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2023年3月13日月曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第1回 角田光代



NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


第1回 
小説家、児童文学作家、翻訳家 角田光代さん
日本での初回放送日: 2022年12月6日
TV Japanにて


角田光代(1967年3月8日 - )
日本の小説家、児童文学作家、翻訳家。1990年「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を受賞。2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞受賞。その他にも多数の賞を受賞。著書多数。


------このシリーズで唯一私がよく知る作家さん。角田さんの小説やエッセイは40代に出会った。彼女は私が初めてハマった日本の(ほぼ)同世代の女性の作家さんで、本を集めて一時期よく読んだ。小説もエッセイも面白い。私はここ暫く数年間(本全体をほぼ読まなくなっているので)彼女の本も読んでいないのだけれどまた読みたい。本が面白いから作家さんのことも知りたくなる。楽しく拝見。

角田さんは文章で物語を構築する作家さん。そのせいか本の読み方がこのNHKのシリーズの他の方々と少し違うと思った。興味深い。
トトちゃんがかわいい。


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大きな階段横の壁の本棚

30代に 
・ジョン・アービング
-----偶然。私も30代にアービングにハマってよく読んだ。すごく面白い。

世界文学全集より
・エドガー・アラン・ポー『黒猫』
怖いこと、恐ろしさが忘れられない

異世界を教えてくれた本
松谷みよ子『モモちゃん』シリーズ
目に見えない異世界を感じた

常識レベル
・美内すずえ『ガラスの仮面』


中学時代の愛読書

・太宰治『人間失格』


中学時代に読んで「自分のことを書いてくれている、私のことを書いてくれている」と錯覚するぐらい好きだった。 (主人公が自意識に苦しめられる姿に共感) 20代、自分で自意識をコントロールできるようになると太宰を好きだった自分がものすごく恥ずかしくなった。そして30代の半ばぐらいになってようやく太宰の本当の面白さに気づいた。言葉に対するものすごい新鮮な感覚というのがあると気付いて見直した30代。年齢によって付き合い方が変わる作家。

-----面白い。太宰の「人間失格」は皆通る道なのだろうか。角田さんは中学生で読んだのなら早熟だ。私は大学の18歳の時に読んだ。今でもあの頃独り暮らしのアパートのベッドの上に寝転がって、「人間失格」を読みながら涙をこぼした時に見えていた景色を思い出す。窓から明るい光の射す午後だった。『斜陽』を読んでその後太宰治から離れて時間が過ぎ、30代半ばにふと「あれはなぜ泣いたのだろう?」と思い出して「人間失格」を読み直した。その時に何を思ったかの記憶がほとんどない。あまりピンとこなかったのだろうと思う。この角田さんの言葉で、太宰さんの「文」に気をつけながらもう1回読んでみようと思った。


作家を目指す中で出会った

・内田百閒 
エッセイが声を出して笑うほど面白い。しかし小説を読むと全然違うのでびっくりする。
・内田百閒『サラサーテの盤』
なんでもない話なのにものすごく怖い。現実と現実でないもののあわいをいったりきたりする。するっと現実を抜け出てしまうような感じが好き。

現実が一枚ではない。裏にも何かあるかもしれない。そういうものがすごく好き。自分の書くものにもそういうところがあるのじゃないかと思う。

-----角田さんのエッセイやインタビューは見かければ読んでいたのだけれど、これは初めて知った。角田さんは異世界とかちょっと怖いものがお好きなのだろうか。このインタビューで出てきた「黒猫」も「モモちゃん」も、この内田百閒も「怖い」という言葉が繰り返されている。そういえば以前角田さんがツイッターで「今日はホラー映画を見た。怖かった」と書いていらっしゃるのを見たことがあった。角田さんは怖いものがお好きなのね。そうか~ そういうことを知ったうえで本を読むと、また受け取り方が違ってくるかも。面白い。


読書の森の歩き方

何冊も同時進行で読んでいる。 
本を読むことは喜び。ここではないところに行けたら喜び。

作家としての転機となった本

・開高健『輝ける闇』
60年代 ベトナム戦争を取材する日本人記者の不安や孤独、絶望を描いた。開高健もベトナム戦争に従軍。小説はその経験を元に書かれた。開高健「匂いを書きたい」

