能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2023年5月23日火曜日

米ドラマNetflix『Space Force』(2020, 2022):シーズン1は面白い…がシーズン2でネタ切れか?






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『 Space Force (2020-2022) Season 1, 2 – 全17 Epsodes/米/カラー
/1話30m/原案:Steve CarellGreg Daniels』
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「Space Force」とは直訳すれば「宇宙軍」。実は正式なアメリカ合衆国の軍隊。英語での正式な名称は「United States Space Force/アメリカ宇宙軍/USSF」…「宇宙空間を担任範囲とするアメリカ合衆国の軍隊」だそうだ。2019年12月20日に創設されたらしい。ほぉ~~。

へぇ~~~知らなかった。このNetflixのドラマを見るまで「Space Force」がアメリカの実在の軍だとは知らなかった。


ドラマ「Space Force」とはNetflixの2020年と2022年のコメディ・ドラマ。シーズン1は10話。シーズン2は7話の全17話。


きっかけは、去年の年末に見たコメディアンJimmy O. YangさんのNetflixの漫談『Good Deal』が面白かったから。彼がこのドラマに出ていると聞いて面白そうだと思った。そしてまたこのドラマには彼の父親のRichard Ouyangさんも出ているらしい。それなら親子共演が見てみたい。

ところで余談だが、Jimmy O. Yangさんの名前…彼のお父さんはRichard Ouyangさん。O. Yangの名前とはオーヤンなのね…と調べていたら「歐陽/欧陽」と出てきた。あれ?これって昭和の頃の歌手・欧陽菲菲/オーヤン・フィーフィーさんと同じだ。O. Yangさんてオーヤンさんなのか。へ~そうか学んだわ。そんなわけでJimmyさんにますます親しみがわく。


さてこのドラマはスティーブ・カレル主演の米国版『Office』の Space Forceバージョンのようなものか…制作陣が同じだそうだ。様々なキャラクターがいて皆それぞれ事情があって…彼らの宇宙軍勤務の日々を眺めて楽しむドラマ。

先週の終末にシーズン2を見終わった。そしてこの感想を書こうと調べていて、このドラマ・シリーズがシーズン2を最後に終了となったことを知った。なんだなんだなんだ~残念だな。私には十分面白かったのに~。


シーズン1は面白かった。「米軍を月に送るミッションがあって、ライバル中国軍との競争があって」とプロットがはっきりしていたからだろうと思う。目的があって話が進んでハラハラさせられて最後に崖っぷちに立たされて終わる。最高。すぐに次のシーズンが見たくなる。


★ネタバレ注意



特筆すべきは第2話の犬とチンパンジーの話。驚いた笑…開いた口が塞がらない笑。アメリカのブラックコメディ―は激しい。いや~まいった。少なからずショックを受ける。なんだこの笑いはなんだなんだと苦悶させられる笑。この2話の最後のチンパンジーの件はどこかで回収して欲しかった。もしかしたら先のシーズンで出てくることになっていたのか?惜しいね。


全体の雰囲気はゆるいけれどジョークはシャープ。私にはわからないものもあったのでいちいち旦那Aに聞く。

シーズン1の最後は緊急事態の崖っぷちで終わる。「え~どうなるの?」ドキドキするからついついシーズン2に手を伸ばす。このドラマは2話を一度に見ても1時間。1話が30分程度なのもとても気楽でいい。


さて問題はシーズン2の最初。シーズン1の最後の緊急事態崖っぷちはその後どうなったのか?…の事後説明がなされない。あの後何があったのかをドラマとして見せることもなく物語は別の方向に進んでいく。え~~~~それは肩透かしではないか。なんだなんだなんだ…。

そしてそのままシーズン2を見続けるうちに、これはこのようなゆるいスタイルのドラマなのだろうと徐々に理解した。答え合わせをしてくれないドラマのスタイルなのだろうと。

「全ての種明かしをしないところがお洒落」だとか…そういうものかもしれぬ。見ているこちらもそれなりに馴染んで気にならなくなるからまあいいかと思う。そしてシーズン2は特にはっきりとしたプロットもなくだらだらと進んで、最終話には別のお題が提示されていた。
 

どうやら話の展開をハラハラするドラマではなさそうだ。愛すべきキャラクター達が小ネタを見せながら日々暮らしている様子を楽しむドラマなのだろう。

主演のスティーブ・カレル/宇宙軍作戦大将マークの中年男の苦悩に笑い、ジョン・マルコヴィッチ/マロリー博士の不器用さに笑い、ジミーちゃん/科学者チャンのかわいさに笑い、彼とキャプテン・アンジェラの関係を心配し、スティーブ・カレルの娘エリンの混乱に笑い、堂々としたジミーちゃんのパパ・リチャードさんの中国軍科学者ににやにやする。他にもいろいろと愛すべきキャラがいる。彼らが日々小ネタを見せて笑わせてくれるのをまったりと見る。


