CONTENTS

2014年5月20日火曜日

NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」第20回「囚われの軍師」



毎週毎週このドラマ、ワタクシ「脚本が脚本が…」とほざいておりますが、しかしこのドラマの俳優さんたちは本当に素晴らしいと思います。もう脚本がなんであれ、俳優さん達がこんなに素晴らしいのなら、それだけで見入ってしまう。皆かなり押せ押せの熱い演技なんですが戦国時代ですからね。毎日が極限の状況ですから熱い演技も合ってると思う。俳優さん達の演技で引っ張っていけるドラマになってきた。

今週は、黒田(柴田)パパと、荒木さん、それに官兵衛君も良かった。そして何よりも、今週の一番の驚きはだしの桐谷美玲さん。最後の荒木さんとのやりとりが素晴らしかったです。この女優さんは、以前官兵衛に宴会で色目を使っていた頃ははあまりにも演技が軽くて、まだ慣れてないのかなと思っていたのですが今週は本当に良かった。この回で彼女は一気に飛躍しました。

最後の場面で荒木村重=田中哲司さんがゴリゴリの熱い演技をしていて、それにつられて彼女もいい演技を引き出された感じ。村重が「おまえだけは信じていた」と彼女を怒鳴りつけると、目を大きく開いたまま泣き顔になる。そして夫が憮然と立ち去った後の「一瞬ほっとしたと同時に(夫を裏切るという)取り返しの付かない事をしてしまった後悔」の一瞬の表情がまた最高によかった。短い場面ですが桐谷さんはいい演技を引き出されたんだろうと思います。俳優さん達の化学反応。こういうのを目撃するとドキっとする。


現代の若い俳優さん女優さんたちが、現代劇のおだやかなドラマをやっているだけなら、あまり必要とされない演技ってあると思うんですよ。熱い演技、怒鳴りあい、ゴリゴリ押せ押せの感情の爆発、耐える演技、心に秘めた怒り、悲しみ…悔しさ…恨み…憎しみ…。明日は死ぬかもしれない、友人が死ぬ、家族が死ぬ、友人が裏切るかも知れない、部下が裏切るかも、妻や子供が殺されるかも…。そんな極限の状況なんて今の日本の現代人には全くリアリティが無い。

現代を舞台にした殺人事件のドラマでさえも、犯人は変わり者、特殊な人…と思えば、それほど感情移入をする必要もないし、話としても一般にはほとんどリアリティがない。

だけど、歴史時代劇…大河ドラマって、どんな極限の状況が起こっても本来全てリアルであるべきなんです。だって過去に実際にあったことなんだもの。

内容がどんなにシリアスな場面でも、経験の少ない若い俳優さんが無理矢理脚本に合わせた上っ面だけの演技をすると、結果的に作品の雰囲気が漫画っぽくなってしまうことは結構多い。近年の大河の薄っぺらさは、若い俳優さん達の演技に説得力がないことによるものではないか。

平和な時代に暮らす現代の若い俳優さんたちが、リアリティのある(史実を元にした)時代劇を再現するためには、現代劇とは違う演技が必要。現代では想像も出来ないような極限の状況を再現するために必要なのは想像力。若い俳優さん達がそれを学べる最高の場こそが大河ドラマなんだと思います。経験豊かな先輩の俳優さん達から演技を学ぶこともできる。今週の桐谷さんと田中さんを見ていると本当にそう思う。やっぱり歴史時代劇は文化として残していったほうがいい。

今年のこの大河ドラマは、全体に出演者の方々の熱量が高くて素晴らしいと思います。


それからもう一つ。今まで散々江口さん=ノブ様のイメージが違うと言っていたのですが、これはこれでいいんじゃないか…とも思えてきました。相変わらず顔や印象は全然違う(笑)。というのも江口さん有名な信長の肖像画に全く似ていないんですよ。顔が四角いし。しかしこのドラマでの江口さんの信長はこれはこれでありかも…と思えてきた。

