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2022年4月11日月曜日

テレビ朝日 木曜ドラマ『となりのチカラ』全9話・感想



隣は何をする人ぞ。

昔からある言葉だ…と検索したら、なんとこれ

「秋深き 隣は何をする人ぞ」

江戸時代の俳人・松尾芭蕉の俳句だそうだ。おっとっと知らなかったぞ笑。元禄7年1694年、芭蕉が51歳の時に病床で詠んだ句だそうだ。全く知らなかった。


このドラマの日本での放送は2022年1月20日から3月31日。全9話。

フリーのライター中越チカラ(松本潤)が東京郊外のマンションに引っ越してきて、ご近所さんの事情に毎回首を突っ込むお話。毎回マンションのどこかの部屋で問題が起きて、チカラ君がそれに首を突っ込む。余計なお世話な男だ笑。よせばいいのに毎回ご近所さんの結構シリアスな問題に巻き込まれる。

テーマはシリアス。しかし難しい問題。考えさせられますね。


都会の集合住宅…アパート、マンションのご近所さんとの関係なんて、まさに「隣は何をする人ぞ」。隣の物音に聞き耳を立て「何をやってるんだろう?」と訝る。お隣さんには関わりたくもなし、知りたくもなし。私も東京で一人暮らしをしていた頃はそうでした。(芭蕉の句は反対に「人恋しい」の意味らしい)

わかっているのよ。お隣さんと親しくお付き合いして、いざという時には助け合える仲。それは理想。そんなお隣さんとの美しい関係が可能であれば、例えば大都会での生活ならいろいろと解決する問題も沢山あるのではないかとも思う。しかし実際には難しいですよね。誰かと必要以上に親しくなれば問題も一緒にやってくる。昔の商店街のような小さなコミュニティーならともかく、大都会の集合住宅では隣人ガチャの当たり外れもあるだろう。特に一人暮らしなら他人の問題に関われる余裕もない。私も苦手。未だに正解がわからないご近所づきあい。今現在は平和的で問題があるわけではないけれど。


だからこのドラマのチカラ君が、マンションのご近所さんの問題に一件一件首を突っ込むのを見て驚く。うわ~よくやるなぁこんな人いませんよね。東京の話としては全くリアリティを感じない。それは私の間違った思い込みなのかもしれないが、じゃあ実際に今の東京でこのような話…よその家の問題に他人が関わって問題解決をすること…にリアリティはあるのだろうか? 私にはわからない。東京にはもう10年以上も行っていない。今の東京はどうなのだろう?今の日本の人と人の関係はどんな感じなのだろう?


チカラくん、そんなに他人の問題に関わって大丈夫なの?

チカラ君がとても心配になる。なぜ心配になるのか。
もしかしたら私は今の日本というものに混乱しているのかもしれぬ。

例えば…、私が日本に帰れば、出会う人々は皆穏やかで笑顔で丁寧で親切。日本ではいつも心地よく過ごすことができる。 しかしながらネット上で見かける匿名の日本の人々の「本音」はどうだろう。近年ネット上の書き込みを見ていれば誰でも必ず出くわす「人の怒りの感情」…ネガティブなコメント、意地悪なコメント、炎上、非難、誹謗中傷、クレーム…それは人々が実は日々不満を溜めて怒っている本音なのではないか。(今のアメリカの社会にも多くの「怒り」は存在するのだけれど、それはここでは考えない)

もしかして今の日本人は穏やかな笑顔の後ろに「大きな怒り」を隠し持っているのではないか?

もしそうだとしたら、このドラマのチカラ君がやっていることはかなり危険ですよね。だから彼を見ていると毎回ハラハラする。劇中も登場人物達が不機嫌で怒っている場面が多い。チカラ君は他人の問題にこれほど首をつっこんで本当に大丈夫なのか?


もちろんドラマなので、ほぼ全員の問題が綺麗に解決するわけですが、それは現実的だとは思えないのですよ。だからファンタジーのようにも見えてしまった…ファンタジー系の「不可能を可能にする話」。まるでゲームのように毎回お題をクリアして次のステージへ。ご近所さん一件一件の問題を片付けて、最後に家庭内の問題もクリアして最終レベルをクリア。そしてドラマも終了。 

それにしてもチカラ君が出会う問題は「今の日本が抱える問題」であることは明らか。皆それぞれがかなり深刻な問題の数々。ほぼ毎回、チカラ君が一人で問題を解決するのは「無理ゲー」だろうとは思いながらも「どのように解決するのだろう」と内容にはひき込まれた。その解決のプロセスにあまりリアリティがあるとは思えなかったけれど。


色々と考えさせられたドラマ。問題提議のドラマとしての内容はシリアス。しかし劇中での解決方法はコミカルであまりリアリティがない。そこに多少もやもやしたが、それでも考えさせられた。もしマンションに住んでいて、このドラマのような問題が身近に起こったらどうすればいいのだろう。わからない。とても難しいと思った。

時代が変われば社会も変わる。人も変わる。長く日本を離れて、そろそろ私は日本のことがわからなくなってきているのかも知れぬとも思う。それはしょうがないことなのだろう。

チカラ君の子供の二人が可愛かった。特にあの丸顔の高太郎くんのキャラが無邪気で面白くてとても可愛かった。茶トラの猫もかわいい。