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2024年11月13日水曜日

BBC 『HARD TALK』元・米国 国家安全保障問題担当大統領補佐官 ジョン・ボルトン: 米国は世界を率いるには分裂し過ぎているのか?



先日大統領選挙日の前、2024年10月23日に放送された BBC によるインタビュー番組『HARD TALK』のジョン・ボルトン氏へのインタビュー。



このインタビューは選挙日前に放送された。インタビューされた人物は、第1期のトランプ大統領の政権で、国家安全保障問題担当大統領補佐官を勤めたジョン・ボルトン氏。彼が今何を考えているのかを記録しておこうと思う。


ジョン・ボルトン氏は1948年生まれの現在75歳。イェール大学を最優等で卒業。またイェール・ロー・スクール修了(法務博士 J.D.)。1981年のレーガン政権の8年間、国際開発庁および司法省に勤務。1989年から1993年までは(父)ジョージ・ブッシュ政権で国務次官補。2001年には(子)ジョージ・ブッシュ政権にて国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)。2005年には駐国際連合アメリカ大使。そして2018年からは、前回のトランプ政権にて国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。

ちなみに彼は共和党のタカ派で、(子)ジョージ・ブッシュ政権ではラムズフィールド氏やチェイニー氏と共にイラク戦争の推進し、ネオコンの代表的な人物とみなされることが多い。


私がこのインタビューを取り上げるからと言って、ボルトン氏の言葉の全てに私が賛同しているわけではないことをまず断っておこう。彼が関わったとされる2003年のイラク戦争には私は反対であったし、当時のネオコンの考え方にも反対していた。

(このインタビューに出てくる)彼が言うところの「強い米国が力で世界の平和を守る」という考え方は、元々は冷戦時代の米国の、対・ソ連の外交政策を元にしたもので、今現在の世界の情勢でそれが正しいのかどうかは私にはわからない。冷戦の時代に培われた「強い米国の外交政策」が、今の時代にも正しいのかどうかはこれから深く議論がなされるべきだろう。明らかに時代が違うだろうと思われるイスラエルについての彼の考え方もインタビュー内に出てくるのだが、とにかく興味深いのでそのまま記録しておこう。

ともかくよく知らないことだからこそ、初めて聞けば学びにもなる。


なによりもボルトン氏は長い間、共和党政権下のホワイトハウス界隈にいて、様々な人々に出会い、様々な経験をなさってきていることから、その彼の目で今のドナルド・トランプ氏がどのように見えるのかは大変興味深い。多少古いタカ派の人物にトランプ氏がどのように見えているのかを知るのは面白いと思った。

大統領選の結果が出て、私は予想不可能なトランプ氏の政権に対しあいまいな不安を抱いている。共和党保守派のボルトン氏もこれからの米国の未来を心配なさっているようで、それで私はこのインタビューに興味を持った。


番組のタイトルが示す通り『HARD TALK』…ハードなインタビューなため、BBC のスティーブン・サカー氏の質問が厳しくて大変面白い。元ネオコンのボルトン氏に対し「あのイラク戦争は失敗でしたね」と問い、「アメリカは弱くなりましたね」と問い詰める。ここで声を荒げずに落ち着いてインタビューを受けるボルトン氏もすごいものだと思う。互角のインタビュー・バトル。今まで見た『HARD TALK』の中で、かなり印象に残るインタビューであった。


内容が大変興味深いので、全和訳をすることにした。これもまた、ここに記録して、これからの世の中がトランプ政権のもとでどのように変わっていくのかを見ながら「ボルトン氏はこのように話していたよね」と見るためのリファレンス用。

古い考え方を持つ世代の人物であるとはいえ、ボルトン氏が知的で良識的な人物で、心の底から米国の愛国者であることは疑いようもない。このインタビューでサカー氏に問い詰められ、最後は多少気弱に聞こえてしまったのは、彼がこれからの米国の運命を心の底から心配し憂いていらっしゃるからなのだろう。