それにしてもやはりシーズン2の問題は、シーズン1のように大きなプロット設定がなかったことだろう。ただ人物たちの小ネタを散りばめて延々と流していくスタイルに視聴者は飽きてしまったのかも。その結果、ドラマは打ち切りとなってしまった。残念残念。

人物たちは十分に魅力的なので私は楽しかったのですけどね。最後にはまた別の大きな問題が提示されて「シーズン3は面白くなりそうだ」と思ったのに残念だわ。


スティーヴ・カレルさんのお顔がすごく好きだ。なぜか知らねど他の有名なイケメンハリウッド大物スターよりもず~っといいいお顔だと思う。ハンサム。個人的に好みの顔なのだろう。だから私には彼がただのコメディアンには見えず、なぜこの人はイケメン枠じゃないんだろうと常に不思議に思う。ドキドキするぐらいすっっっごくいい男なのにね…。


2023年5月17日水曜日

NHK BSプレミアム『グレースの履歴』全8話・感想



TV Japanにて。オリジナルの放送は2023年3月18日から5月7日まで。

このドラマの感想は2つ。ひとつはポジティブ。もう一つはネガティブ。


その一(ポジティブ)・綺麗な風景

お洒落です。美しい日本の風景の中を走る小さなHonda S800。なんとかわいい。なんとお洒落な。絵になる車。赤を囲むシルバーのフレームや木のハンドルがいい。絵になる風景の中の絵になる車。(勝手な想像だけれど)このHonda S800 の走る風景があまりにもいいので、このドラマはそのシーンが撮りたくて始まった企画ではないかと思ったほど。車の映える日本の風景を見せることがテーマなのか。とにかく綺麗な画面。

それにしてもいい車だHonda S800。小さい。だから高速で走るのはちょっと怖いだろう。それでもいい。本物が見てみたい。この車は1966年1月から1970年5月の間に生産されていたそうです。ホンダはいい車を作る。

第4話は車の過去の話をしていたけれど、監督さんと制作の方々の「車への愛」を感じた。ちょっと「寄り道」的な回。浪漫やね。宇崎竜童さんがいい感じ。渋いね。


そして車以外にもこのドラマには綺麗な場面が多い。私が特に好きだったのは主人公・希久夫(滝藤賢一)の住む阿佐ヶ谷の家。昭和の家。木の壁や柱が暗い色。インテリアも凝っているのに馴染んでいるお洒落な空間。家の前の通りもまるで地方の住宅地かと思うほど緑豊か。それにしても阿佐ヶ谷で庭付きの一戸建て、それにレンガの壁のガレージ付き?…豪邸ですよね。希久夫と美奈子(尾野真千子)はどれほどの大富豪なのだろう?

それから希久夫は丁寧に暮らしている。たった一人の食事なのに卵焼きの夕飯も蕎麦も綺麗にセッティングされている。一人なのにお洒落な食卓。美奈子は希久夫のこういう丁寧さに惹かれたのだろう。


★ネタバレ注意


美奈子は旅先での事故で命を落とす。生前の美奈子の嘘(彼女はフランスに行く前に日本各地を車で旅していた)に気付き、希久夫はその謎解きを始める。美奈子は沢山の謎を残して亡くなった。そして希久夫は妻の愛車グレースに残された履歴(旅の記録)を辿ろうと旅に出る。

そして第2話で美奈子のサーファーの元カレに会う。この二人の会話がおかしい。希久夫は美奈子に(サーファーの元カレよりも)愛されていたと知ってにやにやする。元カレは面白くなさそうだ。女性をめぐる男同士のやりとりが面白い。
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※追記:
第2話の録画を見直した。この回が一番面白い。美奈子をめぐって 希久夫と元カレ(伊藤英明)の会話がすごくおかしい。お互いに嫉妬し合って気まずくなったりする笑。滝藤さんと伊藤さんの二人の「間」がおかしい。それから元カレと彼の奥さんのやり取りも面白い。このノリでず~っとユーモラスなドラマだったら(私には)傑作になっていたと思う。
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…そんな風に、このドラマは希久夫がたった一人で美奈子の残した謎を解きながら、日本各地の綺麗な風景の中をS800 を走らせて静かに旅をするドラマだろうと思っていた。あくまでも希久夫の旅の話で、主人公が様々な謎解きをしながら心を癒していく話だろうと思った(確かにそのような話ではあるけれど)。

