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2023年11月12日日曜日

WOWOW 連続ドラマW『フィクサー』Season3 全5話・感想



TV Japanにて。日本での放送はWOWOWで2023年10月8日から11月5日まで。


面白いシリーズ。シーズン1もシーズン2も面白かった。特にシーズン2はの前のめりになって騒ぐほど盛り上がった。さてシーズン3はその後が描かれたわけだが…正直スケールが小さくなった印象。

キャラクターにも馴染んだし、全体の雰囲気も相変わらずいい感じで、俳優さんや演出、カメラワークに音楽は素晴らしいのだけれど、今回は話があまり面白くない



★ネタバレ注意


ここでの感想は『フィクサー』全シリーズの中でのシーズン3の印象をメインに書く。辛口です。シーズン1と2が素晴らしかったのでシーズン3を比べて出てきた感想。


まず、まとめから

スケールが小さくなった。シーズン1と2(S1、S2)で出てきていた日本の政界の大物がほとんど出てこなくなった。まるで別のドラマのよう。S1とS2 の政界の大物達が顔を並べる様子は大変な迫力だったのに、今回は彼らが全く出てこない。「大きな政界の壁に立ち向かう一匹狼・設楽」のストーリーのコンセプトが崩れた

シーズン3(S3)の話のメインは都知事選に絡めた誘拐事件。しかし事件はあまり現実味も無くおさまり、渡辺達哉(町田啓太)の都知事選の顛末は茶番。 S2でラスボス本郷(西田敏行)を倒した設楽拳一(唐沢寿明)が、今回S3では渡辺を使ってもっと面白いことをやってくれるかと期待したが結局何もなかった。期待外れで終わってしまった。

そしてこのドラマで描かれたものが、私が政治の世界に期待するものとはあまりにも違っている様子にも戸惑った(納得できなかった)。


設楽拳一は結局何をやりたかったのか…?ドラマの最後で渡辺への手紙に書いていた内容がそうなのだろうが、あまりに抽象的で「将来への希望」程度の印象しかなく、なんの具体案もない。このシーズン3で設楽がやったのは渡辺を右に左に動かして「なにかやってそうなフリ」をしただけで結局何もやっていない…問題の東京湾埋め立て事業も一時的に遅れるように見えるだけで何も変わっていないようだ。誰も怪我をしなくてよかったねぐらいの軽い印象でドラマが終わってしまった。

これはシーズン3が悪いというよりも、シーズン1と2が素晴らしすぎて比べてしまった結果の感想

全体にスケールが小さくなった…その印象が大きかった。


内容を詳しく…

- ①あの民自党の大物政治家達はどこにいった。S1とS2で出てきた人々の肩書…内閣総理大臣兼民自党総裁、その秘書、外務副大臣、民自党政調会長→初の女性総理大臣、内閣官房長官、副総理→民自党幹事長、民自党総務会長、民自党総務会長、デジタル大臣、そして昭和の伝説のフィクサー。すごいぞ。これだけ政界の大物を集めてその内情はドロドロしている…というドラマだったのに、これらの大物達がシーズン3ではほとんど消えてまるで別のドラマのよう

S1が総理大臣の事故…殺人事件の疑い。そして政治家に都合の悪い製薬会社のトップは消される。それからS2は無実の若者が殺人未遂の疑いをかけられる。手を回していたのは政界と繋がった大物フィクサーで、無実の人物も都合よく犯人に仕立て上げられる恐ろしい世界を描いた。そのような世界にたった一人で立ち向かう設楽拳一の話が面白かった。

ところがS3は東京湾埋め立て事業にからんだ誘拐事件…結局だれも傷つかずタネ明かしもスケールが小さい。設楽拳一の動きを邪魔する者もほぼいないから、S1とS2の「大きな政界の壁に立ち向かう一匹狼」の設定の面白さもない。

- ②設楽拳一が渡辺達哉を使って右に左に政界とマスコミ、世論を動かしたのも(確かにお騒がせではあったけれど)…結局はなにもなかった。それから設楽拳一の勘に頼った推測はなるほどとは思っても…おとぎ話レベル。あまりスケールが大きくない話の上に、全てが設楽拳一の思い通りになるプロットも興覚め。少しぐらいは設楽拳一の困った顔が見たい。やっぱりラスボス西田敏行がいなくなったのが一番大きい。都議会のドン・黒羽(石坂浩二)はS3のラスボスだと呼べるほどの影響力もない(迫力満点だが登場場面は少ないし最後は彼も設楽の要求を受け入れている)。

- ③一番の問題は…仮にそれが日本のありがちであろう問題とはいえ(私は日本に長年住んでいないので実情は知らないが)…ただ「世間に名前を知られるようになったから」というだけで渡辺達哉を都知事選に立候補させることの馬鹿馬鹿しさ。そしてそのアイデアに乗る渡辺達哉も大きな問題。彼も設楽も結局は「選挙がただの人気投票である」と認めているようなもの。(そしてそのことを劇中人物たちが何度も台詞で話しているという皮肉)。

そしてその渡辺の都知事選出馬も(設楽の中では)当選が目的ではなかったという茶番。

それから無所属の新人が立候補して当選することも難しいからだろうが、今まで敵の側にいた須崎幹事長(小林薫)の力を借りようとするのも納得できない。しかし結局渡辺の当選が目的ではないのなら彼の力を借りる意味さえもわからなくなった。

このS3のプロットそのものに問題があり過ぎて話に身が入らなかった。最後に沢村玲子(内田有紀)を東京都副知事として政界に送り込むことも茶番。おとぎ話。ずいぶん安っぽい話になったものだ。


辛口批評をしてしまったけれどそれでも俳優さん達は魅力的だし演出もいい感じで十分楽しめた。毎週楽しみに最後まで見た。シーズン1と2が本当に面白かったので、S3はどうも肩透かし。S2で完結にしてもよかったと思ったほど。それでも実際日本のドラマとしては今年一番盛り上がって見たドラマだと思います(歌舞伎役者の忠臣蔵のドラマもよかった)。 面白いシリーズだったからこそ辛口批評になってすみません…決してこのドラマが嫌いなわけではないです。


さてこのシリーズは次があるのか? S1やS2で出てきた政治家の密約の録音データや、今回S3の環境汚染のデータが設楽に渡ったことを考えれば、この先もシーズンが続いていくのかもしれない。これから数年ごとに10年に渡り数シーズンをかけて渡辺達哉が40代の総理大臣になる話になるか。さてどうなるか