世の中を知るために、政党や政治家の方向性で分断するのではなく、両方の意見を聞いておきたいと私は思う。民主党も共和党もどちらも完璧ではないのは当然のこと。どちらかを一方的に信奉するのではなくどちらの政党の意見もまんべんなく耳を傾けていきたいと思う。

このボルトン氏のインタビューは学びが多かった。



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元のインタビュー・リンク
John Bolton on BBC HARDTalk
https://www.youtube.com/watch?v=wi3CHznmwDI

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John Bolton: Is America too divided to offer global leadership?
ジョン・ボルトン: 米国は世界を率いるには分裂し過ぎているのか?


10月23日(最新の放送)
on BBC World
23分



今日のゲストはジョン・ボルトン。元ドナルド・トランプの国家安全保障問題担当大統領補佐官。現在は(トランプ氏とハリス氏の)二人の大統領候補者への声高な批評家です。アメリカは世界をリードするにはあまりにも分裂し、疲れ果てているのでしょうか。



BBC, Stephen Sackur:ジョン・ボルトン、ハードトークへようこそ。

John Bolton:会えて嬉しいね。

Sackur:いらしてくださってありがとうございます。あなたにとって今回の大統領選挙はアメリカの強さの表れですか、それともアメリカの弱さの表れですか?

Bolton:なにも表してはいない。どちらも魅力的ではない。どちらの候補も大統領に相応しいとは思えない。だから私はどちらにも投票しない。そして国際的には、米国と世界中の同盟国にとって問題の前兆となると思う。全く別の候補者であればいいけれど、私達には彼らしかいない。

Sackur:あなたがどちらにも投票しないと知ったら視聴者は驚くと思いますよ。あなたは候補者・ドナルド・トランプ氏の元で「国家安全保障問題担当大統領補佐官/National Security Advisor」として2019年まで仕事をしたのですよね。いったいどうして、どのようなわけで彼に投票ができないのですか?

Bolton:なぜなら彼は大統領に相応しいと思えないからです。彼は1度目の任期に仕事の本質を理解していなかったし、また彼はオフィスにいた4年間に何も学ばなかった。当時何かをわかっていたとしても忘れただろう。彼の執務室でのパフォーマンスは米国にとって大きな危機である。

Sackur:言葉の選択に気をつけようと思いますが、あなたがトランプ氏の一度目の任期に彼について書き残したことは「彼は相応しくない、エラーが多く、驚くほど無知で、彼の考えはいくつかのドットの集合体の群島のようである」と。しかしあなたは17か月もの間、彼の元で仕事をしたのですね。どういうことですか?

Bolton:私が仕事に就いた時は、それまでの過去の大統領のように、トランプもその責任の重さと国家安全保障問題において彼の決定が意味するもの…に訓練されると思っていた。そしてそれが間違っていたとすぐにわかった。彼は学ばなかった。それから私が幸運にも政府で国家安全保障において多くの仕事をしたことから、私は出来る限り長い間、彼に目の前の問題についてアドバイスが出来ると思った。17か月間はトランプ氏の下で一番長く働いた国家安全保障担当補佐官ということになった。

Sackur:トランプ氏はここにいないのですけど彼にあなたについて聞きたい。彼はあなたに大層がっかりしたと、あなたがホワイトハウスを離れた後で、彼はあなたのことで嫌なことを見つけたのであなたをクビにしたと言った。あなたはそれよりももっと複雑であると言いましたね。

Bolton:私は辞任したのです。複雑ではない。

Sackur:どのように信じるか次第ですね。彼は、ボルトンは「不満の多いつまらない阿呆でただ戦争をしたいだけの男」だと言った。最後の部分は特に重要ですね。トランプ氏は実際にあなたのことを典型的な…考えの古臭い時代遅れのネオコンだと言った。

