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2023年1月10日火曜日

★「鎌倉殿の13人」好きだった人々1

北条義時 今どきの悪人の描き方


今回はとにかくドラマが濃いので、ただトップ10を並べるだけでは物足らない。もう少し踏み込んで書きたい。特に義時についてはいろいろと考えた。分析した。


北条義時/小栗旬

複雑なキャラでした。純粋な若者が恐ろしい独裁者に変わっていく。そして鎌倉に北条家の独裁国家を作る。このドラマはそれが主題。史実の北条義時は間違いなく傲慢な野心家で悪人…身内も仲間も殺しつくして権力を手に入れた人物。しかしそんな人物がドラマの主役になったらどうする? これが一番の難問。

最初の頃の義時はかわいかった。なんの違和感もなく見れた。小栗さんの演技も自然。小栗さんはうまいお方。純粋な若者だから応援したくなる愛される主役。…ところがこの人物が途中から変わり始める。


…ドラマが面白いからこそ真剣に見る。だから普段なら気にならないことも気になってくる。つまりはドラマにのめりこんでいるからこそ色々と考え始める。多少重箱の隅をつつくようだが、何度も考えたことなのでメモしておこうと思う。
 


ドラマの最後の頃の感想で私は何度も「義時が煮え切らない、いつまでも迷っている」と書いた。

この人物は、親しい友人を最悪の方法で殺しているのに、いちいち泣いたり悲しんだり苦しんだり反省して、殺した相手に向かって「ごめんね」と言っているように振舞う。しかし私はそれにリアリティがあるとは思えなかった。というのも、己の欲のために人を殺し続けるような人物はどこかで普通の常識や感情を切り捨てるだろうと思うから。人を何十人何百人と殺している人がいちいち罪悪感を感じていたら自分がメンタルをやられる。人は何度も罪を重ねれば、いつか「俺は間違っていない」「俺は正しい」と開き直る。いやむしろ目的に向かって前しか見ていないから、人を何人殺そうと自分が正義だと言い切るだろう。独裁者とはそのようなものではないか。


しかし義時は人を殺しながら毎回反省して苦しむ。彼はいつまでも「いい人」であろうとする。最後に悪行を反省しなくなった頃でも「泰時のために、北条家のために」と自分自身には野心がないかのように言い訳をしている。まるで人(視聴者)から「いい人」に見られたいと思っているかのように。本当は善人の義時…しかし権力のために人を殺し続ける義時…にリアリティはあるのかと私は首を捻り続けた。


それにしても今どきの大河ドラマは主人公を100%悪人には描けないのですよね。主人公がとことん悪人になれば視聴者がひく。視聴者が主人公にそっぽを向いたらドラマそのものの人気が落ちる。だから主人公を悪人に描くのは大変危険。

主人公はどんなに悪事を重ねても善人でなければならぬ。



この義時は難しい役だったのではないかと思います。義時はあくまでも主役。どんなに悪行を重ねても、どこかで必ず視聴者に愛され受け入れられなければならない。そんな人物を(おそらく御本人がいい人の)小栗さんが見事に演じられた。複雑な義時。大河ドラマを1年間背負って極悪人になり切れなかった北条義時。最後までかっこよかった義時。すごく見ごたえがあったし色々な意味で考えさせられ、惹きつけられました。


ドラマの最後、義時は罰を受けることで許されましたね。そこまでしなければ今どきの視聴者は彼を許さないのかもしれない。今どきのドラマは真の悪人を描くのが難しいのだろうと思う。三谷さんの脚本は特にそうかもしれません。時政も最後は善人でした。

似顔絵を何枚か描いているのですが、似顔絵でもお顔がどんどん変わっています。最初の頃の義時は無邪気で可愛かった。最後のパワハラおやじとは別人。小栗さん素晴らしかったです。