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2012年4月22日日曜日

映画『タイタニック 3D/Titanic』:美しい映画、3Dの可能性




 
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Titanic1997年)/米/カラー
194分/監督;James Cameron
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97年に1度見て、今回2回目の観賞。今回は3D。いまさらロマンスのことは書くまい。それに、ディカプリオが現代人だとか、当時の常識で上流階級の娘が労働者階級の男の子に恋するわけがないとか、あのピカソやモネやドガやセザンヌの絵はどうなったのだとか、上流階級はそんなにヤナ奴ばっかりで労働者階級はみんなイイ奴なのかとか、ディカプリオのスケッチはそんなに上手くないぞとか…いろいろとあるけれど……しかし、こんな桁外れの化け物のようなすごい映画を見て、そんな小さなつまらないことにウダウダと文句を言うのも無粋というもの。この映画、まず豪華客船タイタニックの再現をじっくりと堪能するべきなのだ。すごいです。大迫力。素晴らしい。

今までに3D映画は、SFなどのCGを多く使ったものや、CGアニメなどで見ていたが、いまひとつ良さが実感できなかった。しかしこのタイタニックの3D化は、私の中の3Dへの考えを全く変えてしまうほど素晴らしいものだった。3Dで見るタイタニック、ほんとに豪華にリアルなのだ。俳優といっしょに、船内を歩いて、食事をし、お茶を飲んでいるような気がする。これは映画を見たというよりタイタニックを体験したと言いたいほどだ。ものすごく贅沢。


何から何まで、非常に美しい。ひとつひとつにため息が出る。
女性のドレスの絹のしっとした光沢、男性のピンストライプスーツの重い生地、華やかな食事風景、艶やかな家具、船内の豪華な装飾、それに人物の髪、肌、全てがリアル。彼らの隣にいてそんな物全ての実物を見ている気がする。こういうリアルな物の3D化がこんなにいいとは知らなかった。人の肌や衣装、家具の質感など、記憶で実感できるものだからなのだろうか、この映画の臨場感は、CGばかりのSF映画とは比べ物にならない。何から何まで怖いくらいリアル。


それに、主演の2人の俳優たちが非常に美しい。
若い白人の女性というのは、なんと綺麗なものだろうと改めて驚かされた。ケイト・ウィンスレットの目の青、クリームのような白い肌、ばら色の頬。赤い唇。特に肌がすごい。全体の色合いがものすごく綺麗だ。今までこの女優さんをこれほど綺麗だと思ったことはなかった。どちらかと言えば骨太の頑丈な体形も、絶世の美女というより地に足の着いた女性という感じだと思っていた。だがこの映画、20世紀の初頭。まだまだ19世紀風の美しさが強く残っていた頃。ああいう衣装で赤い巻き毛、豊かな白い肌の彼女は、まるでロッセッティ(Rossetti)やレイトン(Frederic Leighton)など19世紀英国、ラファエル前派の絵画をそのまんま再現したようなのだ。3Dで見せられるとため息が出るほど美しい。


Flaming June(1895) - Frederic Leighton

以前見たとき、ディカプリオは、ひょろひょろと背ばかり伸びた体に子供の顔が乗っかったような俳優だとばかり思っていたのだが、彼も 15年を経て3Dで見たら、その瑞々しい若い感じがこの話にはほんとにいい配役だったのだと気付かされた。毛穴のほとんど見えないつるっつるの肌。耳の下の首筋の清潔さが美しい。このカップルは3Dで見ると本当にいい。若い人というものは(その真剣さも純粋さも存在も)こんなに美しいものなのかとつくづく思った。


今回2回目の鑑賞で、話そのものも最初に挙げたような小さな疑問点がほとんど気にならないほど映画として素晴らしいものだったことに気付かされた。確かにファンタジー的な要素はある。しかし十分に感動できる。上流、労働者階級の矛盾よりも、若い二人の瑞々しさが圧倒的に素晴らしくて、それだけで押し切ってエンターテイメントとして納得させられるのだ。この二人の俳優・女優は、当時ほんとうに若かったのに(23歳と22歳)これだけの大作をリードするなんてたいしたものだと思う。ケイト・ウィンスレットの演技だけで泣ける、後の大女優ぶりもこの頃から見えていたのだなと実感させられる。まわりの配役もいい。それぞれの脇役の小さなストーリーも素晴らしい。それぞれは短い時間なのに全ての人物の話がしっかりと意味をなしている。


ローズが最後に笛を吹く場面では今回も泣いた。それに現在のシーンで、彼女のその後のいろんな写真を見る場面でまた泣けた。彼女は幸せな人生を送ったのだ。本当によかった。ローズのその後の人生を想像しただけで泣けた。彼女は思い出を深く心にしまって強く生きた。それに感動させられる。そして85年後、一人過去の思い出をダイヤのネックレスと供に海に沈める。大切な記憶は永遠に封印されたのだ。


少し前のエントリーで、今年のアカデミー賞の結果をぼやいていたのだが、実はこれが理由なのだ。ハリウッドは本気を出したら、こんなとんでもないものが作れる。だからこそ、昔の映画をコピーしたフランス映画に、その年一番の賞をさらわれて喜んでいるなんて、ハリウッドはいったい何をやってるんだと言いたいのだ。このタイタニックは、ハリウッドが本気を出したらどんなにすごいものが出来るかを見せてくれた映画。何から何まで最高峰。怖いくらいの完成度。今回、15年の時間を経て3Dで見て改めて実感させられた。やはりハリウッドにはこういう純正エンターテイメントに真剣に取り組んでいただきたい。