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2020年10月20日火曜日

NHK BSプレミアム『すぐ死ぬんだから』全5話・最終話感想



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★第5話

忍ハナ(三田佳子)は亡き夫、岩造(小野武彦)の気持ちを知り始める。見た目にこだわり、老いを遠ざけて生きてきた自分の年齢も思い知る。そんな矢先、街で森薫(余貴美子)と岩太郎(溝端淳平)の親子にばったり会ってしまう。死後離婚を宣言するハナに、岩太郎にも意外な感情が芽生え始めたようで、ある日、岩太郎から思わぬ申し出が…そして79歳を目前にしたハナのこれからが、大きく動き始める。

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感想

最終話。この最終話でこのドラマは傑作だと思った。泣けた。

和解、許し…人と人の関係は様々。確かに夫・岩造はハナさんに酷い事をした。考えられないほど酷い事をした。それは間違いない。しかし人と人の関係は、必ずしも白と黒でくっきり二つに分けられるものではないですよね。人と人の関係は、白と黒よりも曖昧なグレーエリアのほうがずーっと多い。そしてそのグレーの色も時とともに変化していく。その緩いグレーエリアを受け入れることで、人はもっともっと穏やかに優しくなれるかもしれない。いいエンディング。気持ちのいいエンディング。

ハナさんのマンションでの…薫さんとハナさんの二人のシーンはお洒落で、台詞も洒落ていておとなで…フランス映画みたいだと思った。敵対するはずの二人がお互いを受け入れ始める。不思議なのだけれど…もしかしたらこういうこともあるのかもしれないと思わせられた。いい場面。これは予想していなかった。

そして岩太郎君とハナさんの関係。徐々に若い岩太郎君がハナさんを頼り始めて、ハナさんも戸惑いながら彼を受け入れる。そんなハナさんがとても素敵でかっこよかった。

人と人は…酷い理由があるのなら、憎み続ける関係もあるだろう。過去の全てを否定して憎しみを抱えて一生を生きていく人もいるのだろう。 しかしハナさんはそれをやめることにした。憎しみを抱えて同じ場所に立ち止まるよりも、事実を受け入れて前に進もうとしている。 由美さんの絵を見た時の表情で、ハナさんが岩造を許したと思った。そして不思議なことだけれど…きっとハナさんと薫さんと岩太郎君との関係も、これから穏やかに存在していくのかもしれないとも思った。 

ハナさんには素敵な家族がいる。
このドラマは人と人の繋がり…家族の話ですよね。


ここのところ、世間は人の不倫/不貞にとても厳しいのだけれど、そんな今の時代にこのドラマは変化球でした。例えばこのドラマが、夫に浮気された30代や40代の女性の話だとしたら…離婚、慰謝料請求で泥沼の話になったとしても…たぶん理解できる。 しかしハナさんは78歳。現在78歳の彼女が、(4話までの彼女のように)岩造の全てを否定+拒絶するのだとしたら…。 それは同時にハナさん御本人の幸せな思い出/家族の思い出も全て否定することになってしまう。自分の生きてきた人生を否定する…それはとても悲しいこと。ハナさんはそのことに気がついたのではないか。このドラマが最後にこういう穏やかな結末になったのは素晴らしいと思う。 人の生き方はそれぞれ。年齢によって状況によって…曖昧なグレーエリアを受け入れ、沢山の実存した思い出/幸せを抱き締める人生があってもいい。それが描かれているこのドラマは素晴らしかったです。美しい。


以前シャーロット・ランプリングが主演の映画『さざなみ/45 Years』(2015)を見て、夫の過去の秘密を許せない奥さんの話に私は違和感を覚えたのですが、このドラマのハナさんは心から素敵だと思いました。傑作。三田佳子さんがお綺麗でかわいくてかっこよくて…素晴らしかったです。素敵でした。内館牧子さんの原作もいつか読みたい。 

*****


薫さんが岩造と見に行くはずだった映画は『沈丁花』。思い出話。

雪男と和夫が居酒屋で。雪男正直 おやじの二重生活いまだに信じらんないんだけど」 和夫ニヤニヤ「なんなのかなそのエネルギー…二重生活って その生きる醍醐味があるのかな?」←こら。 雪男…おやじが おやじじゃないみたいっていうか。あの人 俺から遠のいたなって…

夜の静かな家。肩のツボ押しツールを使う苺さん。絵を描く由美さん。


ハナさんの家に突然電話をしてきた岩太郎。相談があると言う。断るハナ。


ロクちゃんから電話。明美が肺炎で亡くなった。
お葬式。ハナ人の一生って 儚いね」。嘘をついていた事を謝るロク「ハナは、パッとしない人生を送ってきた俺の ちっぽけな夢だったんだ」 ハナ夫にね 愛人と隠し子がいたんだ」 ロク「…へえ~、しかし 子どもまで こしらえたとは。で いくつ?」 ハナ35なのよ」 ロク若いね~。羨ましいな~愛人がだよね?」 ハナ息子がよ」 ロクえ~」←笑 このお二人も微笑ましい。


