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2017年11月19日日曜日

映画『Jane』(2017):ジャングルのジェーン・美しさは世を動かす助けになるのか




▼今年の9月に米のトーク・ショーに出演なさった時の映像
2:15頃にチンパンジーの孤児ウンダを野生に返す時の映像が出てきます

Wounda's Journey: Jane Goodall releases chimpanzee into forest

 
 
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Jane2017年)/米/カラー
90分/監督:Brett Morgen
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いつの時代にも「変わり者/エキセントリック」と呼ばれる人がいる。

現代は(基本的には)誰もが生きたい生き方を選ぶことが出来る…またそれを夢見てそれを実現する為の努力をすることもできる…自由な時代なのだろうと思う。

しかし1970年代ぐらいまでは世の中はそれほど自由ではなかった。男性にも今ほどの自由はなかっただろうし、それ以上に女性が好きな生き方を選択するのは難しかったろうと思う。


このドキュメンタリー映画の主人公は、Dame Jane Morris Goodall/ジェーン・グドールさん。英国生まれの著名な動物行動学者、霊長類学者です。

動物好きの方なら彼女の名前を聞いた事があるかもしれない。

ジェーン・グドールさんとは…、
若い頃からアフリカ・タンザニアに移住しチンパンジーのフィールド調査に携わる。アマチュア研究者でありながらも大発見をして世界にその名を知られるようになり、動物行動学でPh.Dを取得した後、チンパンジーの研究を熱心に継続。革命的な研究成果によってチンパンジー研究の第一人者となる。野生動物研究・教育・保護団体を設立し、現在も執筆の傍ら、世界中を巡り、講演や教育活動を行っている…そのようなお方です。現在83歳。

海亀は、子供の頃に「野生のチンパンジーは道具を使ってシロアリの狩りをする」という記事を読んだのを今も覚えている。なんとこの女性が発見したチンパンジーの生態だったんですね。このお方のことはお名前は知っていたけれど、あの記事の内容がこのお方の発見だとは今まで知らなかったです。ちょっと感動。

近年グドールさんの若い頃の研究の様子を記録したフィルムが新しく発見されたらしい。この映画は、その古いフィルムの映像を中心に構成。彼女の若い頃の様子をドキュメンタリーにまとめたものです。


★感想

美女は絵になる。

偏見の塊と言われそうだけれど…ジェーンさんはお綺麗です。ちょっと戸惑ってしまうぐらいお綺麗な女性なんですよ。実は予告のトレーラーを見た時は、ジェーンさんがあまりにもお若くて綺麗なので「もしかしたらドキュメンタリーの形をとったドラマなのか?」と思ったくらい。女優さんが演じているのではないかと思うくらい彼女は美しい。

そうじゃないんですね。
この映像の女性は間違いなくグドールさん御本人。


…まずこの古いカラー・フィルムの保存状態に驚く。このフィルムが撮影されてからもう50年は経っているはずなのに、映像が信じられないくらい綺麗。普通はカラー・フィルムなんてもっと劣化するものだろうに、どうしてこんなに綺麗なのだ。

…映像の保存状態がいいから、記録された内容もよく見える。

 …よく見える映像の中のジェーンさんがまぁなんと綺麗なのだろう。お若い。可愛い。化粧っけの無いラフな格好なのにモデルさんのように美しい。それにもまた驚く。驚愕です。


映像の中の彼女が美しいのには理由がある。

この映画の映像の多くは、彼女の最初の夫…オランダの貴族出身の動物カメラマン/映像作家のHugo van Lawickさんによって撮影されたもの。元々Lawick氏は、彼女の研究に興味を示したナショナル・ジオグラフィック誌から派遣された動物カメラマン。彼はグドールさんの研究を記録する仕事でアフリカにやってきたのに、どうやらまんまと彼女の美しさの虜になったらしい。その後二人は結婚。男の子が一人生まれる。

映像の中の彼女が美しい理由は、旦那様がカメラを通して見た愛する奥様の映像だからなんですねきっと。この映像は被写体の女性に恋をしている男性の目線。だからいい。だからジェーンさんが信じられないほど美しい。参りましたね。微笑ましいな。

実は映画を通して一番記憶に残ったのはそこ
(いいのか悪いのかよくわからないけれど)。
 
ジェーンさんとチンパンジーの信じられないほど親密な交流を正確に記録している映像なのに、何よりも心に響くのはジェーンさんの美しさ。この映画は、動物の記録映画というよりも、

旦那さんが撮影した
愛する奥さんのイメージビデオ
…のよう。
 
それがすごーくこの映画を微妙にしている気もした…いいのこれ?微笑ましいんですけど…でもこれ本当に真摯な動物研究の記録なの?
 
 
実はこの映画を見終わって一番感動するのは、

ジェーンさんの生き方、
エキセントリックぶり

1960年代1970年代なんて、まだ女性の真の解放さえ実現されていなかった時代。どの国でも「女性は家にいて家庭を守り良い母親になる」のが当時の普通の女の子の人生だったわけです。そんな時代にこのジェーンさんというお方は、世間の目を全く気にすることなく、好きな事だけを見つめて好きなことだけのために生きた。とんでもないエキセントリックな女性だと思う。
 
いや憧れますよもちろん。決して非難などしない。こういう女性は大好きです。こういう生き方ができるなんて海亀(若い頃の)究極の夢です。ものすごく尊敬するしものすごく憧れる。実は私も子供の頃から野生動物が好きで、アフリカに住んでみたいなと思ったこともある。
 