大昔に見たフランス映画『白い町で/Dans la ville blanche/In the White City (1983)』を少し思い出した。男が内省しながら一人旅を続ける。そのような話だと思っていた。

第1話:謎の始まり/2話:昔の男/3話:家族の過去/4話;車の過去



その二(ネガティブ)・異様な人物・美奈子

そして違和感を感じ始めたのは5話以降。美奈子の行動と意図に少しずつ違和感。実は2話目の冒頭から美奈子の独白が始まったので妙な感じはしていたのだけれど…このドラマは美奈子も主役なのですね。彼女の強い意志がドラマ全体を覆っている。最初は希久夫のドラマだと思っていたのだけれど、実は希久夫が美奈子に操られている話だったわけで。希久夫が旅で癒されるだけの話ではなかった。

第5話で、30年前に(両親の離婚で)別れた弟・由紀夫(柄本佑)に会う。そして6話で高齢の母・千江(丘みつ子)にも会う。どちらも美奈子が強引に希久夫の家族の問題に踏み込んでいる…と私は感じた。

そして極めつけは第7話の元カノ・草織(広末涼子)との話。それでも7話まではいい。美奈子はただ希久夫の過去に興味があっただけなのかと思った(奥さんが夫の元カノを訪ねるなんてずいぶんぶしつけだとは思うが)。しかし8話、美奈子の行動の種明かしを聞いて驚いた。美奈子が全く理解できなくなった。


美奈子はある日突然草織の前に現れ、自分が重い病気を患っているからもし何かあったら夫の希久夫をよろしく頼むと言う。美奈子は「夫を任せられるのはあなたしかいない。あなたには責任がある」と一方的に草織に詰め寄る。私にはこの場面の美奈子が異様に見えてしまった。なんて一方的で自分勝手な人だろうと驚いた。

私は早織の側から受け手として美奈子の言葉を聞いた。…ある日突然元婚約者の(今の)妻が現れて「夫の面倒を見てくれ」と目の前で号泣する…ものすごく迷惑だと思う。この場面での早織の戸惑いと彼女のリアクションの全てに同意した。早織はすごく嫌そうだ。当然だ。早織の反応を見る限り、脚本家も美奈子の異常さをわかって書いているのだろうと思ったがどうだろう。


美奈子はおかしなことを言っている。
男女が17年間も会っていなければ彼らはもう赤の他人。また会っても昔と同じようにわかり合えるのは稀。価値観も違っているはず。 また草織には草織の人生があるだろう。異国での結婚、子供、離婚…などなど草織にも色んな事があってやっと立ち直ろうとしているのに、ある日赤の他人がやってきて「夫とよりを戻せ、あなたには責任がある」なんて…とんでもない話だ。

美奈子の言葉の端々にはいじわるが見え隠れする。元カノを前に「悔しいけど」と言い「私は夫を愛しているから」「でも私病気だから、夫を任せられるのはあなたしかいないの」と号泣する。離婚して子供を手放した草織の事も知らず、一方的に「私子供が欲しいの」と号泣する。なんて勝手な女だろう。相手の気持ちや都合なんて何も考えていない。


夫婦の関係性はそれぞれだとは思うけれど、この美奈子の「夫を任せられるのはあなたしかいない」の言葉にもぞっとする。彼女は自分がこの世を去った後でさえも夫・希久夫の人生をコントロールしようとしている。私はこの言葉に美奈子の夫に対するねっとりと絡みつくような執着を感じて気持ち悪い。希久夫はそこまで妻にコントロールされて幸せなのか?


最後の第8話では様々な種明かしがあった。亡くなった時美奈子は妊娠していた。彼女が血液の白血病だったことは第1話から明かされていたけれど…そのことも希久夫は美奈子から知らされていなかった。

美奈子、やっぱり変じゃないか? 彼女は白血病のことも不妊治療のことも夫に全て秘密にしていた。病気を黙っていたことに関して「夫は私のために全てを犠牲にするから秘密にしていた」と言うけれど、いやそんな大切なことを夫に黙ってる方がずっと迷惑だと思う。そのような大切なことを全てが終わった後で知る希久夫の気持ちを想像できないのか。彼女の言う「夫への思いやり」も、私にはただ彼女の独りよがりに思えてしまう。

美奈子はそんな風に自分のことはとことん秘密にしていながら、夫の過去の家族問題に土足で踏み込み、挙句の果てに元カノに「夫を頼む」とごねる。それは希久夫にとって余計なお世話ではないのか?。

