代を逆行したように思えてしまった。
 
トランプさんが勝つために口にした言葉は「イスラム教徒は追い出す、メキシコ人は追い出す、壁を作る」…そのような他者を排斥する言葉。それを多くのアメリカ人が大喜びで賞賛した。

アメリカにはこれほど多くの古い考えを持った人々が燻っていたのか?
 
怖いです。今まで誰も口には出さなかったのに、実はアメリカにはこれほど多くの排他的な保守派が潜んでいた…それが今回はっきりしたわけです。
 
 
アメリカの保守派の人々の偏見の闇は深過ぎて底が見えない。この国の保守的な人々の「自分と異なる他者に対する警戒心」は他の国の人種問題とは異質だと思う。個人的な意見ではありますが、私が英国でも多少感じた偏見と、アメリカの偏見とは質が違うと思う。
 
英国の偏見のあり方には「自分と異なる他者」に対して「面倒くさいな」とは思っても、何かをきっかけに相手を受け入れる余裕があるんですね。英国人にとって「自分と違う他者」とは面倒くさいと同時に「新しい何かを教えてくれる存在」でもある。だから偏見を超えて「他者」を受け入れる場所も必ず用意されているんです。仮に偏見を持ったとしても、せめて偏見は悪いことだという意識がほとんどの国民に存在する
 
ところがアメリカの超保守的な人々の偏見のあり方は、「自分と異なる他者」とは「面倒くさい他者」であると同時に「係わり合いになりたくない、知りたくない他者」であり、それがいつしか「面倒と災いをもたらす敵」に変わることもある。そして彼らがそのような偏見に罪悪感を持つかどうかは状況による場合によっては罪悪感を持たないこともある。それがアメリカの保守的な人々の怖いところ。
 
昨日のエントリーで私が「嫌いだ」と書いたのはそういう人々のことです。
 
 
この考えはあくまでも私の個人的な経験から出てきたものです。今回の大統領選を追ってきて、こういうことをウダウダとダメ押しをするように記録しておこうと思う理由は、実際には私もこの国ではマイノリティに属するからです。永住権は持っていても外国人ですから選挙権があるわけではない。大統領選も外から様子を見ることしかできない。それで自分の住む国の温度や空気は理解しておきたい思うからです。
 
トランプさんが大統領になることに関してはお手並み拝見。彼が悪い人だとはあまり思わないけれど、おそらくかなり危なっかしい大統領になるだろうとは思います。しかしそれ以上に、私が見ておきたいと思うのは、彼の周りのプロの政治家達…共和党の保守派の政治家達がこれからどう動いていくのか。そしてそれをサポートする保守派の国民が、この国でどのような空気を作っていくのか? 
 
アメリカには正しい国、開かれた国であってほしい。近年やっと自由と平等を勝ち取ったはずの「社会的な弱者」がまた辛い思いをする国にならなければいいと思う。外国とも無駄な諍いを起こすことなく、環境に優しく、目先の利益だけを追い求めるのではなく、未来のことも考える国であってほしい、教育に十分な投資がなされて国民の意識を正しい方向に導いてくれる国であってほしい。アメリカには時代に沿った正しい国であってほしいと思います。