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『Gemma Bovery(2014年)/仏・英/カラー
/99分/監督:Anne Fontaine』
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劇場で見るのは久しぶりのフランス映画。事前の情報でフローベールの『ボヴァリー夫人』の現代版リメイクらしいと聞いた(*注)。原作の本は読んだ。ほぼ160年前に書かれたのに驚くほどリアルな生身の女の話。名作。それなら見に行こう。(*注:実際にこの映画の元ネタは、1999年の英・ガーディアン紙に連載されたコミックだそうです)
ところでこの映画、英語圏では評価がそれほど高くない。低評価の理由は、おそらくこの映画が『ボヴァリー夫人』のリメイクではないことによると見た。
★ネタバレ注意
この映画の主題はズバリ中年オヤジの妄想。その妄想をめぐるコメディがこの映画の主軸。原作の『ボヴァリー夫人』のように愚かな女の転落の人生を描いた映画ではない。この映画の女性=Gemma Boveryさんは現代の自由な女。欲望の赴くままに人生を楽しむ魅力的な女というだけ。
この映画と『ボヴァリー夫人』との繋がりは、話の語り手=主人公のパン屋のオヤジ…文学オタク(元出版業)のオヤジが、隣に引っ越して来た美しい若い人妻Gemmaさんを見て、彼女を『ボヴァリー夫人』と重ねて妄想するという部分のみ。だから『ボヴァリー夫人』の現代版リメイクを期待したらがっかりさせられる。英語圏での低評価はおそらくそのあたりが大きいのではないかと思う。確かに原作のリメイクを期待をしていたら、この映画のユーモアを理解するのはかなり時間がかかる。
おそらく有名な文学作品のリメイクに見せかけて客を引き付けておいて、実際には馬鹿馬鹿しいコメディだったというのは狙っているんだろうと思う。最初は『ボヴァリー夫人』の原作と平行してそれらしく見せているので、そのひねりに気付くまでにしばらく時間がかかった。
しかしそうと理解すれば十分楽しめる。Gemmaさんは魅力的ないい女だし(さすがフランス映画)、英仏カップルの友人もイライラさせられるほど癖があって面白い。Gemmaさんの旦那さんは地味だけどいい人。彼女の若い恋人もなかなか可愛い。そんな人物達を見ながらパン屋のオヤジは一人妄想を重ねるのだけどなんだかしょーもねーな…オイオヤジよ…。
それにしてもフランス映画は女性が綺麗です。かなりの高確率でフランス映画の女性は美しく演出される。皆おんなおんなして色っぽくてね。大柄な英国女優のGemmaちゃんもこのフランス映画の中ではそれはそれはいい女で…。むっちりしたおっぱいとくびれたウエスト、英国産の巨大なお尻が長い脚の上に乗っている。身体の線をなぞるワンピース姿も可愛い。全身がおんなおんなおんなしている。フランス映画を見ると女性が綺麗だといつも思う。肌と肉体がね…生々しいですね。この女優さんはおそらくイギリス映画に出てもこんなにセクシーには見えないですね。フランス映画恐るべし。
田舎の風景が綺麗でお洒落なのもさすがフランス映画。フランスの映画の定番。フランスの田舎=ああ…お洒落…といつも思う。楽しめる。
軽いコメディで心に残る傑作映画とは言えないのだろうけれどそれほど悪くない。軽快でお洒落な佳作。長さも99分と短い。この映画は文学なんか忘れて肩の力を抜いて気楽に楽しんだほうがいい。ユーモアのセンスはドライ。Gemmaちゃんの最後のオチは大変不謹慎だけどかなり馬鹿馬鹿しく可笑しい。
好きな場面…Gemmaちゃんが自宅を出て若い恋人を豪邸に訪ねていく場面。豪邸の敷地内に入る時に、裏口のドアの外で家から履いてきた長靴を脱ぎ捨て、コートのポケットから出した赤いハイヒールに履き替える。そして胸を張って恋人に会いに行く。あのシーンで胸がキュンとした。いいな。やっぱりフランス映画はああいうのがいい。