第5話:弟/6話:母/7話:元カノ/8話:種明かし


男性の書いた脚本なのですよね。この美奈子の絡みつくような愛が、男性は嬉しいのだろうかと不思議になった。美奈子ってすご~く変な人、いやとても独りよがりで自分勝手で迷惑な人だと私は思うのだけれど。

希久夫の次の相手は、希久夫が自由に探せばいい。それも愛だと思う。


役者さん達は皆上手い人ばかり。メインの滝藤賢一さん、尾野真千子さん、広末涼子さんをはじめ、サイドの方々も皆上手い。全員素晴らしい。皆うまいから話にのめり込む。そしてその台詞の意味をじっくりと考えたくなる。希久夫の父親を演じた中原丈雄さんが渋い。いい声。かっこいいわ。

第8話で美奈子に感じた違和感があまりにも大きくて(ショックを受けるレベル)ネガティブ気味な感想になってしまったけれど、ドラマとしては心動かされた。


脚本・監督は源孝志氏。今までにも『漱石悶々』『正月時代劇 ライジング若冲 天才 かく覚醒せり』『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』を拝見。このお方のドラマは面白いです。

だからこそこのドラマの美奈子のキャラクター設定が興味深い。源監督は美奈子をはたして「いい女、理想の女」として描いているのか、それとも(私が感じたように)「独りよがりの妙な女」として見ているのか…どちらでしょうね。やっぱり男性にとってはいい女なのかな。


綺麗で丁寧な画面に心動かされ、また一方美奈子の行動が理解できなくて混乱して頭がぐるぐる回ったドラマ。これからも色々と考えてしまいそう。後を引く。



2023年5月15日月曜日

お猫様H:光を追って



毎年の今頃、太陽が日々高くなっていって天窓から射す光の角度が変わっていく。 それが面白いと思い(昼の11時から12時頃)その変化を記録しようとしたけれど、写真としてはあまり面白くなかった。光の射す向かって正面の壁が西。画面右横の壁が北。こちら側が東。画面左の階段が南側。


3月15日 11:09 am
4月7日 11:58 am
4月7日 11:59 am
4月10日 11:15 am
4月12日 11:26 am
4月14日 11:27 am
4月20日 11:17 am
4月23日 11:27 am
5月9日 11:30 am
5月10日 11:28 am
おまけ 4月19日 11:07 am
少し後の時間 4月6日 12:40 pm
午後 4月21日 1:36 pm



2023年5月11日木曜日

仏/英ドラマCanal+/BBC『Marie Antoinette』(2022):子供だまし!『ベルばら』を読んだ方がいい






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『Marie Antoinette (2022) Season 1 – 8 Epsode/仏/カラー
/1話52 m/脚本:Deborah Davis』
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18世紀フランスの宮廷。王妃マリー・アントワネットのなんちゃって伝記大河ドラマ。

制作はフランスCanal+と英国BBC。脚本は英国人、監督はベルギー人と英国人他。英語劇。俳優は欧州各国より集合。

米国での放送は公共放送ネットワークPBS(Public Broadcasting Service)。オリジナルのリリースはフランス2022年10月31日、英国12月29日、米国2023年3月19日。

シーズン1はアントワネットの子供時代から彼女の長男の誕生(1781年)までを全8話で描く。



歴史の再現を楽しむドラマではない。「18世紀のベルサイユにタイムスリップした現代の女の子」のようなドラマ。またいつもの軽薄なマリー・アントワネットを描く作品。既に何度もリサイクルされている彼女の評判を、またカジュアルなマリー・アントワネットのファンに向けて再構築。今回も結構酷い。

今まで様々なフランス18世紀関連の映画やドラマを見てきたが、マリーアントワネットに関して歴史にリスペクトを込めて作られた作品を今までほとんど見たことがない。いったいどういうわけだろうかと思う。あれほど彼女の人生はドラマチックなのに。

そもそもイギリスやハリウッドには何も期待していない。しかしフランス産のドラマや映画もあまりいい作品の記憶がない。2000年の初頭に見た仏産のドキュメンタリーが良かったぐらいか(どうやら記憶違い。調べたがどの作品かわからない。TVの放送を見た)。(私が想像するのみではあるが)フランス革命関連に関しては事実日本人が(歴史へのリスペクトを込めて)一番知識が多いのではないかと本気で考えてしまうほど。


