2013年2月5日火曜日

NHK大河ドラマ「八重の桜」第5回「松陰の遺言」



急に歴史が動き始めましたね。

吉田松陰の刑死。それから井伊直弼の暗殺。早いです。このあたりの大事件は歴史のうねり。時代が動いていく大きな流れ。ところが基本的にこの大河は、江戸の話でもなければ、長州人の話でもない。主人公達は会津の人々。だからどうするのか…。吉田松陰と井伊直弼の存在を会津の人々にからめてどう捉えるかは、話の語り口次第。歴史の大事件に焦点を合わせるのか、それとも遠くで起こっている事件とするのか…。

今回はこれを遠くに起こってる事件と捉えてました。歴史の大転換期なんで、ついつい事件に焦点を合わせそうなのを抑えてますよね。これが歴史時代劇として、いいことなのか悪いことなのかは私には分からないけど違和感は無かったです。私はこれでいいと思う。ただし、やはりある程度の知識はあったほうがより楽しめるだろうと思ったのも事実。

例えば、吉田松陰がいかに大きな影響力をもっていくのか…、井伊直弼と攘夷派の関係は…など分かりづらいこともあった。しかしそのようなことを(会津の人物達を描くドラマで)逐一説明しなければならないのかどうかも疑問。こういうもののバランスは個人個人の好みもあると思う。視聴者がこの程度の歴史なら事前に知っておくべきだというのが答えなんだろう。

大河は長期、50回前後の連続ドラマ。だからいくら歴史ドラマといっても、年表を追うだけではちっとも面白くない。かといってホームドラマばかりになってしまうと、歴史ドラマの意味がなくなる。歴史ドラマの制作は、そのあたりのバランスの判断が非常に難しいんだろうなと思う。


会津の人々の話はとても楽しめました。5回を重ねて山本家の人々の顔も見えてきた。細やかな描写も多い。人物達の関係がとても自然ですごくいい。

今回はうらさんの話がよかった。植物に話しかける物静かで優しい女性。そこにまだ少女の八重ちゃんがお姉さんを慕って話しかける。台所では小豆を洗って皆が嬉しそう。うらさんのおめでたを知る。皆が嬉しそうに微笑みあう台所から見えるうらさんは、畑で一人歌を歌う。この場面でなぜかじーんと来た。いい場面。「事件」の後、うらさんは床についている。女中がかまどの前で泣いている。その横にはざるにあげた小豆。悲しい。その後うらさんが畑に出てきて、豆を見ながら涙を流すシーンもまた悲しい。それを覚馬が離れた場所で聞いている…。

こんなこまかい人物達の描写が繊細ですごくいい。人物達にどんどん引き込まれる。横浜から帰った尚之助のお土産のビー玉やこうもり傘をよろこぶ八重ちゃんと弟のシーンもいい。女子供を無視して、覚馬と尚之助が男同士だけで話を始めるのもいい。

尚之助の長谷川さんもいい。この俳優さんは現代劇ではどうも硬い演技をなさる方だと思っていたけど、尚之助の清潔感や真面目さにあってますね。着物も似合う。覚馬が熱しやすい性格なのに比べて尚之助の物静かなキャラがいい。八重ちゃんと3人の場面はとてもいい。

会津で吉田松陰の訃報を受ける場面もいい。地方にいて大事件を知る驚き、何も出来ない焦燥感、友人を失った悲しみ。勝麟太郎の手紙の文面で「(松陰は)全てを飲み込んで死んでいったそうだ…」も悲しい。それを読んだ覚馬が雪の戸外にふらふらと歩き出す場面もいい。

それにしても、榎本さんと小栗さんはこれで終わりなんてほんとに贅沢な使い方。小栗さんの松陰は、最初ちょっと軽いかとも思ったが、今回最後の場面の迫力は素晴らしかった。ちょっとびっくりした。井伊直弼の暗殺の場面もいい。最後の瞬間、直弼の目線の先にある門。それぞれが短い場面だけど印象に残る。

桜田門外の変の知らせを受けた容保がすっと立ち上がる。この場面の焦燥感もいい。容保の意見が話を次回に繋げていくらしい…。

非常にスムーズに見れました。歴史が遠くで起こっているという描写もこれでいいと思う。山本家の人物達の細やかな描写もほんとにいい。もう人物達に惹かれている。毎回しみじみといいドラマです。