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2013年7月12日金曜日

NHK大河ドラマ「八重の桜」第26回「八重、決戦の時」



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官軍が会津に攻めてくる。とうとう戦争です。八重ちゃんの近所でもみんな声を掛け合ってお城に向かいます。城に入っていく女性達の中には白装束を着た方々もいる。みんなもう死ぬつもりなんでしょうか。会津の長い一日の始まり。

それにしてもこのドラマは、会津戦争を本当に細かく描いてますね。一日一日と日を追って史実で起こった事を全部入れてるみたいな感じ。不思議にもドラマそのものは淡々としていて驚くほどですが、今まで平和だった会津の人々がいかに理不尽な戦乱に巻き込まれていくのかを、それぞれの目を通して事細かに描いてます。

戦争も重苦しい自害の場面なども一つ一つ描いてます。これほどの時間をかけて会津戦争そのものを描くことも珍しいのかも知れません。

歴史を淡々と追っている感じなので、これほど劇的な異常事態の回なのになぜか涙も出ませんでした。これが果たしてドラマとしていいことなのかどうかも分からないです。しかしあまりに感情的な場面に時間をとられると肝心の戦の場面がカットされるでしょうから、戦闘シーンを本格的に描くにはこういう演出のほうがいいのかもしれません。

綾瀬さんの八重ちゃんは素晴らしいです。宮崎さんの西郷千恵の覚悟もよかった。竹子さんが雪さんに「生きて戦え」と告げる場面もいい。心を決めた強い意思を持った女性達は、結果は悲しいながらも、その勇気に心を動かされました。彼女達は決して負けていない。

それに比べると、土佐さん及び神保内蔵助さんお二人の死は早すぎる気もしたし、白虎隊もどうも突然で納得しかねました。自決が早すぎるのでは。あれでは戦闘を放棄して死んで逃げてしまったように見えてしまう。土佐さんと神保さんの場面の直後に、八重ちゃんが鉄砲を持って少年達と城を守っている姿が映ったのでよけいにそう思った。「女や子供がまだ戦ってるのに、どうして家老クラスの人達が死ぬんだろう…。」白虎隊も「弾はまだ残っている…」のなら最後まで戦わないと…。どうも納得が行かないんですが、このあたりの史実を全く知らないので、もう少し私も資料を読んでみようと思いました。

後は…八重ちゃんが城で尚之助さんと会って大砲の指揮をとりはじめた場面をいきなり中断して、京都の覚馬さんの場面に移ったのには驚きました。なんで…あの場面をぶったぎるのだ…? ああいう編集スタイルが、この大河をなんとなく淡々と見せているのかもしれません。

ともかく45分間、息を呑んで見ました。歴史の事実を淡々と描く今回の大河は本当に素晴らしいと思う。現代の視点で「戦争反対」などと誰も言わずに、「死んで抵抗する」とか「死ぬまで戦う」とか…よく軟派なこの時代にNHKさんは思い切ってくれました。感謝したい。極限の状況や言動に背筋を凍らせながら当時の人々に思いを馳せて見ています。本当に今年の大河は学ぶことが多い。これこそ大河ドラマの喜びでしょう。

大河ドラマを始めとする歴史ドラマの本当の醍醐味は、ドラマで部分的に描かれた史実を見て「あっ」とショックを受けたり驚いたりして、そこから本当の歴史に興味を持ち、いかに「史実は創作よりもすごいのか」ということを学んでいくこと…だと思います。ドラマをきっかけにして歴史を学ぶと、ドラマで描けなかったような話もゾロゾロ出てきて驚いたりする…それこそが歴史ドラマの楽しみだと思う。史実をまげて大衆に媚びるのではなく、史実に出来るだけ近い演出、撮影をしてくださった今年の大河のスタッフさんには大変感謝したい。会津の歴史に初めて興味が湧きました。


さてあらすじを…

弟の軍服に身を包み八重ちゃん(綾瀬はるか)が戦に出向くのを、幼馴染の時尾さん(貫地谷しほり)が見送る。男達は戦況を報告しあって軍議中。そこへ八重ちゃんが乗り込んでくる。「おなごの出る幕ではない。下がれ」と一旦は言われるがそこで八重ちゃん…

「これは会津全ての戦いだ。山本覚馬の妹だ。鉄砲のことなら誰にも負けねえ。敵にお城は渡さぬ。仲間がやられるのを黙って見るつもりはねえ。私達の大事な故郷、会津はこの手で守る。」それを聞いて「んだら…心ゆくまで戦うべ…」という神保さんの目が優しい。
 
城下では城に入れない人もいる。日向ユキさん(剛力彩芽)の家族が締め出されてしまった。また薙刀を持った「娘子隊」の前へフラフラと神保雪(芦名星)さんが家から出てくる。多くの人が自害しているのを見たらしい。いっそのこと自分も…と言う雪さんに中野竹子さん(黒木メイサ)が「死ぬのは一人なりとも敵を倒してからになさいませ…」
 
城内の八重ちゃんは少年達に鉄砲の指導。
 
城に大砲が撃ちこまれるようになったころ、八重ちゃんは少年達を従えて戦っている。初めての実戦に向かう少年達を八重ちゃん「さすけねえ、私が一緒だ。」とはげます。(ここでせめて一人ぐらい少年の表情を映して欲しかった。)
 
その頃西郷家では女性達が白装束で円座になって座っている。
娘ふたりは、
「手をとりて共に行きなば迷はじよ、いざたどらまし死出の山路」
千恵(宮崎美子)
「なよ竹の風にまかする身ながらも、たわまぬ節はありとこそきけ」
「会津は罪もないのに罰を受け、無念を飲み込んで敵に恭順した。それでもまだ足りなくて、敵は会津を滅ぼしに来た。そんな非道な力には死んでも屈しねえ。このこと、命を捨てて示すのが西郷家の役目だ。」
実際に現在まで語られる西郷家の悲劇こそ会津戦争の理不尽さを今に伝えるものだと思う。この場面の台詞でぐっときました。

そのころ城では西郷家の一人息子が父に出会う。「一人でここに来たのか?」「母上も妹達もみな家に残りやした。」「そうか…そう決めたか…」

官軍の板垣(加藤雅也)が西郷家に入ると全員が自決をした後。そこに重なるナレーション「この日、自決した藩士家族は200とも言われる。女達の無言の抵抗は壮烈を極め、征東軍の士気を鈍らせた。」これを聞いて背筋が凍りついた。

白虎隊が飯盛山で自決。集団心理なのだろうと思う。


田中土佐(佐藤B作)と神保内蔵助(津嘉山正種 )、自決。「俺は最後に徳川のためでも幕府のためでもなく、会津のための戦をしたのだ。これ以上の名誉なことはねえ。」「生まれ変わるときはまた会津で…」

八重ちゃんが尚之助(長谷川博己)と再会「やはりきましたね。」二人で大砲を敵に向ける。

撃たれた大山(反町隆史)と板垣が官軍の陣で会話。「中は年寄りと子供ばかりのはずじゃ。」「一気に攻めるつもりやったけど、包囲戦に持ち込んじゃろうか…」

夜八重ちゃんが髪を切ろうとしているところへ時尾さんが現れる。八重ちゃんはこれから夜襲に行くと言う。「私は三郎だから長い髪はもういらねえ。」八重ちゃんの覚悟。時尾さんが泣きながら八重ちゃんの髪を切る。