Bolton:彼はあなたが今言ったような考えを持つほどの知性はない。彼は私に対して「FOXニュースで何年間も見ていた」と言った。そして私は自分の意見を言うのに躊躇しない。彼とは選挙の前も後にも、そして彼が大統領になってからも何度も国際的な事柄について話した。もし彼に私の考えがわからないのなら、あれ以上私にできることはない。それに、あれはいかにもトランプらしい…彼の政権から辞任した人々に対する彼のやり方です。他の人物達は私よりも強い意見を持っている、例えば Rex Tilleson(国務長官/Secretary of State)=Exxon の CEO はトランプ氏のことを馬鹿だと言った。

Sackur:私が理解したのは…彼があなたのことを「ただ戦争がしたいだけ」と言ったのは、トランプ氏が共和党…あなたはいつも共和党員でそのあなたの愛する共和党を、トランプ氏はずいぶん違う方向に向かわせていますね。彼はナショナリズムを信じ、アメリカ第一主義で、そして国外の戦争へのアメリカの関りを終わらせようとしている。多くの人々はトランプ氏のことを孤立主義者だと見ている。

Bolton:彼は孤立主義者的ではある。しかし彼には哲学がない。彼は人々が理解できるようなポリシーを持たず、海外のリーダーや、メディアが彼の考えをまとめようとしても、それはまるで乱暴にニューロンの閃きを繋ぎ合わせるようなものだ。ドットを繋ごうとすれば出来るけれど、彼自身はドットを繋げようとはしない。

Sackur:しかし重要なことがありますね。例えば中国に対するポリシー…あなたと彼は完全に仲たがいをしてしまった。それから米国が立ち向かう現在の大きな決断…ウクライナ戦争、NATOの未来…であなたと彼は完全に違う考えである。お聞きしたいのは、共和党はジョン・ボルトンの信条から離れてしまったのですか。

Bolton:あなたは基本的に間違ってます。共和党の魂の戦いは議会に存在している。議員たちは政治的な理由でトランプ氏に怯えているが。上院と下院の共和党の中心は(今でも)レーガン大統領の時代の「強さによる平和」を信じている。私は孤立主義のウィルスはトランプ氏の立場の一部を表していると思う。

Sackur:J.D.バンスは?

Bolton:待って、J.D.バンスは後から。トランプ氏は常軌を逸している。映画『スターウォーズ』的な意味では「A Disturbance in the Force」みたいなもので…

Sackur:どうしてそう言えるのです?トランプ氏が共和党を完全にコントロールしているのに。

Bolton:私は、彼がシーンから立ち去る時…おそらく今年11月に負けた時に、それとも(もし彼が勝ったら)4年後、彼の影響はなくなっていくだろうと思う。なぜなら彼には哲学がないからだ。彼には次に伝えるものがなにもない。それから、孤立主義の問題は他の人々の中にも存在していて、それとは戦わなければならないが、しかしそれはトランプ氏のせいではない。

Sackur:あなたのポリシー…それらはあなたのような人々、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフィールド…皆ジョージ・W・ブッシュの元で勤めた人々により9月11日の(同時多発テロ)の後に発達したポリシーで、大量の米軍がアフガニスタンとイラクに送られましたね。あの「失敗」がドナルド・トランプが現在言っていることの原因で、人々もそれに共鳴しているのではないですか?

Bolton:私はトランプが、今日言っていることと明日言うこと、今日の午後に言うことの意味をわかっているとは思えない。たとえそれが米国の有権者に共鳴しているとしても、この選挙のキャンペーンでの討論会の流れを見ると、外交政策はほぼ存在していない。

Sackur:ただ私が思うのは、あなたの外交政策での失敗をあなたが認めなければ、今米国でとても大きくなっている孤立主義の責任は、

Bolton:あの外交政策が間違っていたとは思っていない。

Sackur:間違っていなかったのですか?アフガニスタンとイラクの?

