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2024年10月10日木曜日

2024年米大統領選ウォッチ-その3: CBS『60 Minutes』 カマラ・ハリス・インタビュー感想



毎回恒例の大統領候補インタビュー。

CBS『60 Minutes』にて10月7日に放送されたカマラ・ハリス副大統領インタビュー。今回はまずその印象から書こう。和訳は後から。



その前に、まずひとつ。この『60 Minutes』のインタビューは毎回大統領選の恒例なのだけれど、今回トランプ候補はインタビューを受けていない。

トランプ氏は逃げた

トランプ氏は臆病者



だと私は受け取った。それ以外の印象はない。彼はインタビューを受ける自信が無いのだろう。大統領候補なら、正々堂々と自信を持ってインタビューに臨むべき。国民に向かって自分がどのようなことを考えているのかを自分の言葉で語るべきです。出てこないのはダメ。逃げている。

インタビュアーが都合の悪い質問をすることは当然のこと。インタビュアーは「いじわる」をしているのではない。国民が聞きたいことを質問しているだけ。大統領候補がそれを受け止めることが出来ないのなら、彼は大統領になるべきではない。

大統領になったら、国の内外全方向から批判を受けるのはあたりまえ。うまくやっても非難される。それが基本。健全な国の国民は政治に関心を持ち皆それぞれが個々の意見を持つからです。そして公正なメディアは国民の感情を代表して政治家に難しい質問を投げかける。あたりまえのこと。私はまず、このインタビューから逃げたトランプ氏を信頼することはできない。


この『60 Minutes』でも冒頭でトランプ氏がインタビューをキャンセルしたことを語っている。受ける予定だったのに彼は1週間前にインタビューをキャンセルした。そしてトランプ氏はCBSに、ファクトチェックをするから嫌だ、そして前回2020年のレスリー・ストール氏によるインタビューのことを(いわれのない言いがかりで)「謝れ」と言ったという。あのインタビューでトランプ氏は、途中で腹を立てて席を立った。インタビューを自ら中断した。ファクトチェックを嫌がるということは、嘘を言ってもいいならやる…ということか笑。そして4年前のことをいまだにガタガタ言っている。顔をつぶされたのが嫌なのだろう。彼とはそういう人。異常なほどの見栄っ張りで負けず嫌い。


一番の問題は、今回インタビューを受けたのがカマラ・ハリス氏だけだったことで、ハリス氏だけが悪く見えるかもしれないことだと思った。というのも彼女が質問にうまく答えられない場面もあったからだ。このインタビューでのハリス氏は必ずしもよくは見えていない。インタビューは失敗ではないだろうが、比べる者(トランプ氏)がいないので、彼女ばかりが難しい質問を受けているのはフェアではないとも思った。もしかしたらこのインタビューがハリス氏にマイナスに働くのではないかと私は少し心配になった。


そして臆病者のトランプ氏陣営は、このハリス氏のインタビューの粗探しをして、実際にCBSが彼女のインタビューを多少編集したことを非難し、「本来の(うまくいかなかった)インタビューを公開するべきだ」なとど言っているらしいからあきれる。

トランプ氏本人は怖がってインタビューを受けていないのに、受けたハリス氏の揚げ足を取ってまた「非難」の材料にする。

こういうのを見ても、トランプ氏がおかしいと思いませんかね。



それではハリス氏のインタビューの印象をまず。

あまり上手く答えられていなかった質問も多かった。質問の内容は…

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★中東:イスラエル
★経済
★カマラ・ハリスの信念とは?
★移民問題
★トランプ氏の人気についてどう思うのか
★ウクライナ
★銃
・ティム・ウォルズ氏への短いインタビュー
★トランプ氏がインタビューをキャンセルしたことをどう思うか
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非常にわかりやすく国民が興味を持っている事柄を質問。すでにハリス氏の答えが明らかな中絶問題などのことは聞いていない。中東、経済、移民問題、ウクライナ…など、どの質問を見てもハリス氏と現政権が非常に答えにくい内容だと思った。

