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2023年8月2日水曜日

映画『フィールド・オブ・ドリームス/Field of Dreams』(1989):3回見て調べてやっとわかった






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『 Field of Dreams (1989)/米/カラー
/1h 47m/監督:Phil Alden Robinson』
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ここのところ旦那Aが勝手に野球映画を録画して「見ようぜ」と言うことがあってうざかった笑ので、それなら自分から積極的に「野球の映画」を見てみようと考えた。ネット上で「野球名作映画」を検索し、テレビの録画機で作品名を検索をするといくつか出てきたので録画。今いくつかの作品がHDに溜まっている。

というわけで『フィールド・オブ・ドリームス』。有名な映画。私は今回が初めて。前知識はゼロで見た。


1回目:大変混乱した。戸惑った。荒唐無稽? ファンタジーなのはわかった。しかしどうも腑に落ちない。なぜ1919年のホワイトソックス?なぜ作家のテレンス・マン?なぜ無名のアーチー・ムーンライト・グラハム?

2回目:ところどころ飛ばしながら全体を見直した。史実も調べた。そしてやっとわかった。そうか『フィールド・オブ・ドリームス』とは「夢のフィールド、夢実現の野球場」か。(過去に)野球に関わって夢が実現することのなかった人々の「夢」が実現できる球場をケビン・コスナーが作ったという話ですね。2回目で理解した。感動的な話なのもわかったわ。そうかそうか。そうなのか~。

3回目:話の意図を理解したうえで台詞を注意しながらざっと見た。かなり考えて練られている話でした。最後のシーンは内容(以下CONで解説)を理解したうえで見るともっと感動する。いい映画。

主人公はケビン・コスナー演じるアイオワ州の農場経営者 レイ・キンセラ



PROS

Field of Dreams…皆が夢を実現する夢の球場。感動するお話…ということが2回目にやっとわかった。いい話。しかしそれにしても1回目は全然理解できなかった。難しい。突然ケビン・コスナーが聞く「お告げ」は何だろうと思ったし、ホワイトソックスの1919年のブラックソックス事件も全く知らなかった。作家のテレンス・マンの登場とか、アーチー・ムーンライト・グラハムの話も意図がわからず。パパの話も(冒頭に説明があったがすぐに忘れて)意味がわからなかった。だからずいぶん部品がバラバラ飛ぶ映画だと思った。2回目に見てやっと理解した。3回目に見たら巧みに伏線回収がなされていることもわかった。

ところでケビン・コスナーがいい役者さんだと初めて知った。1989年当時、彼は世間で大変な人気の映画スターだったにも関わらず私は彼の作品をあまり見ていなかった。しかしこの映画と、少し前に見た『さよならゲーム』での彼の演技を見て思った…

彼はいい俳優さん。演技が自然。演技に妙な力が入っていなくて自然でいい。オールアメリカンな人好きのする好青年。演技に妙な主張がなく自然で、「普通の人」に見えるのは彼の演技の技だと思う。コスナーさんは映画のストーリーにうまい具合に紛れていて、彼自身よりもキャラクターが前に出る。すごくいい表情をなさいますね。アーチーが夢を叶えた後に見つめるレイの目が本当に優しい。なんと彼の全盛期からもう30年も過ぎてやっと彼がいい役者だと知りました。

映画の最後のシーンは色々と意味がわかったうえで見ると感動する。いい話。この時の二人の表情がまた何とも言えない。ケビン・コスナーはいい役者だ。


★以下超ネタバレ注意・
見ていない人は読むべからず。読むと楽しみと感動がなくなります。




CONSというより様々な考察

文句を言う前に、まずこの映画で知っておいた方がいい1919年の「事件」のことをまとめておこう。

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1919年ブラックソックス事件
当時のホワイトソックスは選手の給料が安く、選手たちの生活は困窮。それでも彼らは野球が強く、その年チームはワールドシリーズまで勝ち残った。相手はシンシナティ・レッズ。ホワイトソックスはそのワールドシリーズでわざと敗退。八百長で、チームの8人の選手は賄賂を受け取っていた。刑事裁判で8人は無罪になったものの、野球界からは追放された。彼らは優勝候補になるくらい強いチームだったので、その後彼らが野球をプレー出来なくなったことを「惜しい」と思うファンも多かった。
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私はこの「事件」が米国野球史上の大事件だったということを今回初めて知った。「事件」の前知識があるのとないのでは、この映画の印象は全く違ってくる。

…ブラックソックス事件で八百長にかかわったとして球界追放になった8名の選手たちは、1919年当時の大スターだった。今の時代ならジャッジに大谷にベッツ、トラウト、アクーニャ Jr. とかそういうクラスの人達だったのだろう。チームで言うならブレーブスやアストロズ辺りか。そのスターチームの8名が事件後に球界から追放になったことで、野球ファンは大変悲しんだ。その記憶は主人公レイ(ケビン・コスナー)の父親ジャックを含む当時の野球ファンの心に深く刻まれていた。

そんな背景があった上で…、
この映画は、レイの作った「フィールド・オブ・ドリームス/夢の球場」にその8名のスターたちがやってくるという感動話…なわけです。

話の背景を知らずに見たものだから最初の私の反応が「だからなに?彼らは誰よ?」だったのは致し方なし。史実を知ったうえで、それからそのチームが昔の野球ファンにとっていかに大きな存在だったのかを知れば感動の度合いも違ってくる。

