CONTENTS

2023年9月20日水曜日

WOWOW 連続ドラマW『フィクサー』Season1 全5話・感想



夏の頃にTV Japanで放送になったのを見た。8月はブログを休んでいたので感想が遅くなってしまった。日本での放送はWOWOWで2023年4月23日から5月21日まで。


面白かったです。役者さん達が皆ベテランの方々が多く、それだけでもかなりの重厚感。西田敏行ラスボスが怖い。大変素晴らしい重い雰囲気の大人のドラマ。見ごたえがあった。

しかし実は最初は話に入り込めなかった。これは政治の裏側の話ですね。

どうやら日本の政界には魑魅魍魎がうようよしていて、国民が知らない場所で様々なことが行われている…そのようなドラマだろうと思った。

(ずいぶん前に日本を離れたこともあって)私は日本の政治/政界に全く馴染みがなく、ショッキングな話にも免疫がないせいか、最初はこれがリアルなのかもフィクションなのか、それとも限りなくリアリティに近いフィクションというべきなのか…その辺りがよく飲み込めなかった。しかし最後まで見た後で再度見直し全体像を掴んだら、その面白さがわかった(と思った)。

軸はミステリーでしょう。1話目で事件が起こって、Whodunit?/犯人はだれ?…がドラマ全体の軸。そしてその周りに政界の魑魅魍魎が蠢いている…というような話か。

①総理大臣を乗せた車が崖から転落事故にあう。
 犯人は誰か‽ 犯人捜し。
②政界で新薬の認可をめぐる密約スキャンダル。蠢く政界の魑魅魍魎。
③フィクサー・設楽拳一(唐沢寿明)が政界にメスを入れる。
④予想外の人の繋がり。最終話で明らかに。

構成はこの4つ。意外にシンプルだけれど最初は理解するのが難しかった。2回見て理解してドラマの面白さがわかった。

①は最終話で種明かし。
②は闇。製薬会社の社長は哀れ。
 密約の録音データは…(現在放送中のシーズン2で)再度登場。
③ 設楽拳一とはナニモノだ?
④拳一の秘書兼運転手(要潤)の設定に驚く


Pros


面白いドラマ。一番の見どころは見ごたえのあるベテランの役者さん達。
特に政治家の方々が最高。すごいね。まぁ~悪い顔が並ぶ並ぶ。それだけでも十分面白い。

小林薫さんてこんなお顔のお方でしたっけ?悪い悪い笑。役者さんは本当にすごいと思う。近年の小林さんは「深夜食堂」での穏やかなおじさんをNetflixで見たけれど、このドラマでの彼はまるで別人。人の顔はこんなに変わるんだねと驚く。演出も秀逸なのだろう。役者さんへの光の当て方もカメラの寄り具合も「悪い政治家」の表情を映し出す。すごいです。びっくりした。面白い。

そして要潤さん。内田有紀さんになぜ刑務所に入ったかと聞かれて「殺人罪です」と答える。ぉおおおおお…いいねぇ。このお方はこういう役が似合う似合う似合う。拍手。

主役の唐沢寿明さん。このお方は30年くらい前はディスコで有名なユーモラスで明るい役者さんのイメージだったのに、ずいぶん脂ぎったおっさんになりました。大変素晴らしい。設楽拳一の役も今の唐沢さんだから出来る。役者さんの変化も面白い。

そしてラスボス・西田敏行さん。こわいわ。昭和の時代からの伝説のフィクサー。本物のフィクサーはこちらの西田敏行でしょう。この人に敵うわけがない。サクタ薬品社長のことも握りつぶすのですよね。こわいわ。こわすぎ。

富田靖子さん。びっくりした。役者さんはやっぱりすごい。信じられますもん…中年の女性政治家。大きな拍手。

その他にもこのドラマは配役が秀逸。久しぶりに拝見する役者さん達も皆役にハマっていて納得する。俳優さん達が素晴らしいドラマ

そしてこのシーズンのMVP。事実上の主役は藤木直人さん!名優!私はこのお方がこれほど繊細な表情をなさる役者さんだとは知らなかった。以前拝見したのは『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』のコメディのみ。今まで藤木さんがこれほどうまい役者さんだと知る機会がなかった。最終話のあの複雑な表情…崖っぷちに追い詰められる表情に息を呑む。このお方はもっと見たいと思った。大きな拍手!!!

このドラマには違和感を感じる役者さんがいない…妙に若いとか、妙に顔がかわいいとか…お堅い職業なのに全員がかわいい顔の俳優さんばかりとか…配役に全く説得力のないドラマは今までにいくつか見てきたと思う。しかしこのドラマは中年が中年らしく中年をやっている。それが素晴らしい。だから面白い。不自然に若くてかわいい顔の俳優さんが一人も出てこないのが最高(町田啓太さんはイノセントなジャーナリストなので設定上納得です)。いいですね。配役の素晴らしさに拍手喝采。

ストーリーは以外にシンプル。見どころは役者さん達の顔ぶれと熱演。それだけでもいいドラマ。十分満足。私には馴染みのない政界の話なので、もしかしたら細かい設定を見逃しているかもしれないけれど、また見直してみようかなと思うのは、俳優さん達と演出がすばらしいからだろうと思います。面白かったです。

Cons


私が最も頭をひねったのは、
設楽拳一(唐沢寿明)はなぜこういうことに頭をつっこんでいるのか?

私が日本の政治が全くわからないこと、そのことから「フィクサー」という存在がよくわからないために、この設楽拳一を見て「この人はなぜこんなことに頭をつっこんでるんだろうね?」と不思議に思った。その違和感がドラマの最後まで残った。

「フィクサー」とは、
政財界におけるトラブル収拾や企業間の揉め事回避まで、警察や法では解決できない事案の処理を行う…とあるけれど、設楽がそれを行うモチベは?理由は?そしてそれができる力は?

設楽はこのシーズン1が始まる前にも既に1度は逮捕されて刑務所に入れられている。実際に設楽がやろうとしているのは、昭和の大物フィクサー・本郷(西田敏行)と敵対すること。

そして設楽はどうやら1匹狼。設楽の周りをガードするチームはいない。ということは設楽は無防備…彼の命も危ないということだ。本郷にとって設楽を消すことは簡単だろう。サクタ薬品社長のようになってもおかしくはない。

フィクサーの仕事は設楽一人では無理ではないのか? 
彼の仲間は町田啓太、内田有紀、小泉孝太郎だけ?

設楽はなぜたった一人で暗黒の政界のラスボスに立ち向かおうとするのか?そもそも一人でできる仕事ではないだろう。フィクションだから可能だということか。つまりは政界ラスボスに1匹狼が立ち向かうファンタジー系ヒーローものの設定だろうか?しかしそこにリアリティはない。どう考えても設楽が西田敏行に敵うわけがない。


そのような印象でシーズン2も見てます。
ドラマとしては十分面白い。
シーズン2も面白い。

弦楽器と女性コーラスのインストのテーマ曲がすごくいい。
動画サイトにあげて欲しい。


それにしてもフィクサーってなに?
日本の政界は長い間一党優位政党制で、事実上ぼぼ一党独裁と変わらないわけで(選択の自由と権利はあるけれど選択肢がない)。だからこそ過去からの様々なしがらみや、コネ、根回しや圧力で政界を操るフィクサーという存在が出てくるのか。政界には透明性もない。それを考えれば日本の政界のあり方そのものが問題ではないかと思わずにはいられない。このドラマはどこまで日本の政界を模しているのか? 考えさせられますね。