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2022年8月24日水曜日

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第31回「諦めの悪い男」8月14日放送



『鎌倉殿の13人』がヘビーな内容になってきた。驚いてます。三谷さんの大河では予想していなかった。素晴らしい。傑作かも。

この第31話は2週間前の回で、すでに32話も放送されているのだけれど、内容はますます陰鬱。これを重厚大河と言わずしてなんと言おう。

もう冗談が無くなった。コメディの色が無くなった。以前は大泉洋さんの頼朝のユーモア/おかしみがドラマにコメディ調をもたらしていたけれど、今は彼のようなおかしなキャラがほぼいない。癒し系の安達さんも、全成も、範頼もいなくなった。

全体に暗い。本当にすごいなと思う。しかし最高。歴史ドラマとして学びあり、感情を揺さぶられる悲しい史実あり、色んな意味で濃いドラマ。しっかりと心を掴まれている。毎週次の回が待ちきれない。

毎回感想を書くために最低3回は見るのだけれど、とにかく脚本も映像もセットもカメラワークもライティングも衣装も俳優さん達の頑張りも…全てが丁寧。素晴らしい。何度見ても新しい発見がある。


前回30話は、全成のさよなら回でしたが、今回31話は比企家の滅亡/比企能員の変/比企の乱。展開が速い。歴史はどんどん進む。

前回と今回を見ていて改めて思った事がある。まず日本の歴史は男達によって動かされてきた。日本の歴史はほぼ全て男達が作ってきたストーリー。しかしどの時代にも必ず女性達は存在した。そして彼女達は常に男達の作る悲劇の巻き添えになった。

前回の実衣、そして今回の比企家の道、比企尼、せつ…、このドラマでは彼女達の無念や悲しみが男達の話と共にしっかりと描かれている。男達の作る「史実」の物語の合間に描かれてきた女達の心…野心、恋心、母になる喜び、嫉妬、優越感、競争心…それらが、今回のような事件で全て失われてしまうことの無念さに呆然とする。

私が女だからなのだろう、私は彼女達の涙や苦悶を見て心動かされる。前回の実衣の涙。今回の道の涙…夫の死を知ってすぐ「兵を整え迎え撃て」と家臣に指示。娘には「逃げろ」の指示。気丈に振舞っているが、もう運命には逆らえないことを彼女はわかっている。そしてその直後、息子を守ろうと北条側の武者達に短刀を抜いて襲い掛かり、斬られて絶命するせつ。彼女の勇気。以前25話で…頼朝に生まれたばかりの一幡を抱いて見せていたあの笑顔のせつが、こんな風に亡くなるなんて…。

様々なことが数秒の間に一気に起こって心臓を掴まれたように苦しくなった。


私は男達の作るドラマの後ろ側にいる女達を見る。男達が何をやろうと…斬り合おうが殴り合おうが、それは「彼らの勝手」だと思ってしまう。私には男ばかりのドラマにはどこか心理的に距離があるのだろうと思う。

ところが、そんな男達の紡ぐ歴史ドラマの中に女性達が描かれるととたんに話が身近になる。彼女達は歴史を動かしているわけではない。しかし男達が起こす災難の中で女性達がどう振舞うのか。そこに惹かれる。歴史が身近に思えてくる。

前回の宮澤エマさん、今回の堀内敬子さん、草笛光子さん、山谷花純さん、そして夫に親族が滅ぼされることを静かに耐える堀田真由さん。そして勝つ北条側として堂々と尼御台を演じる小池栄子さん、いきいきとした宮沢りえさん。このドラマは男性の後ろにいる女性達が皆素晴らしい。全員が素晴らしい女優さん達。たとえ一瞬でも、彼女達の熱演に心動かされてます。脚本も素晴らしい。

三谷さんの脚本は以前の『真田丸』では、中の女性達がほぼ全員現実から浮いたような妙な感じだったのに、このドラマの女性達は全員がいい。すごいと思う。何が起こった? 