(今の)だいたい60歳前後世代の日本の女性はフランス革命に比較的詳しい人が多いと思う。それは(私を含む)その世代の女性の多くが、子供の頃に池田理代子氏の『ベルサイユのばら』を読んでいるから。その世代の人々の中には、漫画とアニメと(もしかしたら)宝塚などでストーリーに親しんだのみならず、漫画をきっかけにフランスの歴史に興味を持った人も多い。「フランス革命オタク」と呼んでもいい層もかなりいると思う。たぶん私も(カジュアルではあるが)その一人。

オタクになったら探求するのみ。本を集め資料を漁り、果てはフランスのベルサイユやパリにその歴史の痕跡を求め旅をし、少しでもその時代の名残りを身に感じようとする。時間をかけて探求してきたから素材に対する知識もある。(人によって得意分野は分かれるだろうが)そんな「フランス革命/フランス史オタク」の興味の対象は歴史の流れのみにとどまらず、歴史の登場人物たちの人となりやその時代ならではのしきたり、慣習、ゴシップ、18世紀当時のファッション、美術品、文化に至るまで果てしなく広がり続ける。歴史を愛し探求する者は皆、その歴史の時代の空気を少しでも感じたいと願う。

そのような「18世紀フランス歴史オタク」を映画やドラマなどで喜ばせるのは、実際にはかなり難しいのだろうとは思う。


しかしそれにしても実在の歴史上の人物を描くのならせめてその人物に敬意を払い、史実からはあまり外れてほしくないと思うのは求め過ぎだろうか。

マリー・アントワネットとは、激動の時代を生きた彼女の人生そのものが他に比べられないほどドラマチック…映画やドラマを作るのなら何の脚色もいらないほどの素材。歴史をそのまま再現すればそれだけでかなり面白い話が描けるはずなのに、このドラマはまた…「おつむが足りないウブな現代風の少女が18世紀のフランス宮廷にやってきた」…話をまた繰り返している。もうそのような軽薄なものはコッポラの映画で十分なのに。

そして(近年の欧米の歴史ものドラマではいつものことではあるが)性に関する描写も必要以上に多い。18世紀の宮廷が性にゆるかったのはわかるが、それをマリー・アントワネットのドラマで見せる必要はなし。不快。女性同士の嫉妬心やライバル心などによる争いごとも必要以上に強調されているのも不快。

脚本を担当したのが、英国のアン女王を不快極まりなく描いた『女王陛下のお気に入り/The Favourite』のDeborah Davis氏であれば、ああなるほど…期待してもしょうがないかと思う。この脚本家の視点は基本的に品がない。そういう下世話なことにしか興味のない人なのだろう。



★ネタバレ注意

第1話を見て「またか」とがっかりし、その後あまり真面目に見ていなかったのだけれど、それでも気になった点を挙げておこう。録画を残してないので確認できないが、おかしな場面はもっとあったと思う。
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大食漢で大柄なはずのルイ16世が瘦せ型の長身の青年に変わっている。
● フランスでもオーストリアでも宮廷ではお堅いマナーやエチケットが当たり前だったはずなのにこのドラマの宮廷はゆるゆる。身分の上下関係もあまり感じられない。
● マリー・アントワネット(以下アントワネットで)が最初からデュ・バリー夫人と親しく会話をし、果てはキスの手ほどきを受ける場面で怒り心頭。バカか。
● その後なぜかあの有名なデュ・バリー夫人への「話しかけ」の場面も再現されるが、野外で数名が突っ立っているだけの珍妙なシーンに変わっている。
● デュ・バリー夫人が不自然に前に出過ぎ。安易なアントワネットのライバル設定だろうが笑止千万。
● アントワネット付きの女官長・ノアイユ伯爵夫人のアントワネットに対する態度はあれでいいのか?
● アルトワ伯はどこ?
● ポリニャック公爵夫人は宮殿で3P。不快。
● ウブなルイ16世が女性の扱い方がわからないので娼婦から性の手ほどきを受ける?ばかばかしい。あれは身体の問題だったはず。
● アントワネットは妊娠のために昼間から半裸で脚を中に浮かせる。はしたなく不快。
● どの俳優も欧州各国から調達したせいか、英語の台詞での芝居に慣れていない俳優も多いのではないか。欧州俳優の訛りを優先したのか。だったら最初からフランス語でやればいいのに。
● アントワネットの肖像画の問題(大問題!)後述。

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ネタバレ終了


歴史の人物たちに対してリスペクトを感じられない。純情な女の子が政略結婚で遠方の外国(敵国)の宮廷に嫁ぐ話ならそれだけでも十分ドラマチックなのに、このドラマはそんな基本の話さえ女同士の争いごとやゴシップに変えてしまっている。宮廷でガチガチのルールやしきたり、決まり事の中で生活するからこそ人と人の関係の乱れが歪なバランスで興味深いのに、このドラマは全てがゆるくて品がなく、いつまでこのようなぐだぐだを見せられるのかと途方に暮れる(それでも見るけれど)。

