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2021年2月4日木曜日

『麒麟がくる』の明智光秀とは?



このドラマの明智光秀の人物像を分析。元々42回の感想文に、信長の分析と合わせて書いていたもの。43回の感想文が長くなったので、別のエントリーで書くことにした。






光秀はニュートラルな普通の男。

このドラマの光秀は狂言回し。そしてミーディアム…いや違うか…mediator/仲介者か…人と人の間に立って人を結び付け話を繋ぐ人。そのせいか彼本人に関しては私生活も心情もあまり詳しくは描かれてこなかった。もちろんその時その時の彼の心は描かれているのだけれど、物語の主人公としての光秀は、信長に比べてどうもリアリティがない。

馬鹿正直で、定規をあてたように真っ直ぐで、正義のために熱くなる、空気のようにニュートラルで、中身が何もないのかと思うほど潔白、嘘みたいに欲のない人…それが不思議な魅力にもなっている。

個々のシーンでの長谷川さんはいい表情をなさっているのですよ。大声を出さないシーンでも、一秒一秒表情が細やかに変化している。複雑な気持ちの揺れ動きが見える。技が見える。

それなのに全体を通して見るとやっぱり光秀は掴みどころがない。脚本がそう描いている。そして光秀は会う人会う人みーんなに好かれている。誰からも信頼されている。変ですよね。空気のようにニュートラルだから誰も彼に腹を立てないのか? そしてそんな彼は一度も自分自身の欲や野心、野望を語った事がない。 麒麟?…目標や野心としては抽象的過ぎる。

光秀は空気のような人?


…おっとここまで書いて思いついた。

この光秀は昭和のサラリーマンではないか。 普通の人。エブリマン。仕事に一生を捧げる男。雇ってくれた企業には忠義を尽くす。ブラックな企業でも黙って耐え、会社のために身を粉にして働く。しかし他にいい仕事が見つかれば、簡単に別の会社に転職したりもする(ということは昭和ではないのかな?) そして職を変わるたびにまた新しい会社で精一杯忠義を尽くす。とにかく会社/仕事のために生きることが自分の人生だと信じている男。仕事仕事…ばかりだから家庭も顧みない。子育てや家事は全部奥さんに丸投げで、家では「飯・風呂・寝る」ぐらいしか言わない笑。あまりに出張と残業ばかりしているから子供が懐かない。野心は昇進だろうか?…いやこのドラマの光秀は「社長を持ち上げて大きな男にする。会社を大きくする」のが野心だな。 

しかしそんな風に会社に忠誠を誓う彼は、自ら新しい事業を起こそうとか脱サラしてラーメン屋をやろうとか…そういうことは思わない。

なんだ…そうなのか、この光秀は歴史を変えた人物というよりも昭和の真面目な普通のサラリーマン的な人なのか。そして彼は優秀なのですよね。真面目で誠実、仕事も出来るし、人柄もいいから人望もあるわけだ。

そういう…普通の人が、
本能寺の変
なんて大事件をやってしまった。

それで突然歴史に名前を残す人物になってしまった。極端だ。今まで己の野望を一切語らなかったような普通の男が、突然主君(天下統一をしそうな大物)殺しをする。

そしてこの光秀は
ガッチガチの真面目人間
なので「わし、やるなら本気でやる」と本当に本気を出しちゃったらしい。そして決行してしまった。それにしても不器用すぎる。周りの状況を見てうまく泳げなかったのだろうか?

そしてその目的は? 信長を討ち取ってどうするつもりだったのだろう。細川藤孝へのお手紙にも「私は子供に家督を譲って引退したい」と書いていたらしい。そんな生ぬるい言葉で(時の状況を読む)藤孝が加勢してくれるはずもなく…光秀はもう諦めていたのかも。

ぅん~そうか…大河ドラマの主人公が普通のサラリーマンだったというオチか。なるほどなぁ…な~んて勝手に納得してますが、そんな光秀が嫌いじゃないぞ私は。いいじゃないか…真面目な普通の人。しかしどうしてあんな風に思い切っちゃったかなぁ。


このドラマもあと1回。なごりおしい。本能寺を3月ぐらいにしてもっと深く描いて欲しかった。今後もそれぞれの人物達がどうなるかなぁと思う。俳優さん達の熱演が素晴らしい。皆さんいい表情をなさっていて魅力的。セットも演出も素晴らしい。

大きな拍手。来週最終回が終わった後にはロスになると思う。