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2014年1月16日木曜日

映画『あなたを抱きしめる日まで/Philomena』:お母さんの気持ち・息子の気持ち



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Philomena2013年)/英仏米/カラー
98分/監督:Stephen Frears
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去年、暫く前に見たんだけど、何故か感想を書けずにそのままになってました。

原作は実話。監督さんは『Queen』の監督スティーブン・フリアーズさん。素晴らしい配役。事実を事実として描く冷静な眼。ある女性の実話をそのまま映画にしたもの。落ち着いていて地味ですが、心を動かされます。

こういう映画は感想を書くのが難しいです。見てからいろいろと考えているのだけど、どう感想を書いていいか分からない。しかし素晴らしい映画。


★あらすじ

1952年のアイルランド。主人公フィロミナは若い時に未婚で妊娠してしまい、家族からカトリックの修道院に入れられ、そこで男の子を出産する。子供の名前はアンソニー。しかし彼は3才で連れ去られてしまう。アメリカで養子になったらしい。それ以来息子には一度も会っていない。50年後、アンソニーを探しに彼女はアメリカに渡る。元政治ジャーナリストのマーティンも同行。フィロミナとマーティンのアンソニーを探す二人旅。

主人公フィロミナは英国の名女優ジュディ・デンチさん。ユーモラスな普通のおばちゃん。よく喋ってすごく可愛い。過去にそんな悲しい経験をしていたなんて思えないほど明るい元気のいいおばちゃん。悲しい事があっても人前では涙を見せない。芯の強い女性です。彼女の旅に同行するのは元政治ジャーナリストのマーティン・シックススミス。英コメディアンのスティーブ・クーガンさんが演じる。



★ちょっとネタバレかも


この話は、お母さんと息子の話なんですね。

50年以上も前に連れ去られた息子に会いにいくお母さん。いろんな想いを50年間も抱えてきた。息子に会いたい。元気でいるだろうか。幸せだろうか。私の事を恨んでいるだろうか…。そもそも息子は私の事を覚えていてくれるだろうか…?

最初は、一般人の個人的な話になんてあまり興味のなさそうだったエリート・ジャーナリスト、マーティンも、フィロミナと旅を続けるうちにいつしか実の息子のように打ち解けてくる。二人のやりとりがいい。本当の親子みたい。微笑ましい。二人を見ていて何度も笑った。

一見楽しい珍道中を続けるうちに、次第に真実が浮かび上がってくる。フィロミナさんも迷ったり悩んだり悲しくなったり…。それをマーティンさんが息子のようにしっかりと支える。


本当にこの二人が親子そのものなんです。

最後に全てのことが明らかになって幕を閉じる。マーティンさんがアイルランドの修道院での過去の事実を暴き出し怒りを爆発させるが、フィロミナさんの気持ちは落ち着いている。なぜなら彼女はこの旅を終えたことで心の平和を摑んだから。この旅で彼女の魂は救われたんです。

やっと探し当てた真実。50余年も抱え続けた疑問の答え。その結末は彼女にとっては十分に幸せなものだったのだろうと思う。最後のフィロミナさんの穏やかな表情にじーんときます。お母さんが知りたかったのは息子の気持ちだった。


演技も配役も最高。ジュディ・デンチさんは本当にすごいです。映画によって全く違う人物になりきる名女優。スティーブ・クーガンさんもステキです。最初は一見冷たいエリート記者も心の中は優しい紳士。この二人が大好きになる。そして私達も彼等二人と一緒に旅に出るんです。

静かな映画ですが心に染みます。いい映画。


ところで、この邦題『あなたを抱きしめる日まで』って、これだけで泣けるんですけど…。