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2012年12月26日水曜日

NHK大河ドラマ 第50回 最終回「遊びをせんとや生まれけむ」


清盛君の大河ぼやきマラソン、完走いたしました! 途中で脱落もしかけたけど、さすが大河枠。やっぱりついつい見続けてしまった。
 
今回は1年分の感想を総括したい。辛口です。
 
 
しかし今年は苦しかった。いいところもいっぱいあったんです。例えば室内の美術。平安時代の建築の知識なんて無い私には、貴族の館などの内装はすごく綺麗で楽しめた。賛否両論だった画面もだんだん明るくなった。
 
平安を描くという挑戦もよかった。マンネリ気味の戦国や幕末に比べれば、新鮮で面白い題材だった。
 
リアルを追求する姿勢も悪いとは決して思わない。昔80年代までの、真正面から光を当てるようなライティングよりはずっといい。ただ問題はバランス。ケムケムのコーンスターチの多用や、逆光ばかりの初期の映像は確かに辛かった。そういうのも最近は改善して見やすくなってました。
 
俳優さん達は若い人ばかりで、説得力のある配役ではなかったと思うけれど、個々の俳優さん達は頑張っていたと思う。1年間の長丁場、視聴率の苦戦など、戸惑うことも多かったのではないかと思うが、全員1年間精一杯頑張ったことには大きな拍手を送りたい。おつかれさまでした。
 
ただやっぱり6050歳以上の人物を20代ばかりで見せるのはどうしても無理。これは配役が決まってしまってからはどうしようもなかったのだろうと思う。
 
 
しかし、視聴率の低下が予算にも影響したのか、最近は話を回していくのも辛そうだった。史実を見せずにナレーションのみ。俳優さんが演じるのは、個人の小さな話だけ。人物の気持ちだけで話を回していくものが多くなっていた。
 
そのあたりが、実は今年の大河の第一の問題ではないかと思った。大河ドラマはあくまでも歴史のドラマ。まず歴史のうねり、流れを描くのが基本。その大きな流れ(歴史)を見たいから「大河」を見る。その大きな流れの上に登場人物たちが乗っていなければ面白くない。それなのに、今年「大河」として描かれたのは、裏庭にチョロチョロと流れる小川のようなもの。そのせせらぎを後ろに聞きながら、人物が前面でうんうん唸って感情的な芝居をやっているような感じだった。だからつまらなかった。
 
史実を描く時も、大きな流れの中での事件というより、個々の事件がぶつ切りにツギハギされているような印象。羅列しただけ。そのせいで歴史のうねりが見えない。だからつまらなかった。
 
 
視聴率が落ちて予算が減ったために「大河の流れ」が描けなくなったのか、それとも最初から「大河」を描く意志がなかったのかは、今では分からない。鶏と卵のようなもので、それが私達視聴者に分かることはないのだろうと思う。
 
今週の最終回は、その「大きな河が描けなかった」最たるもので見ていて可哀相になるほど。絵として撮りたい場面(清盛の死、壇ノ浦時子、錨をかかえた知盛、額に矢を受けた弁慶)だけを撮影し、残りの人物は過去の映像の使いまわし。ドラマチックなはずの平家の滅亡を全て敵=頼朝のナレーションで足早に終わらせた。
 
それなのに、清盛が亡くなった後も、壇ノ浦、義経の最後、その後まで長々と話を引き摺った意図はよくわからない。ピンポイントで大雑把に事件だけを見せられてもなんの感動も沸かない。あれなら清盛の死から壇ノ浦までで終わってもよかった。
 
 
結局、このドラマの一番の問題は、何が描きたかったのかが見えなかったこと。歴史でもない。魅力的な人物でもない。人物同士の関係も双六をしてにらみ合うだけ。その上に、話を食ってしまう過剰な演出。意図が不明で鼻につく衣装、人物デザイン。くどい台詞の繰り返し。唐突でくどい音楽の繰り返し…。一貫性の無い人物像、話に思想や意図の見えない脚本を始めとして、これら周りの様々なものが不快な不協和音を奏でていた気がする。脚本が弱く、話の軸を真っ直ぐに通せなかったために、個々の不協和音が増幅されてしまったような感じ。結果「大河」が見えなくなった。そして人物達も話も見えなくなってしまった。
 
 
今年の大河は実験と言っていいのだろうと思う。その実験に乗っかった俳優さん達も辛かったろうと思う。もっともっといい話は書けたはず。もっともっと俳優さん達を活かす事は出来ただろうと思う。例えば今週、錨を抱えた知盛なんて大変な迫力だったけど、今まで過去に彼が表に出てきた場面は一度も無かった。知らない人物の大立ち回りを見せられても気持ちが動かない。盛国の上川隆也さんほどの俳優さんを、1年間も座らせてただけというのも信じられない。彼に限らず多くの俳優さん達が一度も輝くことなくこのドラマを通り過ぎていったんだろうと思う。ほんとうにもったいない。
 
もっと面白くなったはず。もっとドラマチックな大河に出来たはず。平安、源平だからダメだったんじゃない。人物さえ描ければ、平安、源平は決してつまらない素材じゃないと思う。むしろ私のように当時の歴史に詳しくない者には、戦国に比べれば新鮮で面白い素材だった。
 
ドラマは人物が輝くから面白いこと。そして何よりも、大河ドラマは歴史を描くからこそ面白いのだということ、1年もの時間をかけて丁寧に歴史を描くことは「大河ドラマ」だからこそ出来るのだということを、もう一度考えなおして欲しい…と思いながら最終回を見終わった。
 
それにしても老けない深田さんは綺麗だった…。みなさんお疲れ様でした。