一番呆れたのは、アントワネットから彼女の母親/オーストリア君主マリア・テレジアへ送られたアントワネットの肖像画。間違ってますよそれ。その絵はポリニャック公爵夫人の肖像画。この映画の制作チームは恥を知れ。誰か注意する人はいなかったのだろうか。これがフランスのプロダクションだとは信じられない。

…とかなんとか言いながら、第2シーズンも制作決定だそうです。このドラマは軽薄で下品な茶番。しかし素材は個人的に好きすぎる、愛着がありすぎる。だからまた来年も見ると思います。セットや衣装は豪華で綺麗だし。

それにしてもこの英国人の脚本家は、18世紀のフランスの政治に全く興味がなさそうだけれど、これから当時の世の中が緊張してきて、王妃が歴史の激流に飲み込まれていく様子をまともに描けるのかどうか甚だ疑問。革命は軽い気持ちで描けるような素材ではない。いったいあの血なまぐさい時代をどう描くのだろうと違う意味で興味がわく。そこまでシリーズが到達できるのかどうかも疑問だけれど。

というわけで日本の「フランス革命オタク」の方々は、このドラマにはあまり期待しないほうがよいとだけ書いておこう。とはいえ私も最後まで見たので見ればそれなりに楽しめるかもしれません(回が進むにつれ次第にドラマの雰囲気にも慣れてきて違和感も減り見るのが楽しくなったのは事実)。

またフランス歴史熱がぶり返すかな?また読もうかな。



2023年5月10日水曜日

The Blessed Madonna - Shades of Love (feat. The Joy) (2023)



英国ダンスチャート入り



The Blessed Madonna - Shades of Love (feat. The Joy) (2023)
Shades of Love (feat. The Joy) - Single
The Blessed Madonna
Released: February 22, 2023
Under Exclusive Licence to Warner Music UK Limited, 
℗ 2023 Margeverse Limited



リミックスしたのはアメリカのDJ、The Blessed Madonna。元曲がこのお方の作曲なのか、それとも南アフリカのアカペラグループ The Joyなのかわからなかったです。ノリがいい。チャート入りしてます。

イントロといい、途中で出てくるドドドドドッドドッドドッドッというBridgeだかDropだかがやたらと古臭い。うわ~もうどうしようもなく頭を抱えるほどダサいダサい笑。でもダンスMusicなんてこれでいいのだ。ノリよく踊れればいい。だから英国で今よく売れてる。しかしこの音の感じはいつだったろう?90年代だっけ?

★The Blessed Madonna
Marea Stamperさん。米国ケンタッキー州出身のDJ, producer and musician。1977年生まれ。1990年代に活動開始。Dua Lipaを含む様々なアーティストのリミックスを手がける。

★ The Joy

どうやらサウス・アフリカの男性アカペラ・グループらしいです。この曲のアカペラバージョンがYouTubeに上がっていた。詳しいことはわからない。


Shades Of Love
The Blessed Madonna
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朝 目を覚ます時
金色と銀色が私を包む
私に必要なもの 
私に見えるものは
色彩と魔法

私が必要とするとき 常にそこにある
虹を通り抜ける太陽のように
光の中で 
あなたも輝ける
忘れないで

誰もが欲しい 誰もが必要とする
様々な色合いの愛
誰もが欲しい 誰もが必要とする
様々な色合いの愛


様々な色合いの愛
様々な色合いの愛


朝 目が覚めたとき
金色と銀色が私を包む
常にそこにある 私が必要とする時
虹を通り抜ける太陽のように

朝 目が覚めたとき
金色と銀色が私を包む
常にそこにある 私が必要とする時 
虹を通り抜ける太陽のように

誰もが欲しい 誰もが必要とする
様々な色合いの愛

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Written By James Vincent McMorrow, Paul Epworth, The Blessed Madonna & The Joy (Band)





映画『記憶にございません!』(2019):中井貴一の泣き顔と肉食の吉田羊






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『 記憶にございません! (2019)/日/カラー
/127 m/監督:三谷幸喜』
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少し前のTV Japanでの放送の録画をやっと鑑賞。

