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2018年9月20日木曜日

TBS 日曜劇場『この世界の片隅に』第8話



戦争が終わった回。

広島に新型爆弾が落ちたことは本当らしいのだが、その後詳しい情報は入ってこない。北條家の女性達も近所の女性達と共に草履を編む。
 
近所の人々も皆不安な気持ちで一杯だろうに誰も愚痴をこぼさない。刈谷タキさん(木野花)も広島に行った息子さんが心配なのに溜息はついても直ぐに「手を動かしましょう」と皆には笑顔。彼女が笑顔を見せるのは、自分が辛い顔をすれば皆にも辛い思いをさせることがわかっているから。それは彼女の心配り。看護の経験のある知多ハルさん(竹内都子)は広島に行くという。広島に行きたがるすずを「連れて行けない」と断れば、堂本美津さん(宮地雅子)が紙に情報を書いて渡すようにアドバイスしてくれる。この近所のおばちゃん達がいい。皆辛い中にありながらそれぞれが相手を思いやっている。いいシーン。
 
終戦も近所の皆とラジオの玉音放送を聞いて迎える。
 
放送は言葉もろくに聞こえない。皆戸惑っている。神と崇めた天皇陛下の声は「まるで人間の声のような…」。堂本のお爺ちゃんは外で立っている。「どういうこと?つまりは負けたということかね。じいちゃん負けたらどうなる?」と問えば「わからん」と答える「負けたことがないけんのう」。
 
すずさんの怒りも戸惑いから出たもの。一人立ち上がって「納得できん。まだ戦える」と言っている。もちろん彼女も本当に戦い続けたいわけではない。外で一人大泣きするのも突然の終戦で感情をどうしていいかわからないから。
 
 
実際の戦争とは…終戦もこのような感じだったのだろうと思う。普通の19歳の女の子にとっての戦争とは…国のエラい誰かが始めて、外国が攻めてきて、毎日空襲にあって、そしてある日突然終わる。 子供の頃から…日本は強い国だ、絶対に負けないと教え込まれ、本土決戦になれば最後の一人まで戦い抜くと信じてきた。それがお国のためだと教えられた。 一般の市民にとっての戦争とはそのようなもの。その戦争ですずさんは手を失い大切な家族を失った。そしてある日戦争は突然終わる。納得がいかない。どうすればいいかわからない。彼女の怒りと大粒の涙は「終戦」をどう受け止めていいのかわからないから。
 
この話(原作・アニメ・ドラマ)のすごいところはそこだろうと思う。普通の人々にとって…特に若い女性にとっての戦争とはどういうものだったのか。
 
戦争は突然終わってまた日常が戻ってくる。それでも戦争中に失ったものはもう戻ってこない。日々が日常に戻っても、無くしたもの亡くした者はもうかえってこない。心と身体に負った傷はいつまでも癒えることは無い。 …戦争は国が始めた。私が始めた戦争ではない。戦争はいつしか始まったもの…なぜ私は私の愛する人々はこれほどまで辛い思いをしなければならなかったのか。納得がいかない。納得できる理由付けができない。
 
 
すずさんと同じ世代でもう亡くなった実家の家族に、私も以前こういう話をよく聞いた。彼女も終戦で大声をあげて泣いたそうだ。それと同時に「やっと終わった」と思ったとも言っていた。このドラマを見ると、いつも彼女のことを思い出す。彼女はどのようにこのドラマを見ただろうかと思う。