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2021年3月30日火曜日

仏ドラマ France 2/Netflix『エージェント物語/Dix pour cent/Call My Agent!』(2017) シーズン2






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『Dix pour cent』(2017) TV Series – Season2/仏
/カラー/約52分 ・全6話
Creator: Fanny Herrero
Original Air Date: 19 April 2017 (Fr)
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Netflixの『エージェント物語』シーズン2です。シーズン1の感想を去年の10月に書いているので,随分のんびりなスケジュールで見てます。シーズン2は今年の2月ぐらいに見終わったのかな。

ドラマはすごく楽しんで見てます。面白いですこのドラマ。(以前シーズン1の感想でも書いたように)エージェンシーと俳優達とのそれぞれ単発のエピソードも面白いが、メインのストーリーはこの芸能プロダクション「ASK」の社員たちの話。社員のメンバーは固定なので彼らの話は良く出来た連続ドラマとして見ることができる。

前回のシーズン1では「会社がどのように進んでいくのか?」がメインのストーリーだったように思うが、シーズン2の要は個々の社員たちの恋愛模様…会社「ASK」内の社内恋愛事情。全員で10人ほどの社内で社員同士がくっついたり離れたりしているのは、あまりリアリティがあるとも思えないが…そこはドラマ。範囲が小さいからわかりやすく感情移入もしやすくていい。

「ASK」の社員は
凄腕ハンサム熟年=マティアス(Thibault de Montalembert)
勝気有能なレズビアン=アンドレア(Camille Cottin)
髭面優しいが弱気男=ガブリエル(Grégory Montel)
マティアス命な女性=ノエミ(Laure Calamy)
新しい社長=ヒシャム(Assaad Bouab)
マティアスの娘=カミーユ(Fanny Sidney)
女の子みたいなアシスタントの男の子=エルヴェ(Nicolas Maury)
ゴージャスな受付女優の卵=ソフィア(Stéfi Celma)
超ベテランの女性=アーレット(Liliane Rovère)

それに
マティアスの奥さん=カトリーヌ(Philippine Leroy-Beaulieu)
マティアスの息子=イポリー(François Civil)
カミーユのお母さん=アニーク(Isabelle Candelier)
アンドレアのガールフレンド=コレット(Ophélia Kolb)

を加えてストーリーは進む。彼らがくっ付いたり離れたりするわけですがまぁ面白い。


メインの登場人物達が大変魅力的。それぞれに感情移入してしまう。それぞれを見守りたくなる。なぜなのか? それは彼らが完璧ではないからなのですね。

みんなほぼ全員がどこかでつまづいている。どこかで間違っている。ミスを犯している。間違った選択をしている。…みんな決して完璧ではない。しかしだからこそ私は彼らを応援したくなる。


★ネタバレ注意

マティアス。一見超かっこいい熟年凄腕エージェント。ハンサムなのは自覚しているだろうし、若い頃から女性にモテモテだったろうことは…彼の首の後ろの長い髪でもよくわかる笑。いつもコートの襟を立ててかっこいいオジサンなのですよ彼は。有能でルックスもいい凄腕の仕事人…だから奥さんも美人で資産家の娘。このマティアスさんは色んな意味で人生を肩で風を切って生きてきたかっこいい男なのですね。

ところが、そんな彼の完璧な人生がカミーユの登場で狂い始める。若い頃のマティアスの一時の気の迷い…シーズン1の最後、マティアスは家族にカミーユのことを話して奥さんから家を追い出されるのだけれど、シーズン2ではその後が描かれる。

それがまぁ大変。今まで完璧な人生を送っていた彼が落ちる落ちる…その描写はリアルで生々しく…しまいには両手で顔を抱えて泣き崩れるマティアス。それを見てかわいそうになるわけです…そう、彼はその弱さで魅力的に見え始めるのですよ。


上にリストをつくった登場人物達も…劇中で何かの間違いを犯す。そして皆それぞれ悔やんだり悩んだり泣いたり絶望したりする。その彼らの悲しみや苦しみや後悔を見てうんうんうんと頷き…彼ら/彼女達に感情移入するにつれ、私はますますドラマにハマっていく。

面白いドラマとは、人の弱さを描いてこそなのかも。そんなことを改めて考えさせられる。

ボロボロのマティアス。女遊びをして恋人を怒らせるアンドレア。嫉妬にかられてガールフレンドのチャンスを奪うガブリエル。ただただ都合のいい便利な女ノエミ。…間違いを犯して泣き悔やむ彼らを…どうして嫌いになれるだろうか。

もう彼らのことが好きになってしまうのね。愛してしまう。見守りたくなる。なぜなら彼らが弱い人間だから。

事実世の中に完璧な人などいない。

なぜこのドラマに夢中になってしまうのか。
人の魅力とはその弱さ=vulnerabilityにあるのだ…と思わせられる。そういえば同じような事を、アメリカのドラァグクイーンの大御所ルポールさんが言っていた「愛されるドラァグスーパースターとは、完璧な人物ではない。人は人の弱さに惹かれるのだ」と。それ、本当だと思います。


シーズン2のエピソード6。エージェントのメンバーがカンヌ映画祭に出席する。その前に「ASK」を退社して実家に帰っていたカミーユに、マティアスが突然電話をかけてくる。映画祭のパーティーにカミーユを連れて行くと言う。カミーユが「服が無いわ」と言えば、突然マティアスが車で登場。タキシードを着たマティアスが黒いドレスを手に車から降りてくる。カミーユの笑顔。「靴がない」と言えば、母親が「じゃあこれを」とサンダルを差し出す。カミーユは嬉しそうに車に乗り、ママに手を振り、パパとパーティに出かける。

そのシーンが素敵で素敵で。これ。これですよ。フランスの映画やドラマってこういうドキッとする素敵な場面が出てくることがある。やっぱりマティアスはかっこいいパパなのね。

いいドラマです。シーズン3をゆっくりのペースで見ています。じっくり楽しみます。