ものすごく大柄で大雑把…だけどいつもピリピリしていてすぐにキレるノブ様は、荒くれ者ヤンキー風で史実の信長のイメージとは全く違うけれど、このドラマではそれなりに馴染んできた。だって十分怖いもん。カメラワークもピリピリしてます。知性はあまり感じないけど野蛮な暴君風なキャラは決して悪くない。江口さんの演技も板についてきた。いつも怒っていて大雑把で繊細さのかけらもなく、なんだかイヤな感じのノブ様ですがこれはこれでキャラとしていい。一番の問題はすぐに濃姫と絡める軟派な脚本だろうと思う。


★あらすじ

官兵衛が有岡城で幽閉される。荒木村重は「味方になれ」と迫る。ノブ様は村重討伐のため摂津へ進軍。姫路の黒田家は官兵衛死亡の噂に揺れる。荒木軍から高山右近、中川清秀が離脱し信長へ下る。愛妻だしも裏切る。愕然とする村重。


●流れと感想
・官兵衛は有岡城にて幽閉される。
姫路城 黒田家では会議。
摂津信長陣でも会議。官兵衛の噂。(ノブ様が怖い)
有岡城 荒木ちゃんとだし。だしが(先週)「官兵衛に来てくれとお手紙書いた」と白状。村重唖然「御着には官兵衛は死んだと伝えた」
御着城 小寺殿の表情。(家臣の二人の顔がそっくり(笑))。
有岡城 村重が牢の官兵衛に会いに来る「味方になれ」。官兵衛「信長か勝つ」。(岡田さんの真面目な演技がますます良くなってきました)
摂津信長陣 2人の宣教師が呼ばれる。ノブ様「(荒木軍の)高山右近を説き伏せよ」
高槻城 その宣教師2人が右近を訪ねる。ノブ様の言葉を伝える「右近がワシに逆らえばキリシタンは皆殺し」(こりゃー選択肢はないな。)
有岡城 だしと官兵衛。だし「お手紙を出してごめんなさい」官兵衛「城の見取り図をくれ」(この場面、さらっと事務的であまりベタベタと無駄な恋愛ものにならなくてよかったです。岡田さんは今も時々台詞が聞き取りにくい)
姫路城 御着から官兵衛死亡の情報が伝わる。黒田パパ「何があっても毛利にはつかん」「いざという時がきたら官兵衛を捨て松寿を生かす」(黒田パパ=柴田さんの熱演。素晴らしい!)
・黒田家臣団がもめる。元小寺の家臣は御着に帰ると言う。又兵衛も御着へ去る。(荒ぶる太兵衛もこみち君がいい)
長浜城 松寿丸くんはいい子。
摂津信長陣 高山右近が断髪に白装束で参上。「ただキリシタンとして生きたい。だめなら殺してくれ」ノブ様「お前がわしに付けばキリシタンは救われる」。右近ノブ様に下る。
有岡城 それを知って焦る村重。(田中さんはいつも素晴らしい)
・荒木軍の中川清秀も信長に下る。(←えええええええええええええ?)清秀「右近が(信長に)下ったら荒木に勝ち目はない。強きものに付くのは世のならい」許される。「官兵衛は生きている」(ノブ様ピリピリ怖い)
姫路城 家臣団が忠誠の誓い。その後家臣3人は有岡城へ忍び込む。
有岡城 城の見取り図を手に入れた官兵衛は脱出を図る。だしが手伝う。そこへ村重登場。(キーター!)官兵衛抵抗するも捉えられて土牢へ幽閉。(官兵衛身体能力高し。これで見納め?)だしの裏切りを知り愕然とする村重。(荒木ちゃんはやっぱり素晴らしい)だし泣きくずれる。キリスト教の礼拝堂で賛美歌を歌うだし。信徒達の歌声は土牢の官兵衛にも聞こえてくる。(←この最後の一連のだしさんが泣ける。キリシタンの悲劇の女性といえば『黄金の日日』のモニカ…)

それにしても相変わらず話そのものの内容はツッコミどころが多いんですが…。もうそれはしょうがない。