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2018年9月25日火曜日

映画『クレイジー・リッチ/Crazy Rich Asian』(2018):アジアの大富豪ライフを覗く






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Crazy Rich Asian2018年)/米/カラー
120分/監督:Jon M. Chu
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ちょっと前に見た映画。話題になっていたので見に行った。以前映画「BlacKkKlansman」のエントリーで人種問題の話が出て、その感想に私は「白人以外の人々が頑張ってくれるのならぜひ応援したい」と書いたわけですが…。もちろん東アジアの人々が西洋に対して頑張ってくれるのならもっとありがたい東アジアのいい印象が西洋の人々にもいきわたって、結果ワタクシのような普通の東アジア人でも(もちろん日本からの旅行者も)西洋での居心地がよくなるのであれば大変よろしい。

アジアよもっとがんばってくれ!


西洋の人々にとっての東アジアとは本当に遠いところ。だから西洋は基本的に東アジアと黄色人種にはあまり関心がないんですよ。 15年ほど前に(エキゾティズムをベースにした)日本テーマの映画や中国映画が西洋でもちょっと話題になった時期があったのだけれど、ここ10年程はなんとなくそういうのも下火になったのかな…と思っていた。
 
そこへ今年突然出てきたこの映画

ハリウッド製東アジア人ばかりの出る映画。それが世界中で大ヒット!

だそうですよ。おぅ…本当ですかそれは…ほ~…どうして?

 世界中でものすごく売れているんだそうですこの映画。東アジア人/黄色人種ばかりが出る映画が世界中でこんなに売れるって…どうしてでしょう?
 
このハリウッド製東アジア人ばかりの出る映画が大ヒットしている事実は、映画そのもの以上にも大きな話題になっていて、西洋の一般メディアもこの映画をきっかけに東アジアについての記事を載せているのがまた面白い。おお…ついにきたか…アジアンパワー!

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ちなみに西洋(特にヨーロッパ)で言うところのアジアとは、トルコから始まって中近東、インドを含む西洋よりも東側に位置する地域を指し、アジアとは言っても中国や東南及び東アジア(太平洋側)だけの国々を指すとは限らない。しかしこの映画で言う「アジア」とは東アジアです。その人々は黄色人種(モンゴロイド)。この映画には黄色人種しか出てこない。
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というわけで見に行った。映画そのものも面白かったです。話は単純。西洋から見れば東洋のエキゾティズムにわかりやすいストーリーでヒットしたというのはありますね。

ともかく、ハリウッドの製作で東アジア系の作家の本がオール東アジアキャストで映画化され、その映画が世界中で大ヒットしている…というのは大変嬉しい。本当に嬉しい。そしてとても驚いてます。やっぱり時代は変わってきているのね。ありがとうありがとう😭


★あらすじ
主人公は中国系アメリカ人女性レイチェル。ニューヨーク大学で経済学を教える教授。シンガポール人のボーイフレンド・ニックが友人の結婚式に出席するのに伴って、彼のシンガポールの実家を訪ねる。ニックの家族はアジアの有名な大富豪一族だった。伝統のアジアVS叩き上げアメリカ娘。西洋VS東洋。さて結果はどうなる。


ネタバレ注意

アジアの大富豪ライフを覗く

これはぶっちゃけ、アジアの大富豪を見てすごいすごい…という映画。とにかく桁外れの大富豪の生活を覗き見る。それが面白いのね。まぁあまり言いたくはないけれど(今まで)西洋人は東アジアの大富豪と言われてもイメージとしてピンとこなかったわけですよ。実際20世紀の東アジアというのは西洋に比べてそれほど裕福ではなかったわけで…。しかし今はメディアでも近年東アジアがうまくやっているらしい噂だけは西洋にも十分伝わってきている。東洋の大富豪とはいったいどんな生活をしているのだろう? 興味津々。

この映画はそれにうまく答えてくれた。東アジアの大富豪はどんなにリッチなのか…を見せてくれる映画なんですよこれは。それを見てほーすごいねぇーと面白がるのがまず一番。実際面白いです。大衆とは自分には想像も出来ないほどのお金持ちの生活を覗いてみたいものでして…。

私はこの映画が大ヒットしている一番の理由は、そんな「世界中の一般大衆の興味」をうまい具合に刺激した結果ではないかと思います。それに東洋の神秘が加われば、いやーもう見たい見たい。東洋の大富豪ってどんな生活をしているのだろう???