このインタビューの内容を見て、トランプ陣営が「フェイク・ニュースのCBSがハリス側の肩を持っている…意図的に優しい質問をしている」とは言いにくいだろうと私は思った。実際にハリス氏は、あまりうまく答えられていない。彼女にとっては、かなり痛いところを突くインタビューだった。

巷に陰謀論が広まっているこの時代には、CBSも己の正当性を証明するのに必死なのだろうと思う。ハリス氏の答えを放送のために多少編集したとはいえ、公正な報道機関として、ハリス氏への質問そのものを穏やかなものにはしなかった(それが当然だが)。ハリス氏にとって、特に都合の悪い質問、いじわるな質問(実際に国民が思っている疑問)を投げかけて、彼女がどのような反応をするのかをそのまま放送する。それによってCBSの公平性を示したかったのだろう。

それにしても、私はこれらの質問が、もしトランプ氏に投げかけられていたら、彼はどのように答えただろうかとも思った。トランプ氏も中東や経済、ウクライナの質問を受けて上手く答えられるとは思わない。それからおそらくCBSは、トランプ氏の2021年1月6日の議会襲撃や、件のハイチからの移民の噂、そして「国境警備法案/border security bill 」を共和党議員に働きかけてつぶしたこと(大問題)、環境問題をどう思うのか、それから常日頃から不安の材料とヘイトをまき散らして国民を分断する彼のキャンペーンのやり方、…などを質問していたに違いない。

もちろんそれらの質問から逃げたトランプ氏は臆病者である。



私がハリス氏のインタビューから受け取ったのは、(以前から言われているように)彼女にはわからないことも多いのだろうということ。目が覚めるほど鮮やかな答えはひとつもなかった。そしてあまり自信がないのかもしれないとも思った。ただし現政権の全ての責任を彼女に負わせるのはフェアではないとも思う。しかしそれでも彼女から人として滲み出るもの…カリスマというのか…仮に無知でも、間違っていても、それでも「この人なら大丈夫だろう」と思わせられるものがあるかと言えば、それもあまり感じられなかった。大統領として国を任せられるのかもかなり心配ではある。しかしそれは今に始まったことではない。

しかし彼女が民主党の現政権の(比較的常識的な)スタッフに囲まれていることを忘れてはいけない(陰謀論を信じているのならそうは思わないだろうが)。以前からここでは何度も繰り返しているが、大統領とはスーパーマンを選ぶ選挙ではない。大統領とは、様々な分野の専門家を自分の周りにスタッフとして集め、それらの専門家の意見を聞いて最良の判断ができる頭脳を持つ人。物を動かす決断力のある人。人を動かせる魅力と人望も必要。そして仮にその決定が結果的に間違っていたとしても、その決定をする時点では良心に従って最も正しいとみなされる決断ができること。

結局は大統領に「良心」があるかどうかはかなり大切。



このインタビューで彼女は言う「アメリカの国民は、私達を分断せず貶めないリーダーを望んでいると信じる。国民は、リーダーの真の強さの尺度とは、誰かを打ち負かすかではなく、誰を持ち上げるかに基づいていることを認識していると思う」。
…これは本当の話。私はこの言葉に希望を見る。少なくとも彼女は国民を分断し傷つけようとはしていない。


正直なところ、このインタビューを聞いてもハリス氏の印象が以前より良くなるわけではなかった。現政権のスタッフをバイデン氏から受け継いで精一杯頑張ってもらうしかない。彼女は真面目にいい大統領になろうと努力するだろうと思う。

ともかく、なんの根拠もなく「オレサマはすごいよ」ばかり言い続ける裸の王様トランプ氏よりはいい。きちんと国民のための政治をしようと良識に従って彼女は努力するだろう。ちょっと頼りないけどね。


★インタビュー和訳
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