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2013年9月22日日曜日

NHK 土曜ドラマ『夫婦善哉』 第1回



面白かったです。

こちら米でも日本語TVサービスで1回目が先週から始まった。原作も昔の映画も見てません。このドラマが初めて。いやーこれ…いいドラマ。

特に二人が出会ってB級グルメめぐりのあたりがぐっと来ました。やー参ったな…すごくいい。金持ちの上品なボンボンがB級グルメで女を落とすって…原作もそうなんですかね。いやーいいな。まぁ男女の出会いというのには、いろんな状況があるとは思いますが、ワタクシこういうの好き 久しぶりにいいもんを見た(笑)。


あの維康柳吉(森山未来)がわざわざB級グルメに凝ってるのには意味がある。彼は金持ちのボンボン。だからお金を出して買える美味しいものなんていくらでも知ってるわけです。

ところが彼は自分で自分の納得する美味しいものを見つけたい人。だからいろんなところに自腹で出向いていっていろんなものを食べてみる。これはおいしい…これはいまいちやな…と自分だけのグルメマップを作っちゃってるわけです。柳吉独自の絶品B級グルメマップ。

柳吉は道楽男。自分の舌・感性に絶対的な自信を持っている。そこで「ちょっといいな」と思った可愛い女を「美味いもん食いにいこう…」と連れ出す。今までもああやっていろんな女を同じように連れ出してきたはず。「美味いもん」と言って連れて行く場所はB級グルメ…なので女も最初は怪訝な顔をする。「美味いもんて、これでっか…?」とちょっとがっかりしたりする。ところが、食べてみると「あれ…?」


柳吉は、まず1軒目で女の反応を見る。反応がいい女だけを次の店にもつれていく。最初の1軒目で「なんでこんなもん…」なんてつまらなそうにしてる女は1回きりでさようなら。ちょっと興味を示した女だけを2軒目にも誘う。

そんな秘密の食い物屋に毎回ひっそりと女を連れて行って絶品B級グルメをどんどん女に食わせる。自分で勝手にどんどん注文して女には全く選ばせない。そして「どや…?」「美味いやろ…」「これはな…」と薀蓄を傾ける。

若い女はまだまだ世間知らずでイノセントなんで、最初は微妙だったB級グルメデートにもだんだんじわじわとはまっていくんですね。本当に美味しいものを知ってる物知りの趣味のいい大人の男をちょっと尊敬し始めたりする。

あまり一般受けしなそうなB級レストランばかりにつれていかれるんで、最初は「ワタシ安く見られてるのかしら…」などと思ってたのに、女もいつの間にか「この人は秘密の店を私だけに教えてくれてるのかしら…」と思い始める。「これもおいしい…あれもおいしい…この人と出かけるとなんだか楽しい…」…そしてどんどん男に惹かれていくわけです。

焼き鳥をがっついたり、茶碗の中身をお互いに移しあったりするうちにだんだん親密になってくる。そこである日「いこ…。まだ…ええがな…。」と誘われる。もう「いやだ」とは言えない。茶碗の中身を移したりするぐらいだから、もう親密だったんだろうと思ってたけど、いやいや時代は大正。まだまだ男女の仲はお堅い時代なんですな…。


これはね…ものすごく真実。現代でも男性が(この柳吉のように)ちょっと脈のありそうな女の子をB級のお気に入りの店に連れて行って、もし彼女が「なんでもっとおしゃれなフレンチに連れて行ってくれないのよ…」とふてくされていたら、その女との将来はちと考えたほうがいい(笑)。だってね、そういう女は男からの献身的なサービスしか喜ばないめんどくさい女。それに食べ物より雰囲気だけで喜んでるような中身のない女。ほんとよ。

こういう柳吉みたいな男っていうのは(雑誌やマニュアルどおりの)女の子の喜びそうな店には決して行かない。女の子に媚びてない。こういう男っていうのは、自分の選択に絶対的な自信があって、それを喜ばないつまらない女には全く興味がないわけです。上品なAグルメしか喜ばないような女(=柳吉の奥さん)は、型どおり四角四面、真面目すぎて面白味が無い。

B級グルメに連れて行って女の反応を見て、今度は寄席に連れて行ってユーモアのセンスをチェックする…。そうやってその女が一緒にいて面白い女かどうか…を見てるわけです。胃袋とユーモアのセンスの相性がよければ、それ以外のあんなことやこんなことの相性もいい。一緒にいれば楽しい時間を過ごす事が出来る。そんなことをこの柳吉はよ~くわかっているわけです。そして暫くして十分仲良くなった後に、実はよく知った趣味のいいA級にさらっとつれていったりする。そうすると女の子はもう後戻りが出来ない。


それにしてもこの柳吉という男、ものすごく自分勝手。そもそも何事もいいかげん。B級グルメだって勝手に自分の好みを押し付けてるだけだし、ぜーんぶ自分の思い通りのことしかやらない。女性の好みに寄り添って喜ばせるようなサービスなんて全くしない。それなのに女の子が惚れてしまうのは独特の妙な魅力があるから。ほんとに困ったもんです。

(ワタクシはこういう男にひっかかることはないですが)こういう男に魅力があるのはまぁよくわかる。何の根拠も無いのに「俺にまかせとけばいいんや…」と自信に溢れて態度にも余裕のある男というのは、時にものすごく魅力的。外見じゃない。実は金でもない。妙な根拠の無い自信。生まれ持ったカリスマ…たぶんそういうもの。そして時に見せる弱さ。困ったもんです。


俳優さん達もいいですよね。蝶子の尾野真千子さん、柳吉の森山未來さんがすごくいい。

私は有名な朝ドラを見ていないのですが、尾野さんはインタビューでもあまり美女美女したオーラを売りにされていないんですよね。どちらかといえばガサガサしたキャラで売ってらっしゃる印象なのに、このドラマでは本当に色っぽい。ものすごく女。すごく綺麗。ものすごく可愛い。しっかり者で気も強いのに惚れた男にはいやと言えない可愛い女。すごくいい。いっしょに泣ける。

そして森山さん。今まで見る機会がなかったので初めて。まったく好きな顔じゃないんだけど(失礼)この柳吉はすごくいい。上に書いたような根拠の無い自信を持つボンボン、女好き、道楽好きのダメ男。繊細な女の子みたいな顔なのに、B級グルメを口いっぱいに頬張ってガツガツ食べるところに、ものすごく色気を感じる。肌も綺麗。きっと手も綺麗だ。女の子みたいにツルっとして髭も生えてなさそうな顔なのに態度も声も台詞もすごくぶしつけで男臭い。こういう人いる。尖った鼻と形のいい鼻孔、ぽってりした唇が超エロい(笑)。


あー面白いな。実はB級グルメに蝶子を連れまわしてる場面が一番盛り上がった。こういうドラマは、二人がねんごろになる直前が一番面白いですな。尾野さん最高。ドキドキする。

駆け落ちしちゃうと、まぁありがちな話になりそうなんですけど、このお二人が非常に魅力的なんで十分楽しい。ガヤガヤとした街の喧騒も、パッパッと画面の切り替わる編集も、カラフルな色あいも、コミカルな登場人物達もすごく楽しい。ベタベタせず軽いノリも結構。漫画みたいな印象も結構。1時間があっという間に過ぎた。

優しい火野正平パパも、頑固な岸部一徳親父も、枯れた草刈正雄爺もいい感じ。特に草刈爺が、喧嘩中の蝶子・柳吉を避けてススス…と火鉢を動かしたのは笑った。

これは楽しみです。