角田さんはベトナムを旅して作家が書こうとした「匂い」を感じた。自分の身体を使って体験し、帰ってきて本当に伝わる言葉で書く姿勢に感銘を受けた。 

(読んでから)
目指しているものが遠くなった。
書くことでしか行けないところに行きたい。

これからどんな読書をしたいですか

読みたい本がありすぎる。もう無尽蔵に本が読めるわけではない。それが悲しい。 希望は(だからこそ)どれだけ年を取ろうと、読みたい本がずっとこの先ある。


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本を愛し、本に育てられ、本に浸かり、本と異世界へ旅をし、本を生み出し、本と息をして本と生きる。ほんとにすごいお方。一生をかけて本本本本本と本と共に歩む人生。ほんとにほんと。すごいわ。

これほどに「本=生きること」なお方だったとは。いや作家さんとは皆そうなのか。本のプロの生活というものは皆そういうものなのだろうか。角田さんの本が好きだから、面白いから、そんな好きな本を生み出す作家さんのことをもっと知りたいから、今まで彼女のエッセイやインタビューを読んできたけれど、角田さんがこんなに本漬けの生活をなさっているとは知らなかった。

角田さんの小説を読み始めた最初の頃、私は「彼女の小説は何%ぐらい実体験が入っているのだろう」などと思いながら読んでいた。しかし短編集『三面記事小説』の解説を読んだ時に、あの小説が全て「頭から生み出された創作物」だと知って驚いた。「どうしてこんなに色んなアイデアが出てくるんだろう」と不思議だった。 その上に角田さんはものすごく多作な作家さんなのですよね。それらの小説が全て頭の中で構築されているのかと思うと…あらためて驚く。そんなことができるんだ…と、ただただすごいと。

それだけの多くの創作をなさっている上に、角田さんはまだまだ本が読み足りないと仰る。なんだかすごいわ…とあらためて思った。


私が角田さんの作品に出会ったのは映画の『空中庭園』。まず映画で「おおぉ」と思い、小説を買って読んだらもっと「おおぉ」と思った。不気味。怖いと思った。母親に関する場面でちょっとショックを受けて、そこから彼女の本を読み始めたのがきっかけ。 

その頃私は40過ぎ。10年間日本を離れた後、旦那Aの転勤でまた東京に帰ってきた時に角田さんの作品に出会った。当時の私は浦島太郎状態。そんな時にほぼ同世代の角田さんの本は、「私がいなかった時期」の日本/東京のことを教えてくれているような気がした。『対岸の彼女』を読んだ時も「もし私が日本を離れなかったら彼女達のように暮らしていたのかな」などと思った。角田さんが書く同世代の女性達の話が面白かった。

私はそれまで年齢が近い作家さんの本を読んだことがなかった。角田さんは初めての同世代の作家さん。彼女の本は、それまで読んでいた古い時代の文豪や翻訳もののSFを読むのとは全く違う本の楽しさを教えてくれた。若い頃に同じ時代の空気を吸ってきただろう女性の書く小説(特に短編)は、身近で、想像しやすいというのか、ストーリーの中の空気が以前自分の吸っていたものと近いような気がして、それに夢中になった。すごく楽しかった。


…それにしても、そうか…、角田さんは怖いものがお好きなのか。 それから彼女はとても活発なお方なのですよね。ボクシングにマラソンをなさるそう。そして毎晩よく飲むそうだ。体力と元気とパワーのあるお方なのだろう。 私は最初に彼女をメディアでお見かけしたとき、彼女は内気でシャイな女の子の印象の方だと思ったのですよ。しかしもしかしたら彼女はずいぶん印象と違うお方なのかもしれない。それもまた興味深いです(…interestingってうまく訳せない。面白いとも違う)

角田さんは旅のエッセイも面白い。東南アジアの海で村人と沈む夕日を見る話が好き。ヨーロッパで羊かヤギに囲まれた話もあったっけ?…そうだ、彼女は旅のしかたもすごくパワフル。やっぱり元気のいいお方なのですね。


また角田さんの本を読もう。

本を読む習慣がなくなって怠け癖がついた…どうしようもなく堕落してしまったせいで、私は今Kindleの『ドリトル先生』も苦戦している。私の人生ももう本を読める時間はもうあまり残っていないのに。なんとかしなきゃな~ どうするよ…