悪徳暴れん坊総理大臣が頭に石をぶつけられて記憶喪失になる話。 三谷幸喜監督・脚本。三谷監督のもとにスター俳優さん達が勢ぞろい。ゆるい笑いの映画。


★ネタバレ注意


肉食の吉田羊さんが中井貴一さんを襲うシーンがおかしい…さすが女優さんすごいな。おもしろいわ。その場面以外は全体にファミリー向けのゆるいコメディという感じでしょうか。驚くような展開もなく、ああそうかと予想通り綺麗に収まるお話。映画としてそれほど強烈に面白いわけではないけれど、三谷監督でおなじみのビッグネームのスター俳優さん達が勢揃いなのは楽しい。身構えることなくまったりと見るおだやかなコメディ映画。

このようなまったりと見る映画の見どころは笑いの小ネタ。小さな笑いどころが沢山散りばめられていて、それぞれの小ネタはおそらく見る人によってウケる場所が違うのではないかと思う。見る人によっては三谷さんが脚本で意図した笑いには笑わず、意外な場所でゲラゲラ笑ったりすることもあると思う。私も私個人の笑いポイントを楽しんだ。


暴れん坊総理大臣が記憶喪失になった結果、まっとうないい人に変わってしまって最後には全て綺麗に収まるおとぎ話。驚きはないがそれでいいそれでいい。

尺は2時間ほど。シンプルな話の映画としてはかなり長いが、大物の俳優さん達の戯れをだらだらと見るのは楽しい。そういう映画だと思います。前情報のない状態で初めて見たので、俳優さん達が出てくるたびに面白かった。次は誰が出てくるかな~と思いながら見た。


というわけで、この映画の何十とある笑いポイントの中で、私個人に響いた面白い場面を記録しておきます。

中井貴一さんの情けない泣き顔。なぜだろ~笑、この中井さんの泣き顔に笑う笑う。中井さんはこんなお顔をなさるのですね。発見。すごくおかしい。吉田羊さんに襲われる場面の泣き顔がおかしい。
・猛烈肉食の吉田羊さん。あはははすご~い。かっこいい。面白いわ吉田さん。いいね
・ローリー寺西/ROLLYさんは存在の全てがおかしい。七三分けで出てきたらもう嬉しい嬉しい笑う笑う。ローリーさんは出てくるだけでウケる。ギター弾いちゃうもんね。ゴルフの師匠も妙笑。
佐藤浩市さんのキャディさん。すごいね。こんな格好をなさるのね。口紅つけてた笑。さすが三谷さんだ。佐藤浩市さんは最後の方でバーで沢山の女の子に囲まれて嬉しそうな様子にもニヤニヤした。
・一番びっくりしたのは総理の恩師の山口崇さん。
えーーーーっ!っと声が出た。お~~~びっくりびっくりびっくり。今もびしーっとなさってる。すご~い。昔もピシーッとしたイケメンのお兄様でしたよ。その先生のお言葉「この国の人間は枠に収まらない人間をすぐに排除しようとする。よくない傾向だ」禿同
斉藤由貴さんの首相官邸料理人。斎藤さんはいつも印象に残る。すごい存在感だと思う。
阿南健治さんの定食屋のおやじ。なんかうれしいわ。鎌倉殿でもいいキャラだったお方。
梶原善さんのゲーハーおやじ。びっくりすご~い。善児~
・最後のハッピーターンを食べる寺島進さん
・さこっち迫田孝也さんは現代劇と時代劇で全く印象の変わるお方。不思議よ。
・おなじみ小林隆さんの半ズボン。なぜ半ズボン省エネスーツ
近藤芳正さんが酔っ払いのサラリーマン。思わず巻き戻して確認した。
・日系のアメリカ大統領の木村佳乃さん…これはコメディだからヨシ(現実には絶対にありえん)。木村さんがノリノリでおもしろい。
・最後の最後までわからなかった有働由美子さんのニュースキャスター。映画の最後の出番でやっと気が付いた。びっくりした。ず~っと誰だろうと思ってた。

というわけでまったりおもしろかったです。


2023年5月9日火曜日

WOWOW 連続ドラマW『ギバーテイカー』全5話



全5話。日本での放送はWOWOWの「連続ドラマW」枠で2023年1月22日から2月19日まで。主演は中谷美紀さん。原作はすえのぶけいこさんの漫画『ライフ2 ギバーテイカー』。


モンスター級の殺人鬼が主人公の女性を追い詰める。女性は強く立ち上がり最後はモンスターと女性の一騎打ち。

近年の私は、ドラマも映画も「怖いもの」「痛いもの」「グロなもの」「辛いもの」はできるだけ避けるようになってきていて、このドラマも最初は大丈夫かと思いながら見ていた。しかしどんどん話に引き込まれ、とにかくこの殺人鬼ルオトがなぜああいう風になったのかが知りたくて最後まで見続けることになった。