しかし私には絶対無理。なぜなら海亀は凡人で俗物だからです。心も身体も強くないから…いい訳なんて百だって並べられる。彼女のような潔い生き方なんて私には絶対に出来ないです。だからこういう女性はただただ尊敬してしまう。
 
 
いつの時代にも、自分の意志を貫いて「好きなこと、良いと思うこと、正しいと思うこと」に人生を捧げる方々がいる。何事であれ強い意志を貫いて人生を送るのは男性にさえ難しいことなのに、世の中には女性でもそういう生き方をなさる方々がたまにいらっしゃるわけです。
 
このジェーンさんも、生活には困ることの無い中流階級の出身で、知性もあり、あれだけ美しいのであれば、どこにいても何一つ不自由することなく、女性として幸せな普通の生活が送れただろうと思う。
 
ところが彼女は1960年代に、「ただひたすら動物が好き。アフリカに住みたい。男の子にも結婚にも全く興味が無い」…若い頃からそういう女の子だったらしいんですね。ある意味「変わり者」と言ってもいい…。
 
好きなこと、やりたいことがはっきりしていたから、チャンスがあったらパッと摑む。そして未知の分野だろうと、未開のジャングルだろうと、全身で飛びこんでいって世界的な発見をしてしまう。彼女の人生そのものがすごい話なんですよ。
 
単純な話、どうしてこういうことが出来るんだろうと思う。不思議なんですよね。
 
 
そもそもアフリカのジャングルに若い女性がテント暮らしを何ヶ月も何ヶ月も続けるなんて信じられない話です。映像で見る彼女は涼しく微笑んでいるけれど、ジャングルなんてそんな気持ちのいい所じゃないと思う。
 
湿気、汗、まともなシャワーもない、トイレ問題。寝心地の悪いベッド。そしてやっかいな生き物たち(蚊、ダニ、ノミ、毛虫、毒虫、蜂、蟻蟻蟻…、ムカデ、蛭、蛇…)、得体の知れない病原菌の数々、怪我、病…、
 
研究の対象のチンパンジーも実質獰猛な猛獣。ひと噛みで肩の肉をもぎ取られるかもしれない。腕を引っ張られて脱臼。なぎ倒されて骨折、負傷…そんな可能性だってあったはず。野生動物特有の匂い…様々な不快な匂い。寄生虫…。
 
それに、若い女性が未開の土地に暮らすということはそれだけでも危険。女性であることによる身体の弱さ。ありとあらゆる危険…。もしかしたら命を落とす可能性だってあったかもしれないのに…。
 
彼女はきっとあの可憐なルックスの印象とは全然違う…私達の想像以上に頑強な肉体と強靭な精神力を持ったとてつもなく強い女性なのだろうと想像する。
 
 
この映画ではそういう現実の「辛いこと、苦しいこと」はあまり見えてこない。辛い事件の報告はあってもリアルな苦しみは見えない。構成のせいなのか全体に生々しさがなくどこか淡々とした印象なのは、撮影された時代の感性が今とは違うからなのだろう。

だからスクリーン上でただただ綺麗な女の子が大きなチンパンジーと楽しく戯れている様子は、もう

おとぎ話にしか見えない。

本当に妙な映画なんですよ。動物研究の本質を見せることなく、また彼女の実際の苦労を見せることもなく、かなり表面的なイメージビデオ風な映像を見て、観客は「自然って素敵ね」と思う…。見る前は、そういう映画だとは思っていなかったです。もっとリアルな野生動物研究の記録だと思っていた。

その事を旦那Aに話したら
「だからタイトルがJaneなんじゃないの?」
ああそうか…。これは単なる野生動物研究の記録映画じゃないんですね。主役はあくまでもジェーンさん。チンパンジーではない。これはあの伝説の霊長類学者ジェーンさんの素晴らしい研究とその勇気ある人生の全てを、彼女の若い頃の映像を見ながら称える映画。ジェーンさんという一人の女性の生き方を称える、彼女のファンのための映画。それでなんとなく納得。


それにしても美女は絵になる。

(私も女なのに正直に言わざるを得ない)もしジェーンさんが普通の地味な(あまり見映えのしない)ルックスだったら…、世の中は、これほど彼女を…彼女の研究を素晴らしいと称えただろうか…。

チンパンジーと一緒に無邪気に笑っている彼女はおとぎ話の中の妖精のように美しい。彼女がニコニコと笑っていかにも楽しそうに「研究」している様子を見ると、もしかしたらジャングルの生活もそれほど辛くないんじゃないかと思えてしまう。「いいなぁ…楽しそうだなぁ」と思ってしまう。それも不思議。彼女がスクリーンに映ると全てが魅力的に見えてしまう。

こういうことは言うべきではないのだろうけれど、
1960年代当時(彼女が研究するまで)未知の生き物だったたチンパンジーに(研究の成果の素晴らしさはもちろんのこと)世界中の興味の目を向けさせたもう一つの理由は、もしかしたら彼女の美しさにもあったのかもしれないとも思ってしまった。

「こんな美女が仲良くなれるのならチンパンジーは私達が思うよりももっと興味深い生き物なのかもかもしれない…」

なぜなら世間とはそういうものだから。


彼女はその美しさ故に男性ばかりの研究学会で苦労をし、しかしまたそれと同時にその美しさ故に研究の成果を告げる自らの声を世間により大きく響かせることも出来たのかもしれない。

そう思ってしまうほど映像の中の彼女は美しい。

彼女のジャングルでの美しいお姿が、愛に満ちた旦那さん目線の映像で残されたのは私達にとっての幸運。彼女のことが知れてよかった。