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2023年1月8日日曜日

★「鎌倉殿の13人」を褒めつくす



恒例「好きだった人物達」のことを書く前に、まずドラマのことを書こうと思う。このドラマは本当に面白かった。記録されている史実(とされるもの)をひとつひとつ細かに拾い上げて大きな流れを描いた歴史ドラマ。傑作かもしれませんよ。近年でこんなに面白かった大河ドラマはない。素晴らしかった。皆様に感謝感謝でございます。


ドラマ+脚本

最後まで中だるみせず
面白かった。こんなに夢中になった大河ドラマは初めて。今まで見てきた近年の大河ドラマは、最初は面白くても途中から勢いがなくなるものが多かったように思うが(それが当たり前だと思っていた)、このドラマは最初から最後までみっちり面白かった。最終話まで勢いが失われなかったのは本当に凄いと思う。

歴史の学び
(私が鎌倉時代の歴史をよく知らないことから)このドラマは毎回鎌倉の歴史を新しく学ぶレッスンのようだった。そして事実はフィクションより奇なり。三谷さんの創作だろうと思った内容も、後で調べたら歴史の記録に残るものだったりする。そういう話ばかりで驚いた。史実/記録とフィクションがスムースに繋ぎ合わされて自然な物語になっている。本当にすごいと思う。毎回毎回唸りました。

登場人物が異様に多い
人物たちの似顔絵を描いていたら、回が進んでもいつまでも新しい人物達が登場し続ける。最初からドラマに出てくる人物達の似顔絵はできるだけ沢山描きたいと思っていたのだけれど、途中から「このドラマは普通ではないのだな」と覚悟を決めた。 今までの他の大河では、1話ごとに1人や2人の似顔絵を描いていたのだけれど、このドラマでは最低でも4人5人は描かなければ追いつけない(しかし描かなきゃ話がわからなくなる)。しかし一旦覚悟を決めたら、それらの登場人物たち…歴史のサイドストーリーの実在の人物たちを知ることがとても楽しくなった。例えば、初期には以仁王と源頼政が一瞬だけ出てくる。木曽義仲の回では今井兼平。木曽義高の側近・海野幸氏。そして義高を討った藤内光澄。奥州藤原氏では秀衡だけではなく息子の国衡、泰衡、頼衡まで描かれる。畠山重忠の息子・重保。三浦義村の弟の胤義。頼家の室・せつとつつじ(←フィクションだけど)。全成の息子の阿野時元。和田義盛の息子達三人…。いちいちWikipediaを開いてその人物を調べる。それぞれの人物にそれぞれの人生。ドラマがますます面白くなる。私が「鎌倉殿の13人」にとことんはまったのは、これら大勢のサイドキャラクター達の存在も大きいと思う。皆様お疲れさまでした。

ちなみにこの「鎌倉殿の13人」で描いた似顔絵+シーン絵は全部で228点(たぶん)似顔絵に描いた登場人物は全部で104人(たぶん)。そして228点も描いても(次も出るだろうと思っていたら出なかったなど)描いてない人も何人もいる。この数がいかに多いのか…比べてみれば、三谷さんの前回の大河「真田丸」で描いた絵は全部で86点。「麒麟がくる」が113点。 とにかく「鎌倉殿」は登場人物の数がすごかった。絵を描いていて毎回へとへとになった。面白かった。

死を描く
決しておだやかではない時代のドラマ。今回の三谷さんの歴史ドラマは、苦しみや荒々しさから逃げていない。死をしっかりと描いている。暗く厳しい場面がきちんと描かれている。ぎりぎりグロくならない絶妙な演出は見事。不快になることなく時代の厳しさと恐ろしさをしっかりと描く。何度も息を呑む場面があった。それらの死の場面で善児はドラマの影のスターになった。 上総広常、 阿野全成、 和田義盛、 源仲章、源実朝、公暁は死の場面をドラマの華として正面から描き、源義経、源義高、梶原景時、畠山重忠の死は首桶でその死をあらわす。そしてその後にそれぞれの人々の死が意味するところを描いているから、悲しく恐ろしく、苦しく哀れであり…、過去に実際に起こった歴史上の事実に心を揺さぶられてますますドラマにはまり込む。

人物描写に深み
三谷さんが死を正面から描く。そしてそんな風に「死が日常」の時代に生きる人物たちのそれぞれの人となりも細やかに描かれる。人物達一人一人にそれぞれの人生があるのだと気付かされる。…軽薄な問題児のように描かれた北条朝時は実は「周りから期待されないこと」に悩んでいた。義時の成功を密かに妬み、ことあるごとに義時を裏切ろうとする三浦義村。成功の階段を上った頼朝が人間不信に陥る様子。梶原景時の天才になれない苦悩。目的を達成して燃え尽き症候群になる源義経。「大人はわかってくれない」症候群の頼家。最後まで揺れ続ける義時。…それぞれの苦悩が描かれて人物たちがぐっと身近になる。だからますます面白くなる。


俳優さん達が素晴らしい
脚本がいい。台詞が素晴らしいから俳優さん達が輝く。最初から最後までドラマのペースが落ちない。だから初回から最終回まで俳優さんたちの芝居が輝いていた。このようなドラマはなかなかない。48回ほぼ全部の回でいい演技が見られる。経験豊かな俳優さん達も若い方々も皆いい。芝居がいい。上手い人、自然な演技の人、繊細な演技、豪快な演技、皆個性はそれぞれだが、その全てはストーリーを効果的に語るため。脚本でキャラクターの人となりが作られて、俳優さんのうまい芝居で人物像が出来上がる。いい脚本が俳優さん達のいい芝居を引き出している。

配役も素晴らしい
これ最高。配役が素晴らしかった。どの役もいい。主要人物からたった1回だけの出演の俳優さんまで全員が素晴らしい。脚本がいいから俳優さん達が輝く。配役に違和感のある人がいないのは不思議なほど。脚本がいいから全員が輝いていたのか、それとも配役がいいから台詞と芝居が輝くのか…どちらが先なのかがわからなくなるほど。俳優の皆さんが素晴らしかった。

演出が素晴らしい
俳優さん達を輝かせる演出もいい。それぞれの場面の画面の絵の構成が巧み。カメラのアングル、画面の中の人物の大きさ、俳優の顔に迫るカメラ、光の演出、全てしっかりと考えられて効果的に演出されていると思った。ほんの一瞬だけ映る場面にも全てに意味がある。俳優の顔に迫るカメラと引くカメラ。絵そのものがドラマを語る。何度も何度もうまいと思いながら画面を見入った。そして効果的な音の演出。 全体に奇を衒うことなく、演出が饒舌過ぎて邪魔になることもなく、全てがストーリーに自然に馴染んでおさまっている。演出は全て「脚本に描かれたストーリーを語るため」にあるのだとあらためて思わされた。素晴らしかった。


このドラマへの愛は語っても語っても語りつくせない。もうはまりましたよ。大好きだわ。素晴らしいと思ったことをここに集めましたが、たぶんもっとあると思います。三谷さんの脚本も、効果的な演出も、俳優さん達の巧みな演技も、様々なシーンの全てが素晴らしかったです。皆様に大きな拍手。拍手喝采。皆さまお疲れさまでした。

1年間最高に楽しみました。感謝しております。面白かったです!