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2019年10月10日木曜日

映画『ジュディ/Judy』(2019):もっと光を







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Judy2019年)/英/カラー
118分/監督:Rupert Goold
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天才ボーカリスト、スーパースター、伝説の…ジュディ・ガーランドの最後の日々を描いた映画。女優さんは大変素晴らしい。しかし伝説の巨人の伝記映画としては物足りない。この映画の目的は?ゴシップレベルなんじゃないのか?

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★いいところ
主役レネー・ゼルウィガーさんの力技。全編全力投球。まーすごい女優さんですよね。シワシワの皺だらけのお顔にくっきりとひいた黒いアイラインも痛々しく…しかし歌えば上手い。演技が上手いのもよく知られていますね。とにかく彼女は何をやらせてもうまい。憑依型の女優さん。いかにレネー・ゼルウィガーさんが女優としてすごいか…に感嘆する映画。アカデミー賞いくかもしれませんね。

★わるいところ
しかーし…これが…その伝説の歌の怪物の伝記映画?????ぇえええええ?酷いわ。バランス悪すぎ。

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いい伝記映画というのは…、
2時間程の短い上映時間の間に、主題の人物の人生の明・暗両方を巧みに描いて人物の全体像を表現するものではないかと私は思う。

近年なら『ボヘミアン・ラプソディ』『ロケットマン』。両作品とも、フレディとエルトンの人生の明暗…彼らのプライベートでの喜びと哀しみを描いた上で…それでもなおステージ上で大きく大きく輝くスーパースターの姿を見せてくれた。どちらもいい映画だった。


この映画はジュディ・ガーランドさんの最後の悲しい日々のみを描いた作品

この映画でのジュディさんは

犠牲者。

それだけしか描かれてない。だから伝記映画としてはバランスに欠ける。かなり哀しい。いや…苦しい。苦しいのよ。全編鬱々と結構キツイ映画。ジュディさんが好きならなおさら。見ていてかなり辛い。

ジュディ・ガーランドさんの映画?ちょっと待ってよ…
 
彼女はこれだけのお方じゃないでしょう?

彼女は天才よ。歌の怪物よ。文字通り100年に一人の化け物クラスのスーパースターよ。とんでもないお方よ。こんなお方、他にいないって…。そんなすごいお方の、亡くなる前の苦しい日々だけを取り上げて、映画にするなんて…

酷くない?

単なるゴシップレベルじゃん。
なぜこんな映画を撮ったのだろう?


彼女は犠牲者じゃない。事実がそうであったとしても彼女自身は自分を犠牲者だとは思わなかったと思う彼女の人生がどんなに辛いものであったとしても、

彼女は光り輝くスーパースター

これだけは絶対に譲れない。
それを描かなくてどうする。
彼女が亡くなる前のボロボロになった姿だけを描いて

JUDY

なんてタイトルの映画を撮るなんて酷いと思うわ。大変趣味が悪い。
 

そういえば、ずいぶん前にマーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/鉄の女という映画がありましたが、あの映画も怪物政治家マーガレット・サッチャーさんを弱々しいお年寄りとして描いてましたね。あれも御本人に大変失礼な映画だった。もしかしたら…と思い調べたら、この映画も監督はやっぱり英国人。うわ~やっぱりね。英国人は…人並みはずれたスーパースターを引き摺り下ろして普通の人として描くことを…芸術的だとでも思ってるんですかね。趣味が悪いわ。


★ネタバレ注意

この映画が描いたもの。
 
・ハリウッドによる天才子役のアビュース(虐待)
食事制限、クスリ漬け…子役のスーパースターはこれだけ歪んだ環境の中で大人によって作られた。そこから始まる彼女のクスリ中毒、アルコール中毒。

…それからいろいろな途中段階を飛ばして…

・ジュディの最後の日々。
酒、クスリに溺れながら、問題を起こしながらロンドンでのショーを続ける痛々しい姿。
 
 
ユーモアはゼロ。全体に鬱々とジュディさんが苦しむ様子、そして周りも彼女に苦しめられる様子を2時間かけて描く。
 
この映画の構成の意図は…苦しい日々の中でさえステージ上での彼女はやっぱりすごいでしょ…ではないかと思うのだけれど、実際は、彼女の苦しい日々の描写が長すぎてうんざりする。彼女と周りの人々の関係も薄っぺら。深みがない。だから彼女がただわがままで扱いにくく痛々しいだけの人に見えてしまう。
 
ジュディさんは悲しいばかりのお方ではないですよね。彼女は犠牲者ではない。

もっとジュディさんに光を。輝きを。誇りを。愛を。ユーモアを。もっと彼女の強さを見せて。辛い人生にも彼女が輝いた日々はきっとあったはず。彼女を犠牲者として描くことはジュディさんに失礼だと思う。フェアじゃない。
 
 
2時間どっぷりと光の見えないストーリーを見せられて、ものすごーく哀しくなった。ちがう。ちがうよ。ジュディさんはこれだけのお方じゃない。女優のレネーさんは素晴らしい。アカデミー賞もいけるだろう。しかし脚本は?ストーリーは全然良くないですよね。これをジュディさんの伝記映画とは呼べない。
 
彼女の人生に光が見えないなんて酷すぎる。バランス悪すぎ。スーパースターの影の部分だけ描くことを感動的な芸術映画だと思ってるなら、この監督さんは未熟ですね。人間は落ち込んでばかりはいられないのよ。
 
 
この映画を見た後苦しくなって、動画サイトで彼女の映像を漁る。彼女の輝く姿を見てほっとする。そして彼女の娘さんたち…ライザ・ミネリさんとLorna Luftさんがインタビューでゲラゲラ笑う様子を見て嬉しくなった。娘とはお母さんに似るもの。お二人ともとても明るい。

Lorna さんは言う
She was funny and she was warm and she was wonderfully gifted.
母はおもしろく愉快な人で温かく、そして素晴らしく才能に溢れた人だった

そしてまたジュディさんは世間から
She hated being called a tragic figure.
悲劇の人だと呼ばれる事を好まなかった

Yes, we lost her at 47 years old. That was tragic. But she was not a tragic figure.
私達は彼女を47歳で亡くした。それは悲劇です。しかし母は悲劇の人ではありません