Bolton:全然。米国は9月11日の後、アフガニスタンに2001年に侵攻し、タリバンを権力の座から追い出し、アルカイダをほぼ壊滅させ、そして駐在し続けた2021年の夏までは、アフガニスタンから発生した米国でのテロリストの攻撃はなかった。それは成功だ。アフガニスタンでの失敗は、ドナルド・トランプのせいだ。信頼するべきではないタリバンと間違った交渉をし合意を遵守することになった。そしてジョー・バイデンの失敗はそのトランプのポリシーを実行したことだ。

Sackur:ということは、何十万もの死者を出し、何千億 US ドルを使い、事実タリバンは現在カブールを支配していて、事実イラクは大変不安定な状況で民兵が米軍に抵抗していて、国の多くの地域を支配している。これらのどれもあなたにとっては失敗ではないのですか?

Bolton:何が起こったのか、違う側面を見なければならない。軍の分析上から見てアフガニスタンは完全に成功だった…撤退の時までは。ポリシーが途中で捨てられたのなら、私のポリシーが失敗だったとは言えないだろう。確かにアフガニスタンでは、国を建て直すにあたって大変多くの支出があり、それはほぼ無駄になっただろう。しかしそれらは私のアフガニスタンに対するポリシーではない。

Sackur:過去にしがみつかないようにしましょう、過去は大切で今に繋がっていますが、しかし今一番大切なのは、ウクライナに関してトランプ氏からあなたが離れたことでしょう。あなたはトランプ氏が再選したら、ウクライナは(あなたの言葉で言うなら)TOAST(おしまいだ)と言った。どう意味ですか?

Bolton:トランプは既に言いましたね、彼はゼレンスキーとプーチンを同じ部屋に入れて彼が24時間以内に問題を解決すると。彼は戦争責任をゼレンスキーのせいにした。仮に彼らがその部屋に入ったとしたら、24時間で問題を解決するのではなく…それはトランプのせいにはならず/なぜなら(トランプは)決して自分のせいにはしないからだ。私はトランプがすぐにゼレンスキーのせいにするのではないかと心配している。そしてそれは、ロシアに実質的な勝利をもたらすことになる。

Sackur:あなたはアメリカの国民が、今までのようにウクライナ戦争に資金を提供し続けたいと思っていると思いますか。バイデン大統領は、一番最近の600億ドルの資金提供パッケージを、議会を通すのに苦労しましたね。あなたは誰が選ばれようと、そのような支援に対し国民から同意を得られると思いますか。

Bolton:誰がリーダーでどのように決断するかにかかっているでしょう。米国にも西側諸国の全てにとっても、ソビエト連邦の崩壊から問題はあった。(あの時のことを)覚えているかもしれません…人々が歴史の終わりを宣言し、もう脅威はなくなり、防衛費を削減して平和がくると言っていたことを。それは間違いでした。米国は今でも何が起こったかの完全な誤解のために支出を続けている。もしウクライナに関してアメリカの国民が関わるのなら、ウクライナはアメリカの国民の重要な関心事でそれに呼応するでしょう。それに…

Sackur:なぜ、なぜそう思うのです?私達はとんでもないことが起こっているのを毎日目撃しています。ここ数日間で北朝鮮が(おそらく)12000人の軍をウクライナ国内に前線として送りロシア側で戦うことになったことが明らかになった。まったく状況は変わっていない…これから米国がどれほどウクライナに資金援助をしていくのか。

