能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2015年1月27日火曜日

映画『エクソダス:神と王/Exodus: Gods and Kings』(2014):伝説ロマンは楽しくなくちゃね




 

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Exodus: Gods and Kings2014年)/米/カラー
150分/監督:Ridley Scott
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「グラディエーター」「キングダム・オブ・ヘブン」等、歴史物のエピック映画で有名なリドリー・スコット監督の最新作。…だって「グラディエーター」の監督ですもの。そりゃー見に行かなくっちゃ。こういう大袈裟な話大好き…で去年の終わり頃に見に行った

行く前の期待は半々。まずリドリー先生ならやってくれる…という期待。しかしながらお話は、あの有名なハリウッド映画「十戒」(1956年)それにアニメーションの「プリンス・オブ・エジプト」(1998年)と同じく旧約聖書からの出エジプト記=Exodus。要はあの超超超有名な「十戒」のリメイク。うわー勝てる気がしない…。いや…リドリー先生だもの彼ならやってくれるはず…というわけで期待と不安を胸に映画館へと向う。

「十戒」なんて…チャールストン・ヘストンのモーゼにユル・ブリンナーのラムセスなんて、真っ向から喧嘩する相手じゃないですよ。あまりにも大きすぎる。勝てる気がしない。なぜこの題材を選んだのよリドリー先生?なぜこれをやろうと思った?「十戒」と喧嘩をする前に、そもそもなぜあれほど有名な話をまた再度リメイクするのだ…?何故だ何故だ何故だ?

というわけで見た結果…。


ネタバレ注意

CG、スペシャル・エフェクトが面白かった。巨大なワニが踊ったり、ハエがわんわん押し寄せたり、カエルにイナゴ、赤い川、紅海はチャールストン・ヘストンがミラクルを起こしたようには割れなくて大きな津波。エジプトの街の様子も素晴らしい…昔やったPCゲームのPharaohを思い出してニヤニヤ。エジプト勢の二輪戦車が岸壁を走るのもかっこよかった。ビジュアル的には面白かったです。さすがリドリー先生。

しかしだ…それ以外で「十戒」に勝てたところがあるのか?…うーん…。


どうも映画としてすっきりしない。満足感も薄い。何故だろう…?なんだろうなぁ…どうも私はクリスチャン・ベールの悩みの多いモーゼに納得できなかった。だって…モーゼさんてもっと万民を有無を言わさず惹きつけるだけの超絶カリスマなスーパーヒーローなんじゃないの?それにラムセスさんだってもう少しまともでもいいんではないか…。

考えが上手くまとまらなかったので早速批評サイトに行ってみる。全体に評価がとても低い。Rotten Tomatoesなんて100点満点の28点!オイーッそんなに酷いのか(笑)そんなわけでプロの批評家の方々も満足できなかったらしい。


たしかに「十戒」と比べても最初からずいぶん内容が抜けている。モーゼとラムセスが一緒に育てられたのはいいとして、なぜそこまで憎み合ってしまったのか。モーゼは一人砂漠を彷徨う間に何を思ったのか。なぜ人々はモーゼを信じることができたのか…。かなり脚本が不親切。編集も粗い。人物達が魅力的に見えてこない。

出来の悪いラムセスがモーゼを嫌うのは優秀なモーゼへの嫉妬?。モーゼはモーゼで自分の使命を神様に告げられたのに、なんだかうんうん唸っているばかり。二人とも小物の普通の人々。


問題はきっとそこなんですね。リドリー監督がやりたかったのは、普通の人物達で描くリアルな出エジプト記。モーゼはミラクルを起こす超人ではなく悩み多き普通の人。エジプトの王様も小物で一緒に育った優秀なモーゼに嫉妬ばかりしてる。二人ともあまり頭が良くなさそうだ。神様も突然空から声が聞こえてくるわけではなく、なんだかロンドンの郊外にいそうな坊主頭の不機嫌な中学生(?)。紅海は超人モーゼが杖を振って割るものではなく大きな津波の前の引き潮…モーゼが寝てる間に自然に起こってしまった…なんだがっかり。

別にいいんですよ…モーゼが超人でなくても。普通の人でもいいんです。でもそれならそれで普通の人=モーゼがなぜ数十万の人々を率いるほどの力を持ったのか、それなりの説得力がなければ観客は納得できない。

ミラクルに溢れる聖書物語を無理にでも現実的にとらえるのであれば、この出エジプト記だってもっと現実的に考えてもいい。例えばユダヤ人は奴隷の身ではあるものの、それまでエジプトに数百年間も住んでいたわけで、住み慣れた場所を急に離れることはかなり怖いことだったはず。だって一か八かの賭けですもん。成功するかどうかもわからない。怖いのはエジプト軍だけじゃない。旅の途中に砂漠で餓死するかもしれない。そもそも行った事もない故郷なんてどんなところかもわからない。そんな状態で数十万人の人々がたった1人の人物に希望を託し迷わずついていくためには、その人物に何か特別なもの、信じられる確かな理由がなければいけないはず。例えば「十戒」のモーゼのような絶対的なカリスマとか、結局はミラクルを起こすとか…。なのにあのクリスチャン・ベール=モーゼは普通の人。神様との関係もよそよそしく全然頼りにならなそう。まずいでしょうそれは…。

リアルな人物像で描こうとした伝説の巨人たちはどうもスケールが小さくなりすぎて、結局それが話の大きさに合わなかったという印象。せっかくあれだけのイメージを作ったのに、肝心の内容が雑。人物達も心を寄せられるほど魅力的でもない。

結局大昔の「十戒」が嘘っぽくてもいろいろと楽しかったのにくらべて、このリメイクは、映像は素晴らしいのに内容に深みが無く、ドラマも人物描写も薄っぺらで、全体に映画としての面白味がほとんど無いことが一番の問題だろうと思う。もう少し人物達に踏み込んで魅力的にしてもよかったのに。

ただしリドリー・スコット印のスペシャル・エフェクトは健在。大袈裟なCGを見ておおと思うためならこの映画は十分に楽しめる。リドリー監督は結局大掛かりなアクション映画の監督なんですね。それだけは間違いない。


やっぱり大昔のこういうLegend話は大袈裟だからこそ面白いんだな。伝説ですもん。やっぱミラクル起こしてくれなくちゃ…モーゼさん。

…個人的な意見だけどクリスチャン・ベールさんは英雄には向かない。悩むバットマンもだめでしたね。万人を惹きつけるヒーローをやるならもう少し姿勢を正して元気を出してください