ロクちゃんに相談して、岩太郎君に会うことを決めたハナさん。なんと岩太郎は有名建築家の事務所を辞めてカンボジアで人助けをしようと思っていると言う。母薫になにかあったら話を聞いて欲しいと言う。ハナ冗談でしょ」 いつの間にかハナさんは岩太郎君にとって頼れるおばさんになってしまっているのね。ハナカンボジアのこと早くお母さんに言いなさい…子どもが危険な場所に行くなんて嫌に決まってる…でも 息子が決心したことならきっと受け止めてくれるから…あなたが旅立ったあとのことは…」となぜか打ち解けてしまう。


その数日後、薫さんがハナさんを訪ねてくる。不思議な状況。ハナ「うちの敷居またぐなって言いたいとこですけど、古くさいから やめた」←笑 薫は岩太郎がカンボジアのことをハナに先に相談したので訪ねてきたと言う。

岩太郎は 私の計画妊娠です」 うわーっ…。…沈黙。お…おんな…おんなの戦いだ…。「息子が忍様と会って、私のことを話してると思うと居ても立ってもいられなくなります」 ハナ夫を奪ったくせに、息子を奪われるのは嫌ってわけ?」 「…子供がいれば、1人でも生きる力になると思ったんです」
ハナ岩太郎さんとは別に何も。私は背中を押しただけ。自分で決めたことはちゃんと 実の母に伝えなさいって。私のとこに来たのは 結局あなたが大事だからよ」 「私 、岩太郎は ハナさんのぬくもりにじかに触れたんじゃないかと思ったんです…あの子にとっては思いも寄らなくて…その ぬくもりが心地よくて浸りたかった。そんな気がして…それは 私では作れないものでしたから。私 ハナさんが奥様で…岩兄が選んだ方で よかったと思ってます」 ハナあんた ずるくて 計算もできて、覚悟があって、 堂々としてて、かわいいのよ。悔しいけど」 ほんの少し笑顔。なんだか和んでますね、

ねえ あの掛け軸 どうした?どうせ持ってんでしょ。
ええ。
燃やしちゃいなさいよ。
はい。 帰ったら燃やしちゃいます。
さよなら。
見送らないよ。

二人とも少し笑顔。この二人の場面が本当に素晴らしかった。醜い対決のはずなのに、岩太郎君のことで結局打ち解けてる。すごいなぁ。この場面はフランス映画みたい。お二人ともお綺麗でね。


忍酒店。店の改装をすることに。ハナさんのアイデアで角打ち/立ち飲みコーナーを店内に作ると言う。ハナさんがそこのマダムになるそうだ「もう79よ。 今から新しいことやるなんて」


ハナのモノローグ「全く 冗談じゃないわよね。私なんて 人生の冬もいいとこ。これから新しいこと始めるなんて。でも 決めちゃったのよね。だから もう 実年齢なんて忘れて、人生の冬をせめて まだ 秋だって思いながら過ごしてみようかなあってさ。人生の終わりが いつ来るかなんて誰にも分からない」「だったら 最後まで、この人生を駆け抜けてやる。私らしく 思い切り。どうせ すぐ死ぬんだから」(岩造へ)「あんた どう思う?

お店に家族が集まる。泪割りがメニューに追加。お店の壁に由美さんの絵

岩造の肖像画。

それを見る花さんの表情。 穏やかに折り紙を見つめる岩造の絵。
ハナいい…
由美「私の 初めての人物画です」
ハナめちゃくちゃいい
ハナさん泣きそうな微笑
ハナ由美さん よく描けたね…
このシーンでちょっと泣いた。ハナさんの表情でうわーっと思う。いい絵。あああこれは予想できなかった。すごくいい話だ。

突然岩太郎が訪ねてくる。もうハナさんは頼りになるおば様になってます。わさびたっぷりの泪割を作って岩太郎君に。このシーンがまたいい。お二人とも自然。楽しそう。すごくいい。和んでます。お二人でほのぼの仲良く。

岩造のらくだの折り紙を取り出して
ハナあげる。ねえ…思いっきり やんなよ
岩太郎「はい」

最後岩太郎「ハナさん ありがとうございました」
ハナうん 元気でね
岩太郎「はい」
店の外で岩太郎を送り、店内に入っていくハナさん。エンドロールは越路吹雪さんの「ラストダンスは私に」。お洒落~すてき。余韻もいい。

これはいいドラマですよぉ。こういう展開になるとは予想していなかったです。しみじみといいドラマ。