Bolton:あなたは聞いていませんでしたね。この大統領選のキャンペーンでは、ほぼこのことについての論議がなされていないのです。大きな問題だと思う。それにバイデンは最悪な形でウクライナへの支援を行った…戦略的になされたのではなく、勝つためになされたのでもなく、長時間にわたって公の場で議論を続けた…攻撃を援助するのか、エイブラム戦車を供給するのか、F-16を供給するのかと。実際のところ、もし北朝鮮軍がウクライナに駐留していることが判明すれば、これは中国とロシアと、イランや北朝鮮のようなアウトライダーとの新たな関係を如実に示すことになるだろう。このことについてアメリカの国民は、彼らのリーダーが討論をするのを見るべきで、それは行われていない。過去にあったように、アメリカの国民が世界の脅威の現実に向かい合い、アメリカの生活を守るために何をするべきかを問われたら、国民は答えを出すと思う。しかしまずはその討論が行われなければならない。

Sackur:ある人々は、ドナルド・トランプがプーチンと特に友好的なのには特別な理由があると言う。彼のプーチンとの関係には何か私達にはわからぬことがあると。あなたはトランプをよく知っている。あなたはホワイトハウスで彼のロシアへのポリシーを身近に見ていた。トランプとプーチンとの間には私達が理解できないなにかがあると思いますか?

Bolton:トランプは権威主義的な人物が好きだと思う。説明はできない。私は精神科医でもないから心理分析はできないけれど、彼のそれらの人物達に対するリアクションは明らかだ。私のホワイトハウスでの17か月の任期では、ロシアとの取引や侵害的な共謀など私はなにも見なかったけれど、もし何か見たとしたら私は覚えているだろうし明らかにしたと思う。

Sackur:もしあなたがトランプ氏の再選で「ウクライナがおしまい」だと言うのなら、NATO はどうですか?

Bolton:おそらくトランプは NATO から撤退する可能性が高いと思う。それは米国にとって大惨事的な間違いだろう。トランプは集団的な防衛を理解していないと思うし、彼は同盟国がどのように機能するのかもわかっていない。彼は基本的に米国が、欧州や日本や韓国に軍事的な「保護」をしていると思っている。そしてそれらのアメリカが保護している「恩知らずの人々」は十分に支払っていないと言う。

Sackur:ドナルド・トランプはおそらくあなたジョン・ボルトンこそが理解していないと言うでしょう。どのようにアメリカのレバレッジを使うのかをあなたが理解していないと。そして彼だけがヨーロッパに対し、(ヨーロッパが)自分達の防衛のためにもっと支払わなければ「私は(アメリカは)ロシアに対する防衛から立ち去る」と言えるのだと。「私がそのようにしたために、沢山のNATOのメンバー(31カ国の中から23カ国)がやっと軍事予算を上げ、少なくともGDPの2%を防衛に支出するようになった」と。

Bolton:彼はそのように言うかもしれないが、それは NATO を強くする目的ではなく弱くするための口論であり、その上彼はヨーロッパが我々を貿易協定で騙したと言い、ヨーロッパがロシアのノードストリームからナチュラル・ガスを受け取ったと言い、彼がなぜ NATO が嫌いなのかの理由はいくらでもあるだろう。なぜなら基本的に彼は NATO のコンセプトに同意していないからだ。私が思うのは、米国は今現在のおよそ GDP の3%の防衛費から、レーガン時代の頃の5~6%の防衛費へ上げることになる。そしてヨーロッパの防衛費は4%に上がることになるだろう。彼らは困るだろう。ところでひとつ重要なことがある、ドイツは GDPの2%すれすれだがその軌跡も元にもどるだろう。

Sackur:アジアに移りましょう。あなたは声高に台湾をサポートしていて何度も訪ねていますね。あなたは、トランプの政権は台湾を(あなたが必要だと言っている)サポートをすると思いますか。中国が台湾にプレッシャーをかけていますが。

Bolton:彼が大統領になったら、台湾がとても心配ですね。どの場面だったかトランプは、オーバル・オフィスのデスクに座っていてシャーペンを取り出してその先を指さし「見えるか、これが台湾だ」。そしてデスクを指さし「これが中国だ」と言った。それが彼の見ているものだ。

Sackur:その意味は?