ファンタジーだから悪いわけではない。ファンタジーの組み立てが粗いと思った。もう少し(件の8名のブラックソックス事件の説明も含めて)ファンタジーの見せ方を丁寧にやってくれればいいのにと思った。前知識なく見て理解しにくかったということは、なにか構成に足りないものがあるのではないかと思った。

全体の意図がわかった上で台詞をよく聞けば、よく練られた脚本だということもよくわかる。何度か見て背景を調べてやっとわかるような映画は悪いのか、それとも噛めば噛むほど感動も増すからいい映画なのか…どちらだろうかと判断に迷う。


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話の流れ
アイオワ州で農場を経営するレイ・キンセラが、
 空から聞こえてきた声(お告げ①)にしたがって農場に野球場を作る。
● レイの野球場に、1919年のブラックソックス事件のホワイトソックスのチームがやってくる。
● (お告げ②)作家テレンス・マンにボストンまで会いに行く。
● (お告げ③)スコアボードで見た名前アーチー・グラハムを探しにミネソタ州に行く。
● アイオワ州の自宅への帰宅途中で若者になったアーチーを拾う。
● レイの野球場での「1919年白靴下のメンバー」にアーチーが加わってプレイ。
● (お告げ④)フィールドにパパがいた。
● (お告げ⑤?)過去の選手達の試合を見に観客がやってくる。農場は救われる。
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叶った夢のまとめ
● シューレス・ジョージャクソンを含む1919年ホワイトソックスのメンバーが再度プレーが出来た。
 アーチー・ムーンライト・グラハムがメジャーでイメージ通りのプレーをする夢を叶える。
 レイの父ジョンはメジャーの選手とプレーする夢が叶った。
 レイは亡くなる前にわかり合えなかった父親と再会。
 世捨て人だったテレンス・マンはまた書くことに喜びを見出す。
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色んな人の夢が叶う話。巧みな伏線回収の脚本はよく練られている。野球をプレーする人にとってMLBでプレーすることがいかにすごいことなのか…野球に思い入れのある人が見ればもっと感動すると思う。


それからもうひとつ。
主人公レイと父親の年齢差にも最初は戸惑った。ベビー・ブーマーのレイの父親がなぜ1919年のチームに思い入れがあるのか不思議に思ったが、この二人の年齢差は映画の冒頭に説明されていた。
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1896年・レイの父親ジョンが生まれる。
1919年「ブラックソックス事件」の時にジョンは23歳。
1935年・ジョン39歳でニューヨークに移住。
1938年・ジョン42歳で結婚。
1952年・ジョン56歳の時に息子レイが生まれる。
1955年・ジョンの妻/レイの母親が死去。
(1970年頃)・父ジョン74歳頃にレイが西海岸の大学へ
1974年にレイ22歳がアンと結婚。
  同年ジョン78歳で死去。
1988年(現在)レイは36歳。
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レイはジョンが56歳の時の子供。ずいぶん年の離れた親子。ジョンはレイに(自分が若かった頃の)昔のスターの話をしていた。それで息子のレイは1919年のホワイト・ソックスのメンバーに馴染みがあった。

56歳の年齢差があったから父と息子は仲たがいをしたかのようにも描かれていた。それは理解できる。レイが17歳の時(1969年)父親に「犯罪人を英雄視する人は尊敬できない」と言ったのも、レイが50年も前の話を理解するのが難しかったからだろう。

しかし一般的なストーリーとしては無理のある年齢設定だと思う。


そして最後に、幽霊プレイヤーを見にやってくる地元の観客は何の疑問も持たないのか?(中西部の保守的田舎町の)彼らはかなり頭が固い人々。そんな町の人々…がすんなりと幽霊のスター選手達を見にやってくるのは不思議。

…色々と文句を書いたけれど、重箱の隅をつついているだけです。



ちょっと前に『大草原の小さな家』の感想で書いたアメリカの中西部の話。この映画の風景…コーン畑の中の素朴な野球場…はイメージそのまんま。いかにも古き良き時代のアメリカ。アメリカの人々にはノスタルジックな浪漫なのだろう。

海亀は20年ほど前に旦那Aとボストンからミネソタ州のミネアポリスまで寄り道をしながら車で旅をした。この映画のレイとテレンスの旅する道と重なるルート。ボストンからミネソタ州の2252 km (1,390.7 mi) は車だと数日間かかる距離。日本だったら…車で札幌から鹿児島までが2241 km (1392 miles)でほぼ同じぐらいの距離。レイはアイオワからボストン、ボストンからミネソタ州、ミネソタ州からアイオワまでとものすごい長距離を走ってます。

現ボストン・レッドソックスのフェンウェイパークのグリーンモンスターの1988年の様子が見れる。

レイの娘カリンちゃんは、今FXのドラマ『Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty』でThe Forum arena のgeneral manager and PresidentのClaire Rothmanを演じているGaby Hoffmannさん。現在41歳。『フィールドオブドリームス』の頃は6歳。


ところでこの映画を発端にして、2021年と2022年にアイオワ州のコーン畑の中の球場で「MLBアット・フィールド・オブ・ドリームス」というイベントが行われたそうです。いいですね。