実はそれ以外にはあまりたいした映画ではないです。シンデレラストーリーとも言い難いだろう。アメリカ育ちの普通の娘が覗き見た東アジアの大富豪の生活。それでこの映画の評価のほぼ70%はカバーされる。

米育ちの普通の娘と東洋の上流階級

この映画は、基本的に東洋の富がいかにすごいか…の宣伝のような映画なので、普通のアメリカ娘と東洋の上流階級の対比がこれでもかと強調される。

プライベートジェット(←これは出てこない)や島を借りてのパーティー、豪邸やファッションなどのお金で買える物が豪華なのはあたりえ。東洋の上流階級の人々はルックスもいい。皆高身長でスタイルがよく優雅。

また彼らシンガポールの大富豪の多くは、子供達を英国の全寮制の寄宿学校に送るので、若い世代は皆英国の育ちのいいアクセントで喋る(ちなみにシンガポールの公用語は英語)。演じる女優さん達は元ボンドガールのMichelle Yeoさん。英国育ちでモデル出身のGemma Chanさん。Sonoya Mizunoさんも英国育ちのバレリーナだそう。皆美しい。男性の俳優さん達も皆さん素敵です。

そこに入り込んだアメリカ娘。普通のルックスの女の子。なぜだ?どうしてキャスティングはこの子をアメリカ代表に選んだのだろう?十分可愛いんですけどね。しかし小さい。背もおっぱいも小さいこの女優さんは決してゴージャスとは言い難く…。なぜなのよ。アメリカにはもっと綺麗な中国系の女優さんがいるだろうに…。元々このConstance Wuさんは、現在アメリカで製作されている…台湾からの移民の家族を描いたTVドラマ『Fresh Off the Boat』で既に有名らしいのだけれど、それにしてもこのアメリカ代表の小さい女の子は東洋の神秘美女軍団に囲まれるとちょっとかわいそうにも見えてくる。この差は意図的なものなのでしょうかね。

東洋VS西洋

アメリカ育ちの普通の娘レイチェルは自分で努力をして大学教授になった。努力をすれば結果が出る。そんな個人主義、実力主義の生き方を実践してきた。そこに東洋の壁が立ちはだかる。アメリカの個人主義と東洋の「家」のぶつかり合い。そんな話も織り込まれる。

シンデレラストーリーではない

レイチェルちゃんが慎ましい出自から大学教授にまで上ったことは、アメリカなら個人の努力だと尊敬されるだろうけれど、アジアの大富豪一族には何の意味も無いらしい。東アジアの大富豪一族が重要視するのは息子の嫁の家柄。大切なのは嫁の家柄家柄家柄…。
 
しかし東洋サイドの理屈も十分理解できるわけです。大富豪には大富豪のルールがある。息子は将来家を継ぐ。息子の嫁は家のビジネスに幸運とチャンスをもたらす家と家の関係を繋ぐ者でなければならない。そんなのあたりまえですよね。彼らにとってレイチェルは何処の馬の骨ともわからないアメリカの小娘…そんな娘に、それまで何代にもわたって築いてきたビジネスの帝国を将来任せるわけにはいかないのですよ。そのアメリカの小娘がどんなに知的であったとしても…哀しい哉。こういうことは理屈ではどうにもならない。この女の子はこの家族に入っても浮きますよね。全く受け入れられないと思う。結婚したら辛いでしょう。だからこれはシンデレラストーリーにはならないと思う。
 
最後のどんでん返し

私は、ニックのママとレイチェルが麻雀対決をした時の会話で、ニックとレイチェルは決裂したと思ったんですよ。アメリカ娘は散々いじめられたけれど、最後は東洋の神秘にアメリカ娘のプライドで釘を刺した。「あなたの息子と別れてあげるわ」…あっぱれあっぱれ。よくやった…と私は喜んだ。ところが最後はひっくり返った。
 
えええええぇなんで?アメリカ娘のプライドはどうしたのよぉ。それを受けてもあなた…苦労するわよ。パーティーの魚なんてまだまだ甘い。もっともっと酷い事が起こるかもしれない。いいのかいいのかレイチェルちゃん。やめたほうがいいと思う。
 
…というわけで、最後はレイチェルちゃんの将来がとても心配になった。確かに知的なニックのママとは気が合いそうなんですけどね。しかし無理だよなぁ…。アメリカ的な合理主義で育った女性が、中国的な伝統と繋がりを重んじる世界に相容れるわけがない。

続編はあるのか

原作のことは知らないのですが、この映画がこれだけヒットしているのなら続編が作られるのは間違いないでしょう。レイチェルちゃんはシンガポールに移住するのか?しかし…これは辛い話にしかならないのではないか。シンデレラストーリーなんて無理。あそこにレイチェルちゃんが馴染む姿は想像できない。ほんとに。どうなるんですかね。
 
結局は、頑張りやさんのレイチェルちゃんがかわいそうになってしまった印象。もちろんロマンティックコメディのハリウッドブロックバスターならハッピーエンディングでなければならないのはわかっているのだけれど…。
 
 
それにしても、主役の女の子がニューヨーク育ちの白人の女の子だったらどうなったのだろう?白人でも家柄がしっかりしていれば結婚は可能なのだろうか?それとも中国系でなければならないのか? 色々と考えさせられる東洋の神秘。ところでニック役のヘンリー・ゴールディング君はええ男ですね😊