Bolton:台湾は潜在的に…おしまいだ。

Sackur:あなたの意見では、トランプ氏の政権では とてもたくさんの「おしまい」があるのですね。

Bolton:私はとても心配している。

Sackur:中東のことを話しましょう。この会話の中でトランプ氏は米国の外交政策を決めるのにふさわしくないとあなたは言いましたが、しかし興味深いと思ったのは、中東に関してはあなたとトランプは完全に同じ考えである。お二人とも、イスラエルのネタニヤフ氏がやりたいことなら何をやってもいいと…彼は現在中東の様々なフロントで戦っていますが。

Bolton:そう。それは今日トランプが言っていることだが、明日も同じことを言えばいいと思う。一貫しているのならいい。この件に関しては彼が私の意見を聞いたのは嬉しいと思う。

Sackur:これを見ている視聴者はおそらく「なんと…ジョン・ボルトンとドナルド・トランプが中東に関して同じ考えならそれは必ず間違っている」と思うでしょう。

Bolton:彼らが何を言っても構わない。

Sackur:少し私に解説してください。あなたは今、ネタニヤフ氏がガザでの戦争継続に全力で取り組むことを、そしてレバノンでの戦争を続けることを、それからイランの核の能力に対して攻撃することを信じていると言っているのですね。

Bolton:イスラエルには沢山のフロントに対応しなければならない難しい問題がある…それらの敵は(核の)能力をあまりにも長く発展させ過ぎた。イランが核兵器を持つことの差し迫った危険性に対して、どのように対応するのか、イスラエルにとってそれがどのような結果になるのかは大変難しい問題だ。

Sackur:私は気になるのです。ドナルド・トランプが、あなたが任務を辞任した時に言った言葉…あなたのことを「退屈な馬鹿で、ただ戦争をやりたがっているだけ」と言った。しかしこの件であなたは中東の全面的な戦争を求めているように見える。

Bolton:私がやりたいのは、イスラエルや文明に対する脅威である…テロリストのハマスが破壊されること。また同じ理由でヒズボラのテロリストの脅威が破壊されること、そして私はイランが核兵器を決して手に入れないようにするという拡散防止の目標を見てみたいと思う。そして私はネタニヤフがそれを実行できると思っている。

Sackur:あなたは知りませんか。私がイランの核ネゴシエーション・チームのメンバーから聞いたことですが、もしイスラエルがイランの核施設を攻撃したら、イランは濃縮ウランの素材の兵器化を最終段階へ急がせることは間違いないだろうと。

Bolton:彼らはもう既に濃縮ウランの兵器化をしているかもしれない。誰にもわからない。なぜなら誰も(イランの核の)兵器化能力にはアクセスすることができないからだ。しかしイランが核兵器を手に入れるには、北朝鮮の中央銀行に電信で送り北朝鮮がいくつかの弾頭を輸送機でイランへ輸送する方がずっと簡単だ。

Sackur:この会話で沢山の人々が不思議に思うことを話しましょう。あなたは最初にどちらの候補にも投票できないと言った。そして主にトランプのことで、なぜあなたが彼に同意しないのかを話した。それではカマラ・ハリスのことを話しましょう。彼女は継続を約束し、ウクライナへと NATO への断固たる支援をするという。沢山の保守派の共和党党員がトランプには投票できないけれど、良心のためならカマラ・ハリスに投票できると言う。あなたはなぜできないのです?

Bolton:私はカマラ・ハリスは、1984 年の元国連大使の Jeane Kirkpatrick が言うように、カマラ・ハリスは実際にサンフランシスコの民主党員だと。そして Jean は印象的なコンベンションのスピーチで、サンフランシスコの民主党員はいつも最初にアメリカを非難すると。彼女は左寄りの民主党員だと思うし、彼女はバイデン大統領よりも弱いだろう。我々は8年間もオバマ政権の元で劇的に苦しみ、今は機能的にはオバマ政権の第3期とも言える4年間で、カマラ・ハリスはオバマ政権の第4期になるとも言えるだろう。

Sackur:あなたはディック・チェイニーを知っていますよね。彼はあなたの友人ですか?

