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2021年3月3日水曜日

NHK 正月時代劇『ライジング若冲 天才 かく覚醒せり』感想



お正月のドラマ。日本での放送は1月2日。こちらでも放送されたのだけれど今までそのままになっていた。今日やっと拝見。

これはアート教養の心をくすぐる楽しいドラマ。

とにかく伊藤若冲ですもの。
題材がいい。ドラマは楽しかったし、その後の紀行での情報もよかった。こういうドラマを見ると「ああ…いいものがあるよなぁ日本…」と思う。楽しいけれどちょっと寂しくもある。個人的に。

というのも「おそらく私が伊藤若冲の絵を見る機会なんてもうないだろう」と思わせられるから。たぶん。若冲の展覧会のためにわざわざ日本を訪ねることはないだろう。…ちょっと寂しい。

若冲の絵は過去に見た。
2006年に帰国して東京に住んでいたので、同年7月~8月の東京国立美術館でのプライスコレクション『若冲と江戸絵画』を見に行くことができた。それから同じ頃に宮内庁の三の丸尚蔵館での「動植綵絵」第4期の展示も見に行った。そんな展覧会のせいかメディアも若冲のことをよく取り上げていた。私も若冲の本をいくつか購入。15年ぐらい前のあの頃はちょっと若冲にはまっていた。 その時に、翌年の2007年に京都の相国寺で『若冲展』が開催される予定で「動植綵絵」30幅が総揃いすると聞いて、見に行くつもりでいた。今調べたら展示期間は2007年の5月13日から6月3日だったそう。結局その相国寺での『若冲展』は見に行けなかった。丁度その頃実家で父を亡くした。ばたばたしていて『若冲展』のことはすっかり忘れていた。無理をしてでも見に行けばよかった。見ておくべきだった。

若冲さんご本人のことはよく知らない。本は持っているけれど彼がどういうお方なのかは読まなかった。しかし絵はすごいと思う。本物を見たら…そのエネルギーは大変なもの。特に「動植綵絵」は普通じゃない。このドラマでも神気などと言っていたけれど、本当に絵のエネルギーがものすごい。みっちり鶏。みっちり生き物。気持ち悪いくらい。息が止まるような絵。ああいう絵はなかなかない。

劇中で「魂が見えた」「神気が見える」「躍動する魂の力」と言っていたけれど、まさにそんな感じ。若冲の台詞「生き物である以上、欲も愛もある。それを外界に気として放っとる。それを感じる事が出来たら絵に命を与えられる。」…そうですね。本当にそう。感じますよ。北斎のエネルギーもすごいけれど、若冲のエネルギーも大変なもの。いやー若冲はもっと見たかった。後悔後悔。しょうがないのだ…島でリタイアの身ですもん。

そういえば、このドラマで若冲の周りの人々のことも初めて知った。

大典顕常:江戸時代中期の禅僧、漢詩人。日本初の茶経への注釈書である茶経詳説を相国寺のもとで著す。伊藤若冲の支援者。書で漢詩をよくし京都禅林中最高の詩僧と称され生涯に70冊以上の書を著した。禅の高僧でもあり相国寺第113世。

売茶翁:江戸時代の黄檗宗の僧。煎茶の中興の祖。本名は柴山元昭。57歳で京にのぼる。61歳で東山に茶亭・通仙亭を開く。81歳で売茶業を廃業。

ドラマで描かれた話は史実を元にしているらしい。若冲は生涯独身だったそうだ。大典顕常と若冲がハグしたりする場面があったけれどそういうこと?あるのかもしれませんね。当時はハグなんてしなかっただろうけれど。売茶翁のこともWikipediaを読んでみた。このお方は面白い。もう少し調べてみようか。

円山応挙も出てました。
彼はリアルに上手い。しかし私は彼の絵を見ていない(追記:前述のプライスコレクションに出ていたみたい。図録にあった)。ネットや印刷物で見る彼の絵はあまり若冲のようにエネルギーが大きいようには見えないのだけれど、本物はどうだろう。応挙の絵も一度じっくり見てみたかった。応挙のことなんて日本を出てからネットで知りましたもん。以前は彼の情報を全く見かけなかった。どうしてだろう? 彼も15年ぐらい前から日本で流行りましたね。

なんだか色々と文化の心を刺激されるドラマでした。面白かったです。

日本にはいいアートがある。
私が知らないアーティストももっといるのだろう。