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建仁3年(1203)7月~8月、源頼家(金子大地)が危篤。こん睡状態が続いている。

比企能員(佐藤二朗)は頼家と娘・せつ/若狭局(山谷花純)の嫡男・一幡(相澤壮太)を次の鎌倉殿に就かせようとする。それに抗議する北条義時(小栗旬)。


次の鎌倉殿候補は…
頼家の子供達
一幡…母・せつ(山谷花純)===比企家
善哉…母・つつじ(北香那)===三浦家+北条家
頼朝の子供/頼家の弟
千幡…母・北条政子(小池栄子)===北条家/乳母は実衣

その頃、京で全成の嫡男・頼全が殺害される。比企が手を回したらしい。憤る北条家。北条家は次の鎌倉殿に千幡を推すと意志を固める。しかし鎌倉を戦で火の海にはしたくない。まず千幡を推して叶わなかったら戦。

建仁3年(1203年)8月27日 
義時のアイデア (史実では時政の決定)
一幡千幡で日本を東西に分けて治めたらどうか」
そのアイデアを比企能員が拒む。交渉決裂。
義時「アイデアを拒んだのは比企。大義名分は立った。比企を滅ぼす」

8月末日 回復しない頼家は病床で出家させられる。本人の意識は無い。

北条政子(小池栄子)は孫・一幡の命を救うようにと義時に懇願。
義時は一幡の命を奪えと泰時(坂口健太郎)に命じる。顔を曇らせる泰時。

義時の室・比奈(堀田真由)が比企家を訪ねてスパイ。比企能員三浦義村(山本耕史)が密談していた。それを比奈が義時に報告。比奈に実家への裏切り行為をさせる父・義時を泰時が咎める。

義時、父・北条時政(坂東彌十郎)に千幡の後ろで鎌倉を率いる覚悟があるかと問う。
時政「あるよ。なんとかなる。…わしの大事なものは伊豆の地、りく、子供達。それを死に物狂いで守る。それがわしの天命。この先は北条を守り抜いてみせる。やってやるよ」

時政比企との最後の和平交渉。交渉決裂。

比企能員

建仁3年(1203年)9月2日 (比企能員の変)
時政から比企能員に和議の申し出。比企能員が北条の館に平服で出かける。

比企能員「武家のルールとして丸腰を斬ったら末代までの恥」だから心配しなくてもいいと家族に告げる。しかし迎える北条家は武装していた。うろたえる比企能員。武者のルールを比企が話せば、
時政「お前さんは坂東生まれじゃねぇから分からねぇだろうが、坂東武者ってのはな、勝つためには何でもするんだ。名前に傷がつくぐれぇ屁でもねぇさ」(←時政がちょっとかっこいいなと思った)。比企能員、謀反の罪で北条の館で討ち取られる。


その後、御家人達が比企の館を襲う。比企家は全員討ち取られる。比企能員の室・(堀内敬子)も娘のせつも。

せつ

一幡は行方知れずと政子に報告される。

千幡が次の鎌倉殿で事が進むことになる。

そんな時、急に頼家が目覚めた「一幡に会いたい」と言う。
頼家は自分の頭が剃られていること=出家させられたことに気付く。

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『吾妻鏡』での 比企能員の変 

建仁3年(1203年)9月2日

比企能員が娘若狭局を通じて頼家北条時政を討つように訴えると、頼家は時政追討を承諾した。これを政子が障子の影から立ち聞きし時政に知らせる。時政は大江広元に能員征伐を相談すると広元は同意。そこで時政は仏事にこと寄せて能員を名越の時政邸に呼び寄せる。

能員は一族に危険であると引き留められるが平服で時政邸へ向かった。時政邸では時政とその手勢が武装して待ち構え、天野遠景・仁田忠常が廷内に入った能員の左右の手を掴んで竹藪に引き倒し誅殺した。

逃げ帰った能員の従者が能員遭難を知らせると、比企一族一幡の邸である小御所に立て籠もる。するとこれは謀反であるとして政子が比企討伐の命を下し、軍勢が進発する。

北条義時を大将とする北条泰時、畠山重忠、三浦義村、和田義盛、土肥維平(実平の孫)、仁田忠常らの軍勢が小御所へ襲来する。

戦闘は申の刻まで続き、ついに力尽きた比企側は館に火を放ち、それぞれ一幡の前で自決し、一幡も炎の中で死んだ。

慈円の『愚管抄』では

頼家は大江広元の屋敷に滞在中に病が重くなったので8月30日に自分から出家し、あとは全て子の一幡に譲ろうとした。これでは比企能員の全盛時代になると恐れた北条時政が、9月2日に能員を呼び出して仁田忠常に刺し殺させた。そして広元の屋敷に武士を送って頼家を監視下に置き、同時に小御所にいる一幡を殺そうと軍勢を差し向けた。一幡は母が抱いて逃げ延びたが、残る比企一族は皆討たれた。11月3日になって一幡北条義時の手勢に捕らえられ殺害された。

今回13人から抜けた人…比企能員