Bolton:最後に話した時までは友人だった。今でもそうであればいいと思う。たとえ彼がカマラ・ハリスに投票しても。

Sackur:次に私が言うのは彼のパワフルな言葉です「今までドナルド・トランプほど私達の共和国の脅威だった人物はいない。国民として憲法を守るために、我々は党派性よりも国を上に掲げるべきだ。それが私がカマラ・ハリスに投票する理由だ」。あなたの投票の拒否は、ただ自分勝手なだけなのですか?

Bolton:もちろん違いますよ笑。トランプはアメリカの国にとてつもないダメージを与えるだろう。彼は第1期にも大きなダメージを与えた。おそらく第2期はもっとダメージが大きいだろう。取り返しのつかないものもあると思う。しかし私は彼がアメリカにとって米国への「実存的な脅威」であるとは思っていない。

Sackur:思わないのですか?人々は…統合参謀本部議長 Mark A. Milley の…(これは Bob Woodwards の新刊『War』によるものですが)トランプに関する言葉は「心底、完全なファシストで、この国の未来にとって最も危険な人物である」。これらの人々の言葉を聞いていないのですか?

Bolton:私は、トランプは精神的能力を持たないと思う…世界に対するあらゆる種類の一貫したシステムを構成するビュー/視野を持たない。もう一度言いましょう。彼はダメージは与えるけれど実存的なダメージではない。あなたにはわかりますか、オーケーな大統領と実存的な脅威の人物の間にはカテゴリーがある…沢山のダメージを与えるけれどどちらでもない誰かがいる。それが私の考えだ。脅威を正確に認識しなければならない。過大評価も過小評価もせずに。

Sackur:私はトランプ自身の言葉を聞いてます…国内のフロントだけではなく、彼は実際的に、必要ならば治安部隊/Security Forces を使って 100万人を強制送還をすると言う。彼はまた反対派を反逆罪で起訴すると言う。それから彼に悪いことをした者には復讐すると言う。これらの言葉は…アメリカは内部的に非常に不安定であるように聞こえます。

Bolton:私はもちろん認識している。なぜなら私は彼の復讐のターゲットの一人だから。誰かに講義してもらう必要はない。

Sackur:それならなぜここで私と一緒にいて「これらは全て制御できる」と言うのです。そのように制御できるとわかるのです?

Bolton:なぜなら私は憲法を信じているからです。私は政府の機関を信頼している。アメリカの国民を信じているからです。それに今まで過去に共和国へ脅威だった人々とトランプを比べると(例えばローマのように)、彼には比較できないし、また手段も無い。

Sackur:もう一度大きなピクチャーに戻って…、この選挙がアメリカの今日の状況の何を語っているのでしょう。私達に見えるのは、世界で一番強い国が、国内の政治的な分裂で麻痺に陥っている。そのため各国の重要な同盟国からも信頼されず、グローバルサウスの国々への影響力の競争にも負けつつあり、国際法においては完全にダブルスタンダードだと世界中の国々から見られている。アメリカのパワーを語るあなたにこれを言いたい。アメリカは本当にかつてないほど弱くなっているように見えますか。

Bolton:私は同意しません。選挙がどうなるかわからないし、これからの4年間がどのようになるのかもわからないし、おそらく批評家はあなたが今言ったような説明を喜ぶだろうけれど、もしかしたらそうなるのかもしれないし。私から世界に言えるのは…私達アメリカがいなくなったら、あなた方はきっと寂しくなるだろうということ。

Sackur:質問は…世界の支配的なパワーとしてのあなた方は終わるのですか?

Bolton:私に言うべきことは無い。

Sackur:ジョン・ボルトン、ここで終わりましょう。心から感謝いたします。