演出がいい。俳優さん達の演技もいい。ストーリーは結構見るのが辛いテーマ。しかし「辛い」ということよりも話の続きが知りたくて後半は次の回が待ちきれなかった。すっかりはまった。


★ネタバレ注意


いやぁ人間は怖いなと。貴志ルオト(菊池風磨)はどうしてあんなことになったのだろう。母親がまっとうな愛情で彼を育てなかったから…というのが表向きの理由だろうが、だからといって(一般的に)そのように育てられた子供が皆人を殺めるとは思えず。むしろ(あまり認めたくはないとはいえ)元々彼はどこかおかしかったのではないか…と思わずにはいられなかった。生まれながらのモンスター、サイコパス。理由なきモンスター、それが一番怖い。

貴志ルオト は12歳で殺人を犯し(その前には妹も殺害)、12年間も医療少年院に入って更生し社会に帰ってきた。しかし彼の中の悪意が消えることはなかった。過去の殺人からもう12年も経っているのに、彼はその殺害した被害者の母親・倉澤樹(中谷美紀)を執拗に追い始める。そしてその理由が、彼の当時の先生=倉澤の「よくできました」だとか「先生が飴を取って僕の手にはナイフが残ったから」などの理由だとあった。そこのところがどうも説得力に欠ける。

彼が殺人を犯したのは12歳。子供時代の時間は長い。12歳の少年が12年間も医療少年院に入って指導を受けていたのなら心理的になんらかの変化はあったはずで、なぜ彼はわざわざまた倉澤を追い詰めるのかの理由がわからない。倉澤に対して一方的な恨みがあるわけでもなさそうなのになぜ彼は倉澤にこだわるのか。

もし自分の過去の過ちが母親によるネグレクトからくるものなら、むしろ彼の怒りは母親に向かうものではないか?彼が赤の他人の先生に怒りをぶつけているのなら、結局彼は理由なきモンスターだということになってしまう。


殺人犯とその生い立ちがテーマだろうか。ドラマを見ながら考えさせられた。それにしてもルオトは母親から十分な愛情を受けれていたのなら殺人鬼にはならなかったのか。それとも母親の愛情不足は「単なるきっかけ」なだけで、更生することのないモンスターは存在するという話なのか…とも考えた。


そのようにすっかり内容にはまったということは、ドラマとしてよく出来ているということなのだろう。音楽も演出も怖い。ドキドキさせられた。しかし視覚的に不快な場面は少な目で、そのため私のような小心者もかろうじて見続けることが出来たのはよかった。


最後に、違和感を感じた最終話の倉澤とルオトの対決場面のことを書いておこう。
ルオトと二人きりで対峙する倉澤。両者とも拳銃を相手に向けている。ルオトがうだうだと倉澤を言葉で追い詰め、言葉で長々と説明をしていたが、あれはドラマならではの綺麗ごとだろう。

まず延々と話し続けるルオトを「黙らせなさいよ」と思い、あまりにも説明が長いので「さっさと撃てばいいのに」と思った。私は米国の警察のやり方に同意するわけではないが、ルオトが倉澤に拳銃を向けている限り、倉澤には正当防衛が可能(日本は駄目だそうだ。米国はOK)。アメリカだったら倉澤は迷いもなくルオトを射殺していただろう。それから倉澤はルオトに「裁きを受けなさい」と告げていたけれど、彼は既に3人も殺しているわけで死刑は免れないだろう。もちろん日本のドラマとしては「正しい裁き」がフェアな正しいやり方でそれを見せるべきなのだろうけれど。そういえば狙撃班が二人の様子を見てましたね。彼らはあそこで何もしないのか?

そもそも倉澤が殺人犯に屋上でたった一人で対峙するのが無謀。相手は拳銃を持ってるのに危ない危ない。それからルオトに彼の意図を語らせるのであれば、なんとかして彼の音声をスマホで録音は出来ないものかとも思った。ドラマチックなはずの最後の場面が冗長で嘘っぽく感じたのは残念。


それでもドラマ全体は十分楽しんだ。

気味の悪い殺人モンスター・ルオトを演じた菊池風磨さんは不気味。うまい。倉澤樹の中谷美紀さんは流石。彼女は日本を代表する女優さん。ルオトの母親の斉藤由貴さんも怖い。ルオトに利用される馬場ふみかさんも追い詰められた表情がうまい。見ていて辛い。ベーカリーの主人の吉田ウーロン太さんはイヤな野郎が最低。うまい。皆いい。

というわけで面白かった。見てよかったです。
全5話で終わったのもちょうどいい長さだと思う。
WOWOWのドラマはいいですね。これからも期待してます。