さて、トレバー・ホーン。
ABC - Tears Are Not Enough (1982)
Album: The Lexicon of Love
Released: Jun 25, 1982
℗ 1998 Mercury Records Limited
ABCのバカ売れに売れたアルバム『The Lexicon Of Love/ルック・オブ・ラヴ』。シングル「LOOK
OF LOVE」もむちゃくちゃ売れました。何の括りだったのか今調べたら、この人達もニュー・ロマンティックの括りだったそうだ。ボーカルの人が、背も高いが顔も非常に長いという…(少なくとも当時のティーンの)アイドルにはちと難しいルックスだったにもかかわらず、それはそれは売れました。
というのもこのアルバム、それはもう素晴らしくゴージャスな音作りで、とにかく華やか。ゴージャス、豪華、華やか、派手、きらびやか…。キラキラキラキラそれはもう派手な音でとにかく気持ちがいい。
その音作りを担当したのが、当時非常に売れていたイギリスのプロデューサー、トレバー・ホーン。とにかく当時有名だった人。1979年に「ラジオスターの悲劇」のバグルスで大ヒットをとばし、その後プログレバンドのYESのメンバーになった後、自分のバンドART OF NOISEで実験をやりながらプロデュース業に精を出す。ABCの他にもFrankie Goes to Hollywood、BAND
AIDなどでよく売れました。
さてこのアルバム『The Lexicon Of Love』、音楽の専門的な事はよく分からないけど、とにかく音のアレンジが華やか。細々とした音の質感や強弱のバランスが絶妙。ものすごく綺麗。
この曲は後ろでギターがチャカチャカ始終鳴ってて、単純なベースとドラム、たまに入る合いの手のようなホーン、ピアノ、ベルのようなキーボード、手拍子?…。非常に派手で音数が多そうに聴こえるのに、実は個々の楽器の音の間には隙間が多い。特に最近の(ミッチリと隙間なく音を詰め込んだ)DJ音楽に比べると、楽器の音そのものの構成はスカスカに聴こえる。それなのにこんなにも華やかなのは、個々の音の響きや強弱がとんでもなく緻密に考えつくされているからだろうと思う。
スタジオ録音でしか出せない音でしょう。実際に動画サイトにあがってるライブの音を聴いても、アレンジが単純でこんなにステキに聴こえない。この音がABCのバンドの力なのかトレバー・ホーンの力なのか知らないけど、ほんとに見事です。
アルバム全部がものすごく神経細やかに作られている傑作中の傑作。もし問題があるとしたら曲調が大袈裟でドラマチックすぎるということだけ。最初から最後まで極上の職人芸。曲と曲のつなぎも見事。1曲ごとにバラバラで聴くよりアルバムで聴いたほうがいいと思う。
このアルバムが良すぎて彼らの他のアルバムを全く聴いていない…。